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アイテム
イヌの右室心筋リモデリングに対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)ならびにアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の影響
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3161
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3161a99cb59f-f00a-4583-b88e-c0044dd71e35
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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diss_dv_kou0098 (17.0 MB)
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diss_dv_kou0098_jab&rev (416.7 kB)
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-22 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | イヌの右室心筋リモデリングに対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)ならびにアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の影響 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
山根, 剛
× 山根, 剛 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 【背景】 心疾患により心臓に対し持続的な負荷が加わることによって、心筋細胞肥大ならびに細胞外マトリックスの増大などの心筋リモデリングと呼ばれる変化が生じる。心筋リモデリングは負荷に対する適応として生じるが、過度に進行すれば心臓の拡張障害を招来するなど、心臓に対して悪影響を及ぼす。このことから、心筋リモデリングを抑制することは心疾患治療において必要不可欠な要素とされている。 アンジオテンシンⅡ(ANGⅡ)は心筋細胞肥大ならびに細胞外マトリックスの増大作用を有しており、心筋リモデリングに関与していることが知られている。アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEⅠ)はアンジオテンシン変換酵素(ACE)からのANGⅡ産生を阻害し、ラットやマウスの心筋リモデリングを抑制することが報告されている。しかしながら、ヒトやイヌにおいてはACE以外にchymaseからもANGⅡが産生されることから、ACEⅠではラットと同等の心筋リモデリング抑制効果を期待することは出来ないと考えられている。一方、近年開発されたアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は、ANGⅡの生理作用を受容体レベルにおいて遮断することから、chymaseによるANGⅡ産生経路を有する動物に対しても、心筋リモデリング抑制効果が期待されている。 動物種により心筋リモデリングに関与している心筋内ANGⅡ産生酵素ならびに薬物による心筋リモデリング抑制効果には相違が認められる。しかしながら、イヌの心筋リモデリングに対する心筋内ANGⅡ産生酵素の関与ならびに心筋リモデリング抑制に効果的な薬物は明確にされていない。さらに、イヌにおいては右心系の心疾患が多く認められるが、右室心筋リモデリングに関する報告はない。 そこで本研究では、イヌの右室肥大モデルを作製し、心筋内ANGⅡ産生酵素活性の測定、ならびにACEⅠ、ARBの投与を行い、経時的な心筋リモデリングにおける心筋内ANGⅡ産生酵素活性の関与ならびに心筋リモデリング抑制効果について検討した。 実験1. 右室肥大に伴う右室心筋内ANGⅡ産生酵素活性の変化 【目的】 心筋内ANGⅡ産生酵素であるACEおよびにchymase活性は動物種あるいは臓器により異なること、ならびに心疾患の病期により変化することが報告されている。しかしながら、イヌの心臓における心肥大進行と心筋内ANGⅡ産生酵素活性性の経時的変化については明確にされていない。そこで本実験ではイヌの右室肥大モデルを作製し、肥大に伴うACEならびにchymase活性の変化を観察し、心筋リモデリングと心筋内ANGⅡ産生酵素活性との関連について検討を行った。 【実験材料ならびに方法】 実験には身体検査において健康と認められたビーグル犬24頭を使用した。供試犬はSham群、15日群、60日群ならびに180日群の4群に分類した(各群6頭)。Sham群を除く3群は、主肺動脈を60%狭窄することで右室肥大モデルを作製し、15日、60日ならびに180日の経過観察を行った。 実験開始から終了まで定期的に心エコー検査を行い、右室壁厚の計測を行った。また、実験終了後、心臓を摘出し心筋内ANGⅡ産生酵素活性の測定に用いた。ACE活性は、心筋ホモジネートにおけるHip‐His‐Leu(HHL)による馬尿酸生成量を、HPLCにて測定することにより求めた。ACE活性は、37℃にてHHLより馬尿酸1μmolが生成される酵素活性を1ユニット(1U)とした。また、chymase活性は、ANGⅠからANGⅡへの変換量を、HPLCにて測定することにより求めた。chymase活性は、心臓湿重量1gあたりの1分間で生成されたANGⅡ(nmol)で表した。 【結果】 右室壁厚は、15日から60日にかけて有意な増大が観察されたが、60日と比較して、180日では有意な増大は認められなかった。右室心筋中のACE活性は、15日で上昇し、60日後にはSham群レベルまで低下していた。しかし、180日には再び有意な上昇が認められた。また、chymase活性は、60日までは変化が観察されなかったが、180日において有意な上昇が認められた。 【小括】 右室心筋内ACE活性が15日時点で増大したのに対し、chymase活性は60日時点まで変化は認められなかった。右室肥大の初期には右室心筋内ACEによるANGⅡ産生が関与していることが示唆された。また、右心肥大の進展が緩やかになった180日時点において、ACEならびにchymase活性が有意に上昇していることから、長期的な右室肥大の進展には両ANGⅡ産生酵素が関与している可能性が示唆された。 実験2. ACEⅠならびにARBの右室心筋リモデリング抑制に対する検討 【目的】 第1実験において、右室肥大初期にはACE活性が上昇していることが明らかとなった。ACEⅠはACEからのANGⅡ産生を阻害するため、右室心筋リモデリングの進展を抑制することが期待される。また、ARBは受容体に作用するためANGⅡ産生経路に関係なく、右室心筋リモデリング抑制効果が期待される。第2実験では両薬物の右室心筋リモデリング抑制効果を明確にする目的で、以下の実験を行った。 【実験材料ならびに方法】 第1実験のSham群、60日群に加え、新に12頭のビーグル犬に対して右室肥大を作製し、実験に使用した。60日群をPS群とし、ACEⅠ(マレイン酸エナラプリル:0.5mg/kg SID)の投与を行った群をACEⅠ群、ARB[カンデサルタン(Can):1.0mg/kg SID]の投与を行った群をARB群に分類した(各群6頭)。ACEⅠならびにARBは、モデル作製翌日から実験終了日(60日間)まで連日投与した。 実験1と同様に右室壁厚ならびに心筋内ANGⅡ産生酵素活性の測定を行った。また、実験終了後、心筋組織切片を作製し、心筋細胞径ならびに心筋の線維組織面積を、コンピューター画像解析により計測した。 【結果】 ARB群の右室壁厚、心筋細胞径ならびに線維組織面積の増大は、PS群ならびにACEⅠ群と比較して有意に抑制された。一方、ACEⅠ群の右室壁厚、心筋細胞径ならびに線維組織面積は、PS群と比較して差は認められなかった。ACEⅠ群の心筋内chymase活性は、PS群と比較して有意な上昇が認められた。 【小括】 ACEⅠ投与によりchymase活性の上昇が認められた。このことから、ACE活性が阻害されることにより、chymaseを介したANGⅡ産生系が活性化することが示唆された。ACEⅠ群に右室心筋リモデリングの抑制が認められなかったことは、chymaseによるANGⅡ産生が亢進することに起因すると考えられた。ARBでは右室心筋リモデリング抑制効果が認められた。ARBはANGⅡを受容体レベルにおいて抑制する薬物であることから、ACEならびにchymaseからのANGⅡ産生経路を有するイヌにおいては、右室心筋モデリング抑制に有効的であると考えられた。 実験3. ARB投与量による右室心筋モデリング抑制効果の検討 【目的】 ARBに心筋リモデリング抑制効果が認められたが、投与量を増すことにより更なる心筋リモデリング抑制効果が得られる可能性がある。そこで本実験では、ARB投与量の相違に起因する心筋リモデリング抑制効果の差異について検討を行った。 【実験材料ならびに方法】 第2実験において実験に供したPS群をControl群、ARB群をARB-1群(Can:1mg/kg投与群)、新に用いたビーグル犬6頭をARB-10群(Can:10mg/kg投与群)として実験に用いた。ARB-10群に対しても、第1実験と同様の方法を用いて右室肥大モデルの作製を行った。心筋リモデリング抑制効果の判定には第2実験と同様の指標を用いた。 【結果】 ARB-1群とARB-10群との右室壁厚の経時的変化には、有意な変化は認められなかった。また、心筋細胞径ならびに線維組織面積に関しても、両群間に有意な変化は認められなかった。 【小括】 ARB-1群ならびにARB-10群の右室壁厚、心筋細胞径ならびに線維組織面積は同程度の増大抑制が認められた。このことから、イヌの右室心筋リモデリングに対しては、1mg/kgならびに10mg/kgのカンデサルタンにより同程度の抑制効果が得られることが確認された。 【考察】 右室肥大の初期にはACE、長期的にはACEならびにchymase活性が上昇していることから、初期の右室肥大にはACE、長期の右室肥大には両ANGⅡ産生酵素活性により産生されたANGⅡが関与していると考えられた。また、エナラプリルによりACE活性を抑制した場合、chymase活性の上昇が生じるため、エナラプリルでは右室心筋リモデリングの進展を抑制することは不可能であると考えられた。 カンデサルタンはエナラプリルと比較して、chymaseから産生されたANGⅡに対しても、受容体レベルにおいてその生理作用を遮断できることから、イヌの右室心筋リモデリング抑制に対して有効的な薬物であると考えられた。 【結語】 イヌの右記肥大モデルを用いて、ACEⅠならびにARBの右室心筋リモデリングの機序およびその抑制効果を検討した結果、以下のような知見が得られた。 1. 右室肥大初期には右室心筋内ACE活性のみが上昇していることから、右室肥大初期には心筋内ACEにより産生されたANGⅡが関与していることが示唆された。また、180日時点では右室心筋内ACEならびにchymase活性の上昇が認められていることから、長期にわたる右室負荷時には、両ANGⅡ産生酵素により産生されたANGⅡが右室心筋リモデリングに関与すると考えられた。 2. ACEⅠ投与により右室心筋内chymase活性の上昇が認められていることから、ACEからのANGⅡ産生が抑制された場合には、chymaseによるANGⅡ産生が亢進し、右室心筋リモデリングを進展させると考えられた。 3. カンデサルタンには右室壁厚増大、心筋細胞肥大ならびに線維組織の増殖を抑制する作用が認められたが、エナラプリルにはその効果は観察されなかった。このことから、イヌの右室心筋リモデリング抑制に対してカンデサルタンは有効的な薬物であることが確認された。 4. イヌの右室心筋リモデリングに対しては、1mg/kgのカンデサルタンにより抑制効果が得られることが確認された。 |
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学位名 | ||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2003-03-19 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第 98号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |