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アイテム
脳機能改善薬ネフィラセタムの精巣毒性メカニズムの解明
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3251
https://az.repo.nii.ac.jp/records/32514906dcd9-d479-449f-b1b6-ae133a02d6dd
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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diss_dv_otsu0418 (31.6 MB)
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diss_dv_otsu0418_jab&rev (415.5 kB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-02-13 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 脳機能改善薬ネフィラセタムの精巣毒性メカニズムの解明 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | Investigation of testicular toxicity mechanism of nefiracetam, a neurotransmission enhancer | |||||
言語 | en | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
下村, 和裕
× 下村, 和裕 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | ネフィラセタムは、脳機能改善薬として新規に合成されたピロリドン系誘導体である。本薬の薬理作用は、神経細胞のCa^2+チャンネル(N/L型)の賦活化により、神経伝達物質の放出を増加させ、GABAおよびコリン作動性神経系を介し、脳におけるタンパク合成を増強することにある。ネフィラセタムは、各種モデル動物の記憶消失を減弱させ、老齢ラットの認識能力を促進させることが証明されている。 一方、毒性試験ではネフィラセタムに遺伝毒性、がん原性および催奇形性は認められなかったが、13週間反復投与毒性試験では、イヌおよびサルでは60mg/kg/day以上の投与で精子低形成がみられた(ラットでは480mg/kg/day投与しても変化は認められなかった)。このようにほとんどの毒性試験において問題は見つからなかったものの、精子形成への抑制作用が確認されたことから、この作用についての詳細な検討は、本薬の安全性を確固たるものにする上で、必須の事項であると思われる。 本研究は、ネフィラセタムによる精巣毒性メカニズムの解明を試みるとともに、異なる動物種(ラット、ビーグルイヌ、カニクイザル)を用いてその作用を検討することを目的とした。 第1章ではラットを用いて、精巣の組織およびホルモンについてネフィラセタム投与後の初期変化を経時的に検討した。ラット(SD)にネフィラセタム1,500mg/kg/dayを経口投与し、投与1および3日、ならびに1、2、3および4週に剖検を行い、精巣の組織標本を作製した。そして、精巣中の精細管を精子形成ステージ(I~XIV)に分類して病理組織学的検査を行なった。また、別に1週間経口投与し、精巣、精巣上体および前立腺の重量を測定するとともに、精巣中の精子数を計測した。ホルモン測定には単回経口投与0.5、1、2、4、6、8、12および16時間後に血液と精巣を採取し、血清中のテストステロン、LH、FSH、Inhibinならびに精巣中のテストステロン濃度を測定した。 その結果、投与後1週間でステージIXからXIIの精細管にステップ19の精子細胞の分化の停滞が認められた。また、ステージVIIの精細管では、パキテン期精母細胞およびステップ7の円形精子細胞の核の濃染をともなう変性が観察された。また、体重、精巣、精巣上体、前立腺の重量および精巣中精子頭部数は、いずれも減少した。血清および精巣中テストステロンは単回投与後、2、4および6時間では有意に(p≦0.05)低下した。また、血清中LHに有意な(p=0.05)低下はみられなかったが、投与後12時間目では有意な(p≦0.05)上昇がみられた。血清中FSHおよびInhibinには、変化は認められなかった。 以上、ネフィラセタム投与により、ラットの血清および精巣中のテストステロン濃度の低下がみられ、精巣組織もテストステロン低下時に特徴的な精子細胞の分化の停滞およびパキテン期精母細胞の変性がみられたことから、ネフィラセタムの精巣毒性メカニズムはテストステロンの低下によるものと考えられた。しかし、LHに持続的な変化が認められないことから、中枢を介したテストステロンの低下ではないことが示唆された。 第2章では、ビーグル犬を用いて精子性状およびホルモンへの影響を検討した。すなわち、ネフィラセタム180または300mg/kg/dayをビーグル犬に4週間経口投与し、毎週、血液および精液を採取し、最終投与翌日に剖検、精巣の重量測定および病理組織検査を行った。ホルモンは、血清中テストステロン、エストラジオール、LH、FSHおよびInhibin濃度を測定した。精巣精子数、精子の運動性、精子の生存性および形態を観察した。また、ネフィラセタム300mg/kg/dayをビーグル犬に単回および1週間経口投与し、血清および精巣中プロジェステロン、テストステロンおよびエストラジオールを測定した。 その結果、血清中テストステロンは180および300mg/kg/dayともに投与1から4週目で低下または低下傾向がみられた。血清中エストラジオールは180mg/kg/dayの投与4週および300mg/kg/dayの投与1、2、3および4週で有意な(p≦0.05)上昇がみられた。血清中LH、FSHおよびInhibinでは300mg/kg/dayの投与3週で偶発的なFSHの上昇がみられた以外に変化は認められなかった。精子検査では300mg/kg/dayの投与4週目で精子の運動性が低下し、形態異常精子の割合が増加した。精子数および精子の生存性には変化はなかった。精巣中のプロジェステロンは上昇傾向、テストステロンは低下または低下傾向、エストラジオールは低下がみられた。 以上の結果より、ビーグル犬においてもネフィラセタム投与により血清および精巣中のテストステロンの低下がみられ、LHに変化が認められないことから、ネフィラセタムの精巣毒性メカニズムは中枢を介しない、精巣ライディッヒ細胞におけるテストステロン生合成が抑制されることによるテストステロンの低下であることが示された。また、精巣中テストステロンおよびエストラジオールが減少したものの、プロジェステロンの減少はみられなかったことから、ネフィラセタムはライディッヒ細胞におけるステロイドホルモン生合成経路のプロジェステロンからテストステロンの間の経路を阻害する可能性が示された。 第3章ではカニクイザルを用いて精子性状およびホルモンへの影響ならびに回復性の検討を行った。すなわち、ネフィラセタム30、60または180mg/kg/dayをカニクイザルに13週間経口投与し、最終投与翌日に片側の精巣を摘出し、重量測定および病理組織検査を行った。動物は投与終了後、32週間の回復期間をおいて剖検を行った。実験期間中、精巣サイズを測定するとともに経時的に血液および精液を採取した。ホルモンは、血清中テストステロン、エストラジオール、LH、FSHおよびInhibin濃度を測定した。精子検査として精液重量、精子濃度、運動性、生存性および形態を観察した。 その結果、血清中ホルモンおよび精子検査では投薬の影響を検出することはできなかったが、60mg/kg/day以上の投与で精巣サイズが減少し、投与終了時に精巣重量の減少および精細管の萎縮が認められた。これらの変化は、32週間の休薬後には認められなかった。 以上から、サルにおいてもネフィラセタムの精巣毒性が認められ、精巣サイズがマーカーとなりうること、さらに精巣の変化は可逆性であることが確認された。 第4章では、ネフィラセタムが精巣におけるテストステロン生合成に与える影響をin vitro評価系を用いて調べた。すなわち、ラット精巣からパーコール法により分離したライディッヒ細胞を培養液中で培養した。ネフィラセタム未変化体またはその主要な代謝物4種類を別々に培養液に添加し、24時間後の培養液中テストステロン濃度を測定した。 その結果、ネフィラセタムおよび3種類の代謝物を培養液へ添加することにより、培養液中テストステロン濃度の減少が認められた。このことから、ネフィラセタムおよび代謝物が、in vitroにおけるライディッヒ細胞のテストステロン生合成を抑制することが明らかとなった。 さらに、プロジェステロンからテストステロンの過程に関与する2種類の酵素に対するネフィラセタムの影響を検討した。すなわち、ラットにネフィラセタム1,500mg/kg/dayを経口単回投与し、投与1、3、6および24時間後に剖検を行い、精巣を摘出した。精巣から、総RNAを抽出、精製し、次いで、逆転写を行った。そしてRT-PCR法によりmRNA量を定量し、P450c17ならびに17βHSD遺伝子の発現量を調べた。 その結果、投与1および3時間後の17βHSD遺伝子の相対的なmRNAレベルの減少傾向が認められた。従って、ネフィラセタムはステロイドホルモン生合成過程のうち17βHSDを阻害し、テストステロン合成を抑制していることが示唆された。 以上、ネフィラセタムの精巣毒性メカニズムとして、(1)中枢神経系を介さない、(2)精巣のステロイド合成系酵素のうち17βHSDを直接阻害することによってテストステロン生合成が抑制される、(3)低レベルのテストステロンが精子形成を抑制する、ことが解明された。また、異なる動物種を用いてネフィラセタムの精巣毒性を検討した結果、ネフィラセタムの精巣毒性に質的な違いはないが、ネフィラセタムに対する感受性は、イヌ>サル>ラットと異なることが明らかとなった。 本研究を通して確立した精巣毒性メカニズムの評価系は、ネフィラセタムのみならず、汎用的に用いることができる。この評価系により今後の精巣毒性研究を効率的にすすめることが可能となり、精巣毒性が問題となって滞っていた医薬品の開発において、ブレークスルーにつながると考えられる。また、現在、トキシコロジーの領域で研究活動を担っている多くの獣医師の知識および技術の向上にも貢献できるものと考えられる。 |
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Abstract | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | Nefiracetam (N-(2,6-dimethylphenyl)-2-(2-oxo-1-pyrrolidinyl) acetamide, a pyrrolidone derivative, is being developed to treat a neurotransmission enhancer. In pharmacological studies, this agent has been shown to increase the release of neurotransmitters by activating long-lasting N/L-type Ca^2+ channels, to interact with GABA-ergic and ACh-ergic neuronal systems, and to enhance protein synthesis in the brain. In toxicity studies, nefiracetam is not mutagenic either in vitro or in vivo, and is not oncogenic in mice and rats or teratogenic in rats and rabbits. Results from general oral dose toxicity studies show that nefiracetam induces testicular toxicity in male dogs and monkeys given 60 mg/kg per day or more for 13 weeks. However, this toxicity was not observed in rats following a 13-week treatment with 480 mg/kg per day. In the present study, to clarify the mechanism of testicular toxicity induced by nefiracetam, its pathogenesis was analyzed in the in vivo systems using rats, dogs and monkeys, and in vitro systems. Chapter 1 Investigation of the earliest histopathological and hormonal changes in SD rats Testicular toxicity of nefiracetam was investigated in male Slc:SD rats. Nefiracetam was orally administered daily at 1500 mg/kg for 4 weeks, and the animals were sacrificed sequentially during the course of administration to determine testicular histopathological changes and sperm head counts (SHC), and hormonal changes. Retention of step 19 spermatids, sporadic degeneration of pachytene spermatocytes and step 7 spermatids in the stage VII seminiferous tubules, and a decrease in SHC were seen as earliest changes after 1 week of administration. These changes gradually advanced up to atrophy of seminiferous tubules with multinucleated-giant-cell formation after 4-week administration. Serum and testicular testosterone levels were decreased, but recovered to the control levels within a day following a single administration, and the decreases were repeated after 1-week administration. These results suggest that nefiracetam-induced earliest changes could be caused by the decreased level of testicular testosterone. Chapter 2 Investigation of the hormone biosynthesis and predictive markers for testicular toxicity in beagle dogs To investigate mechanisms of the testicular toxicity of nefiracetam and to find sensitive parameters to predict the toxicity, male beagle dogs were orally administered 180 or 300 mg/kg per day of the drug once and for 1 and 4 weeks. Time-course changes in serum and/or testicular hormone levels and semen parameters, and testicular morphology were examined. The testicular testosterone level was decreased 4 h after single administration of nefiracetam at 300 mg/kg per day, but the progesterone level showed no change at that time. The serum testosterone level was decreased after single, 1-week or 2-week treatment. In contrast, the serum estradiol level was increased from 1- to 4-week treatment. No changes in serum LH, FSH and inhibin B levels were observed throughout the experimental period. Decreased sperm motility and increased number of malformed sperms were first observed in semen after 4-week treatment. Histopathological examination of the testis revealed moderate and severe seminiferous atrophy with multinucleated giant cell formation at 180 and 300 mg/kg per day, respectively, after 4-week treatment, but not 1-week treatment. These results show that nefiracetam decreases testicular testosterone level in dogs following single oral administration of a high dose, and induces severe morphologic changes after 4-week treatment. This reduction is shown to be a sensitive parameter to detect the toxicity and is suggested to be induced by the impaired conversion of progesterone to testosterone in Leydig cells. Chapter 3 Investigation of the reversibility and predictive markers for testicular toxicity in cynomolgus monkeys This study was conducted to elucidate the developmental process and its reversibility for the testicular toxicity of nefiracetam and to estimate some of the markers in male cynomolgus monkeys. Four groups of 3 male monkeys received oral doses of 0 (control), 30, 60 or 180 mg/kg/day of nefiracetam for 13 weeks by gastric intubation and had a 32-week recovery period. During the administration and recovery periods, testicular size measurement, hormone assay and spermatozoa/seminal fluid examinations were performed. The left testis was removed by orchiectomy in all the animals at the end of administration period. The right testis was collected at the necropsy of the end of recovery period. The weight of the testes and the histopathological changes were examined. There were no test article treatment-related changes in the semen analysis and hormone assays. The testicular size was decreased at 60 and 180 mg/kg/day. At the end of administration period, the testicular weights of the left testes were decreased at the 60 mg/kg/day or more. Atrophy of seminiferous tubules associated with decreased spermatogenesis was noted at 60 and 180 mg/kg/day. Full recovery from the testicular damage was noted in the animals treated with 60 and 180 mg/kg/day during and at the end of recovery period. These results suggest that the testicular size could be a parameter for monitoring of the testicular toxicity, and testicular toxicity of nefirasetam was reversible. Chapter 4 Evaluation of the testosterone biosynthesis in the Leydig cell and steroid hormone converting enzymes The present study was performed to examine the effects of nefiracetam and its metabolites on testosterone biosynthesis. The Leydig cells were isolated from the testis using Percoll density gradient separation methods, and cultured in the M199 medium containing BSA. Nefiracetam and 4 metabolites were added into the cultured medium. Testosterone concentrations of the medium were assayed 24 h after the addition. Decreased testosterone concentrations were observed in nefiracetam and 3 metabolites (M3, M18 and M20), but not M11. These findings show that nefiracetam and its metabolites have direct action to inhibit the testosterone biosynthesis in the Leydig cells. To estimate the inhibition site on the steroid hormone biosynthesis pathway, nefiracetam was orally administered to rats at 1500 mg/kg, and the testes were removed 1, 3, 6 and 24 h after a single administration. The mRNA levels of steroid hormone converting enzymes, P450c17 and 17βHSD, in the testis were analyzed. Increased relative P450c17 mRNA levels and decreased 17βHSD mRNA levels were noted in the testis of nefiracetam treated rats. These results show that nefiracetam decreases mRNA levels of 17βHSD and then the inhibition of testosterone biosynthesis is occurred on the pathway between progesterone and testosterone in the Leydig cell. In conclusion, the achievements of the present study can be summarized as follows; (1) Nefiracetam has actions on central nervous system, and shows testicular toxicity. It has effects on the testosterone biosynthesis in the testis, but not on the hypothalamo-pituitary-gonadal system control. (2) Decreased testosterone levels caused by the direct inhibition of the 17βHSD, steroid hormone converting enzyme, are considered to be a mechanism of testicular toxicity of nefiracetam. (3) A new evaluation system established in the present study is thought to be useful to detect the testicular toxicant that has a mechanism described in (2). (4) The present study shows that there are some species differences in the susceptibility to the nefiracetam testicular toxicity, dogs>monkeys>rats, however, quality of the toxicity changes were considered to be identical. (5) These results can be expected to contribute greatly to the advancement of toxicology science and veterinary science. |
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学位名 | ||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2008-03-11 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 乙第418号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |