WEKO3
アイテム
Trametes versicolor産生ラッカーゼアイソフォームの分子多様性と環境汚染化学物質代謝性
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3297
https://az.repo.nii.ac.jp/records/329757154f04-1650-440c-96d3-19b1d9bc61a9
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
---|---|---|
![]() |
|
|
![]() |
|
Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
公開日 | 2013-02-21 | |||||||||
タイトル | ||||||||||
タイトル | Trametes versicolor産生ラッカーゼアイソフォームの分子多様性と環境汚染化学物質代謝性 | |||||||||
タイトル | ||||||||||
タイトル | Molecular diversity and metabolic variety of environmental pollutant in laccase isoforms from Trametes versicolor | |||||||||
言語 | en | |||||||||
言語 | ||||||||||
言語 | jpn | |||||||||
資源タイプ | ||||||||||
資源タイプ | thesis | |||||||||
著者 |
藤広, 覚
× 藤広, 覚
× Fujihiro, Satoru
|
|||||||||
抄録 | ||||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||||
内容記述 | 物理化学的環境汚染対策技術に対して、生物の持つ代謝機能を利用して汚染された環境の修復を目指す技術は、バイオレメディエーションと呼ばれ、低コストで環境負荷が小さいなどの利点があると考えられている。樹木の構成成分であるリグニンをリグニン分解系酵素と呼ばれる酵素群により酸化分解し、エネルギーとして利用している白色腐朽菌は、その化学構造がリグニンと類似している難分解性有機汚染物質に対しても代謝活性を有していることから、バイオレメディエーションに白色腐朽菌を利用した報告が数多くなされている。しかし複数種類存在するリグニン分解系酵素の中で、有機汚染物質の代謝との関連を詳しく検討した報告は少ない。よって、本研究ではリグニン分解系酵素の中でも特に多くのアイソフォームが存在し、様々な化学物質に対する代謝活性が期待できるラッカーゼに注目し、白色腐朽菌 Trametes vesicolor が産生するラッカーゼアイソフォーム遺伝子のクローニングと、麹菌を利用した高タンパク質発現系を用いて発現させたラッカーゼアイソフォームによる環境汚染物質代謝性について検討した。 NCBIデータベース上のT.versicolor由来の8種類のラッカーゼ遺伝子を、それらの相同性により4つのグループ(Lac1遺伝子、Lac2遺伝子、Lac3遺伝子およびLac4遺伝子)に分け、これらをクローニングするための4対のプライマーを作製した。T.versicolorのRNAを鋳型としてRT-PCRを行った結果、4種類の遺伝子に相当すると考えられる1.5kbp付近のバンド完全長cDNAを獲得した。4種類の遺伝子の塩基配列を比較したところ、互いの相同性は75%以下となった。NCBIデータベースに登録されている他のT.versicolor由来のラッカーゼ遺伝子との比較では塩基配列で数十塩基、アミノ酸配列で数アミノ酸が異なっていたが、これらの遺伝子はラッカーゼ特有の4か所の銅原子結合部位を保存していることが確認された。同定したこれら4種類のラッカーゼ遺伝子を、新規にDDBJに登録した。これらの遺伝子を大腸菌BL21株および小麦胚芽無細胞タンパク質発現系にて発現させたところ、SDSPAGEでバンドは確認したものの、ラッカーゼとしての活性は認められなかった。この結果は、タンパク質の翻訳後修飾の不足によってもたらされたものと考え、続いて麹菌での発現に取り組んだ。 麹菌Aspergillus oryzaeによる組換えタンパク質発現系は、大腸菌など原核生物を使った系と違い翻訳後修飾が可能であり、なおかつ、A.oryzaeはラッカーゼを内在しない。獲得した4種類のラッカーゼ遺伝子を、A.oryzaeに導入した結果、ラッカーゼの基質の一つであるABTSを酸化してラッカーゼ活性を示す形質転換体を獲得した。以降の研究は、研究に必要な量の酵素が獲得できたLac1およびLac4について行った。形質転換、A.oryzaeの培養液から陰イオン交換クロマトグラフィーで精製した酵素を等電点電気泳動で解析した結果、Lac1は等電点4.0を最大値とする複数バンドを、Lac4は3.6のユニークバンドを示した。Lac1およびLac4の酵素反応速度論的解析の結果、非フェノール性化合物であるABTSを基質とした場合、酵素と基質の親和性を表すミカエリス定数(K_m)は、LaC1が13.56μM、Lac4が20.17μMとなり、k_cat/K_mで表される反応性は、Lac1が0.69M/Sec、Lac4が0.44M/secとなり、Lac1の方が反応性が高かった。これに対して、フェノール性化合物であるシリングアルダジンを基質とした場合、K_mはLac1が93.92μM、Lac4が12.35μMとなり、k_cat/K_mで表される反応性は、Lac1が0.39M/sec、Lac4が0.74M/secとなり、Lac4の方が反応性が高かった。また、フェノール性基質であるグアヤコールに対しては他の基質と比較して親和性、反応性共に乏しいことが判明した。 エストロゲン作用等を示す内分泌かく乱物質の一つである6種類の水酸化PCBの試験管内代謝試験(1U相当の酵素と水酸化PCB各53pmolを37℃、1時間反応)では、全ての異性体に対して分解性を示した。試験に供した2種類の4塩素化水酸化PCBのうち、4-OH-2',3,5,5'-TeCBに対してはLac4(72.7%)の方がLac1(59.9%)よりも分解性が高く、4-OH-2',3',4',5'-TeCBに対してはLac1(34.2%)の方がLac4(18.2%)よりも分解性が高く、塩素の置換位置のみが異なる異性体間で、アイソフォームごとに分解性が異なった。また両アイソフォーム共に、4-OH-2',3',4',5'-TeCBよりも4-OH-2',3,5,5'-TeCBをより高度に分解することが判明した。