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アイテム
マウスにおける養育行動発現の神経機構解明
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3940
https://az.repo.nii.ac.jp/records/39404e096012-2fe7-40c0-9ab1-dfecab3659b5
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||||
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公開日 | 2014-05-20 | |||||||
タイトル | ||||||||
タイトル | マウスにおける養育行動発現の神経機構解明 | |||||||
言語 | ||||||||
言語 | jpn | |||||||
資源タイプ | ||||||||
資源タイプ | doctoral thesis | |||||||
アクセス権 | ||||||||
アクセス権 | open access | |||||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||||
著者 |
岡部, 祥太
× 岡部, 祥太
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抄録 | ||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||
内容記述 | 【背景】 マウスの養育行動は育仔経験や性経験などの社会経験を獲得することで活性化する(Okabe et al., 2010)。また、ホルモンも養育行動を制御している。しかし、経験の獲得とホルモンがどのように相互作用しながら養育行動を活性化するのか明らかになっておらず、経験による養育行動亢進の神経機構も定かではない。 養育行動を惹起するために幼若個体は様々なシグナルを発する。特に仔マウスの発する聴覚刺激への反応性は養育行動同様、社会経験の獲得により活性化することから(Uematsu et al., 2007; Okabe et al., 2010)、仔マウス刺激の受容認知機構と養育行動制御機構はある程度共通している可能性が高い。しかし、仔マウス刺激の受容認知機構は未解明である。 本研究ではどのような過程・機構を経て親は仔を認知し、養育行動を示すようになるのか、その神経機構を明らかにすることを目的とした。第1章では仔マウスの発するシグナルの受容認知機構の同定を目指し、第2章では養育行動の促進に重要な社会経験とホルモンがどのような関係性で養育行動を制御するのか調査した。第3章では経験による養育行動の促進をもたらす神経科学的メカニズムを調査した。 【方法】 第1章 <実験.1; 仔マウス嗅覚刺激と仔マウス聴覚刺激に対する母マウスの反応性> C57BL/6の母マウスに仔マウス聴覚刺激であるpup USVsと仔マウス嗅覚刺激などを様々な組み合わせで提示した。刺激に対する嗜好性を、二者選択課題を用いて観察し、母マウスが高い反応性を示す仔マウス刺激の同定を試みた。 <実験.2; 刺激に対する神経応答メカニズムの観察> 刺激提示により活性化する脳領域をc-fosを指標に観察した。 第2章 <実験.3; 経験獲得による巣戻し行動亢進に対する性腺由来ホルモンの効果調査> 雌雄マウスに対し性腺除去や性ホルモン投与など様々な処置を施した後、仔マウスへの連続暴露を行い(経験獲得)、養育行動の活性変化を巣戻し行動を指標に観察した。 <実験.4; オキシトシン産生細胞の関与調査> 性腺ホルモンと社会経験の獲得の両方に関係があるオキシトシンに着目し、性腺除去、性ホルモン投与処置後にオキシトシン産生領域である視床下部室傍核(PVN)のオキシトシン陽性細胞数を測定した。 第3章 <実験.5: 経験獲得による巣戻し行動亢進に関与する視床下部内側視索前野(MPOA)局所領域の同定> 育仔経験のない雌マウスを用い仔マウスを6回暴露する群(高感作群)と1回暴露する群(低感作群)、暴露しない群(感作なし群)を作出した。感作4日後に巣戻し行動試験を行い、仔マウス回収潜時を比較した。また、仔マウス暴露時と暴露4日後に仔マウスを再び暴露した際のMPOAの活性をc-fosを指標に比較し、暴露経験による行動亢進に関与する領域を調べた。 <実験.6: 経験獲得によるオキシトシン産生細胞の活性調査> 仔マウス連続暴露時のオキシトシン産生細胞の神経活性をc-fosとオキシトシンの二重免疫染色にて調査した。 <実験.7: 経験獲得によるオキシトシン分泌量の変化調査> 高感作、低感作、感作なし群を作出し、仔マウス暴露手続き終了後にMPOAの含有オキシトシン濃度をELISA法にて測定した。 <実験.8: オキシトシン機能阻害による巣戻し行動亢進への影響調査> 仔マウス暴露前に実験5にて同定した領域にオキシトシン阻害剤(OTA)を局所投与し、4日後の仔マウス回収潜時をsaline投与群と比較した。 【結果】 第1章 母マウスはpup USVsと仔マウス嗅覚刺激が共提示された時にのみ、 有意に高い反応性を示し、それぞれが個別に提示された時は嗜好性を示さなかった。また、2種類の刺激が共提示された時にのみ、感覚受容野に加え、MPOA・扁桃体中心核・基底核・分界条床核におけるc-fos陽性細胞数が無刺激群よりも有意に多かった。 第2章 仔マウス連続暴露による巣戻し行動の亢進には性差があり、メスでは巣戻し行動の亢進が生じるが、オスでは生じないことが明らかになった。性腺除去の効果はオスにのみ認められ、去勢後に仔マウス連続暴露を施すとメス同様の巣戻し行動の亢進が認められた。雌雄ともにテストステロンを投与することにより経験獲得による巣戻し行動の亢進が阻害された。オキシトシン陽性細胞数を調査したところ、行動と同様、メスと比較してオスの産生細胞数が少なく、去勢することによってメスと同量になった。また、テストステロンの投与により雌雄のオキシトシン産生細胞数が減少した。 第3章 仔マウス感作4日後の仔マウス回収潜時は高感作群が低感作群、感作なし群よりも有意に短かった。低感作群と感作なし群間には差が認められなかった。感作時のMPOAにおけるc-fos陽性細胞数は高感作群が他の2群よりも、低感作群が感作なし群よりも有意に多かった。一方、感作4日後の仔マウス再暴露時には高感作群のMPOA、 特に外側部(LPO)のc-fos陽性細胞数が他の2群よりも有意に多く、低感作と感作なし群間には有意差が認められなかった。感作時にc-fos陽性細胞と共染色されるPVNのオキシトシン産生細胞の割合は高感作群が低感作、感作なし群よりも有意に多かった。また、感作直後のMPOAにおける含有オキシトシン濃度は高感作群と低感作群が感作なし群よりも有意に高く、高感作群と低感作群間には差が認められなかった。経験獲得前にLPOへOTAを局所投与したことにより感作4日後の仔マウス回収潜時が対照群よりも有意に長くなった。 【考察】 第1章の実験より、C57BL/6の母マウスはpup USVsと仔マウス嗅覚刺激が共提示された時にのみ、これに高い反応性を示すことが明らかとなった。異なる2種の感覚刺激が相加的に養育行動を賦活化していることが示唆された。また、この反応性を制御する領域として扁桃体中心核・基底核・分界条床核が関与することが示唆された。これら領域は嗅覚刺激と聴覚刺激の両方を受容することが報告されており、複数の感覚刺激の統合処理を司っている可能性がある。また、2種類の刺激の共提示により養育行動の制御中枢であるMPOAの高活性化も認められたことから、仔マウス刺激への反応性が養育行動と類似の神経機構により支持されていることも示された。 仔マウス刺激への高い反応性は妊娠や出産に伴うホルモン濃度の変動や社会経験の獲得により発現する。第2章では養育行動亢進におけるホルモンと社会経験に関係性を調査した。その結果、テストステロンにより経験獲得による巣戻し行動の亢進の性差が生じ、 経験獲得の行動亢進効果が阻害されることが明らかとなった。また、行動と同様、オキシトシン産生細胞の数もテストステロンによる抑制を受けた。このことから、社会経験による巣戻し行動の促進にオキシトシン産生細胞が関与すること、テストステロンはオキシトシン産生細胞を介して社会経験による巣戻し行動の促進を阻害する可能性が示された。 第3章ではさらに経験の獲得による巣戻し行動亢進の神経機構を調査した。その結果、第2章同様、仔マウスに多く感作されることで巣戻し行動が活性化することが確認され、感作量が多くなることでMPOA、特にLPOが仔マウス刺激に鋭敏に反応するようになり養育行動が亢進する可能性が示された。感作によりオキシトシン産生細胞が活性化すること、MPOAの含有オキシトシン濃度が上昇したこと、LPOへのOTA局所投与により、感作4日後の仔マウス回収潜時の減少が阻害されたことから、経験による養育行動の亢進にオキシトシンが重要な役割を担うことが明らかとなった。 以上の研究より、経験獲得によりオキシトシン産生細胞が活性化し、LPOの神経細胞に作用することで養育行動が亢進することが示唆された。また、このような経験獲得による行動亢進には雌雄差が認められ、その主要因としてテストステロンによるオキシトシン産生細胞の活性抑制が示唆された。扁桃体や分界条床核が複数の仔マウス刺激を統合処理しMPOAに情報伝達することにより、母マウスは刺激への反応性を示すが、経験獲得により反応性が強化されることから、第3章で明らかにした神経機構が仔マウス刺激への反応性にも関与している可能性が高い。今後、LPOの神経細胞がオキシトシン受容体を持っているのか調査すると共に、その神経細胞の活性を特異的かつ人為的に操作することで、行動変化が操作できるか確認することにより、経験獲得による巣戻し行動亢進の責任細胞、神経領域、神経回路を実証できると期待している。 |
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学位名 | ||||||||
学位名 | 博士(学術) | |||||||
学位授与機関 | ||||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||||
学位授与機関識別子 | 32701 | |||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||||
学位授与年月日 | ||||||||
学位授与年月日 | 2014-03-15 | |||||||
学位授与番号 | ||||||||
学位授与番号 | 甲第58号 | |||||||
Rights | ||||||||
値 | 本論文の一部は以下のとおり公表されている。(Part of this dissertation has been published as follows.) 1.Shota, O., Kanako, K., Miho, N., Kazutaka, M., Takefumi, K. Testosterone inhibits facilitating effects of parenting experience on parental behavior and the oxytocin neural system in mice. Physiology and Behavior, 118: 159-164. 2013. 2.Shota, O., Miho, N., Kazutaka, M., Takefumi, K. Pup odor and ultrasonic vocalizations synergistically stimulate maternal behavior in mice. Behavioral Neuroscience, 127(3): 432-438. 2013. |
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著者版フラグ | ||||||||
出版タイプ | VoR | |||||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 |