@misc{oai:az.repo.nii.ac.jp:00003282, author = {椛島, 大輔}, month = {2013-02-21, 2014-08-19}, note = {The prevalence of Autism, Asperger's syndrome (AS) and High Functioning Autism (HFA) that are types of Pervasive Developmental Disorders (PDD) tend to increase among children. These children are characteristics of deficits in social relationships, which limit them in finding social support and adapting to personal relationships and social living environments. Furthermore, these deficits also may be factors that lead to cumulative negative experiences and undesirable behaviors, which eventually contribute to poor prognoses for psychological adjustment, including depression, suicide, paranoia and general social maladjustment. Therefore, the aim of this study was to improve several problems of children with Autism, AS or HFA by using dogs in support environment. First, it was studied the effect of attaching dogs in support environment to improve the mental health and social ski11s of five children with AS or HFA based on previous studied. In connecting with dogs, all the children indicated the improvement of communication with their mothers and supporters, self-esteem. Four out of five children showed improvement on The Child Behavior Check List (CBCL). Secondly, it was surveyed the effect of using dogs in support to transport social skills that nine children with AS, HFA or PDD improved from support environment to life environment with their mothers. All the children improved in verbal communication and self-esteem. Seven out of nine children showed improvement on CBCL. Eight children showed improvement in their ability to participate in school. Finally, it was examined the effect of using dogs in support environment to improve the mother-child relationships and the mental health of mothers. Four out of the five mother-child relationships showed improvement on Parent-Child Relationship. Four of the five mothers improved their mental health. The findings of this study suggest that support with dogs is a suitable invention tool for children with HF, AS or PDD and the mothers. Therefore, the support with dogs of this study is effective method for children with HFA, AS or PDD and the mothers to solve several problems in life environment. Keywords: children, high functioning autism, Asperger's syndrome, support with dogs, 広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorder)に分類される自閉症(Autism)やアスペルガー症候群(Asperger's Syndrome)、高機能自閉症(High Functioning Autism)の有病率は増加傾向にあり、早急な対応が求められている。現在は、本障害に対して薬物療法や行動療法、自立および生活支援の3手法が行われている。これら手法のいずれも本障害の子どもと援助者が対人関係を築き、2者間で問題の改善に取り組むことにより効果が得られる。しかしながら、2者間の関係構築が困難な場合が多く、十分な効果が得られていない。その結果、多くのケースが不良な予後を持ち、うつ病や全般的な社会的不適切さといった二次的障害を併発することになる。  一方、本障害の子どもは対人関係を構築する技能が未熟であり、対人において不適応を起こすことで、自己評価が低下し、抑うつ状態に陥ることがある。対人関係を構築する技能を含む生活技能の獲得は本障害の社会適応に有効とされており、さまざまな療法の最も基本的な課題である。また、獲得あるいは改善した生活技能の生活環境への移行は対人および環境への適応に重要であり、障害者支援における課題の1つである。近年は、家庭内での療育の中心的役割を果たす母親が子どもの療育により、深刻な身体的および精神的負担を抱えていることが報告されている。そのため、母親に対する支援を行い、療育における負担を減少させる必要がある。これらの問題を解決するためには、本障害の子どもと援助者あるいは母親との関係を構築するための「社会的潤滑油」と子どもが生活技能を獲得および改善するための「動機付け」が必要となる。  動物が「社会的潤滑油」と「動機付け」の双方の役割を持つことは多くの研究において報告されている。そのため、本研究では本障害の子どもと援助者あるいは母親との関係の構築と子どもの生活技能の獲得あるいは改善とそれらの生活環境への移行を図ることを目的とし、イヌを介在した発達支援を行い、その効果を検討した。本障害の子どもが社会性を持つといったイヌ本来の特性を視覚的に認識することで、生活技能の獲得あるいは改善の一助となると考えられる。さらに、犬種別の特性やイヌのトレーニングによる短期間での行動形成は本障害の多岐にわたる問題へ対応することが可能である。イヌは他の介在動物と比較して日常的な対応や観察が可能であり、飼育および衛生管理の側面で実践における汎用性に優れていると考えられる。  そこで、本研究では、第1章で、支援環境における自閉症またはアスペルガー症候群の子どもと援助者の2者間にイヌを介在し、イヌとの触れ合いにおいて生活環境での精神的健康の向上と生活技能の獲得あるいは改善を図り、その効果を心理尺度および行動観察により検討した。第2章では、自閉症またはアスペルガー症候群の子どもと援助者に生活環境の療育において重要な役割を担う母親を加えた3者間においてイヌを介在した発達支援を行い、子どもの生活環境における精神的健康の向上と獲得あるいは改善された生活技能の円滑な移行を図り、その効果を心理尺度および行動観察により検討した。生活技能を円滑に移行し、生活環境の対人および環境に適応するためには、生活環境における良好な母子関係と療育者である母親の精神的健康の維持が必要である。そこで、第3章では、第2章の支援において母子関係と母親の精神的健康の改善がみられたかどうかを心理尺度により検討した。 第1章 広汎性発達障害児に対するイヌを用いた発達支援の実践  過去の研究報告に基づき、自閉症またはアスペルガー症候群の子どもと援助者の2者間においてイヌと触れ合うことによる発達支援を行った。第1章では子どもの精神的健康の向上と生活技能の獲得あるいは改善を図ることを目的とし、その効果を子どもの行動チェックリスト(Child Behavior Check List: CBCL)/4-18および行動観察により検討した。対象は東京都内の障害者支援センターを経て、支援を希望した自閉症またはアスペルガー症候群の子ども5名で6ヶ月間にわたり12回の支援を実施した。  その結果、CBCLでは支援前後の得点が5症例のうち4症例で改善した。行動観察では全5症例にイヌへのコマンドや接触の反復といった機械的な関わりが自発的で情緒的な関わりへと変化した。また、対象者から援助者あるいは母親に対する一方的なコミュニケーションが、相互的なコミュニケーションへと変化した。さらに、低下していた自己評価が向上し、生活環境における意欲の増加が報告された。各対象者のイヌへのコマンドや接触の反復といった機械的な関わりと配慮の欠如した行動は、イヌの忌避反応を発現させた。各対象者はイヌの忌避反応を視覚的に認識し、イヌの肯定的受容を得るために行動を変化させたと考えられる。そのため、イヌの肯定的受容は各対象者に達成感を与え、これが「動機付け」として作用すると考えられた。また、対象者と援助者が経験や話題を共有することは関係を構築する一助になると考えられる。さらに、各対象者の支援環境における自己役割を明確にすることが、自己評価の向上に影響を与えたと考えられた。本支援における行動の改善および自己評価の向上はCBCLの改善に影響を与えたと考えられ、自閉症およびアスペルガー症候群に対するイヌを介在した支援の導入による有用性が示唆された。一方で、本章における生活技能の獲得あるいは改善が生活環境に円滑に移行するまでには至らず、さらなるイヌを介在した支援方法の検討が必要であった。 第2章 広汎性発達障害児とその母親に対するイヌを用いた発達支援に関する研究  高機能自閉症またはアスペルガー症候群の子どもと援助者に生活環境の療育において重要な役割を担う母親を加えた3者間においてイヌを介在した発達支援を実践した。第2章では子どもの生活環境における精神的健康の向上と獲得あるいは改善された生活技能の円滑な移行を図ることを目的とし、その効果をCBCLおよび行動観察により検討した。対象は第1章の5症例に4症例を加えた9症例とし、12回から46回の長期的な支援を行った。  その結果、CBCLでは支援前後の得点が9症例のうち7症例で改善した。行動観察では全9症例において援助者および母親に対する自己感情の表出方法が非言語から言語へと変化し、円滑なコミュニケーションが可能となった。また、4症例の復学と2症例の進学、2症例の学校生活への適応が報告されたことから自己評価が向上したと考えられる。対象者が言語を用いてイヌと関わるなかで、イヌの肯定的受容は「動機付け」として対象者の言語による自己感情の表出を促進すると考えられる。また、援助者および母親が対象者の言語による感情表出に肯定的受容を示すことで、対象者の自己評価の向上に影響を与えたと考えられる。対象者と援助者に母親を加えた3者間における本支援により、対象者と母親が目標とその達成課程を共有することで母親の対象者に対する障害受容および対象者への理解と対処技能を向上させる一助になると考えられる。  以上のことから高機能自閉症またはアスペルガー症候群の子どもと援助者の2者間に母親を加えた3者間におけるイヌを介在した発達支援は支援環境のみならず生活環境における効果的な生活技能の獲得あるいは改善と自己評価の向上に影響を与えることが示唆された。 第3章 イヌを用いた発達支援による母子間および母親への効果に関する研究  第3章では第2章で対象とした子どもの生活環境での療育において重要な役割を担う母親に焦点を置き、高機能自閉症またはアスペルガー症候群の子どもとその母親の母子関係の改善および母親の精神的健康の改善を図ることを目的とし、イヌを用いた母子支援を行い、母子関係と母親の精神的健康をPCR(Parent-Child Relationship)親子関係診断検査およびSUBI(The Subjective Well-being Inventory)によりその効果を検討した。対象は第2章の5事例とその母親であった。  その結果、PCR親子関係診断検査では全5事例の母子関係の得点に問題がみられたが、そのうち4事例で母子関係の得点が改善された。また、5事例のうち4事例において母親の精神的健康における問題の得点が増加し、改善がみられた。子どもと母親の2者間にイヌが介在することで双方の自己役割が明確となり、子どもに対する母親の障害受容および子ども本人への理解とともに、母親の対処技能の向上に作用したと考えられる。これは、第2章の各対象者のCBCLの得点の改善に関連しており、母親が生活環境における社会的資源を活用する一助になると考えられる。これより高機能自閉症またはアスペルガー症候群の子どもとその母親に対するイヌを介在した発達支援は母子関係および母親の精神的健康の改善に有用であることが示唆された。  以上のことから高機能自閉症やアスペルガー症候群の子どもとその母親に対するイヌを介在した発達支援は生活技能の獲得あるいは改善と自己評価の向上を促し、それを生活環境に移行することに有効であることが示唆された。また、本支援は母子関係のより良き関係の構築および母親の精神的健康の改善にも有用であることが示唆された。本研究では対象とした全ての子どもが生活環境において主に母親より療育を受けていた。実際には、療育の役割を担う人は家庭により様々であり、母親以外の場合も有りうる。しかし、本成果はさまざまなケースに応用することが可能であり、その汎用性は高い。すなわち、本研究は自閉症に対するイヌの活用の有用性を明らかにしたもので、動物応用科学分野における新たな領域を切り開いた。}, title = {自閉症児に対するイヌを用いた発達支援に関する研究}, year = {} }