@phdthesis{oai:az.repo.nii.ac.jp:00005422, author = {河野, 博臣}, month = {2021-04-05, 2021-04-05}, note = {【序論】ヒト生殖補助医療(assisted reproductive technology: ART)は、不妊症に対する治療、癌治療後の妊孕性保全などの目的で、医療介在によって生殖活動を補助するものである。ヒトARTでは卵巣からの卵採取が重要であるが、ごく稀に採卵時に通常の卵母細胞よりも直径が大きな「giant oocytes : GOs」が採取されることがある。このGOsの多くは2倍体で、受精させても染色体の数的異常胚を形成する。GOsが採卵される確率は0.12から0.3%であり、卵巣刺激法や患者の体質に依存しないと考えられている。GOsは、通常の卵母細胞と同じ受精能を示す。また、GOsはMⅡ期に達した際、極体(polar body: PB)2個およびchromosome-spindle complex (CSC) 2個を有するものと、PB1個およびCSC1個を有するものが存在する。GOsは受精後のその初期胚の染色体構成に異数性が生じることが報告されているが、その詳細については不明な点が多い。成熟卵母細胞のPBは減数分裂の産物で、染色体構成はCSCと相同であることから、GOsのPBの染色体解析ができれば、対応するGOの細胞質内の染色体も間接的に解析でき、受精およびその後の初期胚発生に有用な情報となりうる。染色体解析法については、染色体標本を作製し、特殊な染色を施す従来法でない次世代シーケンス (next-generation sequencing: NGS) 法による解析が最近開発され、胚の着床前診断にも適用されている。  本研究はヒトGOsにおける染色体解析を目的に、GOsのPBおよびCSCを個々にサンプリングするためのマイクロマニピュレーション法を開発し、ヒトGOsへ適用して採取ゲノムサンプルのNGS法による染色体解析を試みた。 \n 第一章 マウスMⅡ期卵母細胞におけるpolar body (PB)およびmetaphase Ⅱ chromosome-spindle complex (CSC) のマイクロマニピュレーションおよび次世代シーケンス法を用いた染色体解析 【目的】卵母細胞におけるPBゲノムおよびCSCゲノムの正確なサンプリング技術は、本研究に非常に重要である。同一卵母細胞質内にCSCが2つ存在し、かつそれぞれのCSCsの近傍に対応するPBsを有するGOの染色体解析には、マイクロマニピュレーションを用いたPBおよびCSCのサンプリングが適していると考えられる。本章では、マウス卵母細胞を用いてPBおよびCSCを採取し、NGS法による染色体数の解析を試みた。 【方法】超低温保存マウス未受精卵を購入し、その加温卵のPBおよびCSCを、倒立顕微鏡下のマイクロマニピュレーションにより採取して、染色体解析に適用しうる状態で採取できるか検討した。すなわち、PBの近傍の透明帯をレーザーにて穿孔し、PBをガラスピペットで吸引採取してサンプルチューブへ移して凍結保存した。続けてCSCを倒立顕微鏡の偏光装置にて確認しながらガラスピペットで吸引採取し、凍結保存した。採取したPBsおよびCSCsを含んだサンプルチューブを株式会社アイジェノミクス・ジャパン(東京)へ送付し、NGS法による染色体解析を依頼した。 【結果】マウス成熟卵母細胞20個に対し、全ての卵母細胞からPBsおよびCSCsの採取ができた。NGS法による染色体解析成功率は、CSCs由来染色体、PBs由来染色体それぞれ100% (5/5)、60% (3/5) であった 。本手法で採取したマウス卵母細胞のCSCsおよびPBsの染色体解析はNGS法により解析可能であった。 \n第二章 ヒト生殖補助医療におけるGOsの採卵率 【目的】GOsはヒトを含めた哺乳類に存在することが報告されているが、ヒトART において採取されたGOsについて、それらの核の状態や成熟能などの詳細な解析はされていない。そこで、ヒトARTにおけるGOs採卵成績および核の状態などについて、山下湘南夢クリニックの採卵成績から調べた。 【方法】本章は山下湘南夢クリニック倫理審査委員会および国立国際医療研究センター倫理委員会にて承認を得て実施した。山下湘南夢クリニックの自然周期または低卵巣刺激周期の採卵成績を対象としてGOs採取率を調べた。得られた卵母細胞は倒立顕微鏡下にて観察し、核の状態(卵母細胞の成熟)および卵母細胞の細胞質の最大直径を測定し、その直径が140 µmを超えるものをGOと判定した。採取されたGOsは、文書同意が得られたものを本章の対象症例とした。 【結果】採卵を行った6124周期(クロミフェン周期:3170、レトロゾール周期:1429、自然周期:1525) において、10392個の卵母細胞が得られ、GOsの採卵率は0.29% (30 GOs /10392 oocytes) であった。卵巣刺激法ごとのGO採卵率は、クロミフェン周期、レトロゾール周期、自然周期においてそれぞれ0.30% (20 GOs/6606 oocytes)、0.29% (7 GOs/2401 oocytes) 、0.21% (3 GOs/1405 oocytes) であり、卵巣刺激法による差は認められなかった(P > 0.05)。得られたGOsはMⅡ期が53.3%(16/30)、MI期が20.0% (6/30)、GV期が26.7% (8/30)であった。 \n第三章 ヒトGOsの体外成熟培養 【目的】未成熟の状態(GV期もしくはMI期)で得られたGOsは体外成熟培養を行い、その体外成熟能について調べた。 【方法】採卵されたMI期およびGV期GOsについて、採卵後37.5℃、6% CO2、5% O2、89% N2の気相でガス平衡させたoocyte maturation-medium (IVM Media KIT, Cooper Surgical, Inc. USA) を用いて35 mm dish (AGC TECHNO GLASS, Japan) に20 µL dropを作製し、OVOIL (Vitrolife, Sweden) で覆い、インキュベーター(ES6S, 株式会社アステック, 福岡)内で冠状細胞が付いた状態で24時間成熟培養を行った。成熟培養後、GOsは冠状細胞を除去後、PBsおよびCSCsの数を倒立顕微鏡の偏光装置を用いて確認した。成熟培養成績については、2015年10月1日から2017年12月31日の期間に山下湘南夢クリニックで実施された採卵において、同条件で成熟培養した通常の卵母細胞と比較した。 【結果】MI期で得られた6個のGOsは成熟培養により全てが成熟し、通常卵の成熟率89.4% (2079/2326) と差は認められなかった(P > 0.05)。成熟したGOsのうちPBを2つ有するGOsが83.3% (5/6)、そのうちCSCを2つ有するものは80.0% (4/5)であった。GV期で得られた8個のGOsのうち、7個について成熟培養を行い、71.4% (5/7) が成熟し、通常卵の成熟率65.1% (829/1274)と差は認められなかった(P > 0.05)。成熟した5個のGOsは全てPBを2つ有しており、そのうちCSCを2つ有するものは4個であった。本検討の結果、未成熟で得られたGOsの成熟率は、通常卵と比較して差が認められないこと(P > 0.05)、成熟したGOsは80%以上の割合でPBを2つ有することが示された。 \n第四章 ヒトGOsのNGS法による染色体解析 【目的】ヒトGOsからマイクロマニピュレーションでPBsおよびCSCsを採取し、NGS法による染色体解析を試みた。 【方法】採卵時に成熟しておりPBおよびCSCを2つずつ有するGOsをガラス化保存・加温し、本検討に使用した。偏光顕微鏡にてCSCの位置をそれぞれ確認し、片方のPB近傍に穿孔し、ガラスピペットでPBを吸引採取し凍結保存した。続けて、採取したPBの近傍に位置するCSCをピペットで吸引採取し、サンプルチューブへ移して凍結保存した。1組のPB、CSCを採取した後、残りのPB、CSCについても、同様の手順で採取し、凍結保存を行った。2つのPB、CSCを採取した後、透明帯を完全に除去してcytoplastをサンプルチューブに移して凍結保存した。サンプルチューブは株式会社アイジェノミクス・ジャパン(東京)へ送付し、NGS法による染色体解析を依頼した。 【結果】GOs 4個の、合計8個のPBsについて全ての採取に成功 (8/8, 100%) した。また、合計8個のCSCsについては7個の採取に成功 (7/8, 87.5%) した。3個のGOsのPBsおよびCSCsをNGS法により解析した結果、全ての採取サンプルに染色体異数性が確認された。本検討により、PBおよびCSCをマイクロマニピュレーションにて直接採取し、NGS法により染色体解析ができることが示された。  本研究で確立したマイクロマニピュレーションおよびNGS法を適用してヒトGOsのPBsおよびCSCsの染色体解析ができることが示された。また、CSCと近接するPBの染色体数的異常は相補的であった。従ってヒトGOsについては、胚移植に用いる配偶子の対象からは除外するべきである。}, school = {麻布大学}, title = {ヒトgiant oocyteのマイクロマニピュレーションおよび次世代シーケンス法による染色体解析に関する研究}, year = {} }