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ブドウ球菌エンテロトキシンに関する研究 : エンテロトキシンA,B,C,D,Eの精製,精製毒素の免疫学的・物理化学的性状,ならびに,食中毒論よび自然界由来黄色ブドウ球菌の本毒素産生能とその型別
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3173
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3173a3e8b8e8-83a8-489f-bb92-0d8ae07a3d13
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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diss_dv_otsu0093 (13.9 MB)
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diss_dv_otsu0093_jab.pdf (341.1 kB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | ブドウ球菌エンテロトキシンに関する研究 : エンテロトキシンA,B,C,D,Eの精製,精製毒素の免疫学的・物理化学的性状,ならびに,食中毒論よび自然界由来黄色ブドウ球菌の本毒素産生能とその型別 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
山田, 澄夫
× 山田, 澄夫 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | ブドウ球菌食中毒は,黄色ブドウ球菌が産生するエンテロトキシン(以下Entと略)を含んだ食品をヒトが摂取することにより生ずる典型的毒素型細菌性食中毒である。本食中毒の原因物質がEntであることは,すでに1930年代より明らかにされ,現在までに抗原特異性を異にするA,B,C,DおよびEの5型の存在が確認されている。 著者は本毒素の検査体系-特にEntの検出法の確立-と本食中毒予防の基礎を確立するための研究を行った。以下,各項芦別にその概要をのべる。 1.Ent A,B,C,DおよびEの精製 本菌食中毒はわが国のみならず文明諸外国においても高い発生を示しており食中毒発生に際しての確実な診断および疫学調査は公衆衛生上極めて重要な課題となっている。本菌食中毒の最も確実な診断は,推定原因食品中に極めて微量に含まれるEntを検出することである。微量毒素の検出法としては,型特異的抗Ent血清を用いた逆受身赤血球凝集反応やradioimmunoassayなどによる抗原-抗体反応が有効であるが,これらの方法を応用するためには極めて高い特異性を持つ抗血清ないし抗体グロブリンが必要である。それにはA~Eの各Entを免疫学的に均一な標品までに精製し,それを免疫原として型特異的抗血清を作成することである。 一方,毒素分子の構造と抗原性や毒素活性との関係,毒素の作用機序の解明のためにも精製毒素を得ることが必要である。 これまでにも主として米国の一部の研究所や大学においてEntの精製が試みられてきたが,著者は以下の本毒素産生菌株と精製操作により,A~Eのすべての型のEntの簡易精製を試み,高純度な精製標品と型特異的抗Ent血清を得ることができた。 Ent A~Eの産生に用いた黄色ブドウ球菌は,A型に13N-2909,B型にC-243,C型に493,D型に1151,E型にFRI326の各菌株である。毒素産生培地としては,4%NZ-amine培地を用い,37C,24~48時間振とう培養し,その遠心上清を精製の出発材科とした。精製過程におけるEntの検出はreference抗Ent A~E血清を用いたスライドゲル内沈降反応と,サルへの経口投与または静脈内接種による嘔吐発現の有無により,精製標品の純度は後述の各EntのAmberlite CG-50画分(以下粗毒素と略)をウサギに免疫して得た抗粗毒素血清とのOuchterlonyのゲル内沈降反応により検討した。 Ent精製の第1段階では,濃縮操作と部分精製をかねてすべての型に共通にAmberlite CG-50.クロマトグラフィーのバッチ法を用いた。その結果,いずれの場合も多量の培養上清から効率よくEntを濃縮することが可能であった。 本実験に供したAおよびB産生株にα-溶血毒を産生しないため,Ent AとBの精製では,ついでCM-セルロースクロマトグラフィーとSephadex G-75またはG-100のゲルろ過を組み合わせた3段階の操作により,免疫学的に単一な精製標品を得ることができた。この方法による回収率はAでは36%,Bでは40%であった。 一方,培養上清中に多量のα-溶血毒を含むEnt C_2,DおよびEの精製では,上記3段階の操作に,Entとα-溶血毒の分別方法としてDEAE-セルロースクロマトグラフィーを導入した。Ent Eの精製では,さらに他のタンパク夾雑物を除去するためにDEAE-セルロース再クロマトグラフィーを用いた。その結果,Ent C_2は4段階,Eは5段階で精製標品を得ることができ,その回収率は10%および5%であった。しかしながら,Ent DはDEAE-セルロース再クロマトグラフィー,6M尿素を用いたSephadex G-75ゲルろ過,等電点分画の7段階の操作によってもなお,最終標品からEnt以外のトリプシン抵抗性のタンパク夾雑物を分別することはできなかった。 各最終標品で免疫して得た抗血清はOuchterlonyのゲル内沈降反応において,抗Ent A~C_2およびE血清は対応する精製毒素と粗毒素に対して1本の沈降線を形成し,それらはreference Entとその抗血清が形成する沈降線と完全に融合した。抗Ent D血清は粗毒素に対して2本の沈降線を形成したが,非Ent画分をリガンドとしたアフィニティークロマトグラフィーにより, 特異性の高い抗血清を作成することができた。 各標品の免疫学的特異性をゲル内沈降反応と催吐活性中和試験で検討した結果,各標品は対応する抗血清とのみ沈降線を形成し,その催吐活性は特異的に中和された。逆に,他の型の抗血清とは沈降線を形成せず,その活性も中和されなかった。 以上の結果から,既知あるいは未知のEntは簡易化した同一精製法-α-溶血毒非産生株は1),Amberlite CG-50を用いたバッチ法による培養上清中のEntの濃縮,2),CM-セルロースクロマトグラフィー,3),Sephadex G-75ゲルろ過の3段階,α-溶血毒産生株はこの過程にDEAE-セルロースクロマトグラフィーを導入した4段階-で高純度な精製標品を得ることが可能であると推定された。 2.精製毒素の物理化学的性状 精製毒素の物理化学的性状,酸・アルカリおよびタンパク分解酵素などに対する安定性,生物活性基と抗原決定場の決定および毒素と生体内レセプターとの相互作用などの毒素学的追求は,タンパク化学的見地から極めて興味ある問題であり,しかも毒素の作用機序を明らかにする重要な手がかりを与えるであろう。現在までに,これら研究の大部分は産生量が多く,精製の容易なEnt Bについてなされているに過ぎず,他の型の毒素についての研究は極めて少ない。本菌食中毒事例で最も高頻度に検出されるEnt型がAであるという事実を考慮に入れるならば,Ent Aの性状の検討は極めて重要な意味を持っているといえる。 著者は前項でのべたEnt精製法により得た精製標品,特に本菌食中毒で主役を演じているEnt Aの物理化学的性状を明らかにするとともに,他の型の毒素についても検討を加えた。 精製Ent Aは250nmに極小吸収,277nmに極大吸収を持ち,核酸,脂質および炭水化物を含まないトリプシン抵抗性の単純タンパクであった。精製毒素のシュリーレンパターンは3時間,経時的に測定しても左右対称で毒素分子の均一性が示され,そのS_20wは2.71S,分子量はSephadex G-75ゲルろ過法で26,000,SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で27,000,沈降平衡法で30,000と推定された。精製毒素はisoelectrofocusingにより血清学的に同一なpH7.0とpH6.5の2つの大きな画分とpH8.0の小さな画分に分画された。最大のEnt画分を示したpH7.0を本毒素の等電点(Ip)とした。アミノ酸分析の結果,精製毒素は214個のアミノ酸残基から成り立っていると推定された。各アミノ酸残基数は,アスパラギン酸34,グルタミン酸25,ロイシン22,リジン21,スレオニン,グリシン,チロシン各15,バリン13,セリン,イソロイシン各10,フェニールアラニン8,アラニン7,アルギニン6,ヒスチジン5,トリプトファン4,プロリン3,メチオニン1であった。 精製Ent Bは250nmに極小吸収, 277nmに極大吸収を持ち,核酸,脂質および炭水化物を含まないトリプシン抵抗性の単純タンパクであった。精製毒素のシュリーレンパターンは各時間において左右対称を呈し,そのS_20wは2.68S,分子量はSephadex G-50ゲルろ過法で29,000と推定された。精製毒素はisoelectrofocusingにおいて,血清学的に同一なpH7.62,pH8.35,pH8.70の3画分に分画され,pH8.35を本毒素の等電点とした。 精製Ent C_2とEも250nmに極小吸収,227nmに極大吸収を持ち,核酸,脂質および炭水化物を含まない単純タンパクであった。両毒素ともその分子量はSephadex G-50ゲルろ過法で29,000と推定された。精製Ent C_2もisoelectrofocusingにおいて,pH6.55とpH6.70の2つの大きな画分およびpH6.0とpH8.0の2つの小さな画分に分画され,pH6.70を本毒素の等電点とした。 精製Ent A~C_2およびEはpH4.3でのディスク電気泳動において単一なバンドを形成したが,pH9.4での泳動では2~4本のバンドを形成することを認めた。pH9.4での泳動で分画される複数のバンドは血清学的には同一で,しかもisoelectrofocusingで得られた画分に相当することをEnt Aで実証した。この複数のバンドは,超遠心分析およびHedrick-Smith法による分析結果から,毒素分子の分子サイズの違いによって生じるものでなく,Chargeの差を異にするcharge isomerに起因するものであると推定された。 以上の結果から,Entは分子量26,000~30,000,沈降定数(S_20w)2.7S前後のいくつかの異なった等電点を有するトリプシン抵抗性のcharge isomerタンパクであろうと結論された。Ent Dは完全には精製されなかったが,本毒素も他の型の毒素と同様の物理化学的性状を有する分子量約29,000,等電点7.70前後のトリプシン抵抗性の単純タンパクであろうことが初めて推察された。 3.Entの加熱に対する安定性 Entは耐熱性毒素であるため,本毒素を含んだ食品は加熱調理後も,本菌食中毒の原因食品となり得ると考えられている。したがって,本毒素の耐熱性に関する問題は,食品衛生上極めて重要である。しかしながら,Ent A~Eの加熱処理による毒素活性の変化の差を比較検討した成績はほとんど得られていないのが現状である。 本菌食中毒の予防の立場から極めて重要な問題である毒素活性と熱処理の関係を,得られた精製Ent A~C_2および粗毒素A~Eを用いて検討した。加熱温度は60C,80Cおよび100Cとし,各5時間加熱処理による毒素の抗原性の経時的変化を特異抗血清を用いたOudin法により推定した。各毒素は50μgを0.05Mリン酸緩衝食塩水,pH7.2に溶解し,所定の温度で加熱した。 精製Ent Aは60C,3時間,80C,5時間,100C,1.25時間で50%失活し,100,2時間で完全に失活した。粗毒素Aは60Cおよび100C,1時間,80C,5時間で50%失活し,100C,2時間で完全に失活した。 精製Ent Bは60C,5時間で20%,80C,3時間および100C,20分で50%失活し,80C,4時間および100C,1時間で完全に失活した。粗毒素Bは60C,5時間,80Cおよび100C,10分で50%失活し,80C,4時間および100C,1時間で完全に失活した。 精製Ent C_2は60Cおよび80C,5時間で25~30%,100C,2時間で50%失活し,100C,3時間で完全に失活した。粗毒素C2は60Cおよび80C,4時間,100C,50分で50%失活し,100C,3時間で完全に失活した。 粗毒素Dは60C,2時間,80C,4時間,100C,20分で50%失活し,100C,1時間で完全に失活した。 粗毒素Eは60C,5時間で30%,80C,1.5時間,100C,30分で50%失活し,100C,1時間で完全に失活した。 以上の結果から,精製毒素は粗毒素よりも耐熱性であり,各毒素の加熱に対する安定性は毒素型によって異なると考えられた。Ent A,C_2,Dが高温度で比較的安定であることは,後述のごとく本菌食中毒原因食品から検出される黄色ブドウ球菌はこれらの型の毒素を産生するものが多い成績から,食中毒発生との関係上特に注目された。 Ent A,C_2およびDは80Cより60Cで早く不活化され,AおよびC_2では粗毒素のみならず精製毒素においてもこの現象が観察された。この現象が一部の細菌タンパク毒素で認められている加熱温度差によるタンパク分子の立体構造の変化によるものか否かを,精製Ent Aを用い,加熱-再加熱の実験系で検討した。その結果,60C,1,2,3,4および5時間加熱した各試料は80C,40分の再加熱により20~45%の活性の復元が認められた。60Cで加熱された試料は微細絮状物を形成して混濁したが,再加熱により絮状物は消失して透明となった。Ent A,C_2およびDで認められるこの特異的な熱安定性は,低温度(60C)でのタンパク分子の集合(aggregation)と高温度(80C)での再加熱による分子の解離(dissociation)によるものであることが推察され,この特性は本毒素の活性と構造との関係を解析するうえで重要な手がかりを与えるものであることが強く示唆された。 4.毒素産生性黄色ブドウ球菌の分布と本菌食中毒発生との関連について 本菌食中毒は,他の細菌性食中毒が食品衛生意識の向上にともない減少しているのに対し,漸次増加の傾向すら認められている。このことは食品が高頻度に黄色ブドウ球菌に汚染されていることを意味するものである。ヒト,動物その他これらを取り巻く環境に広く分布するすべての黄色ブドウ球菌がEnt産生能を有し,食中毒の原因となりうるならば,生態系と食中毒で検出される本菌のEnt産生能とその型別には密接な関係があるはずであり,その検討は本菌食中毒の予防対策に重要な手がかりを与えるであろう。 以上の理由から,食中毒由来黄色ブドウ球菌と自然界由来黄色ブドウ球菌のEnt産生能とその型別を行った。 供試菌株として,1969~74年にかけて東京都内で発生した103事例の本菌食中毒の原因食品から検出した食中毒由来103株,自然界由来株は各種材料より本菌が検出されたもののうち1検体より各1株を任意に選んだもので健康人の糞便由来98株,鼻前庭由来99株,食品調理人の手指由来96株および市販食品由来99株,計392株である。Entの検出は,上記菌株の4%NZ-amine培養上清を1/50に濃縮したものを抗原液とし,本研究で作成した特異抗Ent A~E血清を用いて5μg/mlの本毒素を検出できるスライドゲル内沈降反応により行った。 食中毒由来103株中97株がA~Eのいずれか,もしくは数種のEntを産生した。そのEnt型はA型39株,C型16株,A・CおよびA・D型各11株,D型9株,B型6株,A・C・D型2株,A・C・E型1株であった。 自然界由来株は392株中272株(69.4%)がEnt産生株であった。各種材料由来株の産生Ent型は,健康人糞便由来株ではC型35株,A・C型9株,AおよびD型各6株,A・D型5株,B型4株,C・E,A・C・DおよびA・C・E型各1株,鼻前庭由来株ではC型19株,A・C型13株,A型9株,B,DおよびC・D型各5株,A・C・D型3株,B・DおよびA・B・D型各2株,A・B,A・DおよびA・B・C型各1株,調理人手指由来株ではC型29株,A型11株,B型7株,A・C型6株,A・D,C・DおよびA・C・D型各3株,DおよびB・C型各2株,A・BおよびB・C・D型各1株,食品由来株ではC型26株,A型18株,A・D型7株,DおよびA・C型各6株,A・C・D型4株,B型2株,C・D型1株であった。 食中毒由来株はEnt A産生株が多いのに対して,自然界由来株は各種材料ともEnt C産生株が多く認められ,食中毒と生態系の黄色ブドウ球菌のEnt型別分布は必ずしも同一でないことが示された。この違いが本菌食中毒発生にいかなる意味を持つのか,この点に関する今後の検討が本菌食中毒の予防の立場から極めて重要であると考えられた。 |
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学位名 | ||||||
学位名 | 獣医学博士 | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1976-11-29 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 乙第 93号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |