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食品工業における品質管理に関する研究 : 洋生菓子の衛生的品質管理について
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3800
https://az.repo.nii.ac.jp/records/38007e1b3eb3-2259-499b-8401-8e38b02bc608
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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diss_dv_otsu0028 (9.2 MB)
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diss_dv_otsu0028_jab&rev (693.1 kB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-10-01 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 食品工業における品質管理に関する研究 : 洋生菓子の衛生的品質管理について | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
髙橋, 利弘
× 髙橋, 利弘 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 洋生菓子の衛生的品質管理へのSQC(Statistical Quality Control、統計的品質管理)導入の可能性につき、主として管理図方式の利用性・効用性などを主題に、前後9年間、約30,000点の試料について、品質水準をその含有細菌定量値に置き、一部病原細菌をも考慮しつつ、定量的な処理をおこない、基本的工程解析に資するとともに、工程管理にPERT(Program Evaluation and Review Technique)手法を応用するなど、品質管理方式の確立をめざし、広汎な実験的・工業的研究をおこなってきたのであるが、その成果をおよそつぎのごとく総括する。 I 管理図方式の有効性 観察年の前半4年間における3種洋生菓子―シュークリーム(S)・エクレア(E)・クリームパフ(C)―の含有生菌数のデータを、品種別あるいは、年次別・季節別・工場別に整理し、SQCの根底となる3シグマ法による上下内外の管理限界を設定し、通年・季節別の2種基本管理図(第1図・第1表、第2図および、第3図・第3表、第4図・第4表)を品種ごとに作成し、この管理図上に月ごと・季節ごと・年次ごとあるいは工場ごとに、それぞれの成績をプロットすることによって、各種洋生菓子の品質の動きを多角的に比較することができた。すなわち、 (a) 通年基本管理図について品種別にみると、S・Eの3.0(Log.)に対して、Cは3.7、レンジの前2者の1.0対に対して、Cは1.5と、Cの生菌数含量の高いことがわかる(第1図・第1表)年次的にも、各品種とも動きをみせるが、Cのそれとはとくにはなはだしく(第1図・第1表)、季節間にもCのみは、不安定な成績を示し、工場間にもまた、Cの成績がはげしく動いているのを指摘することができる(第1図・第1表)。 (b) 季節別基本管理図についてみると、S・Eは各季節とも、中心線3.0(Log.)、レンジ1.0と安定し季節差が著しくないのに対して、Cでは、夏の中心線4.2、レンジ1.7と、他の2品種に比して夏の衛生的品位が低いのをみとめた。このように、Cでは、その生菌数に夏高冬低という食品の衛生細菌学的一般通念にみあう成績をみたが、S・Eには、それをみとめることができなかった。工場間の季節による差は、S・Eでは比較的めだたないが、Cでははなはだ著しいものがあり(第3図・第3表、第4図・第4表)、総括的に第3・4図からもわかるように、品種・年・季節を通じて成績のよい工場と悪い工場とを指摘することができる。 (c) 観測第3~4年には、S・Eとも成績が向上したが、この間の事情は、実験的ないし模索的とはいえ、品質管理態勢に入ろうとする一部担当者の動きが心理的に反映しての結果と思われるが、Cのみはひとり品質低下の傾向をとった(第1図・第1表)。ついで第5~第6年の資料を基礎に、成績向上の著しいSについて管理図の修正(中心線2.2、レンジ1.0)をおこなった。ついで、第6年には、Eの製造工程中『チョコレート再加熱』の処理を加えかつ、3品種ともに『器具・容器の殺菌』の処理を追加実施したところ、第1図および第2表にみられるよう、S・Eとも第6・7年の成績は向上の一途をたどり、S・Eにおくれて向上のきざしをみせはじめたCも、この間には工場差も僅少となり良い成績を示したが、第7年のおわりごろから社内事情もあって、品質管理の態勢ややくずれ、第8年の成績は品種とも低下の傾向ないし兆を示した。しかし、修正管理図を採用したSのその後の動きは、第2図のとおり、大体満足すべきものがあり、Eについても季節別基本管理図のうちすくなくとも、冬・春の管理限界を修正してもよい時機に立ちいたったように思える。ここに注目しておきたいことは、基本管理図作製の時点ではC以外S・Eにはみとめられなかった季節波が、S・EともにC同様顕著となり、いわゆる夏高冬低の様相を呈しはじめたことである。 (d) 以上、品質管理図を利用することによって、製品品質の品種別現況・年次的動態・季節差・工場差などの各観的把握を可能ならしめ、それらを基礎として、管理限界の再設定・管理図の修正あるいは、次節での品質向上対策提案の原点として、品質管理図方式の効用性を強調する次第である。 II 品質向上対策 品質向上対策の発想の基本として、第5・6図の洋生菓子製造工程要因図が重要である。実験的に、Eついては『原料チョコレートの殺菌』を、Cについては『原料クリームの受入検査』を、S・E・Cについては『充てん作業』における作業者とバッチの意義をそれぞれたしかめ、工業的に、『原料チョコレートの殺菌』および『器具・容器の殺菌』を実施し、他方、III節で詳述するがPERT手法を応用するなど、向上対策の樹立につとめた。 (a) 原料チョコレートの殺菌 再び第1図にみるように、Eは観測第6年より実施した『チョコレートの再加熱』による効果が必ずしも期待できないと判断されたので、『チョコレート自体の殺菌』処理を追加することとし、第9年(特にF7工場)の成績が得られた。これに先んじて、実験的におこなった『原料チョコレートの殺菌』では、生菌数4.5を1.5まで1/1000に減少させ得ることがわかった(第7図)。ちなみに、この殺菌処理を工業的に実施し得なかったF6工場の第9年の成績はよい対照である(第1・8図)。 (b) 原料クリームについて S・E・C3品種のうち、つねに最低の品質を示したCに関しては、『原料クリーム』の品質をはなれては論じ得ないことをすでに観察してきたのであるが、第9~11図にみるように、NA社の原料クリーム品質はSY社のそれにおとるが、ここにとくに注目すべきは、季節別成績でみると、両社ともに、夏季の中心線が他の季節より低く、冬季の管理巾が夏季に比して広い。とくに第11図上段の成績の示すように、上段右連続2個のSY社原料クリーム管理図は、同社の連続4日間の成績を解析用に2日づつ2分けて作図したものであるが、この著しく有意な格差には驚くべきものがある。まず、第1日目と第4日目の品質のすぐれた均質性と、第2日目と第3日目の品質のみだれに注意する。第2日目の第1打点に代表される品質のみだれは、第3日目にはかなり調節されているがまだその名残りをとどめ、第4日目にはなお一層の調節を実施した強い人工的操作のあとをはっきりと読みとることができる。前段に指摘した夏低冬高の生菌数におけるムジュンと、この人工調節のあとは、品質管理図によって摘発されている。洋生菓子製造工程において、その品質向上対策の1つとして、受入検査がいかに重要であるかを具体的に教示するものである。 (c) 充てん作業と作業者の問題 製品品質の良不良の原因は、バッチにあるのか作業者にあるのか、3品種についての充てん作業に関する実験は、これにきわめて明快な解答をあたえている(第12~14図、第5・6表)。毎常低品質のCでは、この作業に関する限り個人差は夏以外ほとんどみられないのに、バッチ差と思われるものはE・Sに比して頻度が高い。このことは前項の原料クリームの問題と関連して、Cの品質改善向上対策の最重要目標である。 (d) 作業環境その他要因 観測第4年までには、C以外のS・Eでは、品質に季節波の著明でなかったものが、後半、それの出現をみとめるにいたったことをのべたが、これはS・Eにおける夏季以外の成績がとくに向上したものと理解すべきものであって、その原因としては、『原料チョコレートの殺菌』・『器具・容器の殺菌』・『その他』の品質向上策がようやく効果を発揮しているものである。 工場内温湿度の動態と製品品質の動態とのずれは(第15図)、品質管理態勢の環境条件の動きに速やかに即応できない点にあろうと思われるが、生産曲線の谷部にあたる夏季の品質が、いずれの製品でも低位にあるという事実は、この工場内環境問題とも関連して、夏季の温湿度に代表される環境条件は、悪化させる方向にはなはだ強く作用するものとして、品質管理のすすめ方に、全組織的布陣の重要であることを深く思わせるものである。 III QCを中心とする隣接管理手法によるアプローチ 数ある隣接手法のうちとくに、PERT手法の導入をこころみ(第16~23図)、その成果として、各品種別作業工程におけるクリティカル・パス(CP)を検証することができ、作業に余裕時間のある工程径路としからざる径路とを知ることができたわけであるが(第7~8表)、ここではなはだ興味あることは、品質の比較的良いS・EのCPは『原材料の処理』径路にまた、品質の悪いCのそれは『器具・容器処理』径路にそれぞれ、出現していることであって、Cのように製品の特性上、原料クリームの殺菌を実施し得ない品種では、その工程径路にたとえ余裕時間があっても、これを有効に使うことはできず、原料クリームの受入検査に品質管理万全を期する以外には、品質向上方途のみあたらぬこととなる。S・Eにあっては、『器具・容器の処理』径路になお余裕時間を残しているので、今後の工程管理の重点をここに置くべきであろう。 IV 洋生菓子の衛生水準設定への提言 前後連続4年約10,000例におよぶ観測の結果、S・E・C3品種洋生菓子の生菌数は、第9表に示す成績を得たのであるが、これによりこれら洋生菓子の衛生水準(生菌数、SPC)として、シュークリーム1×10^3、エクレア5×10^3、クリームパフ3×10^4は、現下の洋生菓子製造技術の水準においては妥当であると信ずるものである。ただし、これには表示のとおり上下内外の管理限界は当然考慮されるべきであって、生産者リスクとしては上部限界を、また、消費者リスクとしては下部限界を、それぞれ加味して社内的あるいは行政的衛生水準が設定されるべきであることを提言する。さらに、Eの成績からみても、この衛生水準は季節的変動を考慮して、季節別水準をもあわせて設定することが望ましい事情にあるが、それには第9表はよき参考となろう。 つぎに、大腸菌群関係については、その出現率およそ20%(正確には17.9%)、大腸菌は2%と判定され、かならずしも衛生水準が高いとはいい得ないが、大腸菌群値による衛生水準規格はむしろ、大腸菌定量値をもってする水準に代置さるべきものであると考えられるので、今後このような食品衛生上の細菌学的水準を定めるにあたって、本研究の成果は参考になるものと信ずる。 |
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学位名 | ||||||
学位名 | 獣医学博士 | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1970-06-22 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 乙第28号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |