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アイテム
卵細胞質内精子注入後のブタ体外成熟卵における受精および発生に関する研究
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3804
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3804073caf33-c550-43f4-b132-3480ab92a15b
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||||
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公開日 | 2013-10-01 | |||||||
タイトル | ||||||||
タイトル | 卵細胞質内精子注入後のブタ体外成熟卵における受精および発生に関する研究 | |||||||
言語 | ||||||||
言語 | jpn | |||||||
資源タイプ | ||||||||
資源タイプ | thesis | |||||||
著者 |
中井, 美智子
× 中井, 美智子
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抄録 | ||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||
内容記述 | 【序論】 近年、ヒトや家畜の生殖補助技術の一つとして、精子あるいは精子頭部を卵細胞質内に直接注入することで受精卵を作出する卵細胞質内精子注入(intracytoplasmic sperm injection: ICSI)法が発達してきた。これは、多精子侵入が生じやすく、凍結に対する精子の耐性に大きな個体差があるブタにおいて、単精子受精卵を作出するために極めて有用である。また、ICSIに用いる精子には運動性を要求されないため、新たな遺伝資源保存法として期待される技術である。本研究は、ブタにおけるICSIをした卵(ICSI卵)の発生能改善を目的として、精子側からのアプローチを行った。さらに、近年、新たな精子保存法として注目されている凍結乾燥法のブタ精子への適用を検討した。 第1章 ブタ体外成熟(IVM)卵由来ICSI卵の発生能改善に関する研究 ブタにおいて、ICSI卵の受精率および発生能の低さが問題となっている。そこで、ブタIVM卵を用いて作出したICSI卵の発生能を改善するため、精子側の要因に着目し、以下の実験を行った。 第1項: ブタ精子への先体反応誘起処理がICSI後の体外および体内発生に及ぼす影響 (1) ブタ精子への先体反応誘起処理がICSI卵の体外発生に及ぼす影響 通常受精の場合、精子は、先体反応や卵細胞質膜との膜融合を経るため、先体を失った状態となり卵細胞質内に到達する。これに対し、精子を卵細胞質内に直接注入するICSIでは、卵細胞質内においても精子は先体を有したままである。そこで、この先体がブタICSI卵の体外発生に及ぼす影響を調べた。精子の先体は、Calcium-ionophore (Ca-I)により除去した。そしてCa-I処理精子頭部をブタIVM卵に顕微注入したところ、体外発生率の向上は認められなかった。以上のことから、ブタICSIに用いる精子先体の有無は、ICSI卵の体外発生に影響を及ぼさないことが示唆された。 (2) 精子への先体反応誘起処理がブタIVM卵由来ICSI卵の体内発生に及ぼす影響 ブタでは、IVM卵を用いて作出したICSI卵の個体への発生能は明らかにされていなかった。そこで、Ca-I処理あるいは無処理精子頭部注入卵を未経産ブタ(Ca-I:3頭、無処理:4頭)の卵管に移植した。その結果、無処理区において2頭の妊娠が確認され、そのうち1頭から3匹の子ブタを得ることができた。以上のことから、ブタIVM卵を用いて作出したICSI卵が個体への発生能を有していることが明らかとなった。また、精子への先体反応誘起処理は、ICSI卵の個体への発生に影響を及ぼさないことが示唆された^1)。 第2項: ブタ精子に対する脱凝縮誘起処理がICSI後の精子核の形態変化および体外発生に及ぼす影響 通常受精では、精子核タンパクは、卵細胞質内侵入直後にprotamineからhistoneに置換される。その際、protamine分子間にあるS-S結合が還元され、精子核は脱凝縮する。しかし、ブタICSI卵では精子核脱凝縮不全が生じていると考えられており、人為的にS-S結合を還元させ脱凝縮を誘起させた精子を用いてICSIを行うことで、受精率ならびに発生率の向上が期待される。そこで、あらかじめdithiothreitolでS-S結合を還元させた精子をICSIし、経時的な精子核の形態変化および体外発生に及ぼす影響を調べた。さらに、電気刺激による卵活性化誘起処理が体外発生能に及ぼす影響も調べた。その結果、脱凝縮誘起処理は、精子核脱凝縮を促進するが体外発生に影響を及ぼすものではなかった。また、卵活性化誘起処理により発生が有意に向上した。以上のことから、ブタICSI卵において精子核脱凝縮不全は生じている可能性は考えられるが、発生率に重大な影響を及ぼすものではなく、卵の活性化誘起が発生率改善に重要であることが示唆された^2)。 第2章 ブタ精子の新たな保存法:凍結乾燥法に関する研究 精液の液体窒素による凍結保存には多くのコストやスペースを要する。そこで、より安価で効率的な保存法として凍結乾燥法が提案されている。近年、マウスなどにおいては凍結乾燥保存精子からICSIを介しての産子作出が報告されているが、ブタでは未だ成功しておらず凍結乾燥処理がブタ精子に及ほす影響について詳細に検討する必要がある。正常な胚発生には精子DNAの正常性が重要であり、精子DNAの断片化には精子に存在するendonucleaseが関与しているとされている。そこで、endonuclease活性はキレート剤で活性が抑制されることから、キレート剤であるEDTAあるいはEGTAを凍結乾燥処理時に用いる精子希釈液へ添加し、精子DNAの断片化およびそれを用いて作出したICSI卵の発生に及ぼす影響について検討を行った。 (1) 凍結乾燥処理が精子先体に及ぼす影響 ブタ凍結乾燥精子は、ブタ新鮮射出精子を超音波処理により頭部と尾部を分離後、Pig-FMメディウムに浮遊させ、ガラス管に100μLずつ分注し、-40℃で6時間予備凍結後、12時間凍結乾燥機に装着して作製した。そして、使用時には100μLの蒸留水を添加した。これを再加水とする。凍結乾燥処理後の精子先体をTriple-stainにより調べたところ、86.7%の精子が先体を損傷していた。 (2) 凍結乾燥処理時の希釈液へのEDTAあるいはEGTAの添加が精子DNAの断片化に及ぼす影響 凍結乾燥処理が精子DNAに及ぼす影響を検討するために、再加水直後のDNAの断片化精子率をTUNUL法により調べたところ、Pig-FM区では、10mM EDTA区、50mM EDTA区、50mM EGTA区および対照区である凍結乾燥処理を行っていない新鮮射出区に対し有意に高かった。このことから、精子希釈液にEDTAあるいはEGTAを添加することで、凍結乾燥処理過程における精子DNAの断片化を抑制できるということが示唆された。 さらに、再加水後の保持時間が精子DNAの断片化に及ぼす影響を検討するために、再加水0、60、120、180分後のDNA断片化精子率を調べたところ、10mM EDTA区、50mM EDTA区、50mM EGTA区では保持時間による差はみられなかった。それに対しPlg-FM区、non-chelateでは経時的な増加がみられ、特にpig-FM区では再加水180分後において他区よりも有意に高くなった。このことから、精子希釈液にEDTAあるいはEGTAを添加することで、加水後の保持時間中における精子DNAの断片化を抑制できることが示唆された。 (3) 凍結乾燥処理時の希釈液へのEDTAあるいはEGTAの添加がICSI卵の体外発生に及ぼす影響 凍結乾燥精子頭部をブタIVM卵にICSIし、その1時間後に電気刺激による活性化誘起処理を施した。そして、6日間の体外培養後の胚盤胞形成率は、Pig-FM区、non-chelate区、50mM EDTA区で再加水後の保持時間が長くなるにつれて低下していき、加水後180分においてPig-FM区は50mM EGTA区と10mM EDTA区よりも有意に低くなった。また、胚盤胞細胞数は、全ての保持時間区において50mM EGTA区が最も高い値を示した。これらのことから、ブタ凍結乾燥精子作製時の精子希釈液には50mM EGTAが適していることが示唆された。 (4) 凍結乾燥精子を用いて作製したICSI卵の体内発生能の検討 Pig-FM区のブタ凍結乾燥精子頭部を用いて作出したICSI卵のレシピエントブタ12頭への卵管移植を行った。その結果、移植後30日目に2頭が妊娠と判定され、そのうち1頭が移植後39日目に流産し、その際に2頭の胎子が確認された。このことから、凍結乾燥精子由来のICSI卵は39日齢胎子への発生能を有していることが示唆された。 【結論】 本研究により、ブタIVM-ICSI卵が個体への発生能を有していることが明らかとなった。そして、ブタICSI卵の発生に重大な影響を及ぼす主要因は、ICSIに用いる精子の先体の存在や核の凝縮状態ではなく卵の活性化であることが明らかとなった。また、精子DNAの構造的な正常性も胚発生に影響を及ぼしていることが示唆された。さらに、ブタ凍結乾燥精子がICSI卵の移植後39日齢胎子への発生支持能を有していることが示唆された。今後、卵活性化誘起法の併用や精子に存在する卵活性化因子に着目した人為的活性化誘起方法の検討、それとともにICSIに用いる精子DNAの正常性に留意した検討を行うことにより、ブタICSI卵の発生能の改善が期待される。 主論文 1) M. Nakai, N. Kashiwazaki, A. Takizawa, Y. Hayashi, E. Nakatsukasa, D. Fuchimoto, J. Noguchi, H. Kaneko, K. Kikuchi. Viable piglets generated from porcine oocytes matured in vitro and fertilized by intracytoplasmic sperm head injection. Biology of Reproduction 68, 1003-1008, 2003. 2) M. Nakai, N. Kashiwazaki, A. Takizawa, N. Maedomari, M. Ozawa, J. Noguchi, H. Kaneko, M. Shino and K. Kiknchi Morphological changes in boar sperm nuclei with reduced disulfide bonds in elecfrostimulated porcine oocytes. Reproduction (inpress) 副論文 1) M. Nakai, K. Kikuchi, M. Koichi and N. Kashiwazaki. Intracytoplasmic Sperm Injection in the Pig: Sperm-based Approaches to Improve Viability of Embryos Generated by ICSI. (Review) Journal of Mammalian Ova Research 21 (4), 185-191, 2004. 2) M. Nakai, E. Saito, A. Takizawa, Y. Akamatsu, M. Koichi, S. Hisamatsu, T. Inomata, M. Shino and N. Kashiwazaki. Offspring derived from intracytoplasmic injection of sonicated rat sperm heads. Journal of Mammalian Ova Research (in press) 3) E. Nakatsukasa, A. Takizawa, M. Nakai, Y. Niitsu, R. Yamaguchi, Y. Okuda, M. Shino, N. Kashiwazaki. Sperm motility and plasma membrane integlity of rat spermatozoa frozen in 0.25ml plastic straws and pellets. Journal of Reproduction Engineering 4, 156-159, 2001. 4) R, Kren, K. Kikuchi, M. Nakai, T. Miyano, S. Ogushi, T. Nagai, S. Suauki, J. Fulka and J. Fulka Jr. Intracytoplasmic Sperm Injection in the Pig: Where is the Problem? Journal of Reproduction and Development 49, 271-273, 2003. 5) K Kikuchi, H Kaneko, M Nakai, J Noguchi, M Ozawa, K Ohnuma, N Kashiwazaki. In vitro and in vivo developmental ability of oocytes derived from porcine primordial follicles xenografted into nude mice. J Reprod Dev (ln press) 6) 菊地 和弘, 中井 美智子, 柏崎 直巳. 体外成熟卵子への顕微授精による子豚の誕生 ブレインテクノニュース 93, 18-21,2002. 7) 柏崎 直巳, 中務 胞, 中井 美智子, 沈 明浩, 政岡 俊央, 紫野 正雄. ブタ新鮮射出および凍結融解精子の同種未成熟卵子との共培養による精子侵入試験. 日本養豚学会誌 38, 59-66, 2001. |
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学位名 | ||||||||
学位名 | 博士(学術) | |||||||
学位授与機関 | ||||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||||
学位授与年月日 | ||||||||
学位授与年月日 | 2006-03-15 | |||||||
学位授与番号 | ||||||||
学位授与番号 | 甲第29号 | |||||||
著者版フラグ | ||||||||
出版タイプ | AM | |||||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |