@misc{oai:az.repo.nii.ac.jp:00003343, author = {鈴木, 武人}, month = {2013-06-29, 2014-08-19}, note = {プロバイオティクスに関しては、これまでの数々の研究がなされ、腸管感染症に対する感染防御効果についても証明されてきた。近年、in vivoあるいはin vitroの実験において、病原菌の発育抑制、腸管上皮細胞への付着競合阻害といったメカニズムにより、特定の病原菌に対する感染防御に特化した乳酸菌も報告されている。  細菌などの病原微生物の侵入に対する生体の感染防御機構は、感染後数時間以内にはたらく生来備わっている自然免疫(innate immunity)と、感染数日後からはたらく適応免疫(adaptive immunity)に分類される。  腸内細菌のなかでも、プロバイオティクスとして利用される乳酸菌やビフィズス菌には、適応免疫のなかでも主に細胞性免疫に関与する1型ヘルパーT(Th1)細胞反応の増強によるTh1/Th2バランスの改善効果が認められており、アレルギーやストレスに対する抵抗性を高めると同時に、細胞内寄生性の病原微生物感染に対しても予防的なはたらきが期待される。  本研究では、まず細胞内寄生性細菌感染症のモデルとしてSalmonella Enteritidis感染モデルラットを作出し、Th1反応を誘導するとされている乳酸菌(Lactobacillus属細菌)、および免疫賦活物質と考えられるカシス果汁由来のポリサッカライド(CAPS)とリゾープス麹抽出生理活性物質R&Uが、自然免疫や適応免疫の各ステージに与える影響を試験した。この試験によって供試菌株および各物質の免疫学的特徴を捉えることができる。これらの結果から、作用点が異なると考えられた菌株や免疫賦活物質を組合せることで、複合的な感染防御効果増強の可能性についても検討した。  L. reuteri JCM1112^T投与群では、S. Enteritidis接種後の体重増加率も良く、S. Enteritidis臓器侵入菌数は全項目で低下していたが、好中球数増加、単核食細胞活性化に対しての作用が弱く、有意差は得られなかった。Th1/Th2バランス改善能は4被検菌中、L. rhamnosus ATCC53103に次いで好成績を示した。  L. rhamnosus ATCC53103投与群では、S. Enteritidis臓器侵入菌数の有意な低下、単核食細胞の活性化、Th1/Th2バランスを4被検菌中最もTh1優位に改善するなど、自然免疫から適応免疫にわたって幅広く良好な結果を示し、宿主免疫能の向上に関与していた。  L. johnsonii LC1投与群では、好中球数増加と末梢血単球活性化がみられたが、Th1/Th2バランス改善効果は低い結果を示した。L. johnsonii LC1はL. rhamnosus ATCC53103と比較してヒト糞便中のムチンに対する付着性が高いので、付着競合阻害作用によって特定の病原菌に対する感染防御を発揮するものと考えられる。しかしながら、この場合では、腸管上皮に付着性が高いので宿主の免疫反応も高くなるとはいえず、付着性だけでこのことを言及するのは困難であると結論された。また、パイエル板などに存在する抗原提示細胞のマクロファージに異物が貧食された後の消化性、すなわち難消化性のために免疫能の亢進が維持されるという報告がある[58]。Lactobacillus casei Shirota株は、一般的なグラム陽性菌溶菌酵素であるリゾチームなどで細胞壁が消化され難く、マクロファージが貧食した後でも他菌と比較して速やかに消化されずに菌体成分が残存する。そのためにマクロファージを持続的に刺激し、結果として高い免疫能の向上作用を維持すると考えられている。この現象は菌種の細胞壁組成の差異に起因し、他のLactobacillus属細菌にも当てはまる可能性は大きいと思われる。それに比べてL. johnsonii LC1は、マクロファージ内において易消化性で、抗原としての刺激が持続しないことから、適応免疫の誘導能が低かったのではないかと推察された。それとは対照的に、L. rhamnosus ATCC53103では腹腔マクロファージ活性化やTh1反応の誘導について好成績を示したのは、同菌種のL. rhamnosus MA27/6Bにおいてリゾチームに対する抵抗性があると報告されているので、Shirota株同様に難消化性である可能性が示唆される。  L. plantarum MCRI164は、上記3被験菌と比較して特徴的な作用は見受けられなかったが、Th1反応の増強作用は認められた。  上記Lactobacillus属細菌のSalmonella Enteritidis感染モデルラットへの投与は、好中球、単球、マクロファージなどによる自然免疫の活性化から、Th1/Th2バランスの改善まで広範囲にわたってS. Enteritidis感染を防御する傾向がみられた。その作用は、菌株による効果の差も大きいが、薬剤などにみられる局所的な効果ではなく、病的状態を健常範囲内に復帰させる、すなわちホメオスタシスの維持に効果的であることが推察された。したがって、上記効果の認められたプロバイオティクスを長期に渡って摂取することは、日常的に受ける軽微なストレスによるTh2偏向や病原菌の侵入を事前に防御し、生体の健康を維持するものと考えられる。  カシス果汁関連物質では、カシスポリサッカライド(CAPS)、およびその低分子量ポリサッカライド画分CAPS-1.m.において、Th1/Th2バランスの改善、および各臓器に侵入したS. Enteritidis菌数の低減効果が認められた。特に、CAPS-1.m.では感染防御作用が強く、好中球新生促進作用が認められ、感染初期の生体防御に貢献しているものと考えられた。一方、CAPSでは比較的、末梢血単球、腹腔マクロファージ貧食能向上作用が認められ、高分子量のカシスポリサッカライド画分がこの作用を示すと推察された。  リゾープス麹抽出生理活性物質R&Uでは、桿状核好中球の増加、高い単球活性、肝臓内S. Enteritidis菌数の有意な低下、感染後の良好な増体などの事象から、主に自然免疫に作用し、感染を防御するものと推察された。また、Th1/Th2バランスの改善作用も併せもち、幅広い免疫賦活効果をもたらす物質であるといえる。  上記の結果に基づき、免疫賦活の作用点が異なる乳酸菌と物質を同時に投与することで、S. Enteritidis感染防御に対する相乗効果の有無を調べた。その対象には、両者とも、S. Enteritidis臓器内侵入菌数に有意な減少が認められず、その感染防御効果を供試した9被検物質中で順位付けすると、多くの項目でほぼ中間の順位を示したものを選択した。すなわち、Lactobacillus属細菌としてTh1/Th2バランス改善に良好な結果が得られたL. reuteri JCM1112と、貧食細胞活性化能が比較的高かったCAPSとの組合せを選んだ。  その結果、CAPSとJCM1112^T投与群では、侵入したS. Enteritidis菌数が3臓器すべてにおいて10^3CFU/gレベルと、本研究では最も強力な感染防御作用を示した。また、末梢血単球および腹腔マクロファージの貧食能測定では、腹腔マクロファージでそれぞれ単独投与時よも高い貧食能が認められた。以上の2点に関しては、CAPSとL. reuteri JCM1112^Tの同時投与は、それぞれの単独投与と比べ優れた相乗効果を得ることができた。また、Th1/Th2バランスと白血球数の各パラメータは、コントロール群の値に近似しており、感染後の良好な増体の結果からも、感染5日後ではすでにS. Enteritidis感染が終息に向かいつつあったと推察される。  以上、本研究では、S. Enteritidis感染モデルラットにおけるTh1/Th2細胞測定、マクロファージなど貧食細胞の貧食活性、白血球系の細胞数など免疫細胞の動態解析、およびS. Enteritidis感染状態の指標であるラット臓器への侵入菌数など6項目を指標に、Lactobacillus属細菌、およびカシス果汁ポリサッカライド(CAPS)、リゾープス麹抽出生理活性物質R&Uの感染防御効果を網羅的に解析した。試験したLactobacillus属細菌は、主にTh1優位の免疫誘導能と貧食細胞の活性化を示し、L. rhamnosus ATCC53103において最も高い感染防御効果を示した。Lactobacillus paracaseiでは菌株の違いにより、2型のヘルパーT細胞を活性化する場合もあることから、プロバイオティクスの免疫誘導能は、菌種によって一概に特徴づけられるものではなく、菌株レベルで特性を判断する必要があると考えられる。  カシスポリサッカライドでは、低分子量の画分であるCAPS-1.m.が、好中球新生促進作用とTh1反応の増強に.よる感染防御作用を示すことを証明した。高分子量と低分子量の両画分を含むCAPSでは、比較的、末梢血単球、腹腔マクロファージ貧食能の向上作用が認められたことから、この作用は高分子量画分によるものと推察された。  さらに、CAPSとL. reuteri JCM1112^Tの同時投与の試験から、免疫担当細胞に対する作用点が異なる組合せは、感染防御効果を増大させ、それぞれ単独よりも高い効果を発揮することを示したことも新しい知見である。既存のプロバイオティクス製品も、本研究で示した免疫学的手法を駆使し、その特徴を詳細に把握して適切な物質の組合せを検討することで、高い効果を生み出し、新たな特徴を打ち出すことが可能になると考えられる。  また、R&Uでは、白血球貧食能の向上および低下防止など、免疫担当細胞に対する効果がin vitroの実験系で証明されているが、本研究では、in vivoの実験系において初めて、末梢血単球貧食能向上作用およびTh1反応増強作用を認めた。}, title = {プロバイオティクスおよび各種免疫賦活物質の効果に関する研究 : サルモネラ感染モデルラットの白血球動態を指標にした感染防御機構の検討}, year = {} }