WEKO3
アイテム
イヌの健康状態と脂肪細胞における肥満関連遺伝子の発現
https://doi.org/10.14944/0000005509
https://doi.org/10.14944/0000005509ff9c0c77-12b2-42c5-81d3-b72bc2e8cbfd
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
---|---|---|
![]() |
|
|
![]() |
|
Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
公開日 | 2024-06-13 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | イヌの健康状態と脂肪細胞における肥満関連遺伝子の発現 | |||||
言語 | ja | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | Studies on expression of obesity-related gene in canine health status and adipocytes | |||||
言語 | en | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_db06 | |||||
資源タイプ | doctoral thesis | |||||
ID登録 | ||||||
ID登録 | 10.14944/0000005509 | |||||
ID登録タイプ | JaLC | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | open access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||
著者 |
杉山, 由貴奈
× 杉山, 由貴奈 |
|||||
抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 獣医療において肥満は深刻な問題である。アメリカの報告では 2018 年時に飼育されていた犬の 56%、猫の 60%が肥満であるとされており、最も一般的な栄養障害とされている。肥満はヒト同様に糖尿病や循環器疾患、関節疾患、尿路感染症を引き起こすこと、さらに肥満は QOL の低下につながることが報告されている。また近年ではヒト医療において大腸癌や乳癌は肥満関連癌と呼ばれ、腫瘍と肥満の関連も注目されている。イヌにおいても腫瘍の発生率は増加しており、腫瘍と肥満の関連も報告されているため、これらの予防の観点からも肥満の予防・解消は重要であると考えられている。 肥満とは、食物摂取量が慢性的にエネルギー消費量を超えると発生するもので、白色脂肪細胞の過形成と肥大を特徴とする。脂肪細胞には、白色、褐色、ベージュ脂肪細胞の 3 種類がある。白色脂肪細胞は余剰なエネルギーを脂肪として蓄積する。一方、褐色・ベージュ脂肪細胞はエネルギーを熱として産生することができる。褐色・ベージュ脂肪細胞の熱産生には脱共役タンパク質(Ucp)1が関わっている。ヒトやマウスではこの Ucp1 と肥満に関する研究が多く行われており、肥満解消のためのサプリメントとして Ucp1 を増加させる作用を持つものも発売されている。しかしイヌにおける肥満の解消法は食事のコントロールと運動療法に頼るのが一般的である。食事のコントロールと運動療法は効果を得るまでに時間がかかるため、成功率が低いのが現状である。イヌにおいてもUcp1 を持つベージュ脂肪細胞を増やすことで肥満解消・予防、さらには腫瘍などの疾患の予防ができるのではないかと考えている。そこで今回、イヌの脂肪組織に注目し、肥満やその他の健康状態における脂肪細胞での遺伝子発現、つまり Ucp1 をはじめとする脂肪細胞の分化や機能に関する遺伝子発現を調べた。 第1章 イヌ Ucp1 遺伝子の発現 褐色・ベージュ脂肪細胞が持つ Ucp1 はミトコンドリア内膜に存在する脱共役タンパク質である。Ucp1 を高発現させたマウスでは肥満を予防できることが報告されており、Ucp1 は肥満の解消において重要な因子と考えられている。本章ではまず、ウシ、ラット、マウス、イヌ、ネコの 5 種類の動物種の脂肪組織における Ucp1 の発現を RT-PCR により比較した。その結果、イヌは脂肪組織における Ucp1 の発現量が他の動物種よりも多いことがわかった。さらに、イヌの各組織(脳、心臓、肺、肝臓、胃、脾臓、腎臓、骨格筋、皮膚、精巣)由来の RNAを用いて Ucp1 遺伝子の発現を調べたところ、2nd PCR による微量検出ではあるものの、脂肪組織だけではなく心臓や脳など多くの臓器で Ucp1 が発現していることがわかった。また、目的とするサイズの Ucp1 mRNA(バリアント 1)のほかに、やや小さいサイズの Ucp1 バリアント 2 が存在していることもわかった。このバリアント 2 の塩基配列を調べたところ、本来の大きさをもつ Ucp1mRNA(バリアント 1)の Exon2 領域を欠失したバリアントであった。バリアント 2 の推定アミノ酸配列はナンセンス変異が生じるなど、Ucp1 として機能していないタンパク質を生じていると考えられた。このようなバリアントはヒトやマウス、ラットなど他の動物種では報告がなく、イヌに特徴的であるかもしれない。存在意義については今後の検討が必要である。イヌの Ucp1 遺伝子が他の動物種より高発現していることや脂肪組織以外の臓器にも発現していることは、イヌにおいて Ucp1 遺伝子の発現制御は、肥満予防やその他の健康状態に影響を与えることが推察される。 第2章 イヌ白色脂肪細胞における肥満関連遺伝子発現 筆者が勤務する動物病院を中心に複数の動物病院で、開腹手術を実施した129 頭のイヌの皮下または内臓の脂肪組織を採取し、cDNA を作製した。脂肪細胞分化と機能に関わる調節遺伝子、アディポカイン、褐色脂肪細胞形成や脱共役タンパク質(Ucp)、BMP シグナルに関わる遺伝子の 4 つのカテゴリーに分類した合計 23 遺伝子の発現量を定量的 RT-PCR を用いて測定した。発現量について、各遺伝子間および BCS や年齢、健康状態との関連を解析した。その結果、まず各個体でのそれぞれの遺伝子発現についてみてみると、調べた 23 遺伝子のうち Ucp1 と Ucp3 の 2 つの遺伝子において、顕著に高い値を示す個体がみられた。褐色・ベージュ脂肪細胞の熱発生に関与する Ucp1 遺伝子の発現が平均より20 倍高い検体であったものの、その個体の BCS は 3 であり特別痩せてはいなかった。ウシにおいて、Ucp1 の発現量が通常より 1500 倍以上高かった個体では飼料効率が低く、体重が増加しにくいことが報告されており、今回のイヌの 20倍程度では、BCS に影響を与える変化ではないのかもしれない。次に、肥満の指標であるボディコンディションスコア(BCS)を目的変数として解析したところ、信頼性の高い重回帰式は得られなかった。Ucp1 と Ucp3 を除く 21 の遺伝子間の発現量に正の相関が認められた。BCS は年齢とともに増加し、Pparγ および Fasn の遺伝子発現量と負の相関を示し、Leptin および Opn3 の発現量と正の相関を示した。加齢に伴い、脂肪細胞分化と機能に関わる調節遺伝子のカテゴリーに属する Pparγ、Fabp4、Fasn、Hsl と Insr 遺伝子、およびアディポカインの一つである Adipoq 遺伝子の発現量は減少した。これらに加えて加齢は、褐色脂肪細胞形成に関与する Prdm16 遺伝子や BMP シグナルに関わる遺伝子に分類される Bmp4、Alk3、Actr2a、Actr2b 遺伝子の発現量と負の相関を示した。一方で、加齢により Leptin と Ucp2 の遺伝子発現量は増加した。雌雄について見てみると、Pparγ、Adipoq、Bmp4 遺伝子発現はメスで高く、Ucp2 と Ucp3 遺伝子発現はオスで高かった。腫瘍疾患のイヌについて見てみると、健康なイヌに比べ Pparγ と Fasn の遺伝子発現は低く、Leptin、Ucp2、Ucp3 および Inhβb の発現は高かった。また、体格で見ると、Tnfαと Opn3 の遺伝子発現は小型犬に比べ大型犬で高かった。 肥満は、脂肪細胞数の増加と脂肪細胞の肥大化を特徴とするが、成人での肥満は脂肪細胞の肥大化が主な原因と考えられている。そしてその肥大化した脂肪細胞はより多くの Leptin 遺伝子を発現していることが知られている。今回のイヌの加齢による BCS の増加では、脂肪細胞の肥大化が起こっており、そのため Leptin 遺伝子の増加がみられたと考える。一方、Pparγ と Fasn の遺伝子発現の減少は脂肪細胞の肥大化に対する防御的反応と推測する。 最近、褐色脂肪細胞に光を照射すると光受容体である Opn3 遺伝子産物を介して熱発生が活性化されることが報告された。Opn3 遺伝子発現制御は不明であるが、今回、BCS に伴い Opn3 遺伝子の発現が増加をしたり、大型犬で高い発現量がみられたりしており、肥満との関連で今後注目をする必要がある。 BMP シグナルは褐色・ベージュ脂肪細胞分化の誘導に関与しており、またPrdm16 遺伝子産物は褐色・ベージュ脂肪細胞分化に必要な因子であることから、今回のイヌでの加齢によるこれら遺伝子の発現の減少は、加齢に伴う褐色・ベージュ脂肪細胞活性の減少を引き起こし、それが BCS の増加へつながっているのかもしれない。 肥満と腫瘍の関連については、アディポカインである Leptin の増加や Adipoq の低下などが炎症反応に影響を与え腫瘍を発生していることが知られている。今回のイヌの腫瘍群においても、Leptin は有意に増加しており、Adipoq は減少傾向であった。 本研究の結果からは BCS と調べた 23 の遺伝子の脂肪細胞における発現との明確な関連を示すことはできなかった。しかし、多くの遺伝子間では正に相関をしていた。Leptin や Opn3、Pparγ、Fasn は BCS と関連していることから、肥満の予防・解消には Ucp1 以外にも多くの遺伝子が関与している可能性も考えられた。ヒトではゲノムワイド関連解析から肥満に関連する遺伝子が報告されており、それらの遺伝子発現が、高脂肪食を与えたマウスの脂肪組織で変化することも知られている。今後イヌにおいても大規模なゲノムワイド関連解析を実施してそこから得られた関連遺伝子の脂肪細胞における発現解析を行うことが必要になるかもしれない。本研究は BCS、年齢、腫瘍などイヌのプロファイルと脂肪組織における遺伝子発現の関連を調べた。これらの結果はイヌの肥満の予防や治療に向けた候補遺伝子同定のための基礎的情報となる。 |
|||||
Abstract | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | Canine obesity has been increasing in recent years and is an inducer of various diseases such as arthritis and diabetes. Moderate exercise and dietary restriction can eliminate obesity, but its management is difficult. In humans, activation of brown fat cells has attracted attention as a new method of obesity reduction, and deconjugated protein (Ucp) 1 has been reported to hold the key, but not many studies have been conducted in dogs. The expression of UCP1 in adipose tissues of various animal species showed high expression in dogs. Furthermore, the expression of UCP1 in RNA from various canine tissues revealed that UCP1 is expressed in trace amounts in tissues other than adipose tissue, such as brain and heart, and that there is an exon2 variant of UCP1. Adipose tissue was collected during surgery at a veterinary clinic, and the expression of obesity-related genes in fat cells of a total of 129 dogs was examined. We found that the body condition score (BCS), a measure of obesity, was not a reliable multiple regression equation when used as the objective variable; positive correlations were found between the expression levels of most genes except Ucp1 and 3. BCS increased with age and was negatively correlated with the expression levels of Pparγ and Fasn and with the expression levels of Leptin and Opn3 showed a positive correlation. Differences in expression were also observed between sexes and between healthy and diseased groups. These findings suggest that canine UCP1 may differ from other animal species, and that gene expression in canine adipose tissue in relation to BCS, age, and tumor may provide a basis for elucidating the etiology of canine obesity. We believe that the gene expression in canine adipose tissue in relation to BCS, age, and tumor will provide basic knowledge for the elucidation of the etiology of canine obesity. |
|||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||
学位授与機関識別子 | 32701 | |||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2023-03-15 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第178号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | VoR | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 |