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  1. 学位論文
  2. 動物応用科学専攻
  3. 博士論文(甲)

乳酸菌でのE.coli由来の線毛アドヒジュンタンパク質 (FimH) 遺伝子発現と融合タンパク質の機能解析

https://az.repo.nii.ac.jp/records/3842
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3842
d105457c-ae30-400c-b3c3-a910b93adf34
名前 / ファイル ライセンス アクション
diss_da_kou0011.pdf diss_da_kou0011 (8.0 MB)
diss_da_kou0011_jab&rev.pdf diss_da_kou0011_jab&rev (365.0 kB)
Item type 学位論文 / Thesis or Dissertation(1)
公開日 2014-01-10
タイトル
タイトル 乳酸菌でのE.coli由来の線毛アドヒジュンタンパク質 (FimH) 遺伝子発現と融合タンパク質の機能解析
言語
言語 jpn
資源タイプ
資源タイプ thesis
著者 有馬, 三樹子

× 有馬, 三樹子

有馬, 三樹子

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抄録
内容記述タイプ Abstract
内容記述 大腸菌などの病原性細菌によるヒトや動物の上皮細胞への付着については多くの共通性がみられ、哺乳動物など宿主の細胞表面の糖鎖をレセプターとして特異的に付着し増殖(定着)することによって感染症が引き起こされる。E. coliのもつType1線毛の先端には付着因子(アドヒジュンタンパク質)であるFimHが存在し、宿主の細胞表面に存在するマンノースをレセプターとして付着する。アドヒジュンタンパク質を欠損させたE. coliでは、付着性が著しく損なわれ、また感染症を発症しないことも知られることから、このタンパク質はE. coliが宿主の細胞へ付着し、感染するための重要な因子として研究されている。
 一方、乳酸菌が哺乳動物など(宿主)の腸管上皮細胞に付着することは、種々報告されているが、その付着因子や付着強度などについての統一的な見解はほとんどみられない。乳酸菌をプロバイオティクスとして利用するために、宿主の細胞表面への付着性が重要となる。そこで明らかにされているE. coli由来FimHをコードしたfimH遺伝子(Klemm et al., 1987)を乳酸菌で発現させることにより、宿主の細胞表面への付着性を高めることが推測できる。また、病原性細菌と同じ付着因子を乳酸菌が産生することにより、病原性細菌の付着を競合阻害することが期待される。
 本研究では、宿主細胞表面への乳酸菌の付着性向上および乳酸菌と病原性細菌との付着競合阻害を目的とし、E. coli由来Type1線毛のFimHを乳酸菌で産生させるために、Lactobacillus helveticus CP790株のプロティナーゼ(prtY)遺伝子(Yamamoto et al., 2000)を応用した。すなわち、prtY遺伝子はプロモーターを有し、菌体内で産生されたドメインであるタンパク質を菌体外へ放出させるシグナル配列と、そのタンパク質を菌体表層に固定するアンカー配列を含んでいる。グラム陽性・陰性菌のシャトルベクターでテトラサイクリン(Tc)耐性遺伝子をコードしたpHY300PLK(Takara)を用いてこのprtY遺伝子をサブクローニングし、prtY遺伝子のドメインにfimH遺伝子を組み込むことによって、FimHの機能をもつ融合タンパク質を産生させることを試みた。
 第1章では、E. coliと乳酸菌の両者において融合タンパク質を産生させるためのプラスミドの構築を行なった。はじめにprtY遺伝子のプロモーター上流のシークエンスを決定し、プロモーターを含みPCR増幅したprtY遺伝子をpHY300PLKのBamH IとXba Iサイトに組み込み、pY790を構築した。次にpY790のprtY遺伝子内のSpe IとBpu1102 Iで切断されるドメイン(約800bp)を除去した後、両制限酵素サイト(配列中の下線部)を含むプライマー(フォワードプライマー ; 5'-TGCCTGGTCATTCACTAGTAAAACCGCCAA-3'、リバースプライマー ; 5'-TCGCTGGAATAAGCTTAGCGTTGCGCGTCA-3')でPCR増幅した約680bpのfimH遺伝子を組み込んだ(pYEFH01の構築)。このpYEFH01をシークエンスし、prtY遺伝子のドメインにフレームが合うようにfimH遺伝子が組み込まれているのを確認した。このプラスミドはE. coliと乳酸菌でfimH遺伝子を発現し、融合タンパク質を産生するものと考えられた。
 第2章では、pYEFH01をE. coli JM105に導入しTc耐性形質転換体E. coli JM105(pYEFH01)を得た。本形質転換体の菌体タンパク質をウェスタンブロッティング法に供し、抗FimHマウス血清および抗PrtYマウス血清を用いて融合タンパク質の検出を行なった。その結果、抗FimHマウス血清に反応するタンパク質(分子量約40,000)のバンドを検出した。また同じタンパク質のバンドが、抗PrtYマウス血清で反応したため、目的のFimHをドメインに含む融合タンパク質が産生されたことを確認した。
 また融合タンパク質の機能を解析するためにE. coli JM105(pYEFH01)の菌体タンパク質(菌体破砕液)を用いて、Type1線毛をもつE. coli ORN103(pSH2)(Tawari, Ikeda and Abraham et al., 1993)のヒト結腸線癌由来Caco-2細胞への付着阻害試験を行った。その結果、E. coli JM105(pYEFH01)の菌体タンパク質の添加によりE. coli ORN103(pSH2)の付着が阻害された(付着率 : 16%減少)。このことから、産生された融合タンパク質がCaco-2細胞への付着性を有し、結果的にE. coli ORN103(pSH2)のCaco-2細胞への競合阻害することが認められた。E. coli JM105(pYEFH01)は、FimHと同じ機能を示す融合タンパク質を菌体内で産生していることが示唆された。
 第3章では、乳酸菌の一種であるLactobacillus casei CP680をpYEFH01により形質転換し、Tc耐性形質転換体L. casei CP680(pYEFH01)を得た。得られたTc耐性形質転換体について、E. coliを宿主とした時と同様に、プラスミドの解析とウェスタンブロッティング法による融合タンパク質の検出を試みた。本形質転換体からプラスミドを抽出しSpe IとBpu1102 Iで消化し、fimH遺伝子断片を認めた。また、L. casei CP680(pYEFH01)の菌体タンパク質をウェスタンブロッティング法に供し、抗FimHマウス血清で反応させた結果、E. coliでの場合と同様に、分子量約40,000の位置のバンドを検出した。抗PrtYマウス血清でも同じ分子量のバンドを検出でき、乳酸菌においてもFimHをドメインにもつ融合タンパク質が産生されていることを証明した。
 以上、L. caseiにおいてマンノースをレセプターとして付着する、融合タンパク質遺伝子を発現させるためのプラスミドpYEFH01が構築できた。産生されたこの融合タンパク質は、同じマンノースを認識し付着するE. coliを競合阻害することが認められた。本研究の成果として、pYEFH01の応用可能な例も次のように考えられる。病原性細菌の一種であるSalmonella typhimurium は、Type1線毛遺伝子(Clegg et al., 1995)を有するがE. coliとの相同性はほとんどない。本菌のアドヒジュンタンパク質遺伝子のシークエンスよりSpe IとBpu1102 Iサイトを含むプライマーを構築し、PCR増幅された産物を両制限酵素により消化すればpYEFH01に容易に組み込め、この遺伝子の発現が可能となる。すなわち、病原性細菌のアドヒジュンタンパク質が遺伝子レベルで解明されているため、本研究で構築したpYEFH01のドメインにいろいろな細菌のアドヒジュンタンパク質をコードした遺伝子を組み込み乳酸菌に導入することで、産生された融合タンパク質はそれぞれ病原性細菌と同じレセプターに付着し、宿主の細胞表面への付着を競合阻害し得るものと考えられた。
学位名
学位名 博士(学術)
学位授与機関
学位授与機関名 麻布大学
学位授与年月日
学位授与年月日 2001-03-20
学位授与番号
学位授与番号 甲第11号
著者版フラグ
出版タイプ AM
出版タイプResource http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa
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Ver.1 2023-06-19 08:16:02.865291
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