さらに、2塩素化水酸化PCB、5塩素化水酸化PCBおよび6塩素化水酸化PCBではLac1とLac4でほぼ同様の代謝率となった。同じく内分泌かく乱作用のあるビスフェノールAの試験管内代謝試験(1U相当の酵素とビスフェノールA 0.22μmolを37℃、1時間反応)の結果、Lac1は分解率97.7%とほぼ全量を分解したのに対し、Lac4による分解率は21.0%であった。さらに、Lac1およびLac4のビスフェノールAに対するk_cat/K_mは、Lac1がLac4の約2倍の値であることが判明した。 また、ラッカーゼと5塩素化水酸化PCBの反応から、高速液体クロマトグラフィーにより2種類の中間代謝物が分離され、そのうちの一方は水酸基を介してC-O結合した二量体であり、他方は、ベンゼン環同士がC-C結合した二量体であることが初めて示唆された。 本研究では、T.versicolor産生のラッカーゼアイソフォームのクローニングと、水酸化PCBやビスフェノールAに対する代謝性を初めて明らかにした。 |
|||||||||
Abstract | ||||||||||
内容記述タイプ | Other | |||||||||
内容記述 | The laccase produced by white-rot fungi is well known that catalyzes the oxidation of a broad range of organic pollutants. Many researches concerning laccase metabolism have been performed with partially purified laccase from culture medium of white-rot fungi. Thus, in this study, the cloning of four full-length cDNAs of laccase isoform (Lac1-Lac4) genes from Trametes versicolor was performed using RT-PCR method, and the heterologous expression of four clones was tried in Aspergillus oryzae. As a result, the sequence homology of each clone was not more than ca. 75%. These four genes had conserved amino acid sequences for putative four copper-binding sites. The enzymatic property of Lac1 and Lac4 expressed in A. oryzae was compared. Both isoforms had the acidic isoelectric points under 4.0, and showed the highest activity for the oxidation of syringaldazine in the acidic pH range. The enzyme reaction kinetics analysis was performed with Lac1 and Lac4 and each k_cat/K_m value from both isoforms, which showed the efficiency of the oxidation of substrates, was compared. As a result, Lac4 had the two times higher efficiency of the oxidation of syringaldazine (phenolic substrate) compared to Lac1, on the contrary, the efficiency of the oxidation of ABTS (non-phenolic substrate) of Lac1 was higher than that of Lac4 by two times. In the study of the degradation of hydroxy polychlorinated biphenyls, which have the potential of endocrine disrupters, Lac1 and Lac4 showed some differences in the degradation rate of hydroxyl tetrachlorobiphenyl congeners, 4-HO-2',3,5,5'-TeCB and 4-HO-2',3',4',5'-TeCB. In addition, Lac1 showed about five times higher degradation rate toward 0.22 μmol bisphenol A compared to Lac4, and also Lac1 had two time higher k_cat/K_m value than Lac4. The reaction products of laccase from the oxidation of hydroxyl pentachlorobiphenyl were finally identified as the oxidized dimer intermediate, one of which was the C-C bonded dimer and the other dimer had the OH residue-mediated C-O bond. | |||||||||
学位名 | ||||||||||
学位名 | 博士(学術) | |||||||||
学位授与機関 | ||||||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||||||
学位授与年月日 | ||||||||||
学位授与年月日 | 2008-03-15 | |||||||||
学位授与番号 | ||||||||||
学位授与番号 | 甲第23号 | |||||||||
著者版フラグ | ||||||||||
出版タイプ | AM | |||||||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |