{"created":"2023-06-19T07:19:24.189612+00:00","id":5508,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"5d5cc3fb-3d24-4d8e-95b8-5868634ad66e"},"_deposit":{"created_by":17,"id":"5508","owners":[17],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"5508"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:az.repo.nii.ac.jp:00005508","sets":["370:15:391"]},"author_link":["23210"],"item_10006_date_granted_11":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2023-03-15"}]},"item_10006_degree_grantor_9":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"麻布大学"}]}]},"item_10006_degree_name_8":{"attribute_name":"学位名","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreename":"博士(獣医学)"}]},"item_10006_description_7":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"現代の医療・獣医療において、輸血療法は外科手術等の安全性向上や救急救命率向上に不可欠であり、重要な治療法である。国内におけるヒト医療では輸血用血液を安定的に確保するために、日本赤十字社によって整備された献血−輸血システムが確立されているが、一方、国内における獣医療では輸血自体が特殊な治療法であり、献血の普及や血液供給システムの整備はほとんど進んでいない。その理由として、獣医療では、薬機法の規制により各診療施設で献血募集および輸血用血液を調製しなければならないことや、獣医療における献血では、供血動物となる犬および猫が必ずしも献血採血時に温順ではなく、献血に伴い鎮静・麻酔下による採血が必要となる事が多いため、一般の飼い主に広く献血を募集するにあたって敬遠されやすいなどがある。これらのことから、献血-輸血システムによる輸血用血液の代替となる人工赤血球の開発とその実用化が切望されている。そのためにもイヌやネコにおける造血メカニズムの解明が重要となる。\n造血幹/前駆細胞(Hematopoietic stem and progenitor cells: HSPC)とは、脊椎動物の血液細胞の源となる体性幹細胞である。ヒト医療においてHSPCは、抗腫瘍療法として重度の化学療法を受けた患者の造血機能を再構築するための造血幹細胞移植(Hematopoietic stem cell transfusion: HSCT)に使用される。また、血液再生医療研究に用いられる多能性幹細胞から赤血球、白血球、血小板を作製する過程においても必ず経由する重要な細胞である。しかし、ヒトやマウスではさまざまな報告がなされているにも関わらず、イヌのHSPCに特異的な表面抗原や遺伝子発現プロファイル等については未だ明らかになっていない。\nそこで本研究の第1章では、まずはじめに健康なイヌで造血能を持つ骨髄中HSPCの遺伝子発現プロファイルの特徴を明らかにすることを目的とした。イヌにおけるHSPCの表面抗原マーカーはさまざまで、CD34陽性(CD34+)、CD34+/Linage negative(Lin-)、Wheat germ agglutinin(WGA)high/Rhodamin 123(Rh)lowなどが報告されている。本研究では、ヒトとイヌに共通して報告されているCD34+細胞およびCD34+/CD45-diminished(CD45dim)細胞をHSPCとして仮定しその性状を解析した。まず健常犬から骨髄穿刺針および比重遠心法によりイヌ骨髄単核球細胞(Bone marrow derived mononuclear cells: BM-MNC)を分離し、セルソーターを用いて全生細胞群、CD34+細胞群、CD34+/ CD45dim細胞群の3群に分離した。その結果、全生存細胞群、CD34+群、CD34+/CD45dim群の陽性率はそれぞれ49.42 ± 3.67 %、0.36 ± 0.06 %、0.16 ± 0.03 %であった。続いて、全生細胞群をコントロールとし、CD34+細胞群、CD34+/ CD45dim細胞群の造血能をコロニーフォーミングユニットアッセイ(CFU-A)にて評価した。その結果、セルソーティングで採取したすべての細胞群において造血コロニー形成が認められた。また、イヌBM-MNC1,000個に対して、全生存細胞群、CD34+群、CD34+/CD45dim群が形成するコロニー率はそれぞれ0.06 ± 0.005、1.95 ± 0.60、6.7 ± 0.185%であり、CD34+/CD45dim群の造血コロニー形成能は、他の群と比較して有意に高かった。このことから、イヌCD34+/CD45dim細胞群は、他の群と比較して有意に高い造血能を有していることが示された。最後に、3群における遺伝子発現プロファイルをRNAシーケンス(RNA-seq)解析を用いて評価した。3群の遺伝子発現における主成分分析の結果、主成分1(PC1)では全生存細胞群と、CD34+群とCD34+/CD45dim群を含むイヌHSPCが明確に分離され、主成分2(PC2)ではCD34+群と比較して、CD34+/CD45dim群は収束していた。PC1の寄与率は93.96 %であり、PC2の寄与率は3.46%であった。イヌのCD34+群とCD34+/CD45dim群の対応する遺伝子発現と比較する発現変動解析を実施した結果、148の発現変動遺伝子(Differentially expression genes: DEG)を検出し、このうち、CD34+/CD45dim群において7遺伝子が発現増加、141遺伝子が発現低下した遺伝子であった。発現増加した7遺伝子のうち、4遺伝子はヒトおよびマウスHSPCで関連が報告されている遺伝子であった。さらに、CD34+/CD45dim群で発現低下した遺伝子の中で既知のものであった131のDEGをGene ontology(GO)解析したところ、KEGGパスウェイ解析において、発現低下したDEGには免疫細胞であるB細胞の受容体シグナル伝達経路(調整p値 = 1.699×10-2)が含まれていた。このことから、CD34+群にはセルソーティング時に使用された抗CD34抗体に非特異的結合したB細胞が混入している可能性が示唆された。以上の結果から、イヌCD34+/CD45dim細胞群では、他の2群と比較して最も高い造血能を有し、ヒトおよびマウスHSPCと類似した遺伝子発現プロファイルを示したことで、最もHSPCとしての特徴を発現していることが明らかとなった。\n次に第2章として、ヒトやマウスの誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells: iPSC)や胚性多能性幹細胞(Embryonic pluripotent stem cells: ESC)のような無限増殖が可能な多能性幹細胞を原料とした体外での血液産生研究を応用し、イヌiPSCを原料とした人工CD34+/CD45dim細胞の大量培養法の確立を試みた。具体的には、iPSC分化研究で使用されている低分子化合物による効率的なHSPC分化誘導法を参考にイヌiPSCからCD34+/CD45dim細胞を得るための分化培養実験を実施した。低分子化合物として中胚葉分化を促進させるとされるGSK3阻害剤であるCHIR99021および造血性内皮細胞(Hemogenic endothelium: HE)分化を促進させるとされるALK阻害剤であるSB431542を選択し、分化培養中の遺伝子発現および表面抗原発現を定量RT-PCRおよびフローサイトメトリー解析を用いて評価した。まずはじめに、イヌiPSC分化プロトコルの培養1-3日におけるCHIR99021添加の影響を定量RT-PCRを用いて評価した結果、中胚葉マーカーであるT(Brachyury)はCHIR99021の濃度依存的に発現が増加し、10 μMで有意な増加が確認された。一方、Mixl1はCHIR99021添加による発現に影響を示さなかった。HE・造血幹細胞マーカーであるCD34およびGATA2は、いずれにおいても培養3日後で増加が見られ、CD34発現についてはCHIR99021添加による有意な発現増加が確認された。続いて、イヌiPSC分化プロトコルの培養5-7日におけるSB431542添加の影響を定量RT-PCRを用いて評価した。その結果、造血幹細胞マーカーであるKIT、 GATA2、 Runx1はいずれも分化培養7日後に有意な発現増加が見られたが、SB431542添加群では非添加群に比べやや発現増加傾向を示すものの有意な差は見られなかった。HEマーカーであるCD34はSB431542添加によってむしろ発現低下傾向が見られた。また、同じくHEマーカーであるSOX17では分化培養7日後で有意な発現増加が見られたが、SB431542添加による影響を示さなかった。以上の結果から、イヌiPSCの中胚葉・HE分化過程において、CHIR99021は中胚葉分化に有用である一方、SB431542はHE分化を阻害する可能性が示唆された。これらの結果を基にCHIR99021を主軸としたHSPC分化プロトコルを作成した。また、残存するiPSCを除去する目的で脂肪酸代謝阻害剤であるOrlistatを添加することで、より純度の高い分化細胞を得ることを試みた。作成したプロトコルで分化培養を行ったところ、単一分散された細胞は分化培養9日後に顕微鏡下で内皮細胞様の形態を示した。続けて、分化培養11日後には近傍に浮遊細胞を伴った内皮細胞様細胞が確認された。分化培養14日後にフローサイトメトリー解析を実施した結果、イヌHSPCマーカーであるCD34+/CD45dim細胞群が0.20 %出現していた。これらをセルソーティングで単離し、CFU-Aにより造血能を評価したところ、BFU-E、CFU-E、CFU-GMの形成は見られなかった。第1章で得られた結果からCD34+/CD45dim群の造血コロニー形成率は約6.7%であったことから、造血コロニー形成を確認するにはさらなるHSPCの分化効率の向上が必要であると考えられた。\n本研究は、CD34+/CD45dim細胞群が活発な造血能と既知のHSPC関連遺伝子発現が認められ、イヌHSPCの有力な候補であることを明らかにした。さらに、イヌiPSCからイヌHSPCの分化誘導を試みたところ、中胚葉およびHSPC発生に関与するHE関連遺伝子および表面抗原の発現が認められた。また、イヌiPSCから少数ではあるがCD34+/CD45dim細胞群を誘導することにも成功し、世界で初めてイヌiPSCからHSPCの性状を持つ細胞集団への分化誘導が可能であることを明らかにした。本研究の成果は、これまで不明確であった造血能が活発で純度の高いイヌHSPCの性質を明らかにし、その定義づけに寄与すると思われる。造血の起点となるイヌHSPCの性質が明らかになったことで、今後イヌ造血のメカニズム解明やiPSC由来人工赤血球の開発が大きく推進するものと考えられた。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_10006_dissertation_number_12":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"32701甲第177号 "}]},"item_creator":{"attribute_name":"著者","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"綾部, 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