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アイテム
間歇性跛行に対するシロスタゾールの作用増強候補化合物としてのL-カルニチンの発見とその分子メカニズムの解析
https://az.repo.nii.ac.jp/records/4532
https://az.repo.nii.ac.jp/records/4532fda8e017-f2f0-441c-b074-19fc94f8888e
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||||||
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公開日 | 2016-03-31 | |||||||||
タイトル | ||||||||||
タイトル | 間歇性跛行に対するシロスタゾールの作用増強候補化合物としてのL-カルニチンの発見とその分子メカニズムの解析 | |||||||||
言語 | ||||||||||
言語 | jpn | |||||||||
資源タイプ | ||||||||||
資源タイプ | doctoral thesis | |||||||||
アクセス権 | ||||||||||
アクセス権 | open access | |||||||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||||||
著者 |
志賀, 俊紀
× 志賀, 俊紀
× Shiga, Toshinori
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抄録 | ||||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||||
内容記述 | 【緒言】 末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease, PAD)は、動脈硬化などにより主に下肢の血流障害が起こり、間歇性跛行や疼痛、壊死を生じる疾患である。シロスタゾールはPADの間歇性跛行に対して歩行距離を延長させる第一選択治療薬である。しかしながら、過去にはシロスタゾール投与によって歩行距離が1.5倍以上延長する著効患者は全体の約2割しかおらず、約1割の患者では無効であるとの報告があり、また歩行距離は延長するものの有効性が低い患者に対しては重度の頭痛や動悸といった副作用が出現するため、多くの患者ではさらなる歩行距離の延長を目的としたシロスタゾールの増量が困難な点が克服すべき課題として残されている。本研究では、シロスタゾール単剤の薬効を上回る併用候補化合物としてのL-カルニチンの発見とその分子メカニズム解析を目的としてPADモデルラットを用いて研究を行った。 【第1章】候補化合物L-カルニチンのシロスタゾールの歩行機能改善増強作用の発見について 〔目的〕L-カルニチンは生体内で合成されβ酸化において重要な役割を担う化合物であり、代謝改善薬としても様々な疾患に利用されている。また、L-カルニチンは弱いながらも間歇性跛行患者の歩行距離を延長させることが報告されている。臨床応用および安全性の点から、本研究ではシロスタゾールの歩行機能改善作用を増強する候補化合物としてL-カルニチンに着目し、PADモデルラットにおけるシロスタゾールとの併用作用について検討を行った。 〔材料と方法〕9週齢の雄性Sprague Dawleyラットを麻酔下で開腹したのち左側腸骨動脈を結紮してPADモデルラットを作出し、結紮1週間後から溶媒または薬物を28日間投与(経口投与、1日2回)した。対照(溶媒)群、シロスタゾール(30 mg/kg)群、L -カルニチン(300 mg/kg)群、併用群の4群で比較を行った。投与開始日から後肢虚血の程度の指標として歩行距離を測定した。歩行距離はトレッドミルで跛行が生じるまでの距離(Distance before Gait Disturbance, DGD)で評価した。 〔結果と考察〕対照群と比較してシロスタゾール群およびL -カルニチン群のDGDは有意に増加し、シロスタゾールおよびL -カルニチンの併用群では各単剤をさらに上回るDGDの増加が認められた。シロスタゾールおよびL -カルニチンの併用は従来の薬物療法の歩行機能改善作用を上回る併用療法となり得る可能性が見出された。 【第2章】シロスタゾールおよびL-カルニチン併用のメカニズム解明について [第1項] 血管新生促進作用およびその関連遺伝子の発現解析 〔目的〕シロスタゾールはPAD患者における血中の血管内皮増殖因子(VEGF)の上昇や、PADモデルマウス研究において血管新生促進作用が示唆されており、歩行機能の改善にはこれらの作用が寄与していると考えられる。したがって、前章で認められた歩行機能改善作用について血管新生促進作用の関与に着目して、虚血肢内転筋の血管密度を評価し、L-カルニチンの併用作用の影響を検討することを目的とした。また、主要な血管新生関連遺伝子のmRNA発現量の変化についても比較評価を行った。 〔材料と方法〕各薬物の投与7,14,21および28日目の虚血肢内転筋を採材し、筋重量を測定した。CD31抗体を用いて虚血肢内転筋における血管内皮細胞の免疫組織化学染色を行い、筋線維あたりの血管内皮細胞の割合を血管密度として測定を行った。また、各薬物の投与7および28日目の虚血肢内転筋のmRNAを抽出し、血管新生関連遺伝子として代表的なVEGFおよびAngiopoietin (Ang )1, Ang2 とそれらの受容体の発現量をreal-time RT-PCRの絶対定量法で比較した。また、血管新生促進作用が報告されている肝細胞増殖因子(HGF )、血小板由来増殖因子(PDGF )、線維芽細胞増殖因子(FGF )2、および低酸素誘導因子(HIF )2αの発現量についてもΔΔCt法により評価を行った。 〔結果と考察〕投与7,14および21日目における内転筋重量、血管密度はどの群においても有意な変化は認められなかった。投与28日目において、シロスタゾール群で内転筋重量の有意な増加が認められたものの、体重補正後の内転筋重量では差は認められなかった。また、投与28日目におけるシロスタゾール群およびL -カルニチンとの併用群の血管密度で有意な増加が認められた。シロスタゾール群とL-カルニチン併用群の血管密度の増加は同程度であった。mRNA発現量について、VEGFおよびその受容体であるFlt-1, Flk-1の各群における発現量の変化は認められなかった。血管新生優位の指標となるAng2/Ang1は、投与7日目において、シロスタゾール群およびL-カルニチン併用群で有意な上昇が認められ、投与28日目においてはシロスタゾール群のみで上昇が認められた。Angの受容体であるTie1およびTie2の発現量に変化は認められなかった。また投与28日目のシロスタゾール群でのPDGFの発現量が有意に増加していた。L -カルニチンはシロスタゾールの血管新生促進作用にmRNA発現量レベルで影響を与えていることが示唆された。 [第2項] 筋線維タイプおよびエネルギー代謝関連因子の発現解析について 〔目的〕前項でシロスタゾール群の血管新生促進作用およびL -カルニチン併用群で血管新生関連遺伝子のmRNA発現量の変化が認められたものの、第1章で確認された併用群での大幅な歩行機能改善作用を説明できるものではなかった。そこでL -カルニチンのエネルギー代謝改善作用から筋線維タイプおよびエネルギー代謝因子に着目した。筋線維にはタイプ1線維とタイプ2線維の二種類のタイプが存在し、タイプ2線維はさらに2aと2bに分けられる。タイプ1線維は遅筋線維とも呼ばれ、好気的エネルギー産生に優れているのに対して、タイプ2線維は主に解糖によるエネルギー産生に優れており速筋線維とも呼ばれる。慢性のPAD患者では筋線維のタイプがタイプ1線維へ変化し、また、間歇性跛行患者では好気的エネルギー産生の場であるミトコンドリアの筋肉における含有量が増加していると報告されている。また、筋線維タイプの変化とは別に筋肉内のエネルギー産生系に関わる因子の発現にL -カルニチンが直接作用している可能性も考えられる。実際、間歇性跛行患者の筋肉組織におけるエネルギー産生系に関与する酵素の活性や発現が変化していることが報告されているため、そのような変化にL -カルニチンが影響を与えることは十分に推察される。本項では虚血肢内転筋における筋線維タイプおよび主要なエネルギー代謝関連因子の発現量について比較検討を行うことを目的とした。 〔材料と方法〕材料は前項で用いた投与7および28日目の虚血肢内転筋mRNAサンプルを用いた。筋線維タイプはミオシン重鎖(Myosin heavy chain, MyHC)のサブタイプを指標にMyHC1 (タイプ1)、MyHC2a (タイプ2a)およびMyHC2b (タイプ2b)の発現量を測定した。また、エネルギー代謝関連因子として、細胞内へのグルコースの輸送を担い解糖系の入り口となるGlut1、ピルビン酸がTCA回路へ入る反応を担うピルビン酸脱水素酵素を阻害しTCA回路の律速酵素ともなるPyruvate dehydrogenase kinase (PDK)、電子伝達系に利用されるNADHの産生を担うIsocitrate dehydrogenase (IDH) α、β酸化の指標としては長鎖アシルCoAとカルニチンを基質としてアシルカルニチンとCoAにする反応を触媒するCarnitine palmitoyltransferase 1 (CPT-I)に着目してreal-time RT-PCRのΔΔCt法による検討を行った。 〔結果と考察〕筋線維タイプについては、投与7日目のシロスタゾール群および併用群で、投与28日目の全群(シロスタゾール群、L -カルニチン群および併用群)で対照群と比較してMyHC2bの発現量の低下が認められた。エネルギー代謝関連因子では、L-カルニチン群および併用群での投与28日目のIDHαの発現量の有意な増加が認められた。対照群と比較してどの群に置いても主に解糖系を中心にエネルギー代謝を行うタイプ2bの発現量が低下していたことから、虚血肢内転筋では他の筋線維の発現が優位であることが示唆された。また、L -カルニチン群および併用群でIDHαの発現量が増加していたことから、L -カルニチンが好気的エネルギー代謝を促進していることが示唆された。 【総括】 本研究により、シロスタゾールおよびL -カルニチンの併用はシロスタゾール単剤の歩行機能改善作用を上回る薬物療法になる可能性を見出すことができた。また、シロスタゾールは血管密度およびAng2/Ang1やPDGFのmRNA発現量の増加による血管新生促進作用が歩行機能改善作用に寄与し、L -カルニチンはエネルギー代謝関連因子のひとつであるIDHαの発現量を増加させ歩行機能を改善させることが示唆された。シロスタゾールおよびL -カルニチンの併用療法では、これらの作用が相加相乗的に寄与し、従来の有効性を上回る歩行機能改善作用が発揮されたことが推察された。 |
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Abstract | ||||||||||
内容記述タイプ | Other | |||||||||
内容記述 | Cilostazol and L-carnitine have been used as a first-line drug and supplement, respectively, in patients with peripheral arterial disease with intermittent claudication. In this study, the effect of the combination of cilostazol and L-carnitine has been investigated in rats with unilateral hindlimb ischemia. For 28 days, cilostazol and L-carnitine were administrated separately or as a combination. The distance walked before gait disturbance developed was measured using a treadmill for 5 days a week. The capillary density of the ischemic hindlimb was evaluated by immunohistochemical staining at days 7, 14, 21, and 28. Angiogenic, energy metabolic and muscular subtype gene expressions were measured by real-time RT-PCR at days 7 and 28. The greatest increase in the distance was observed in the combination therapy group when compared to the other groups. The capillary density in the adductor muscles of rats treated with cilostazol alone and combination therapy increased at day 28. Angiopoietin-2/Angiopoietin-1 expression ratios were higher, suggesting the promotion of angiogenesis, with cilostazol alone and combination therapy at day 7. Angiopoietin-2/Angiopoietin-1 and platelet-derived growth factor were higher with cilostazol alone at day 28, although these expressions did not change with combination. Isocitrate dehydrogenase α expressions were higher, suggesting the enhancement of energy metabolism, with l-carnitine alone and combination therapy at day 28. This is the first study to show functional improvement of the hind limb following combination therapy with cilostazol and L-carnitine in experimental animals. This study also revealed that cilostazol promotes angiogenesis, and L-carnitine additively contributes to functional improvement via enhancement of energy metabolism. | |||||||||
学位名 | ||||||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||||||
学位授与機関 | ||||||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||||||
学位授与機関識別子 | 32701 | |||||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||||||
学位授与年月日 | ||||||||||
学位授与年月日 | 2016-03-15 | |||||||||
学位授与番号 | ||||||||||
学位授与番号 | 甲第142号 | |||||||||
Rights | ||||||||||
値 | 本論文の一部は以下のとおり公表されている。(Part of this dissertation has been published as follows.) Shiga, T., Sahara, H., Orito, K.:Combination of Cilostazol and L–Carnitine Improves Walking Performance in Peripheral Arterial Disease Model Rats. Pharmacology, 2015;96:210-216(doi: 10.1159/000439090) The final, published version is available at http://www.karger.com/?doi=10.1159/000439090. |
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著者版フラグ | ||||||||||
出版タイプ | VoR | |||||||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 |