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アイテム
イヌ脂肪組織由来間質細胞ADSCsから肝細胞様細胞への分化誘導と機能解析
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3830
https://az.repo.nii.ac.jp/records/38305c2135e0-1ec4-4e99-9c0d-0403c3512391
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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diss_dv_kou0132 (7.6 MB)
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diss_dv_kou0132_jab&rev (409.7 kB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2014-01-10 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | イヌ脂肪組織由来間質細胞ADSCsから肝細胞様細胞への分化誘導と機能解析 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
藤本, あゆみ
× 藤本, あゆみ |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | イヌでは肝炎、肝線推症、胆管炎などに起因する難治性の慢性肝疾患が多く認められる。現在小動物臨床においては、これら疾患に対し内科的治療や外科的処置が行われているが、病態が慢性化し肝機能が低下した状態では治療不応性であることが多く、代替治療法の開発が急務となっている。 ヒトの医療においては、肝硬変に対する根治的治療として臓器移植が挙げられるが、移植臓器とレシピエントとの拒絶反応や、長期の免疫抑制療法が必要であること、臓器提供者不足といった問題をはらんでいる。獣医療に至っては、ドナーの確保のみならず、移植医療に必須の白血球抗原の解析すら十分に行なわれていないため、移植医療は積極的には行われていない。 近年、障害臓器の再生を目標として、幹細胞を用いた再生医療の研究が進められている。幹細胞は、自己複製能と多分化能を持ち、体性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)及び胚性幹細胞(ES細胞)が含まれる。体性幹細胞は、iPS細胞やES細胞とは異なり、腫瘍形成や拒絶反応だけでなく、倫理的問題も回避可能であり、難治性慢性肝疾患の治療に用いる細胞源として最も有効である。そのため、入手しやすい骨髄や脂肪は小動物臨床において有用な幹細胞源であると考えられる。 申請者が所属する麻布大学内科学第二研究室では、これまでにイヌの骨髄細胞をEpidermal growth factor(EGF)および高濃度のHepatocyte growth factor(HGF)存在下またはヒト胎盤抽出液(商品名ラエンネック^[○!R])存在下で培養することにより、肝細胞の性状と機能を有する細胞に分化したことを報告した。しかし、一回に採取可能な骨髄細胞の数は限られており、臨床応用可能な数を確保し難く、継続的な細胞の確保も困難であると考えられる。また、牛胎仔血清を培地に添加することにより細胞移植時にレシピエント体内へBSEなどの病原体となりうる異常異種蛋白が混入する可能性があった。さらに、ラエンネックは組成がロット毎に異なるため、分化誘導成功率が約半分と低い結果が得られている。以上の諸問題から、他の幹細胞源の利用や、無血清培地での分化誘導法の確立が重要な課題であった。 一方、脂肪組織は、血管構成細胞、脂肪細胞、細胞外基質、そして間質細胞(Adipose tissue-derived stromal cells; ADSCs)から構成されており、幹細胞はADSCs中に含まれていると考えられている。ADSCsは骨髄由来間葉系細胞とほぼ同等の多分化能を持ち、採取細胞100個中1個の頻度で幹細胞を含有し、その数は骨髄の100~1,000倍多い。さらに、ADSCsは脂肪組織採取時の侵襲性が比較的低いため分離しやすく、培養増幅や凍結保存が可能であることから、骨髄細胞よりも臨床応用に有利であると考えられる。ヒトやラットではADSCsからの肝細胞分化が証明されているものの、イヌでは未だ証明されていない。 そこで、本研究では骨髄に代わる組織幹細胞源としてイヌADSCsを用い、肝細胞の機能を有する細胞へと分化誘導することとした。 第一章では、ADSCsから肝細胞へと分化誘導する培養方法を検討した。臨床的に健康なビーグル犬4頭から、麻酔下で鼠径部皮下脂肪組織を採取し、ADSCsを分離培養した後、HGF、EGF、Oncostatin MおよびDimethyl sulfoxideを添加した無血清の肝細胞分化誘導培地で28日間培養を行った。肝細胞へ分化誘導したことを証明するために、0代目8割confluent時の培養初期のnaïve ADSCs(nADSCs)と分化誘導開始から0, 7, 14, 21および28日目の分化誘導ADSCs(dADSCs)を用いて、定量的RT-PCRによるAlbumin mRNAの発現解析と、免疫染色によるAlbumin蛋白の検出を試みた。その結果、nADSCsと分化誘導0日目のdADSCsはどちらも線維芽細胞様であったが、7~28日目では多角の形態と明瞭な円形核を有する肝細胞様細胞(HLCs)が認められた。Albumin mRNAはnADSCs時にも発現しており、分化誘導後発現が増強した。しかしnADSCsと0~28日目のdADSCsで有意差は認められなかった。Albumin蛋白はnADSCsで陰性、0日目のdADSCsで陰性または弱陽性であったが、分化誘導後徐々に発現が増強し、28日目には陽性細胞の割合が最多となった。 第二章では、得られたHLCsがどの発生段階の肝細胞と類似しているか調べるため、性状解析を行った。 まず、肝幹細胞(HSCs)または前駆細胞(HPCs)と同様の性状を示すと考えられるイヌ肝細胞癌(cHCC)株化細胞を用いて、イヌのHSCsおよびHPCsの特異的マーカーの探索を試みた。イヌ肝細胞癌(cHCC)細胞株4株(930-599A、95-0112、95-1044、CHKS-rL)と、健常犬3頭から採取した成熟肝細胞を用いて、ヒトHSCsおよびHPCsのマーカーであるDlk-1、CD29、CD34、CD44、CD90、CD133の発現をフローサイトメトリーにより解析した。その結果、CD44、Dlk-1そしてCD133が4株のcHCC細胞全てで発現していた。CD29は95-0112以外の3株で発現が認められ、CD90は930-599Aの1株でのみ高発現し、CD34は4株全てで未発現だった。コントロールの肝細胞は全抗原未発現であった。以上の結果から、CD29、CD44、CD133およびDlk-1がイヌHSCsまたはHPCsのマーカーであると推測された。 次に、イヌADSCsが間葉系細胞集団であることを確かめるため、ADSCsの細胞表面抗原発現をフローサイトメトリーにて解析した。イヌADSCs 6検体を用いて、CD11b、CD14、CD29、CD34、CD44、CD45、CD73、CD90、CD105、CD133、Dlk-1、CK18の発現解析を行ったところ、CD29、CD44、CD90、Dlk-1が高発現していたのに対し、CD11b、CD14、CD34、CD45、CD73、CD105、CD133そしてCK18が未発現であった。以上の結果から、イヌADSCsが間葉系細胞集団であることが示された。 最後に、分化誘導を行ったイヌdADSCsの性状を調べるため、フローサイトメトリー解析と定性的RT-PCR解析を行った。フローサイトメトリーによりDlk-1、CD29、CD34の発現を解析した結果、Dlk-1は分化誘導0日目には発現が認められたが、7、21および28日目にかけて未発現であった。CD29は0日目と比較し、7、21および28日目で高い陽性率で推移した。CD34は0日目から28日目まで絶えず未発現であった。さらに、定性的RT-PCR解析の結果、肝細胞マーカーのAlbuminとCK18、糖新生マーカーのPEPCK、薬物代謝酵素のCYP1A1とCYP3A12、上皮系およびHPCsマーカーのCD90、胆管上皮およびHPCsマーカーのCK7とCK19、造血幹細胞および多能性幹細胞マーカーのCD34のmRNA発現を定性的RT-PCRで解析した結果、Albumin、CK18、PEPCK、CYP1A1、CYP3A12、CD90、CK7がnADSCsから28日目のdADSCsまで絶えず発現していた。特に、nADSCsで非常に微弱だったCYP3A12発現は分化誘導後増加し、28日目で最大となった。CD34はnADSCsで発現が最も強かったが、分化誘導後減弱し28日目で未発現となった。CK19はnADSCsから28日目のまで絶えず未発現であった。以上の結果から、イヌADSCsが形質転換したことが示唆された。 第三章では、イヌHLCsの機能を調べるため、脂質代謝能と薬物代謝能を解析した。まず、脂質代謝能を調べるため、0, 7, 14, 21そして28日目のdADSCsをDil標識アセチルLDL(Dil-Ac-LDL)添加分化誘導培地でインキュベートした後、細胞中に取り込まれた赤色蛍光色素の有無を評価した。その結果、赤色蛍光色素は0日目のdADSCsでは認められなかったが、分化誘導7~28日目のdADSCsでは常に認められた。次に、薬物代謝能を調べるため、0, 7, 14, 21そして28日目のdADSCsを、Pentoxyresorufinを添加した分化誘導培地でインキュベートした後、細胞中の赤色蛍光色素の有無を評価した。その結果、赤色蛍光色素は0日目のdADSCsでは認められなかったが、分化誘導7~28日目のdADSCsでは認められた。 本研究において、イヌADSCsが、無血清の肝細胞分化誘導により、多角の形態と明瞭な円形核を有するHLCsへと変化した。さらにAlbuminのmRNA発現と蛋白発現の増強傾向が認められ、CYP3A12のmRNA発現も増加した。一方、イヌHSCsまたはHPCsマーカーと推測されるDlk-1蛋白の発現が減少した。また、分化誘導前の間葉系細胞では認められなかった一部のLDL代謝能と薬物代謝能が、分化誘導後7~28日目のdADSCsで認められた。以上の結果から、イヌADSCsが肝細胞の性状と機能を有するHLCsへと分化誘導された可能が示唆された。 より成熟した肝細胞へと分化誘導するためには、細胞外基質や培地条件を検討し、最適な分化誘導方法へと改良する必要がある。今後、in vitroでADSCsから成熟肝細胞の機能を持つHLCsへと分化誘導できれば、自家肝細胞による細胞移植治療や臓器再生によって難治性慢性肝疾患が治療可能となるだろう。 |
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学位名 | ||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2013-03-15 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第132号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |