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アイテム
マウスにおける腸管出血性大腸菌O157:H7由来ベロ毒素に対するウシ初乳抗体の中和作用に関する研究
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3809
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3809650f4a35-040e-44ca-9492-1bc38f67b40f
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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diss_de_otsu0018 (2.3 MB)
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diss_de_otsu0018_jab&rev (317.1 kB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-10-01 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | マウスにおける腸管出血性大腸菌O157:H7由来ベロ毒素に対するウシ初乳抗体の中和作用に関する研究 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | Neutralizing activity of bovine colostral antibody against verotoxin derived from enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7 in mice | |||||
言語 | en | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
栗林, 尚志
× 栗林, 尚志 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | はじめに 腸管出血性大腸菌O157:H7(E. coli O157:H7)に起因する食中毒は、1982年にアメリカ合衆国でハンバーガーによる集団食中毒として初めて報告された(Riley, L.W. et al., N. Engl. J. Med., 308, 681, 1983)。一方、わが国では1996年に大阪府堺市の小学校において世界で類を見ないほど大規模なE. coli O157:H7に起因した学校給食による集団食中毒が発生した。その年には、全国で17,877名のE. coli O157:H7感染者が発生し、8名が死亡した。E. coli O157:H7はベロ毒素(Verotoxin : VT)を産生し、これがヒトの溶血性尿毒症症候群や脳症などの重篤な合併症の原因となる。E. coli O157:H7による感染症の治療に抗生物質を用いると殺菌された死菌体からVTが多量に放出され、合併症を惹起させる恐れがあることから抗生物質による積極的な治療が敬遠されている。 そこで、腸管内でVTの中和に用いることを目的にVTを乳牛へ免疫して抗VT初乳抗体(免疫初乳抗体)を作製し、それによるVTの毒素中和作用をマウスで評価したところ、免疫初乳抗体がVTの中和に有効に作用する結果を得た。 本研究の概要は以下の通りである。 供試菌株とベロ毒素 本実験には、動物から分離されたVT1とVT2の両毒素を産生するE. coli O157:H7、ヒトから分離されたVT1あるいはVT2を産生するE. coli O157:H7の3株を用いた。VT1及びVT2の量は市販の逆受身ラテックス凝集反応用キット(デンカ生研株式会社)を用いて測定した。 ウシの免疫初乳抗体の作製とその中和抗体価 VT1とVT2の両毒素を産生するE. coli O157:H7の培養上清あるいは精製したVT2の約300μgを分娩3~4ヵ月前の乳牛へ7日間隔で12~14回免疫を行い、免疫初乳抗体を調製した。分娩1~5日後までの初乳を採取し、脱脂、脱カゼインを行って免疫初乳抗体を含有している乳清を得た。これをウシの免疫初乳抗体として供試した。免疫初乳抗体のVTに対する中和抗体価は、ベロ細胞を用いた中和試験で測定した。 VT1とVT2で免疫したウシの免疫初乳抗体の中和抗体価は、分娩1日後にVT1に対して1:512、VT2に対しては1:256と最も高く、以後経日的に低下して5日後にはそれぞれ1:8、1:4となった。また、精製したVT2で免疫したウシの免疫初乳抗体の中和抗体価は、分娩1日後に1:64であった。本実験には、分娩1日後に採取した最も中和抗体価が高い免疫初乳抗体を用いた。 VTを経口投与したマウスへの免疫初乳抗体の投与及びその効果 動物実験には、VTに感受性を有する離乳直後のICR系マウス(雄、3週齢、日本チャールス・リバー株式会社)を用いた。 最初に、VTを経口投与したマウスへin vitroでVTの中和活性を示す免疫初乳抗体を投与してその効果を検討した。投与実験の18時間前から絶食させたマウスへゾンデを用いて0.5ml/匹のVT1あるいはVT2を含有する培養上清(以下、単にVT1、VT2と略記)を経口投与した後、対照群と免疫初乳抗体の単回投与群では1時間後に同量の滅菌生理食塩水あるいは免疫初乳抗体を、免疫初乳抗体の反復投与群では1、2、3時間後にいずれも0.5ml/匹の免疫初乳抗体を経口投与し、その効果をマウスの生存率で評価した。その結果、VT1投与群の生存率は、対照群が78.6%(11/14)であったのに対して、免疫初乳抗体の単回投与群が100%(16/16)、免疫初乳抗体の反復投与群が90.0%(18/20)であった。他方、VT2投与群の生存率は、対照群が全例死亡して0%(0/17)であったのに対して、免疫初乳抗体の単回投与群が75.0%(9/12)、免疫初乳抗体の反復投与群が100%(14/14)であった。 マウスへVT1あるいはVT2を投与した後に、これらに対する免疫初乳抗体を投与することによってマウスの生存率が、対照群に比べて、高い結果が得られた。とくに、毒素活性の強いVT2を投与したマウスでその効果が顕著に認められた。これらの結果は、ウシの免疫初乳抗体が蛋白質分解酵素が分泌されるマウスの腸管内においてもVT1あるいはVT2に対して有効に毒素中和作用あるいは毒素吸収阻止作用を示したためと考えられた。 E. coli O157:H7を経口接種したマウスへのfosfomycin投与の影響と免疫初乳抗体投与の効果 E. coli O157:H7を経口接種したマウスにおける抗生物質投与の影響及び免疫初乳抗体投与の効果を検討するため、投与実験の18時間前から絶食させたマウスへ1×10^8CFU/mlに調製したVT2産生性E. coli O157:H7を0.3ml/匹経口接種し、無処置で14日間生死を観察した。その結果、生存率は88.2%(15/17)であった。さらに、投与実験の18時間前から絶食させたマウスへ1×10^8CFU/mlのVT1あるいはVT2産生性E. coli O157:H7をそれぞれ0.3ml/匹経口接種し、その2時間後に、fosfomycin(和光純薬株式会社)500μg/g体重及び免疫初乳抗体を0.3ml/匹ずつ1日3回5日間経口投与してマウスの生存率を確認した。対照群へは免疫初乳抗体の代わりに同量のスキムミルクを投与した。その結果、マウスの生存率は、VT1産生性E. coli O157:H7接種群では、対照群が63.6%(14/22)、VT1に対する免疫初乳抗体投与群が80.0%(16/20)で、VT2産生性E. coli O157:H7接種群では、対照群が20.0%(2/10)、VT2に対する免疫初乳抗体投与群が83.3%(10/12)であった。 VT1あるいはVT2産生性のE. coli O157:H7の生菌を経口接種したマウスへfosfomycinを経口投与することによってマウスの死亡率が高くなった原因は、fosfomycin投与によってE. coli O157:H7が殺菌され、死菌体からVT1あるいはVT2の放出量が増加したことを示唆している。また、この場合にも免疫初乳抗体の効果が顕著に認められており、抗生物質による治療に免疫初乳抗体を併用することが有用であると考えられた。 以上のように、ウシの免疫初乳抗体がVTあるいはE. coli O157:H7を投与したマウスの腸管内においてVTを中和あるいは吸収阻止することによってマウスの生存率を高めることを明らかにした。また、in vivoで抗生物質を経口投与することによってE. coli O157:H7の死菌体からVTの放出量が増加する可能性を示唆する結果を得た。蛋白質分解酵素が分泌されているマウスの腸管内でVTを中和あるいは吸収阻止する機能を有するウシの免疫初乳抗体は、牛乳にアレルギーを有するヒトを除いたE. coli O157:H7感染症患者の受動免疫に応用できる可能性が高いと考えられた。 |
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学位名 | ||||||
学位名 | 博士(学術) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2008-10-08 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 乙第18号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |