@phdthesis{oai:az.repo.nii.ac.jp:00003455, author = {佐藤, 礼一郎}, month = {2014-02-13, 2014-01-27}, note = {分娩は乳牛にとって大きな生理的ストレスであり、分娩を機に体内の生理・内分泌機能は大きく変化する。乳牛の分娩前後における疾病の一つに分娩性低カルシウム(Ca)血症がある。  乳牛の血液中Ca濃度は内分泌ホルモンにより厳密に維持されているが、分娩前後における胎子の骨格形成や食欲の低下、泌乳の開始に伴う乳汁中への大量のCa流出により、体内のCa貯蔵量が不足し、さらに分娩後1~2週間は骨吸収が抑制されるため、通常の内分泌的反応では対応できず分娩性低Ca血症を発症する。  分娩性低Ca血症は難産や胎盤停滞や子宮炎、乳房炎、ケトーシス、第四胃変位の発生など周産期疾病との関連も指摘されており、周産期疾病による間接的な経済損失を考慮すると、経営に与える影響は大きい。  分娩性低Ca血症の予防法として、乾乳後期の低Ca飼料の給与や飼料中陽イオン-陰イオン差(DCAD)、分娩前のVitamin D投与などいくつかあるが、完全に予防できる方法は未だ確立されていない。乳牛の周産期におけるCa代謝について解析することは分娩性低Ca血症の予防や治療のための基礎的知見となりうる。そこで本研究では、Ca代謝の中でも中心的な役割を果たしている骨代謝に注目した。ヒトでは骨疾患や内分泌疾患の評価や予知、治療効果のモニターに使用されている骨代謝マーカーを用いて乳牛の骨代謝について解析し、さらに骨代謝マーカーを用いて、骨代謝と深い関係があるといわれる副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)と骨代謝との関係についても検討した。 第1章 各月齢における血清オステオカルシン(OC)濃度、血清骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)活性値および尿中デオキシピリジノリン(DPD)濃度の動態  医学領域では骨代謝疾患において、骨代謝を評価する際に使用される代表的な骨代謝マーカーとして血清OC濃度、血清骨型BAP活性値および尿中DPD濃度がある。第1章では、乳牛においてこれらの骨代謝マーカーの変動に大きな影響を与えると考えられる月齢との関係について解析した。  血清OC濃度、血清BAP活性値および尿中DPD濃度ともに若齢期にピークを示し、それ以降、緩やかに低下していった。また、各マーカーともに若齢期においてばらつきが大きかったが、若齢期の活発な骨代謝回転と成長を反映しており、乳牛においてこれらの骨代謝マーカーは骨代謝動態を評価する有力な指標となりうることが明らかとなった。しかしながら、血清OC濃度、血清BAP活性値および尿中DPDを用いて、若齢期の骨代謝を評価する際には個体差を考慮する必要があることが示された。 第2章 周産期における血清オステオカルシン(OC)濃度、血清骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)活性値および尿中デオキシピリジノリン(DPD)濃度の変動  第2章では前章の結果を踏まえ、分娩性低Ca血症の発症率が大きく異なる初産牛と経産牛について、Ca、無機リン、OC、BAPおよびDPDの周産期における変動を観察し、さらに骨吸収マーカーと骨形成マーカーの比を用いて乳牛の周産期における骨代謝動態について解析した。  血清OC濃度は分娩前から分娩後にかけて、経産牛より初産牛の方が有意(P <0.05)に高値であった。血清BAP活性値の変動とは異なり、分娩14日後にはすでに増加傾向にあり、その周産期動態からOCは単なる骨形成マーカーと捉えるのではなく、むしろ骨代謝回転を反映するマーカーと理解する方が適当であると考えられた。  血清BAP活性値および尿中DPD濃度の変動から、泌乳量の増加に伴い、乳汁中に大量のCaが流出することに反応し骨形成が抑制され骨吸収が促進していることを反映しており、骨吸収によるCaの動員は分娩後1週間程度経過してから増加するという、放射性同位体を用いて周産期の骨代謝動態を解析した従来の報告を裏付けるものであった。  骨吸収マーカー(尿中DPD濃度)と骨形成マーカー(血清BAP活性値)の比を用いて骨代謝状態を評価したところ、分娩前から分娩後にかけて経産牛が初産牛より高値を示しており、経産牛では生理的に分娩後の泌乳開始に伴い血清Ca濃度が低下しやすいため、骨代謝回転を骨形成より骨吸収側に傾けてCaの要求に対応していることが示された。また、初産牛、経産牛ともに骨吸収のみならず骨代謝回転自体が分娩後1週間程度まで低下していることが明らかとなった。 第3章 周産期における乳汁中副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)濃度の変動  第3章では、ヒトやマウスでは骨代謝に影響を与えると知られているPTHrPについて、周産期の乳牛における骨代謝動態との関係を明らかにする目的で、分娩後の乳汁中PTHrP濃度の変化について経時的に観察し、さらに乳汁中PTHrP濃度と月齢、乳量および乳汁中Ca濃度との関係について検討した。  分娩時から分娩21日後までの乳汁中PTHrP濃度の変化を観察したところ、初産牛および経産牛ともに乳汁中PTHrP濃度は、分娩日に最低値を示し、分娩3日後から7日後にかけて著しく増加した。以降、初産牛は分娩21日後までほぼ同じ濃度で推移し、分娩日に比べ分娩14日後および21日後の乳汁中PTHrP濃度は有意(P <0.05)に高値を示した。経産牛は分娩日、分娩1日後、2日後、3日後に比べ分娩7日後、14日後および21日後に有意(P <0.05)な増加がみられた。初産牛の乳汁中PTHrP濃度は、分娩1日後、2日後および3日後において経産牛より有意(P <0.05)に高値を示した。  周産期における乳汁中PTHrP濃度が初産牛と経産牛で異なる点を検討するため、両牛群間の血中Ca濃度に有意差がなくなった、分娩3日後の乳汁中PTHrP濃度と月齢、乳量および乳汁中Ca濃度との関係を検討した。  分娩3日後の乳汁中PTHrP濃度と月齢の間に有意(P <0.01)な負の相関がみられた。  一方、乳汁中PTHrP濃度と乳量との間に有意な相関はみられなかったが、乳汁中PTHrP濃度と乳量との関係を産歴別で検討すると、初産牛では有意な相関をみなかったが、経産牛で有意(P <0.05)な正の相関がみられた。また、乳汁中Ca濃度との間に有意な相関関係は認められなかった  乳汁中PTHrP濃度も第1章の骨代謝マーカーと同様に若齢牛で高値を示すことが明らかとなった。また、分娩性低Ca血症の発症が少ない初産牛において、低Ca血症を発症しやすい分娩3日後までの乳汁中PTHrP濃度が経産牛より有意(P <0.05)に高値を示した。初産牛、経産牛ともに乳汁中PTHrP濃度は分娩3日後までは低値を示し、分娩後1週間程度経過してから増加することは、骨吸収によるCa動員時期と一致し、さらに他の乳成分とは異なる変動を示すことが明らかとなった。これらのことから、PTHrPが周産期乳牛のCa代謝、中でも骨代謝に深く関与していることが示唆された。  以上のことから、幼~若齢牛は骨代謝回転が盛んで、このことが若い個体の低Ca血症になりにくい要因の一つであることが明らかとなった。また、骨吸収によるCaの動員には分娩後1週間ほどかかるというこれまでの知見も骨代謝マーカーを用いた研究から裏付けられ、乳牛において骨代謝動態を評価する際に骨代謝マーカーが有用であることが明らかとなった。乳汁中PTHrPは骨代謝マーカーと同様に若齢牛で高値を示し、骨代謝マーカーを用いる際には、各マーカーの月齢変動や特性を十分に考慮する必要があることが示された。さらに、PTHrPがCa代謝に関与していることはヒトやマウスで知られているが、周産期の乳牛においても同様にPTHrPがCa代謝、中でも骨代謝に深く関与していることが示唆された。}, school = {麻布大学}, title = {骨代謝マーカーおよび乳汁中副甲状腺ホルモン関連タンパク質を用いた周産期乳牛の骨代謝の評価に関する研究}, year = {} }