WEKO3
アイテム
地震の直前予測へ向けた動物の前兆的行動に関する研究
https://az.repo.nii.ac.jp/records/4096
https://az.repo.nii.ac.jp/records/409634f0b229-9c23-40fc-bc88-c8c060ca2ae6
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
---|---|---|
diss_da_kou0061 (2.9 MB)
|
|
|
diss_da_kou0061_jab&rev.pdf (136.6 kB)
|
|
Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
公開日 | 2014-12-17 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 地震の直前予測へ向けた動物の前兆的行動に関する研究 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | The research on unusual animal behaviors prior to earthquakes intended for the realization of the impending earthquake prediction | |||||
言語 | en | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_db06 | |||||
資源タイプ | doctoral thesis | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | open access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||
著者 |
山内, 寛之
× 山内, 寛之× Yamauchi, Hiroyuki |
|||||
抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 日本を含み、これまでに多くの国が地震による多大な被害を受けてきた。また、近い将来、東南海地震・南海地震の発生が危惧されており、マグニチュード(M)8から9の巨大地震が緊迫していると考えられている(地震調査研究推進本部, 2013)。地震がいつ、どこで、またどのような規模で発生するかを予測し、その情報を適切に発信することができれば、多くの被害を低減できる。そのため、地震の数ヶ月前から直前にかけて現れる前兆現象の利用を含めた「短期地震予知」に関する研究が進められているが、現時点におけるこれらの実現は困難であると認識されている。 これまでに、地震の発生前には様々な物理的・化学的現象の異常や変化に加え、多くの動物種における行動変化も報告されてきた。このような動物の地震前兆的行動は、地震発生前に生じる何らかの物理的・化学的現象の異常や変化に対する、いわゆる「ストレス反応」の結果であると考えられている。動物が何に反応しているのかが具体的に明らかになれば、機械的にその現象を観測できるが、今のところ実現していない。前兆的行動は地震発生の1週間前から現れ始めるケースが多い(Buskirk et al., 1981)ことから、地震前兆に現れる動物の変化を客観的指標により捉えることができれば、地震予知に対する一つのパラメーターとなる可能性がある。本研究は、地震の前に現れる動物の変化が地震予知に利用可能であるかを検証するため、これらの変化を様々な手法を用いて調査した。 第一章 「東北地方太平洋沖地震」に関連した地震前兆的行動の横断調査 一般家庭で多く飼育されている犬や猫に焦点を当て、2011年3月11日に発生したモーメントマグニチュード(Mw)9.0の「東北地方太平洋沖地震」の前に地震前兆的行動が現れていたかどうか、またどのような行動が多かったのかをwebアンケートによって調査した。その結果、犬において18.7%(236/1259)、猫では16.4%(115/703)が地震の前に行動変化していたことが明らかとなり、行動変化を示した動物の半数以上は地震の24時間前までに変化を示していた。また1日以上前に行動変化を示した動物は、行動変化を示した全体のうち、犬で23.3%、猫で25.0%であった。また変化した行動に関して、「落ち着きをなくす」行動がどちらの動物種でも最も多く報告された(犬; 22.5%, 猫; 23.7%)。地震前兆的行動の信頼性を検証し、地震予知に応用させるためには、長期間において定量化できる行動を観測する必要がある。本調査で得られた結果は、このような縦断的観測を行うための足掛かりになると考えられた。 第二章:動物の行動頻度と地震との関連性に関する縦断調査 第一章における調査で、地震前兆的行動として最も多く報告された「落ち着きをなくす」行動に着目し、縦断的に観測して複数の地震との関連性を検証した。また、第一章で対象とした動物種は犬と猫のみであったが、その他にも多くの動物種における前兆的行動が報告されており、本章では、猫、馬、および亀を用いて毎日の「行動頻度」を赤外線センサーによって1年間観測した。その結果、猫、馬、および亀において、一定範囲内で発生したM6を超える地震の1週間前までに行動頻度が顕著に増加することが複数回あり、特に猫では4回中3回、顕著な増加が確認された。時系列解析の結果、Maekawaら(2006)が考案した日々の地震活動量の指標となる実効マグニチュード(Meff; Effective Magnitude)が5.5以上の日の1週間前以内に、猫と亀における行動頻度が有意に増加していた。本実験での観測期間や供試数は限られていたが、これらの動物は地震の数日前に行動変化を示すことが示された。 第三章:産業動物における生産性と地震との関連性に関する縦断的調査 第一節:地震前兆としての搾乳牛における乳量変化に関する調査 第二章において、地震の数日前に行動変化が現れることが確認されたため、第三章 第一節では、長期間における多くの個体を用いた検証が可能である、搾乳牛における日々の乳量に焦点を当てた。搾乳牛における乳量はストレス刺激に暴露されることによって減少することから、地震前兆に現れる刺激に反応する場合、減少している可能性がある。本節では、地震に先立って搾乳牛における乳量が減少するかどうかを検証するため、3箇所の異なる地域に位置する牧場で測定された個体別乳量と複数の地震との関連性を、約2年間のデータを用いて調査した。搾乳牛の乳量は分娩後経過日数や環境温度、相対湿度により変動するため、これらの要因による影響を除去した後に地震との関連性を検証した。まず、東北地方太平洋沖地震に先行した乳量の変動があったかを検証した結果、地震の3日前から6日前にかけて、震源地から最も近い距離(340 km)に位置する牧場で有意な乳量の減少がみられた(P < 0.01)。また、複数の地震との関連性を検証した結果、全ての施設における毎日の乳量平均値は、Meff5.0以上(M = 6.0 ± 0.1)の日の15日前までに有意な負の相関を示した。また、Mが大きくなるにつれ乳量がより減少していることも明らかとなり、毎日多くの地域で測定されている乳量は、地震予知へ応用できると考えられた。 第二節:地震前兆としての採卵鶏における産卵率に関する調査 第二節では、乳量と同様、毎日記録されており、ストレス刺激によって低下することが知られている採卵鶏の産卵率に焦点を当てた。4箇所の異なる地域に位置する養鶏場で記録された3年間の鶏群別産卵率データを用いて、複数の地震との関連性を検証した。産卵率は日齢や環境温度、相対湿度によって変化するため、これらの要因による影響を除去してから地震との関連性を検証した。まず、東北地方太平洋沖地震に先行した産卵率の変動の有無を検証した結果、震源地から390km離れた施設において有意な低下が地震発生の7日前と9日前にみられていたことが明らかとなった。複数の地震との関連性を検証した結果では、Meff5.0以上(M = 6.2±0.1)の日の27日前までにおける全施設の産卵率平均値は有意に減少していた。また、震源地からの距離が近いほど産卵率は低下し、約M5以上の地震では、Mが大きいほど産卵率が低下することも明らかとなった。 本研究により、複数の動物種において地震の前に行動が変化することが明らかとなった。地震は発生する場所や日時が不明なため、観測する前兆現象は長期間にわたり多くの場所で観測できなければならない。搾乳牛と採卵鶏における生産データは多くの地域でほとんど毎日、測定と記録がされていることから、これらの情報を収集できれば地震予知に利用できる。また、第一章では、地震の前に犬と猫が「落ち着きをなくす」ことが多く、この行動の多くは24時間以内に現れており、さらに第二章では猫の行動頻度は地震の数日前にも変化することが明らかとなった。このことから、これらの伴侶動物における行動を自動的に観測できる手法の考案が望まれた。 そこで本研究では、動物の行動を用いた地震予測に必要なモニタリングシステムの原型をいくつか考案した。まず、産業動物における生産データを毎日一元化できるよう、クラウドコンピューティングを利用した生産データの収集システムを考案した。また伴侶動物の行動頻度に関して、より簡便にデータの自動収集ができる活動量計に着目し、現在、一般家庭の猫への応用を試みている。 地震前兆現象には動物の他に電磁気学的異常や、ラドン濃度の異常などが知られている。その中には現在、既に地震予知に向けた観測を継続しているものもある。本研究で対象とした前兆的行動は地震との関連性を統計的にある程度明らかにできたが、地震に関連しない変動もみられ、動物の行動だけに頼る予測は誤報を生み出すかもしれない。したがって、地震予知は、複数の現象を統合して行うことでより精度の高めることができると考えられる。 これまでに得られた全ての結果と先行研究の結果を踏まえ、考案した地震予測の方法は以下のようである。 1乳量や産卵率、その他の物理的・化学的現象を観測してその情報を統合し、まずある程度の地震発生危険度を予測する。 2これらの変化が現れた時、伴侶動物の行動変化にもより注意を払うことによって、より詳細な地震発生確率や地震発生日時を予測する。 このようなシステムが、動物の行動を中心に用いた最も可能な地震の直前予測の方法であると考えられる。また、多くの観測点における異常の有無から、「どこで」発生するか、その異常の大きさから「どの程度の」規模の地震かも予測できると考えられる。今後これを実現させるためには、様々な機関との学際的交流が必要となる。また、より多くの地域における情報を収集して、異常(前兆)の有無を解析し、地震の発生危険度に関する情報発信を持続的に行えるシステムを構築するには、専門機関の設立や、社会からの支援が重要な課題になると考えられる。 |
|||||
Abstract | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | Many countries, including Japan, have suffered from extensive damage due to earthquakes (EQs). In Japan, there is the possibility that more large EQs, such as the Tonankai and Nankai EQs, may occur in the near future. The Headquarters for Earthquake Research Promotion assumes that these EQs would occur with a magnitude (M) of 8 to 9. If the date, location and the M of such EQs could be predicted, then it would reduce the human loss and material damages. There are reports of anomalies related to various physical and/or chemical phenomena occurring from a few months to the last minutes before EQs. Many researchers have studied the use of such unusual phenomena in making short-term EQ predictions. However, the application of these predictions is regarded as being extremely difficult at the present time. Precursors of EQs include not only changes or abnormalities in physical and chemical phenomena but also changes in various animal behaviors. These unusual animal behaviors prior to EQs are considered the results of stress or emotional responses to some physical or chemical variation. If we could identify what phenomena trigger the unusual animal behaviors prior to EQs, then we could measure and observe these phenomena by machines to predict EQs. However, clear mechanisms behind the unusual animal behaviors have remained unidentified. The object of this study was to verify whether animal behavioral changes prior to EQs are useful for predicting EQs. To achieve our objective, we surveyed and observed these behavioral changes using various methods. Chapter 1. The cross investigation into unusual animal behaviors preceding the 2011 earthquake off the Pacific Coast of Tohoku, Japan On 11 March 2011, a megathrust EQ with moment magnitude (Mw) of 9.0 occurred in the northwestern Pacific Ocean at a shallow depth of 24 km, which is formally named “The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake” (Tohoku EQ). Using a web questionnaire, we surveyed whether any unusual animal behaviors were noted prior to this large EQ, and, if so, what kinds of behaviors. The survey was limited to the owners of domestic dogs and cats. In the results, 236 of 1,259 dog owners (18.7%) and 115 of 703 cat owners (16.4%) observed behavioral changes. Most of the unusual animal behaviors occurred within one day of the EQ. In the dogs and cats, 23.3% and 25.0%, respectively, of the total number of behavioral changes appeared one or more days before the EQ. A “restless behavior” was the most common change noted in both animal species (22.5% in the dogs and 23.7% in the cats), suggesting that it is important to quantify this behavior. Chapter 2. The longitudinal survey on the relationship between activities in animals and EQs Based on the results of Chapter 1, we verified the relationship between the “restless behavior” and various EQs by longitudinal observation. We measured the daily activities of two cats, one horse and one turtle as an index of restless behavior using infrared sensors for one year. In the results, the daily activities of each animal increased significantly in the week before some EQs with Ms greater than 6.0. Specifically, the activity level of one cat increased significantly within the week prior to three out of four EQs. The results of time series’ analyses indicated that the activity levels in the cats and the turtle increased significantly in the week prior to seismically active dates with effective magnitudes (Meffs) greater than 5.5, as theorized by Maekawa et al. (2006). Chapter 3. The longitudinal survey on the relationship between the productivity of farm animals and EQs Section 1. The changes in dairy cows’ milk yields as a precursor of EQs We focused on dairy cows’ milk yields. If dairy cows responded to stimuli emerging before EQs, then the milk yields might change, because the milk yields decrease when dairy cows are stressed by various stimuli. To clarify whether the milk yields decrease prior to EQs, we verified the relationship between various EQs and the individual daily milk yields measured at three institutes of animal industry located in different regions. The observation period was approximately two years. Because the milk yields of cows vary depending on the number of days after calving and environmental conditions, such as temperature and humidity, we removed these factors affecting the milk yields before verification of the relevance to EQs. In the results, a milking facility closest to the epicenter (340 km) showed significantly lower milk yields within three to six days before the Tohoku EQ (P ≤ 0.001). The relationship between the milk yields and various EQs showed that the daily mean values of the milk yields in all of the institutes decreased significantly within 15 days prior to seismically active dates with Meffs greater than 5.0 (M = 6.0 ± 0.1). In addition, the decrease in the milk yields correlated with increasing Ms. We concluded that the dairy cow milk yields, which were measured every day in wide regions, could contribute to the ability to predict EQs. Section 2. The changes in laying hens egg production as a precursor of EQs In addition to the milk yields of dairy cows, the egg production of laying hens are also recorded every day in poultry farms and decrease in response to stress stimuli. If the daily egg production changes prior to EQs, then they might also contribute to the ability to predict EQs. In this section, using the flocks’ egg production rate data for three years from four poultry farms located in different regions, we verified the egg production rates’ relevance to many EQs. Prior to performing the analysis, we removed known factors that affect egg production, including the hens’ age and environmental factors, such as temperature and humidity, to verify the relevance to EQs. The results of the investigation as to whether the egg production rates changed prior to the Tohoku EQ revealed that the rate on the farm closest to the epicenter (390 km) decreased significantly seven and nine days before the EQ. The results with respect to many EQs indicated that the daily mean egg production rate in all of the farms decreased significantly within 27 days prior to seismically active dates with Meffs greater than 5.0 (M = 6.2 ± 0.1). Furthermore, the decrease in the egg production rates positively correlated with the distances from the epicenters. Based on these results, we devised some prototype monitoring systems to predict EQs using animal behaviors. First, to allow for the unified collection of the production data in farm animals, we devised a collection system using cloud computing. Second, we focused on an activity meter that could automatically upload data on the activities of companion animals to the server. We are currently testing the applications for animals in households. Precursors of EQs include various phenomena other than animal behaviors, such as electromagnetic anomalies and changes in radon concentrations. Some of these phenomena are being continuously monitored for EQ predictions. This study indicated that the unusual animal behaviors had a certain degree of statistical relevance to EQs; however, predictions based only on animals might result in many false alarms because there were noted behavioral changes that were irrelevant to the EQs. Therefore, the accuracy of EQ predictions might be increased by the use of varied information. We devised the following methods for EQ predictions based on the results of this study and earlier research: I. Forecast impending EQs with a certain degree of probability using the milk yields, the egg production rates, and the physical and chemical phenomena. II. Predict detailed probabilities and dates of EQs by paying more attention to precursors, such as the behavioral changes in the companion animals, when anomalies have emerged in part I. We concluded that this system is the best possible method for predicting impending EQs utilizing the animal behaviors. Furthermore, it could forecast the EQs location based on the presence or absence of the behavioral anomalies at widely dispersed observation points, and the M of the EQ from the degree of the behavioral anomaly at each observation point. To realize this system in the future, interdisciplinary interactions between various special agencies will be necessary. |
|||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(学術) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||
学位授与機関識別子 | 32701 | |||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2014-09-30 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第61号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | VoR | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 |