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第1章ではサンプル採取時の個体への負担を考慮し、非侵襲的に採取が可能である犬の尿中OT測定の適否を検討することを目的とし、血中OTの尿中への排泄時間を調査した。実験は犬の血中へOTを投与し尿中への排泄時間を調査した。本実験は頻回採尿のため、トイレトレーニングを施された未去勢のラブラドールレトリーバー(n=6)を用いた。血液と尿は投与30分前より採取し、投与直前、投与直後、投与終了後15分、以後30分毎に計4時間にわたり採取した。OT測定は福井大学統合生理学教室の協力を得て、Higuchiらの研究(1984)を参考にRIA法による測定を行った。\n その結果、OT投与開始直前の平常時血中濃度は65.55±17.20pg/mlであり、血中のピークは投与終了直後であった。血漿中OTは、平常時に4.70pg/mlと非常に低い個体が存在しRIA法においても、これ以上血漿中濃度が低下すれば検出が困難になると考えられた。尿中OTのピークは血中への投与開始から1時間後であった。また、尿サンプルにおける実測値の最低濃度は49.50pg/mlと十分に測定範囲内であり、尿によるOT測定は血液採取時の種々の問題を克服し、個体の状況をより正確に表すものであると考えられた。また、同時刻の尿中コルチゾールを測定したところ、コルチゾールほとんど変化しなかったことから、外因性OTの血中投与は犬の尿中コルチゾールには影響しないことが明らかとなった。これらのことより以後、尿採取は刺激開始から1時間後とした。\n\n第2章.日常的な刺激による犬のOT分泌\n 犬の情動変化は行動観察やコルチゾールなどの測定によるストレス評価が主であり、陽性感情やリラックスの客観的評価は確立されていない。第2章では日常的な犬の陽性感情を誘起させる刺激によってOT分泌とコルチゾール分泌がどのように変化するか検討した。刺激は過去にラットや人において血中OT濃度を増加させることが明らかな摂食と運動、マッサージとした。摂食や運動、なでるといった行為は、トレーニングにおいても強化子として用いられることから、陽性感情を誘起させる重要な要素であると考えられる。なかでも、なでる行為は人が犬に与える社会的報酬として作用し、心拍数を減少させ、犬をリラックスさせる効果があることが報告されている。対照実験としてOT増加の報告がない水を与えたときの変化についても検討をおこなった。犬はトイレトレーニングを施された9頭を用いた。\n その結果、摂食、運動、マッサージは有意に犬の尿中OT濃度を増加させた(摂食:p\u003c0.05、運動:p\u003c0.05、マッサージ:p\u003c0.01)。対照的に飲水は尿中OT濃度に影響を与えなかった。これらのことから、RIA法を用いて尿中OTの測定は、非侵襲的に刺激によるOT分泌の変動をとらえられることを可能にすることが明らかとなった。一方、各刺激前後における尿中コルチゾール濃度は摂食のよってのみ有意に増加した。従って、犬の陽性感情の評価には、尿中OT濃度による評価が適切であると考えられ、非侵襲的に犬の陽性感情やリラックスを把握するバイオマーカーとしての尿中OT濃度測定の有用性が示唆された。\n\n第3章.人・犬間の相互コミュニケーションによるOT変化\n 第3章では人と犬の相互コミュニケーション時における両者の行動分析と交流前後の尿中OT濃度の変動を調査することで、異種間の親和行動やコミュニケーションにおけるOTの役割を明らかにすることを目的とした。実験は30組の犬とその飼い主を対象に行い、(1)安静(20分)、(2)飼い主と犬の交流(30分)および(3)安静(30分)で構成した。(1)の安静時に飼い主は実験室で過ごし、犬は別室で待機させた。(1)の安静時に飼い主には犬に対する愛着を測るLexington Attachment to Pets 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本研究により社会行動や陽性感情などと関係する犬のOTを非侵襲的に評価ができることが可能となり、犬の注視が人の尿中OT濃度を上昇させる要因であることが明らかとなった。犬の注視は生理学的に人に対する社会的な合図として成立していることが示唆され、犬の注視を発端としたコミュニケーションが人の親子間と同様に愛着行動として作用していると考えられることから、人と犬が似たような社会認知機構を持つ収斂進化仮説を裏付ける結果となった。また、人から提供される食物や遊びを含めた運動、身体的接触などの行為は犬に陽性感情を抱かせドーパミン作動性の脳内報酬系回路にも作用するとともに、社会認知機能や愛着形成に関わるOTが分泌されると考えられ、人と犬の社会的な結び付きが促進されると考えられる。犬と人の関わりにおいて視線や身体的な接触と言った共通のコミュニケーションを発端とし、両者のOTが分泌されると考えられることから、人・犬間の絆の形成にはOT神経系を介した生物学的絆形成メカニズムが存在する可能性が示唆された。本研究は人と犬の相互コミュニケーションにおけるOTの役割を明らかにし、人と犬のより良き関係の構築に貢献するものである。\n", "subitem_description_type": "Abstract"}]}, "item_10006_dissertation_number_12": {"attribute_name": "学位授与番号", "attribute_value_mlt": [{"subitem_dissertationnumber": "甲第56号"}]}, "item_10006_version_type_18": {"attribute_name": "著者版フラグ", "attribute_value_mlt": [{"subitem_version_resource": "http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa", "subitem_version_type": "AM"}]}, "item_creator": {"attribute_name": "著者", "attribute_type": "creator", "attribute_value_mlt": [{"creatorNames": 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人と犬のより良き関係に関する生理学的研究 : 相互コミュニケーションにおけるオキシトシンの役割
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-11-26 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 人と犬のより良き関係に関する生理学的研究 : 相互コミュニケーションにおけるオキシトシンの役割 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
三井, 正平
× 三井, 正平 |
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抄録 | ||||||
内容記述 | イヌ(Canis familiaris)はオオカミから家畜化され、長きにわたり人にとって最も身近な動物として飼育されている。現在日本では1232万頭の犬が飼育されているといわれ、核家族化が進む現代社会において、情緒的なつながりを求める人の伴侶として不可欠な存在となっている。人はその友である犬について様々な角度から研究してきた。なかでも、彼らの心理状態を把握するために行動学的、または生理学的なアプローチを試み、彼らを理解しようと努めている。 一方、近年人においてパートナーや配偶者との接触により血中オキシトシン(Oxytocin:以下OT)が増加することや、マッサージ後の陽性感情に応じて血漿中OTが増加すること、人においてOTが幸福を感じるときに増加するといったこと報告され、リラックスおよび陽性感情といった心理上のメカニズムに関係があることが示唆されている。また、犬と人のpositive interaction(発話や接触を伴った交流)によって犬の血漿中OTが増加するとの研究報告があることから、OTは人を含めた動物の心理状態を客観的に評価するのに適していると考えられる。さらに、近年のマウスやラット、サル、人の研究からOTがつがいの形成や社会的認識、信頼、愛着、親和性行動、といった社会行動やいわゆる「絆」の形成に関与していることが明らかとなり、他個体との関わりに大きく影響することが明らかとなっている。そこで本研究では、行動や気質に関係するOT分泌について調査することで、犬の陽性感情について生理学的なアプローチを試みるとともに、人を対象とした異種間コミュニケーションにおける犬のOT分泌と行動の関わりを明らかにすることを目的とし研究を行った。 第1章.血中OTの尿中への排泄ならびにコルチゾールとの関係について 第1章ではサンプル採取時の個体への負担を考慮し、非侵襲的に採取が可能である犬の尿中OT測定の適否を検討することを目的とし、血中OTの尿中への排泄時間を調査した。実験は犬の血中へOTを投与し尿中への排泄時間を調査した。本実験は頻回採尿のため、トイレトレーニングを施された未去勢のラブラドールレトリーバー(n=6)を用いた。血液と尿は投与30分前より採取し、投与直前、投与直後、投与終了後15分、以後30分毎に計4時間にわたり採取した。OT測定は福井大学統合生理学教室の協力を得て、Higuchiらの研究(1984)を参考にRIA法による測定を行った。 その結果、OT投与開始直前の平常時血中濃度は65.55±17.20pg/mlであり、血中のピークは投与終了直後であった。血漿中OTは、平常時に4.70pg/mlと非常に低い個体が存在しRIA法においても、これ以上血漿中濃度が低下すれば検出が困難になると考えられた。尿中OTのピークは血中への投与開始から1時間後であった。また、尿サンプルにおける実測値の最低濃度は49.50pg/mlと十分に測定範囲内であり、尿によるOT測定は血液採取時の種々の問題を克服し、個体の状況をより正確に表すものであると考えられた。また、同時刻の尿中コルチゾールを測定したところ、コルチゾールほとんど変化しなかったことから、外因性OTの血中投与は犬の尿中コルチゾールには影響しないことが明らかとなった。これらのことより以後、尿採取は刺激開始から1時間後とした。 第2章.日常的な刺激による犬のOT分泌 犬の情動変化は行動観察やコルチゾールなどの測定によるストレス評価が主であり、陽性感情やリラックスの客観的評価は確立されていない。第2章では日常的な犬の陽性感情を誘起させる刺激によってOT分泌とコルチゾール分泌がどのように変化するか検討した。刺激は過去にラットや人において血中OT濃度を増加させることが明らかな摂食と運動、マッサージとした。摂食や運動、なでるといった行為は、トレーニングにおいても強化子として用いられることから、陽性感情を誘起させる重要な要素であると考えられる。なかでも、なでる行為は人が犬に与える社会的報酬として作用し、心拍数を減少させ、犬をリラックスさせる効果があることが報告されている。対照実験としてOT増加の報告がない水を与えたときの変化についても検討をおこなった。犬はトイレトレーニングを施された9頭を用いた。 その結果、摂食、運動、マッサージは有意に犬の尿中OT濃度を増加させた(摂食:p<0.05、運動:p<0.05、マッサージ:p<0.01)。対照的に飲水は尿中OT濃度に影響を与えなかった。これらのことから、RIA法を用いて尿中OTの測定は、非侵襲的に刺激によるOT分泌の変動をとらえられることを可能にすることが明らかとなった。一方、各刺激前後における尿中コルチゾール濃度は摂食のよってのみ有意に増加した。従って、犬の陽性感情の評価には、尿中OT濃度による評価が適切であると考えられ、非侵襲的に犬の陽性感情やリラックスを把握するバイオマーカーとしての尿中OT濃度測定の有用性が示唆された。 第3章.人・犬間の相互コミュニケーションによるOT変化 第3章では人と犬の相互コミュニケーション時における両者の行動分析と交流前後の尿中OT濃度の変動を調査することで、異種間の親和行動やコミュニケーションにおけるOTの役割を明らかにすることを目的とした。実験は30組の犬とその飼い主を対象に行い、(1)安静(20分)、(2)飼い主と犬の交流(30分)および(3)安静(30分)で構成した。(1)の安静時に飼い主は実験室で過ごし、犬は別室で待機させた。(1)の安静時に飼い主には犬に対する愛着を測るLexington Attachment to Pets Scale(LAPS)に解答してもらった。人および犬の尿サンプルは(1)および(3)終了時に採取した。 両者の行動を元に、階層的クラスター分析を行った結果、被験者と犬の組み合わせはコミュニケーション時間が長く、頻度が多いHCグループと、コミュニケーション時間が短く、頻度の少ないLCグループに分けられることが明らかとなった。また、グループ毎の尿中OT濃度を交流で比較すると、HCグループにおいて犬、人ともに尿中OT濃度が上昇することが明らかとなり、LCグループでは犬において有意に低下し、人では変化しなかった。主成分分析と重回帰分析の結果から、犬においては「飼い主から犬への接触に関わる要因」が犬の尿中OT濃度を上昇させる重要な要素であることが明らかとなり(F(3.24)=3.78, p<0.05, 決定係数R^2=0.32)、人においては「犬から飼い主への注視に関わる要因」(p<0.01)、「LAPS」(p<0.05)、「飼い主から犬への声をかける回数」(p<0.05)が尿中OT濃度に影響を与える要素であることが明らかとなった(F(3.24)=4.00, p<0.01, 決定係数R^2=0.41)。また、犬の注視と飼い主からの接触時間および接触回数に相関が見られたことから、人の母子間と同様に、人・犬間においても犬の注視が愛着行動として作用していると考えられた。これらのことから、人のOTを分泌させる犬の注視は人の接触を増加させ、人の接触は犬の注視を増加するという相乗効果を生むと考えられ、両者のコミュニケーションがスムーズに成立すると考えられた。また、単一の刺激だけでなく、異種間コミュニケーションにおいても尿中OTを測定することでより詳細な両者の関係性が評価できると考えられる。 本研究により社会行動や陽性感情などと関係する犬のOTを非侵襲的に評価ができることが可能となり、犬の注視が人の尿中OT濃度を上昇させる要因であることが明らかとなった。犬の注視は生理学的に人に対する社会的な合図として成立していることが示唆され、犬の注視を発端としたコミュニケーションが人の親子間と同様に愛着行動として作用していると考えられることから、人と犬が似たような社会認知機構を持つ収斂進化仮説を裏付ける結果となった。また、人から提供される食物や遊びを含めた運動、身体的接触などの行為は犬に陽性感情を抱かせドーパミン作動性の脳内報酬系回路にも作用するとともに、社会認知機能や愛着形成に関わるOTが分泌されると考えられ、人と犬の社会的な結び付きが促進されると考えられる。犬と人の関わりにおいて視線や身体的な接触と言った共通のコミュニケーションを発端とし、両者のOTが分泌されると考えられることから、人・犬間の絆の形成にはOT神経系を介した生物学的絆形成メカニズムが存在する可能性が示唆された。本研究は人と犬の相互コミュニケーションにおけるOTの役割を明らかにし、人と犬のより良き関係の構築に貢献するものである。 |
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学位名 | ||||||
学位名 | 博士(学術) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2012-03-15 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第56号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |