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ジピリディリウム系除草剤(ジクワット)の胎子毒性について : 胎子動脈管に対する影響
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3826
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3826399e465a-de2d-46cd-bace-ab5c5fac986f
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-11-26 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | ジピリディリウム系除草剤(ジクワット)の胎子毒性について : 胎子動脈管に対する影響 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
高木, 博隆
× 高木, 博隆 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | ジピリディリウム系除草剤のジクワット(化学名;1,1'-ethylene-2,2'-bipyridylium dibromide)は1957年にイギリスのICI社で開発され、優れた除草効果を持つ農薬として我が国を始め世界各国で使用されている。その一方で、ヒトや動物の経口暴露による中毒では、口腔、食道等のびらん、潰瘍などの消化器系および肝臓や副腎などの高血流臓器などに対して強い毒性を示すことも知られている。しかしながら、ジクワット毒性に関する報告のほとんどは成体に対するものであり、その発生・生殖毒性に関しては少数の報告がみられるのみで、その胎子に対する毒性は成体に対するものと比較すると弱いものと考えられている。 胎子は、栄養分や酸素を母体から胎盤を通して吸収している。また、羊水中で生活しているため胎子の肺は機能していない。そのため、胎子では末梢から心臓へ送られた血液は肺を経由せず、成体でみられる循環とは異なる独自の循環を持っている。胎子循環の特徴の一つとして、動脈管の存在がある。 この胎子動脈管は、プロスタグランジンE_2の作用によって、その拡張が維持されており、プロスタグランジンE_2生合成を阻害する非ステロイド性の抗炎症薬であるインドメタシンを妊娠ラットに投与することによって、胎子動脈管が収縮することが確かめられている。 また近年、エンドセリンが出生後における動脈管の収縮閉鎖に関与しているとの報告がなされ、プロスタグランジンE_2以外の動脈管調節物質としてエンドセリンの存在が示された。 そこで、本論文は動脈管調節物質プロスタグランジンE_2とエンドセリンに注目し、ジクワットによる胎生期の特殊な血管である動脈管への作用およびその作用機序について、ラットを用いて究明した。 第1章においては、ジクワットの胎子動脈管に対する作用を検討するために、妊娠21日のラットにジクワットを種々の用量で皮下投与し、その後の胎子動脈管内径の変化を経時的に調べた。その結果、0.5mg/㎏投与群では動脈管に有意な変化はみられなかったが、2mg/kgおよび7mg/kg投与群では投与後3および6時間に有意な動脈管の収縮がみられた。2mg/kgおよび7mg/kg投与群でみられた動脈管の収縮を比較すると7mg/kg投与群においてより著しい収縮がみられた。これらの結果から、ジクワットは妊娠末期のラット胎子動脈管に対し収縮作用を持つこと、また、この収縮作用は用量依存的な変化であることが明らかとなった。 第2章においては、ジクワットの動脈管収縮作用が胎生期のいつの時期に発現するのかを明らかにするために、妊娠19、20および21日の母体にジクワットを7mg/㎏の用量で皮下投与し、投与後3時間の胎子動脈管内径の変化を調べた。その結果、胎齢19日の胎子においては動脈管の収縮は観察されなかったが、胎齢20日および21日の胎子では、動脈管の収縮がみられた。胎齢20日および21日の胎子でみられた動脈管の収縮を比較すると胎齢21日においてより著しい収縮がみられた。これらの結果から、ジクワットに対する胎子動脈管の感受性の臨界期は、胎齢19日と20日との間であること、また、胎子の成長に伴いジクワットに対する胎子動脈管の感受性もより高まることが示唆された。 第3章においては、ジクワットがプロスタグランジン合成酵素に対して阻害作用を有するかin vitroで検討を行った。アラキドン酸を基質として、ジクワットあるいはインドメタシン存在下で、プロスタグランジンエンドペルオキシンセターゼ(シクロオキシゲナーゼおよびヒドロペルオキシダーゼ)を含有するヒツジ精嚢ミクロソームを作用させ、プロスタグランジンG_2およびプロスタグランジンH_2の生成量を測定してみると、インドメタシン添加によって、アラキドン酸からプロスタグランジンG_2およびプロスタグランジンH_2の生成は阻害されたのに対して、ジクワット添加ではプロスタグランジンG_2およびプロスタグランジンH_2の生成は阻害されなかった。従って、ジクワットには、in vitroにおいてプロスタグランジン合成酵素であるプロスタグランジンエンドペルオキシンセターゼの阻害活性はないことが明らかになった。 第4章において、ジクワットのin vivoでの母体および胎子の血漿中プロスタグランジンE_2への影響の検討をする目的で、妊娠21日のラットにジクワットを7mg/㎏の用量で皮下投与し、その3時間後の母体および胎子の血漿中プロスタグランジンE_2濃度を測定した。その結果、ジクワット投与後の母体および胎子の血漿中プロスタグランジンE_2濃度には、対照群との間に有意な差は認められなかった。これらの結果は、ジクワットは母体および胎子におけるプロスタグランジンE_2の合成および代謝過程に何ら影響を及ぼさないことを示すものである。従って、ジクワットの動脈管収縮作用は、インドメタシンなどの抗炎症薬で提唱されているシクロオキシゲナーゼ阻害によるプロスタグランジンE_2合成阻害によるという作用機序と異なる機序を持つことが強く示唆された。 第5章においては、ジクワットの動脈管収縮作用機序における血管調節ペプチドであるエンドセリン(ET)の関与の有無を明らかにするため、非選択的ET receptor拮抗薬(TAK-044)を用いて胎子のETAおよびETB receptorを遮断した状態で、ジクワットを投与し、その後の胎子動脈管内径の変化を測定した。その結果、あらかじめTAK-044を投与しておくと、その胎子においてはジクワットによる動脈管収縮が阻止されていた。従って、ジクワットによる動脈管収縮作用機序に、血管調節物質であるETが大きく関与していることが示唆された。 第6章において、ジクワットによる動脈管収縮作用機序において、ETAとETBの2種類のET receptorの内どちらの受容体が関与しているかを明らかにする目的で、選択的ETA receptor拮抗薬(BQ-123)を用いて、ETA receptorのみを遮断した状態で、ジクワットを投与しその後の胎子動脈管内径の変化を測定した。その結果、あらかじめBQ-123を投与しておくと、その胎子においてジクワットによる動脈管収縮が阻止されていた。また、このBQ-123によるジクワットの動脈管収縮作用の阻害は、第5章で得られたETA/ETB receptorを遮断した場合と同じく完全にその作用を阻害していた。これらの結果から、ジクワットによる動脈管の収縮は、2種類のET receptor(ETAおよびETB)の内、ETA receptorを介したものであることが示唆された。 以上のことから本論文は、 (1) 妊娠末期のラットにジクワットを投与すると、その胎子の動脈管に用量依存的な収縮を引き起こすこと。 (2) 胎子動脈管のジクワットに対する感受性の臨界期は、妊娠19から20日の間であること。 (3) ジクワットの動脈管収縮作用機序は、インドメタシンなどの抗炎症薬で考えられているプロスタグランジンE_2を介したものとは異なること。 (4) ジクワットによる動脈管収縮に対して、血管収縮物質であるETが関与していること、また、その作用はETA receptorを介したものである。 の諸点を明らかにした。 |
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学位名 | ||||||
学位名 | 博士(学術) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1999-03-20 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第6号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |