WEKO3
アイテム
末梢神経毒性を正確に評価するためのイソニアジド投与ラットを用いた多角的アプローチ
https://doi.org/10.14944/0002000122
https://doi.org/10.14944/0002000122e3099c76-4cdd-4614-a787-849cf3c02a34
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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diss_dv_kou183.pdf
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diss_dv_kou183_jab&rev.pdf
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||||
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公開日 | 2024-07-21 | |||||||
タイトル | ||||||||
タイトル | 末梢神経毒性を正確に評価するためのイソニアジド投与ラットを用いた多角的アプローチ | |||||||
言語 | ja | |||||||
タイトル | ||||||||
タイトル | Multifaceted approach for evaluating peripheral neurotoxicity in isoniazid-treated rats | |||||||
言語 | en | |||||||
言語 | ||||||||
言語 | eng | |||||||
資源タイプ | ||||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_db06 | |||||||
資源タイプ | doctoral thesis | |||||||
ID登録 | ||||||||
ID登録 | 10.14944/0002000122 | |||||||
ID登録タイプ | JaLC | |||||||
アクセス権 | ||||||||
アクセス権 | open access | |||||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||||
著者 |
樫村, 茜
× 樫村, 茜
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抄録 | ||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||
内容記述 | 【背景及び目的】 医薬品開発における非臨床・臨床試験では、薬剤性末梢神経障害がしばしば報告される。ヒトの安全性を確保するために、非臨床試験において末梢神経毒性を正確に評価することが重要である。末梢神経毒性の病態生理や機序を明らかにする評価は、ヒトでのリスク程度の推定やモニタリング方法の提案を可能とし、ヒトでの安全性リスクマネジメントに繋がる。 末梢神経毒性評価に関する指針(OECDガイダンス等)では推奨評価項目の選択肢が公表されているが、どの評価項目を優先するべきか、結果をどう組み合わせて考察するべきか、といった情報は記されていない。例えば、末梢神経毒性を回避した候補化合物を取得するためのスクリーニングを目的として試験を実施するのであれば、神経毒性の推奨評価項目を広く含むような試験計画は困難なため、状況に合わせた評価項目の設定が求められる。 末梢神経毒性の非臨床評価では、実情として次の課題が挙げられる:①末梢神経毒性バイオマーカー(BM)が未確立、②どの行動学的評価を実施するのが有効か不明確、③病理形態学的特徴を客観的に示すための標準的な方法が未確立、④適切な解剖時点設定が困難。 そこで、末梢神経毒性の特徴づけのために最適な評価方法を見出すことを目的として、ビタミンB6(VB6)欠乏による末梢神経障害を誘発するisoniazid(INH)投与ラットを用いて、病理評価だけでなく、生化学評価及び行動評価を組み合わせて実施し、結果を関連づけながら多角的に考察した。また、薬剤開発の初期段階で神経毒性評価項目を効果的に選択することを想定し、各評価方法の意義・有用性を検証した。 【材料】 雄性SDラットに、INHを0(溶媒対照)、250、500 mg/kg/dayの用量で3日間反復経口投与した。投与初日をDay1としてDay4、Day9、Day30の3点で剖検を実施した(n=5/群)。 【第1章:行動評価】 【方法】一般状態観察、体重・摂餌量測定、熱刺激感覚検査(Hotplate法)、詳細行動観察(Irwin変法一部項目)、血液・血液生化学検査 【結果】 一般状態観察で著変なし。投与群において体重・摂餌量の低下が投与期間中に用量依存的に継続して認められたが、投与終了後速やかに増加に転じた。 Day 3に高用量群の2/15例で、熱刺激感覚検査での回避行動遅延が認められた。Day4に高用量群の3/15例で、軽度な後肢同側屈筋反射低下が認められた。 血液学的検査では、Day4に高用量群の網状赤血球が用量依存的に減少し、Day 9に増加。投与期間中の体重減少に伴う一過性の変化及びそのリバウンド作用と考えられた。血液生化学的検査では、Day 4に以下の所見が認められた:Clは高用量群でわずかに増加(投与期間の状態悪化を疑う)、GLDH、UN及びCREの軽度の増加が認められた(一過性の肝・腎障害を疑う)。 【考察】 行動評価では、同側屈筋反射の評価が有用と考えられた。一般状態観察で検出できなかった行動異常が検出できたこと、観察が簡便なため一般毒性試験に組み込んで実施しやすいこと、動物へのストレスが少なく毎日評価が可能であること、が利点である。熱刺激感覚検査でも異常を検出できたが、主観的観察による評価で変化の判断が難しいこと、馴化と評価に長時間を要したことから、毒性試験への組込みは困難と考えられた。 【第2章:生化学評価】 【方法】血清中neurofilament-light(Nf-L)測定、血漿中VB6(pyridoxal [PL], pyridoxal 5'-phosphate [PLP])測定 【結果】 液性BMとしての有用性を検証するため、血清中Nf-L濃度を測定した。Day4で投与群において用量依存的に顕著な増加が認められ、Day9で高用量群において有意な増加がみられた。Day30では投与群の濃度は対照群と同等だった。 VB6レベルと神経毒性の関連性を検討するため、血漿中VB6(PL及びその活性型リン酸化体PLP)濃度を測定した。Day4で顕著かつ有意な減少が用量依存的に認められたが、Day9以降減少は認められなかった。 【考察】 血清Nf-Lの高値から、神経傷害を検出する液性BMとしてのNf-Lの有用性が示唆された。血清を用いる測定は非侵襲的であり、ヒトでの毒性モニタリングにも有用である。 INH誘導末梢神経傷害の初期段階で血漿PL及びPLP減少が生じることが確認された。毒性機序の仮説が立てられない場合はどの内因性物質を測定するべきかの判断が困難であるが、機序仮説に関連する内因性物質の測定は、毒性機序を考察するための有用な根拠となるだろう。 【第3章:病理評価】 【方法】ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本の組織検査(脳・脊髄・脊髄後根神経節・坐骨神経・脛骨神経・伏在神経)、坐骨神経FFPE標本の免疫組織化学染色(choline acetyltransferase [ChAT], Nf-L, Iba-1)、坐骨神経semi-thin標本の組織検査、坐骨神経semi-thin標本の画像解析、坐骨神経の超微形態学的検査 【結果】 FFPE標本観察の結果、各末梢神経に神経線維変性が用量依存的に認められた。Day4では高用量群で軽度な変化が散発的にみられたのみだったが、Day9に最も顕著となり高頻度に神経線維変性像が認められた。Day30では神経線維変性は殆ど完全に回復したが、Iba-1陽性泡沫状マクロファージ浸潤がみられた(損傷した軸索及び髄鞘の貪食処理像と考えられた)。坐骨神経ChAT免疫染色の結果、陽性となる運動神経に神経線維変性は殆ど認められず、この変化は感覚神経に主座したと考えられた。 Semi-thin標本観察の結果、神経変性の程度と相関してmyelin ovoidの頻度が増加し、神経線維の形態学的ばらつきもみられた。Day4の低用量群でもmyelin ovoidは認められた。画像解析によりG-ratio(軸索径/神経線維径)を神経線維数の分布としてヒストグラムを作成した結果、myelin ovoid増加はG-ratio 0値増加として示され、神経線維のばらつきはG-ratio分布の減少及びG-ratio0.6-0.8値の軽度な増加として示された。 病態が強い標本では、神経線維径に大小不同がみられ、G-ratio(軸索径/神経線維径)のヒストグラム画像解析の結果、G-ratioのバラつき増加として認められた。画像認識の妥当性は、目視で認識が正しい/誤っている神経線維をカウントし、陽性的中率及び感度が90%以上であることで確認した。 超微形態学的検査の結果、軸索変性の経時変化が明らかとなった。Day4に軸索損傷の初期像として軸索及び髄鞘の崩壊がみられた。Day9には多くの神経線維に軸索変性、髄鞘崩壊、軸索消失を伴うmyelin ovoid形成、シュワン細胞肥大、髄鞘過形成、小型髄鞘線維の増加が認められた。Day30には、細い髄鞘を伴う小径神経線維の頻度が増加した。 【考察】 観察された神経線維変性の病理学的特徴は、INH誘発末梢神経毒性評価の論文報告と一致していた。Semi-thin標本観察は、変化が軸索と髄鞘のどちらに起きているかを判別でき、末梢神経毒性の形態学的特徴づけに有用だった。 ヒストグラムを用いた画像解析により、病理学的特徴を客観的に示すことができた。特に医薬品開発においては画像解析の妥当性を示すことが重要で、バリデーション方法の標準化が求められている。 FFPE標本のChAT免疫染色は主にCNS神経細胞体の染色に用いられているが、本研究での染色結果は、ChATが末梢神経においても運動/自律神経と感覚神経を識別するのに有用であることを示唆した。 また、第2章で述べた末梢神経毒性BMとしてのNf-Lの有用性は、病理評価結果と組み合わせることで、病変を感度よく早期に捉えられることがわかり、さらに強く示唆された。血清Nf-L濃度は、病理変化が最も顕著だったDay9よりもDay4で高く、損傷初期に多くのNf-Lが漏出すると考えられた。FFPE標本で病変が認められなかったDay4低用量群でもNf-Lは高値であった。過去の報告からは、血清Nf-L濃度は病理学的変化と同時に増加することが想定されたが、本研究では、Nf-L高値は病理変化のピークよりも早いことを示した。 【結論】 本研究では、INH誘発末梢神経障害ラットをモデルとして使用し、末梢神経毒性の特徴づけのために最適な評価方法を見出した。顕著な病理学的変化の時点と生化学及び行動的評価の変化時点の間には不一致があり、複数の剖検時点を設定し、各評価を組み合わせることの重要性が示唆された。病理学的評価は病理学的特徴づけに必須であるが、病理学的評価と同じ時点での生化学及び行動的評価の結果は価値がある。 また、本研究では、血清Nf-L測定が病理変化より早期かつ顕著に変動することを見出し、末梢神経毒性BMとして非常に有用であることを示した。さらに、semi-thin標本の観察とChAT免疫染色は形態学的神経毒性の特徴づけに有用であり、semi-thin標本の画像解析により客観的に病理学的特徴を示すことができた。 なお、本アプローチを一般化するためには、他の末梢神経毒性機序を有するモデルを用いたさらなる評価及び検証が必要である。 |
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Abstract | ||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||
内容記述 | In drug development, assessment of non-clinical peripheral neurotoxicity is important to ensure human safety. Clarifying the pathological features and mechanisms of toxicity enables the management of safety risks in humans by estimating the degree of risk and proposing monitoring strategies. Published guidelines for peripheral neurotoxicity assessment do not provide detailed information on which endpoints should be monitored preferentially and how the results should be integrated and discussed. To identify an optimal assessment method for the characterization of peripheral neurotoxicity, we conducted pathological, biochemical (biomaterials contributing to mechanistic considerations and biomarkers), and behavioral evaluations of isoniazid-treated rats. We found a discrepancy between the days on which marked pathological changes were noted and those on which biochemical and behavioral changes were noted, suggesting the importance of combining these evaluations. Although pathological evaluation is essential for pathological characterization, the results of biochemical and behavioral assessments at the same time points as the pathological evaluation are also important for discussion. In this study, since the measurement of serum neurofilament light chain could detect changes earlier than pathological examination, it could be useful as a biomarker for peripheral neurotoxicity. Moreover, examination of semi-thin specimens and choline acetyltransferase immunostaining were useful for characterizing morphological neurotoxicity, and image analysis of semi-thin specimens enabled us to objectively show the pathological features. |
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学位名 | ||||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||||
学位授与機関 | ||||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||||
学位授与機関識別子 | 32701 | |||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||||
学位授与年月日 | ||||||||
学位授与年月日 | 2024-03-15 | |||||||
学位授与番号 | ||||||||
学位授与番号 | 甲第183号 | |||||||
Rights | ||||||||
値 | A part of this thesis was published as a following article. 1.Kashimura, A., Nishikawa, S., Ozawa, Y., Hibino, Y., Tateoka, T., Mizukawa, M., Nishina, H.,Sakairi, T., Shiga, T., Aihara, N., and Kamiie, J.: Combination of pathological, biochemical and behavioral evaluations for peripheral neurotoxicity assessment in isoniazid-treated rats. Journal of Toxicologic Pathology, Apr;37(2):69-82, 2024. |
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著者版フラグ | ||||||||
出版タイプ | VoR | |||||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 |