{"created":"2023-06-19T07:18:10.112906+00:00","id":3289,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"3b511a29-274e-414c-913f-38c6ee15e22c"},"_deposit":{"created_by":4,"id":"3289","owners":[4],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"3289"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:az.repo.nii.ac.jp:00003289","sets":["370:193:375"]},"author_link":["16393"],"item_10006_date_granted_11":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2009-03-15"}]},"item_10006_degree_grantor_9":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"麻布大学"}]}]},"item_10006_degree_name_8":{"attribute_name":"学位名","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreename":"博士(学術)"}]},"item_10006_description_7":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"鯨類はきわめて特殊な進化を遂げた哺乳類の一種であり、一般の人の人気も高い。このため、水族館などの施設において多くが飼育されている。本来、動物を人工的な環境下で適切に飼育管理するには、生理学的・栄養学的知見は必要不可欠であるが、鯨類におけるこれらの知見は少ない。また、血液検査と行動観察では、特に異常の見られなかった個体の死亡が頻繁に報告されており、既存の方法による健康評価だけでは限界があり、さらなる検査方法の導入が必要である。\n 遊離アミノ酸は血漿と組織中に存在し、腎臓において再吸収もしくは排泄されることにより、生体内で動的平衡を保っているが、生理的状態や病的状態により、そのバランスに変化が生じることが知られている。また、この動的平衡状態には種差があり、代謝の違いによりもたらされると考えられている。血漿、尿中、組織中遊離アミノ酸の解析は、生理学的特徴を明らかにする大きな手がかりとなると考えられる。さらに、生体内遊離アミノ酸のモニタリングおよびコントロールは人・動物を問わず、健康管理にきわめて重要であり、鯨類の飼育管理への応用も可能であると考えられる。本研究の目的は、鯨類のなかでも一般的に飼育されているハクジラ亜目の生体内遊離アミノ酸(カルノシン含む)を解析することにより、鯨類の生理学的・栄養学的知見を得ること、および飼育管理等への応用の可能性を検討することも目的とした。第1章では、バンドウイルカ(Tursiops truncatus)、カマイルカ(Lagenorhynchus obliquidens)、ハナゴンドウ(Grampus griseus)、オキゴンドウ(Pseudorca crassidens)の血漿遊離アミノ酸(以下、血漿アミノ酸)の解析を行った。第2章では、バンドウイルカの尿を用いて尿中遊離アミノ酸(以下、尿中アミノ酸)の解析を行った。第3章ではバンドウイルカとハナゴンドウの骨格筋、皮膚、およびハナゴンドウの腸管中遊離アミノ酸(以下、骨格筋、皮膚、腸管中アミノ酸)の解析を行った。各章では、比較対照として陸棲哺乳類であるマウスのアミノ酸解析も同時に行うことにより、鯨類でのアミノ酸に係る生理学的特徴を考察した。\n\n第1章 鯨類の血漿遊離アミノ酸の解析\n1)血漿アミノ酸解析の結果、それぞれの鯨類間比較において25アミノ酸中4-8アミノ酸に有意差が見られ、種差があることが明らかになった。マウスと鯨類との比較においては、25アミノ酸中11-12アミノ酸に有意差が認められた。種間における血漿アミノ酸組成の違いは、代謝の違いによりもたらされることが知られており、本研究でもそれが確認された。そのため、鯨類においても血漿アミノ酸は生理状態をよく反映しており、飼育管理を行ううえで、有用な指標となり得ると考えられる。\n2)バンドウイルカの血漿アミノ酸濃度において、メスよりもオス、生簀よりもプール飼育の方が高値を示した。性別や飼育環境が異なれば、ホメオスタシスも一様ではなく、アミノ酸必要量に違いが生じ、血漿アミノ酸組成に反映したと考えられる。そのため、血漿アミノ酸を指標とした栄養評価・管理を行うことは、鯨類の健康維持・増進にとって重要であると考えられる。\n3)鯨類では血漿3-メチルヒスチジンが、マウスの約50倍以上の高値を示した。また、マウス血漿では検出されなかったカルノシンが、鯨類の血漿中には含まれていた。これらが高値を示す要因として餌の影響の可能性が考えられた。そのため、給餌後の血漿3-メチルヒスチジン、カルノシン濃度を測定したが、どちらも有意な上昇は見られず、餌由来でないことが示された。\n4)血液検査と行動評価により、健康であると見なされた個体のフィッシャー比を測定した結果、100サンプル中12サンプルが2.4以下を示した。これは、人において肝機能低下が疑われる値であった。このことは、フィッシャー比を用いることにより、血液検査や行動評価では検出されなかった肝機能の低下を検知したことを示唆する。そのような個体はフィッシャー比を是正することにより、より適切な飼育管理が可能になると考えられる。\n\n第2章 バンドウイルカの尿中遊離アミノ酸の解析\n1)比較を行った25アミノ酸全てにおいて、バンドウイルカとマウスの尿中アミノ酸濃度に有意差が見られた。従来、鯨類と陸棲哺乳類の排泄能に大きな違いはないとされてきたが、アミノ酸の再吸収・排泄に関しては大きな違いがあることが明らかとなった。\n2)バンドウイルカの尿中3-メチルヒスチジン濃度(3.51×10^-2μmol/mg creatinine)はマウス尿中(16.69×10^-2μmol/mg creatinine)と比較して低値を示し、その再吸収が示唆される。\n3)マウス尿中と比較して、バンドウイルカ尿中にはカルノシンが約30倍高濃度で検出された。バンドウイルカにおいて、尿中にもカルノシンが高濃度で検出されたことは、3-メチルヒスチジンとは異なるカルノシンの多彩な生理作用に起因すると考えられる。\n4)バンドウイルカとマウスにおいて、尿中分岐鎖アミノ酸(尿中BCAA)濃度はそれぞれ5.68、48.86×10^-2μmol/mg creatinineであり、マウスが10倍近い高値を示した。このことは、バンドウイルカはBCAAの再吸収を積極的に行っていることを示唆する。\n\n第3章 鯨類の骨格筋、皮膚、腸管中遊離アミノ酸の解析\n1)バンドウイルカとハナゴンドウの骨格筋中カルノシン濃度(それぞれ66.91、69.58μmol/g tissue)は、マウス(1.35μmol/g tissue)と比較して高値を示した。基質であるβ-アラニンとヒスチジンも高濃度で含まれており、カルノシンは骨格筋で盛んに合成され、抗疲労作用や抗酸化作用によって、鯨類の高い運動能力に寄与していると考えられた。\n2)バンドウイルカとハナゴンドウの骨格筋、皮膚、腸管には、3-メチルヒスチジンが豊富に含まれていることが示された。そのため、鯨類における血漿3-メチルヒスチジンは骨格筋、皮膚、腸管の由来であることが示唆された。\n3)マウスの骨格筋中BCAA(1.34μmol/g tissue)と比較して、バンドウイルカとハナゴンドウの骨格筋中BCAA(それぞれ10.37、5.44μmol/g tissue)は、約10倍高濃度に含まれていた。本結果と尿中BCAA濃度の結果から、鯨類は骨格筋中にBCAAを積極的に取り込んでいると考えられた。骨格筋中BCAAは筋タンパク質分解の抑制、およびエネルギー源として、鯨類における持久的な筋運動を可能にする要因のひとつとして、寄与していると考えられる。\n\n第4章 総合考察\n 本研究では、鯨類における血漿、尿、骨格筋、皮膚、腸管中アミノ酸濃度を明らかにした。そのなかでも、血漿アミノ酸は、生体の生理的状態の変化をよく反映しており、鯨類の飼育管理にも応用できる可能性は高いと考えられる。例えば、各施設で定期的に行っている血液検査に加え、血漿アミノ酸濃度の測定はさらなる健康状態評価法として有用であると考えられる。また、そのバランスに変化が生じた場合、アミノ酸投与により、アンバランスを是正することで、病的状態の改善を試みることも可能である。\n 陸棲哺乳類において、3-メチルヒスチジンは筋タンパク質分解の指標として、広く利用されている。筋タンパク質分解により血中に漏出したこのアミノ酸のほとんどは、尿中に排泄され、再利用されることはない。しかし、鯨類では、尿中への排泄はわずかで、その大半が再吸収され、結果的に陸棲哺乳類の50倍以上の濃度で血中に維持されている。3-メチルヒスチジンは、抗酸化作用を有することが知られていることから、次のような進化が考えられる。海棲哺乳類は酸素を効率よく取り込み、かつ保持しなくてはならない。鯨類も同様であり、多量のミオグロビンなどによって代謝に必要なときまで酸素分子を貯蔵しなければならない。しかし同時に、酸素の持つ酸化作用や、代謝過程で発生する活性酸素種(ROS)を極力抑える必要がある。3-メチルヒスチジンの動態は、まさにその抗酸化作用にかかわるものである。鯨類の持続的な運動によって、血中に分解された3-メチルヒスチジンは、わずかに排泄されるのみで、再吸収により血中に高濃度で維持され、酸化反応やROSを抑制しているのである。この巧みな生理機構を持って、鯨類は海に適応したのであろう。カルノシンも3-メチルヒスチジン同様、抗酸化作用を持つが、カルノシンは多彩な生理作用を持つこと、過剰なカルノシンは生体にとって有害であることから、その速やかな代謝が必要となる。このことが3-メチルヒスチジンの動態と異なる一因であろう。さらに、カルノシンによる抗疲労作用、BCAAによる筋タンパク質分解抑制作用やエネルギー源としての役割は、鯨類の運動能力を説明する有力な証拠となる。\n これらのことは、鯨類の水中適応を説明するうえで、合理的なメカニズムである。すなわち、持久的な運動を必要とする鯨類では、筋肉(骨格筋)運動の結果放出された3-メチルヒスチジンを再吸収することにより、ROSを抑え、またカルノシンやBCAAの生理作用によって、水中適応を可能にしたものと思われる。一方、これらのシステムが破綻した場合、生体内では酸化反応の亢進、易疲労や筋タンパク質分解の亢進、さらにエネルギー源の枯渇によって、鯨類の正常な水中生活を困難にするであろう。これら血漿アミノ酸濃度を解析することは、鯨類の飼育管理への有用性も高く、またストランディングなどの原因を考えるうえでも有益である。"}]},"item_10006_dissertation_number_12":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"甲第43号"}]},"item_10006_version_type_18":{"attribute_name":"著者版フラグ","attribute_value_mlt":[{"subitem_version_resource":"http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa","subitem_version_type":"AM"}]},"item_creator":{"attribute_name":"著者","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"宮地, 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