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アイテム
ラット胎生期卵巣の分化に対する精巣の抑制作用
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3815
https://az.repo.nii.ac.jp/records/38158129422f-8243-45d2-857c-7d8d8f311641
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||||
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公開日 | 2013-11-26 | |||||||
タイトル | ||||||||
タイトル | ラット胎生期卵巣の分化に対する精巣の抑制作用 | |||||||
言語 | ||||||||
言語 | jpn | |||||||
資源タイプ | ||||||||
資源タイプ | thesis | |||||||
著者 |
難波, 慈博
× 難波, 慈博
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抄録 | ||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||
内容記述 | 生殖腺は, 中腎の腹内側面に生殖腺堤と呼ばれる堤状の肥厚として出現する。初期の生殖腺は間葉組織とそれをおおう増殖肥厚した中皮からなる。未分化の生殖腺が分化するのは, 卵黄嚢に由来する原始生殖細胞が到着した後であり, その遺伝的性に従って, 卵巣または精巣となる。Witschi('51)の性誘導説によれば, 生殖腺原基は皮質成分と髄質成分とから成り, 髄質成分の誘導物質が働けば精巣に, 皮質成分の誘導物質が働けば卵巣になる。また, MacIntyreら('56)によれば, ラット胎子の精巣と卵巣を成体腎被膜下に併置移植したとき, 精巣は卵巣の発達を抑制したという。この異性間に見られる生殖腺の抑制作用のほとんど精巣が卵巣に対して発揮するものであり, より未分化な状態の精巣と, 分化が活発盛んな卵巣とを併置したとき(MacIntyre,'59)以外には, 卵巣は精巣に対して抑制作用を発揮しないと思われる。そのため, 精巣の卵巣に対する抑制作用の研究が進んだ。 この精巣による卵巣発達抑制物質の探究とは別に, 雌生殖道へと分化する中腎傍管(ミューラー管)を抑制する物質の存在がJosso('71)により示唆され, 現在では, ミューラー管抑制物質(MIS)あるいは抗ミューラー管ホルモン(AMH)として確立されている。このMISはセルトリ細胞から分泌され, ラットにおいて, 胎齢13日前後に発現し, 生後3週間で消失すると言われている(Hirobe,'92)。 以上のことがらを考慮に入れて, 本研究において, ラットを用いて, 胎生期を含めた発達期間中の精巣が卵巣に対して発揮する抑制作用が, どのような経過を辿って発現し消失するかということを検討することを目的とし, 次の事項を明らかにした。 1)未分化な時期から生後にかけて, 卵巣において卵胞はどの様に組織発生するか。 2)成体雄ラットの性ホルモンは, 卵巣原基の分化発達にどの様な影響を及ぼすか。 3)胎生期の精巣は卵巣原基の分化発達に, どのように抑制作用を及ぼすか。 4)卵巣原基の分化発達に対して, 胎生末期および生後の精巣は, どの程度抑制作用を示すか, また, いつまで抑制作用を持ち続けるか。 1. 原始卵胞の分化に関する光学および電子顕微鏡的観察 胎齢14日のラット卵巣原基において, 原始生殖細胞は中間中胚葉由来の未分化上皮細胞とともに混在している。胎齢が進むにつれて髄質から侵入してくる間葉組織は結合組織としてこれらを次第に区分し始める。同時に生殖細胞の集団は未分化上皮細胞によって小さな集団に分けられ, 一つの区分の中の原始生殖細胞の数は減るが, 生殖腺全体としては原始生殖細胞は細胞分裂を盛んに行い著しく増える。胎齢19日になると, 生殖細胞は一斉に減数分裂に入る。胎齢21日では, 一つの塊中の生殖細胞はさらに減るが, まだ完全な卵胞は形成されず, 複数の生殖細胞が同じ未分化上皮細胞を共有するようにして未分化上皮細胞が生殖細胞を取り巻く。生後2日になると, 初めて原始卵胞が出現する。その後は髄質に近い部分を中心に卵胞形成は進行する。生殖細胞の退行は観察期間中常に見られるが, とくに生後に著しく, 生殖細胞の選別が行われていることを示す。 この章の結論として, 胎生期から生後にかけての卵巣の発達は, はじめ生殖細胞の集団中を未分化上皮細胞がその間に入り込むように存在し細胞索を形成し, その後髄質から侵入してくる結合組織により細かく区分されるとこにより始まる。さらに, それぞれ細胞索内または卵巣実質内で細分化が進むが, 胎生期には卵胞形成までに至らない。しかし, 生後すぐに髄質側から卵胞の形成が進み, 卵巣周辺部へと広がっていく。 2. 成熟雄および去勢雄ラットへ移植した胎子卵巣原基の発達 胎齢14日の卵巣原基を, 去勢および無処置の成熟雄ラットに移植し, その後の卵巣の発達を観察した。去勢雄と無処置雄の両者において, 移植卵巣原基は, 前者においては20例中19例, 後者においては21例中19例において正常な発達を示した。従って, 胎齢14日の卵巣原基はホストの雄性ホルモンによって大きく影響されないことが示された。しかし, 例外となったり残り3例は未熟な卵胞と, 生殖細胞を含まない精細管様構造を併わせ持つ卵精巣へと分化した。また, 卵精巣様になった卵巣の精細管様構造の内部は, セルトリ様細胞のみから成っていた。この所見は胎齢14日の卵巣は, 精巣のアンドロジェンとは別の未知の因子によって, 管状構造へと導かれる可能性を持つことを示唆している。 3. 胎生期精巣の卵巣分化抑制作用 胎齢14日の卵巣原基と胎齢13~18日の精巣原基を成熟雄ホストの腎被膜下に併置移植し2週間後に, 卵巣と精巣の発達を観察した。胎齢13日の精巣原基と14日卵巣原基を併置移植すると, 精巣原基が正常に発達し卵巣原基の発達が抑制されたもの, 卵巣原基は正常に発達し精巣原基の発達が抑制されたもの, どちらも正常に発達をしたものと, いろいろなパターンを示した。胎齢14日の精巣原基と併置移植した卵巣原基には, 1例のみ卵胞が形成され, 併置した精巣原基も正常に発達した。胎齢15~18日の精巣原基と併置移植した卵巣原基は, 全例において分化が抑制され。第二章で観察されたような卵胞は全く形成されなかった。これらの所見は, ラットにおいて, 胎齢14日の卵巣原基に対する精巣原基の抑制作用は, 胎齢13日に出現し, それ以降その抑制作用は強くなることを示唆している。 4. 胎生末期および出生後の精巣の胎子卵巣分化抑制作用 胎齢14日の卵巣原基と胎齢21日, 生後15日, 20日, 30日および45日の精巣断片を成熟雄の腎被膜下に併置移植し, 2週間後に精巣の卵巣に対する分化抑制作用を観察した。胎齢21日の精巣と併置移植された卵巣原基のうち約70%が, 生後15日の精巣と併置移植された場合は50%が, 生後20日の精巣と併置移植された場合は42%が, 生後30日の精巣と併置移植された場合は33%が, 生後45日の精巣と併置移植された場合は5%が, 分化を抑制されたるすなわち, 日齢を増すに従って精巣の卵巣分化に対する抑制作用が弱まる傾向を示し, 45日では1例を除いて全ての卵巣原基が正常に発達した。これらの所見は, ラットにおいて, 胎齢14日の卵巣原基に対する精巣の抑制作用は胎齢18日以降も持続され, 胎生末期ではいくらか弱まり, 出生後は漸弱して行って, 生後45日に至ればほとんど消失することを示した。 以上, 本研究の結果から次のように結論が得られた。 1)胎生期から生後にかけて, 卵巣の発達は未分化上皮細胞と生殖細胞とからなる細胞集団が細胞索塊を形成することから始まり, この細胞索塊は結合組織によってさらに細分化される。はじめ生殖細胞は集団をなすが, やがて未分化上皮細胞の侵入によって個々に分かれていく。卵胞は胎生期には形成されないが, 生後すぐに髄質側から形成が進む。 2)成体雄ラットの性ホルモンは胎齢14日の卵巣原基分化発達に対して, わずかな例外はあるものの, ほとんど影響を及ぼさない。 3)胎齢13日の精巣原基と併置移植した卵巣原基のうち40%が, 胎齢14日の精巣原基と併置移植した卵巣原基のうち約95%が, 胎齢15日~18日の精巣と併置移植した卵巣原基は100%がその分化を抑制したことから, 卵巣原基の発達分化に対する精巣の抑制作用は, 胎齢13日に出現し, それ以降その作用は強くなると思われる。 4)胎齢21日の精巣と併置移植した約70%の卵巣, 生後15日の精巣と併置移植した50%の卵巣, 生後20日精巣と併置した42%の卵巣, 生後30日の精巣と併置した33%の卵巣がその分化を抑制された。このように, この抑制作用は日齢が増すに従って弱まる傾向を示し, 45日ではほぼ消失した。従って, 3)の実験結果と合わせて考えると, 卵巣原基の発達を抑制する主な要因は, 精巣が分泌するMISであると思われる。しかし, 文献的にはMISがほぼ消失していると思われる生後20日および30日の精巣が, 併置した卵巣の多数を依然として抑制していたことを考慮すれば, この抑制作用にMIS以外の要因も存在する可能性がある。 |
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学位名 | ||||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||||
学位授与機関 | ||||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||||
学位授与年月日 | ||||||||
学位授与年月日 | 1995-03-20 | |||||||
学位授与番号 | ||||||||
学位授与番号 | 甲第70号 | |||||||
著者版フラグ | ||||||||
出版タイプ | AM | |||||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |