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アイテム
胎生期ならびに離乳前後のウシ耳下腺の発達に関する機能形態学的研究
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3816
https://az.repo.nii.ac.jp/records/38167e80633b-903b-4428-8715-6a0ed3511bd5
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||||
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公開日 | 2013-11-26 | |||||||
タイトル | ||||||||
タイトル | 胎生期ならびに離乳前後のウシ耳下腺の発達に関する機能形態学的研究 | |||||||
言語 | ||||||||
言語 | jpn | |||||||
資源タイプ | ||||||||
資源タイプ | thesis | |||||||
著者 |
三浦, 浩史
× 三浦, 浩史
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抄録 | ||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||
内容記述 | 反芻家畜の消化器官は他の動物と比較すると、食餌性の影響によると考えられる特殊な構造をしており、分画胃から更に進化したと見られる複合胃(反芻胃)を持つことは周知の通りである。反芻胃のほぼ8割の容積を持つ第一胃は主に微生物による線維質の連続的かつ盛んな発酵が行われているため、唾液腺分泌物である唾液が第一胃消化作用に果たす役割は当然ながら非常に大きなものとなる。本研究は、主要な唾液腺の一つである耳下腺に着目して、この形態学的成熟と機能的成熟について複数の手法を用いて総合的に検討したものである。 まず、耳下腺の発達に伴う形態学的特徴を調べる目的で、胎生期間中のいかなる時期に未分化上皮細胞が腺上皮細胞(以下腺上皮と称す)と導管系上皮細胞(以下導管上皮と称す)に分化し始め、どのような特徴を示すようになるかを研究した。これらについては主に組織細胞学的方法による光学および走査型、透過型電子顕微鏡を、さらにレクチン組織化学的方法を用いて検討した。次に、耳下腺の発達に伴う機能的成熟を調べる目的で、炭酸脱水酵素(以下CAと称す)の発現する時期について、CAアイソザイムを用いて免疫組織化学的に検討した。 1. 耳下腺の形態学的変化 胎生前期(推定胎齢3ケ月頃)の上皮細胞は形態学的には未だ未分化な所見を呈しており、腺上皮に先立ち徐々に筋上皮細胞が確認された。またその後、腺上皮や導管上皮への分化の開始が認められた。胎生中期の後半頃(推定胎齢6ケ月から7ケ月にかけて)から上皮系細胞の急速な発達が観察され腺上皮には中性粘液多糖類と思われる分泌顆粒が多数認められた。さらに、出生直後になると腺上皮の分泌顆粒が徐々に消失し始め、離乳期を挟んでその前後の頃にはその顆粒は殆ど認められなくなっていた。また、導管上皮では線条導管が初めて哺乳期の時期に確認され、導管上皮の形態学的な完成が認められた。すなわち、耳下腺上皮細胞の形態学的成熟は出生時までと、それに続く離乳期までの時期に起きることが認められた。これ以降、耳下腺上皮細胞は量的発達を続けるが、成牛の耳下腺と基本構造は同一のものであった。 2. ウシ耳下腺における複合糖質のレクチン結合能の変化 耳下腺の腺上皮および導管上皮の形態学的分化を探るために複合糖質のレクチン結合能の変化を検索し、細胞膜結合糖鎖の面から耳下腺の形態学的分化を調べた。 本研究で用いた7種類のレクチンのうちDBA(GalNAcを認識する)およびRCA-I(lactoseを認識する)に顕著な反応の変化が認められた。そのうち、RCA-Iは胎生中期に初めて反応が陽性となり、DBAでは出生後に初めて導管上皮において反応が認められた。これらの現象はCA-IおよびDBAの認識する複合糖質が細胞の成熟の変化に何らかの関係を持つものと考えられ、これらの変化の後、実験で用いたすべてのレクチンの結合が一定となったことは腺上皮と導管上皮が新たな成熟過程に入ったことを示唆した。 3. CAアイソザイム(CA-I、CA-IIおよびCA-III)の組織内への発現とその組織局在 耳下腺の発達に伴う細胞の機能的成熟を探るために耳下腺の機能に重要な作用を持つCAアイソザイム(CA-I、CA-IIおよびCA-III)を指標として、それぞれの発現時期とその局在を調べた。 CA-IおよびCA-IIは胎生前期においてすでに間葉系組織に散在する未分化上皮系細胞に認められた。しかし同時期にはまだCA-IIIの局在は認められなかった。その後、胎生中期までにCA-IIIの局在は導管上皮に限局して見られるようになった。3種のアイソザイムの局在は時期を経て、次第に増強された。しかし出生直後からCA-IIは導管上皮からCA-Iは腺上皮から徐々に消失し始め、離乳前の個体では、CA-IIは腺上皮にのみ、CA-Iは導管上皮にのみ陽性反応が限局していた。このことは現象は胎生期の早期の耳下腺上皮細胞ではすでにCAが合成され、出生後の時期には、ほぼこの合成はそれぞれのCAアイソザイムが対応する細胞において完成され、機能的発現の準備が充分なされているものと考えられた。 4. 分泌型CAアイソザイム(CA-VI)の精製と組織内への出現とその組織局在 本研究ではウシの分泌型CAアイソザイム(CA-VI)を初めて精製し、その出現時期と局在を調べた。 CA-VIの精製は、まず、ウシの唾液を採取し、サルファミドをリガンドとしたアフィニティゲルに吸着させ、NaIとKCNで溶出した。さらに陰イオン交換クロマトグラフィーを行い溶出した分画の酵素活性を測定した。活性をもつ分画をSDS-PAGEで泳動した後、その単一バンドを切り出しウサギに免疫した。一ケ月後に全採血し抗血清を得た。精製した酵素は分子量35,000のサブユニットが6個集まった分子量210,000の分泌型の酵素であった。 耳下腺におけるCA-VIの組織局在は、胎生前期においてすでに上皮系のすべての細胞において陽性であった。CA-VIは出生直後の導管上皮から徐々に消失して、その後は腺上皮にのみ陽性反応を示すようになっていた。観察した全期間を通して高活性型アイソザイムのCA-IIと分泌型アイソザイムのCA-VIは発現と消失の時期、さらに局在する細胞の種類が非常に類似していた。CA-VIが他のCAアイソザイムと異なる点は糖鎖をもつ分泌型酵素であることであり、その機能は口腔内や胃内の液体環境を整えていると考えられる。それに対して、CA-IIIは腺上皮の細胞質に局在する細胞質性のアイソザイムであり、唾液の合成などを行う細胞のpHを調節していると考えられる。しかしながら、このような相違点があるにしても、CA-VIはCA-IやCA-IIIと比較して、CA-IIとその組織局在が非常に良く似た様相を呈していた。このようなことから、耳下腺における唾液の生合成に両者のアイソザイムが同様に重要な働きをもつものと推察した。導管上皮で働くCAと線上皮で働くCAとは作用機序が異なると考える。すなわちCA-IIとCA-VIは異なる分子構造をもつCAでありながら、唾液の生成と分泌後の唾液のpH調節を連続的に共同してコントロールしていると考えられる。 まとめ ウシ耳下腺は発育に伴う形態学的な成熟の過程において3つのステージがあることが示された。 第一のステージは未分化上皮細胞が腺上皮と導管上皮に完全に分かれる胎生中期までの時期である。この時期に筋上皮細胞の出現と同時に腺上皮でのPAS反応陽性の分泌顆粒の形成、CA各アイソザイムの発現などが認められた。 第二のステージは胎内の環境を離れ、体外環境にさらされる出生の時期である。この時期には、分泌顆粒は存在するが、PAS反応は陰性となり、かつCAの主要なアイソザイム(CA-IIおよびCA-VI)がこの時期の腺上皮に発現した。またレクチンとの反応では胎生期に陰性であったDBAが導管上皮において陽性に転換したことが確認された。これらCAアイソザイムの局在の変化やレクチン結合能の変化は導管上皮の機能的な成熟を示しているものと考えられる。 第三のステージは液状飼料すなわち“ミルク”を食物とする哺乳期から固形飼料に転換する離乳前後の時期である。この時期では腺上皮の分泌顆粒は急激に減少しており、分泌顆粒をもつ細胞自体の数も明らかな減少が認められた。導管上皮においては、この時期に初めて基底線条をもつ線条導管が確認された。さらに、レクチンとの反応性は一定となっており、CAの局在と同様に成牛での分布と同様であった。完全に離乳が終わった生後5ケ月頃になると、腺上皮および導管上皮は殆ど成牛と同様の形態を示していた。ウシでは離乳前後に液体のミルクから線維性の飼料へと食餌の内容が変わることにより、これらの現象は第一胃の粘膜の発達を引き起こされることが明らかである、この時期からウシにおいては第四胃内での化学的消化から第一胃内微生物発酵を主体とした消化へと移行するものと考えられた。第一胃内では微生物の線維成分の発酵によって作られた酸は胃の内容液を著しく酸性に傾けるため、胃内液性環境を調節する唾液を分泌する唾液腺への重要性が高まると考えられる。 今回の研究では、耳下腺もこれらの時期に合わせるように3段階の発達段階を経て組織の形態学的成熟を迎えていることが明らかになった。これらウシの耳下腺の発達に伴う機能形態学的変化は発達段階の生活環境に対応したものと考えられる。すなわち、胎生期間におけるこれらの諸現象は準備期間としてこれからの出生後における消化機構に対応したものであると考えられた。 |
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学位名 | ||||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||||
学位授与機関 | ||||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||||
学位授与年月日 | ||||||||
学位授与年月日 | 1997-03-20 | |||||||
学位授与番号 | ||||||||
学位授与番号 | 甲第75号 | |||||||
著者版フラグ | ||||||||
出版タイプ | AM | |||||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |