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アイテム
BMP応答細胞内シグナル伝達因子であるSmad8/9の遺伝子発現制御に関する研究
https://az.repo.nii.ac.jp/records/4542
https://az.repo.nii.ac.jp/records/454218868c26-d0b4-4962-9322-e46fd6a5ed51
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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diss_dv_kou0146 (3.1 MB)
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diss_dv_kou0146_jab&rev.pdf (203.8 kB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2016-09-30 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | BMP応答細胞内シグナル伝達因子であるSmad8/9の遺伝子発現制御に関する研究 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | Studies on the regulation of gene expression of BMP pathway-specific R-Smad, Smad8/9 | |||||
言語 | en | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_db06 | |||||
資源タイプ | doctoral thesis | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | open access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||
著者 |
片川, 優子
× 片川, 優子× Katakawa, Yuko |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | Bone morphogenetic protein(BMP)はTransforming growth factor-beta(TGF-β)ファミリーに属するサイトカインであり、生体内での役割は、細胞分裂の制御や、初期胚のパターン化、細胞分化の決定など多岐にわたる。BMPによるシグナル伝達は、主に細胞内シグナル伝達因子であるSmadを介して行われる。すなわち、BMPが細胞膜表面の特異的な受容体に結合すると、receptor-regulated Smad(R-Smad)であるSmad1、5、8/9がリン酸化され、それがcommon-Smad(Co-Smad)であるSmad4とともに核内に移行し、転写因子として働いて標的遺伝子を活性化する。 Smadには上記のSmad1、4、5、8/9のほかに、TGF-βファミリーのBMPとは別グループであるTGF-β、アクチビンのシグナル伝達因子であるSmad2、3(R-Smad)やシグナル伝達を阻害するinhibitory-Smad(I-Smad)であるSmad6、7が知られている。TGF-βファミリーはこれらSmad(1~8/9)のリン酸化を介してその機能を発揮している。これまでにTGF-βファミリーがそれ自身のシグナル伝達因子であるSmadの遺伝子発現を制御する(つまりSmadを標的遺伝子とする)という報告がI-Smadについては知られているが、R-Smadについては見られない。著者らは下記の先行研究において、TGF-βファミリー、特にBMPがそれ自身のR-SmadであるSmad8/9の遺伝子発現を促進していることを見つけた。 1)マウス脂肪前駆細胞由来細胞株(3T3-L1)のTGF-βファミリー刺激下での分化過程における網羅的な遺伝子発現解析で、Smad8/9の発現促進が認められた。この発現促進はTGF-βファミリーの中でBMPによる刺激が最も顕著であり、またこの作用は持続的だった。 2)マウス筋芽細胞由来細胞株(C2C12)の筋分化過程において、内因性BMPの変動に伴い、Smad8/9の遺伝子発現量も変動した。この変化は、他のR-Smad(Smad1、2、3、5)には見られなかった。 これらの事実をきっかけとして、BMPはそのシグナル伝達因子であるSmad8/9の遺伝子を標的としてその発現を制御しているという仮説を立て、BMPによるSmad8/9の遺伝子発現制御について詳細な研究を行った。 第1章 新規なBMP応答遺伝子としてのSmad8/9の遺伝子発現解析 まず、C2C12と3T3-L1を用いてBMP刺激後2時間におけるSmad1~8/9の各遺伝子発現を、qRT-PCRにより定量的に調べた。その結果、これまでに報告されているSmad6、7以外に、Smad8/9のmRNAの著しい発現量の上昇が認められた。Smad1~5の遺伝子発現量には変動が認められなかった。次に、このBMPによるSmad8/9の遺伝子発現促進が各種細胞で起こるのかを確認するため、マウスメラノーマ由来細胞株(B16)、ヒト肝癌由来細胞株(HepG2)、ラット心臓横紋筋由来細胞株(H9c6)、ラット表皮由来初代培養細胞株を用いた。その結果、いずれの細胞においてもBMP刺激によりSmad8/9遺伝子発現の促進が認められた。 TGF-βファミリーの他のメンバーであるTGF-β、アクチビンによるSmad8/9遺伝子発現量の変化についても、C2C12と3T3-L1を用いて調べた。TGF-βまたはアクチビンで2時間刺激したところ、TGF-βとアクチビンのいずれにおいてもBMP刺激で見られたようなSmad8/9の顕著な発現上昇は認められなかった。 以上のことから、TGF-βファミリーのうち、BMPがSmad8/9の遺伝子発現を正に制御しており、この反応はあらゆる細胞において普遍的である可能性が示唆された。 第2章 各種細胞におけるSmad8/9の遺伝子解析 本研究で注目しているSmad8/9は、正確には登録配列上、Smad8とSmad9に分けられる。Smad8のCDS領域(1290bp長)の塩基配列の642番目に6塩基の挿入(2個のアミノ酸挿入;アルギニンとバリン)が見られるものがSmad9であるが、機能的な違いは報告されていない。これらは対立遺伝子と考えられ、通常は区別されずにSmad8/9と表される。第1章において、各種細胞でのSmad8/9 mRNAのqRT-PCRではSmad8とSmad9のいずれも検出できるように、共通プライマーを用いて測定した。しかし、細胞により、BMP刺激によるSmad8とSmad9での遺伝子発現様態が異なることも考えられ、細胞により発現しているSmad8/9 mRNAの塩基配列解析を行いSmad8とSmad9の特定を試みた。その結果、C2C12ではSmad8のみを、B16、HepG2、H9c6およびラット表皮由来初代培養細胞株ではSmad9のみを、そして3T3-L1ではSmad8とSmad9の両方を発現していることがわかり、細胞により異なっていた。クローニングにより3T3-L1で発現しているSmad8とSmad9のmRNA量の割合を調べたところ、それぞれの発現は41%(Smad8)と59%(Smad9)と僅かの偏りがみられた。この偏りは、BMPに対する応答性の違いというよりは、核型解析などからゲノムDNA中に存在するそれぞれの遺伝子の存在割合を反映していると思われた。以上のことより、細胞によりSmad8かSmad9かの遺伝子の違いはあるものの、BMP刺激によるSmad8/9の発現上昇を調べる上でこれらを区別して検討する必要はないと考えた。 また、Smad8/9遺伝子には、いくつかのスプライシングバリアントの配列もマウスにおいて登録されている。そこで、それらのバリアントをそれぞれ検出するプライマーを設定しPCRを行ったところ、BMP刺激によりすべてのバリアントの発現が同程度に促進していた。従って、BMPによるSmad8/9遺伝子発現促進においてSmad8/9バリアントの識別も必要ないと思われた。 このようにBMPは全体としてSmad8/9遺伝子発現を促進していると考えられた。 第3章 BMPによるSmad8/9遺伝子発現促進の制御機構の解析 第1章より、Smad8/9が新規のBMP応答遺伝子であることが示唆されたため、C2C12と3T3-L1を用いてこの遺伝子発現促進の制御機構を調べることとした。 1)タンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドを用い、BMP刺激後12時間のSmad8/9の遺伝子発現量をqRT-PCRにより調べたところ、シクロヘキシミドの存在の有無にかかわらず、BMP存在下ではSmad8/9の発現量が増加した。このことから、BMPによって誘導されるSmad8/9遺伝子発現には、BMP刺激後に新たなタンパク質の産生を必要としないことが示唆された。 2)あらかじめ細胞にBMPのI型受容体阻害薬であるLDN-193189を処理しておき、BMPで刺激したところ、Smad8/9のmRNAの発現上昇は見られなかった。また、BMP刺激後に生じるSmad1/5/8/9のリン酸化がLDN-193189によって阻害されることもウエスタンブロットで確認した。このことは、BMPによるSmad8/9遺伝子発現上昇は、BMP刺激後のBMPのI型受容体を介したSmad1/5/8/9のリン酸化が関与していることを示している。 1)、2)より、BMPによるSmad8/9遺伝子発現促進は、BMP刺激後、受容体を介したリン酸化Smad1/5/8/9が直接転写因子として作用して転写段階を制御していると推測した。そこで、マウスのSmad8/9遺伝子の推定プロモーター領域をルシフェラーゼ遺伝子の上流に組み込んだコンストラクト(Smad8/9の転写開始点を+1として、-1000~+113の領域 : Smad8/9(-1000)-lucとする)を作製し、レポーターアッセイを行った。その結果、BMP存在下ではルシフェラーゼの発光量の著しい上昇が認められた。またLDN-193189を用いるとその応答性は低下した。このことから、BMPによるSmad8/9遺伝子発現促進は転写レベルで制御されていることが確認できた。 第4章 BMPによるSmad8/9遺伝子発現における遺伝子発現制御領域(プロモーター領域)の解析 BMPによるSmad8/9の遺伝子発現の制御領域(プロモーター領域)を詳細に解析するため、Smad8/9(-1000)-lucを基とする9種類のデリーションミュータントを作製し、プロモーターの責任領域の絞り込みを行った。C2C12及び3T3-L1を用いてこれらのミュータントを導入し、レポーターアッセイを行ったところ、BMPに対する応答性は-338からゆるやかに減少し、-4まで欠失させると消失した。したがって、応答領域は-338~-4の領域に位置すると考えられた。この領域において、既知のBMP応答配列(BMP responsive element : BRE)であるGCCGもしくはGC-rich配列を検索したところ、-101~-14にBRE候補が5ヶ所存在していた。これらのBRE候補に様々な組み合わせで変異を加えたコンストラクトを11種類作製し、レポーターアッセイを行ったところ、5ヶ所のBRE候補のいずれにもBMPに対する応答性が認められた。そのうち-51~-46に位置するGGCGCCの6塩基が、最も影響の大きいBRE候補であった。なお、5ヶ所すべてに変異を加えると、BMPに対する応答性は完全に消失した。これらより、BMPによるSmad8/9遺伝子発現促進には、転写開始点の近位上流(-101~-14)に存在するプロモーター領域の5ヶ所すべてのBRE候補が重要であることが示唆された。 続いて、BMPによるSmad8/9遺伝子の転写促進時に、これら5ヶ所のBRE 候補にSmad1/5/8/9タンパク質が結合しているかを調べるために、クロマチン免疫沈降(Chromatin immunoprecipitation : ChIP)を行った。BMP刺激後2時間のC2C12から得られたクロマチンサンプルを、抗リン酸化Smad1/5/8/9抗体により免疫沈降し、沈降したDNA断片を鋳型として上記のSmad8/9遺伝子のプロモーター領域のBRE候補 5ヶ所を含む領域においてPCRによる増幅を試みたところ、目的のサイズの増幅産物が得られた。このことから、BMP刺激時において、本研究でのSmad8/9遺伝子制御機構におけるBRE候補とリン酸化Smad1/5/8/9の結合が細胞内で起こっていることが示された。 以上、本研究により1)Smad8/9遺伝子はBMPの新たな標的遺伝子であり、BMPによるこの遺伝子誘導はあらゆる細胞で普遍的に起こっている可能性があること、2)BMPによるSmad8/9の遺伝子発現は転写レベルで制御されていること、3)BMPによるSmad8/9の転写活性にはSmad8/9遺伝子のプロモーター領域における5ヶ所のBRE候補が関与していること、を示した。すなわち、BMP応答細胞内シグナル伝達因子であるSmad8/9は、その遺伝子発現が転写レベルでBMPによって制御されていること、およびその制御領域を明らかにした。 BMPによる様々な細胞変化(生物現象)は、これまで考えられていたSmad1/5/8/9のリン酸化による活性化だけでなく、Smad8/9それ自体の遺伝子発現を増加させることによっても促進されるのかもしれない。 |
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Abstract | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | Transforming growth factor-β(TGF-β) family members, comprising three subfamilies, TGF-β, activin and bone morphogenetic protein (BMP) groups, are pluripotent growth/differentiation factors involved in diverse physiological processes. They transmit signals through a complex formation consisting of a ligand, type I and type II receptors. Activation of receptor complexes resulting from ligand binding induces the phosphorylation of receptor-regulated (R)-Smad, followed by complex formation with Co-Smad, Smad4. Subsequently, R-Smad and Co-Smad translocate into the nucleus where they participate in transcriptional regulation of target genes. R-Smad is categorized into two subclasses: BMP pathway-specific R-Smad (Smad1/Smad5/Smad8/9), and TGF-β/activin pathway-specific R-Smad (Smad2/Smad3). We previously showed that the expression of Smad8/9 is decreased in response to the differentiation stimulation of myoblasts into myotubes. This change of expression in Smad8/9, but not Smad1 and Smad5, paralleled changes in endogenous BMP activity. We also find the up-regulation of Smad8/9 expression in 3T3-L1 during the differentiation; so far, it is known that among Smads, only Smad6/Smad7, inhibitory Smads, are inducible genes by the TGF-β family. These findings suggested that unlike the other R-Smads, Smad8/9 is a target gene for the BMP pathway. In this study, we examined regulation of the expression of Smad8/9 by BMPs. Chapter 1 To examine the up-regulation of Smad8/9 expression, we detected mRNA level of Smads in various cell types using RT-qPCR. Treatment with BMP4 for 2 h increased Smad8/9 expression in all examined cells. The expression levels of R-Smads other than Smad8/9 were not affected by BMP4. In addition, the up-regulation of Smad8/9 expression was also detected in cells treated with BMP2. Both TGF-β1 and activin A did not substantially increase Smad8/9 expression. These results suggests that Smad8/9 is a unipue R-Smad gene regulated at the mRNA level through BMPs. Chapter 2 To investigate the character of Smad8/9 up-regulated by BMP4, we analyzed nucleotide sequences. 1) Determination of Smad8 or Smad9 The nucleotide sequence of mouse Smad9 indicates that six nucleotides are inserted at nt +961 of mouse Smad8. According to analysis of nucleotide sequences, C2C12 cells express Smad8, whereas the other examined cells express Smad9. Moreover, the nucleotide sequencing in 3T3-L1 cells reproducibly indicated the expression of both Smad8 and Smad9. 2) Detection of Smad8/9 splicing variants There are some reports about splicing variants of Smad8/9 in human. We detected Smad8/9 variants 1 and 2 in mouse cells. BMP4 increased the gene transcript level of all 3 Smad8/9, that is, wild-type, variants 1 and variant 2, but the stimulated BMP pathway substantially increases activity of wild-type Smad8/9. Chapter 3 To examine the molecular mechanism underlying the regulation of Smad8/9 expression, the effects of cycloheximide, an inhibitor of protein synthesis, on BMP-induced Smad8/9 expression were examined. Smad8/9 expression by BMP4 was up-regulated, regardless of treatment with cycloheximide, suggesting that Smad8/9 expression by BMP is transcriptionally regulated. We next examined the BMP-induced transcription of Smad8/9 by luciferase-based reporter assays using the Smad8/9 promoter. BMP4 increased the expression of luciferase, and pretreatment with LDN-193189, an inhibitor of BMP type I receptors, suppressed the responsiveness to BMP4 in C2C12 and 3T3-L1 cells. These result suggested that BMP-induced Smad8/9 expression is transcriptionally regulated through the activation of BMP type I receptors. Chapter 4 Next we explored the potential region within the Smad8/9 promoter responsible for transcriptional activation in response to BMP4 treatment using deleted mutants of the Smad8/9 reporter. The deletion of 330bp within 1,000bp upstream of the Smad8/9 gene decreased responsiveness to BMP4 in C2C12 and 3T3-L1 cells. BMP4 did not induce transcriptional activation, when Smad8/9(-43)-luc was used in both cells, indicating that BMP-responsive elements(BREs) are located at the distal region of nt -43 of the Smad8/9 promoter. Examination of the nucleotide sequence indicated five potential BREs within nt -121 of the Smad8/9 promoter. According to reporter plasmids with individual or combinational mutation of the BREs, all five BREs are necessary for BMP-induced Smad8/9 transcription, although BRE-3 is the most critical region. We further explored whether Smad1/5/8 binds to the region including BREs of Smad8 gene in C2C12 cells by ChIP assay, indicating that phosphorylated Smad1/5/8/9 binds to the BREs of Smad8 gene, and that the binding is dependent on BMP signaling in C2C12 cells. We demonstrate that Smad8/9 is an exceptional R-Smad positively regulated by BMPs at the mRNA level, and that gene induction occurs in multiple cell types in Chapter 1. In addition, we showed that expression of Smad8 and Smad9 is cell-type dependent, there is some splicing variants of Smad8/9 in mouse cells in Chapter 2. In Chapter 3, Smad8/9 gene expression is transcriptionally regulated by BMP and this gene expression regulated via the BMP pathway were revealed. Finally, we demonstrated that several BREs within nt -121 of the Smad8/9 promoter are involved in the transcriptional activation of Smad8/9 in Chapter 4. The present study reveals that Smad8/9 is a unique R-Smad regulated through the BMP pathway at the mRNA level. We has not been shown in biological process yet, however, further studies to explore the biological role of Smad8/9 clarify the significance of Smad8/9 gene induction. |
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学位名 | ||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||
学位授与機関識別子 | 32701 | |||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2016-09-30 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第146号 | |||||
Rights | ||||||
値 | 本論文の一部は以下のとおり公表されている。(Part of this dissertation has been published as follows.) Katakawa, Y., Funaba, M., & Murakami, M. (2016). Smad8/9 is regulated through the BMP pathway. Journal of Cellular Biochemistry, 117(8), 1788-1796. doi:http://dx.doi.org/10.1002/jcb.25478 |
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著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | VoR | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 |