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アイテム
炎症における微小脈管障害の病態生理学的研究 : モルモット多型核白血球由来の血管透過亢進因子の分離とその特性
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3275
https://az.repo.nii.ac.jp/records/32753cb745ae-2381-4adc-9ecc-dd0637fd66b1
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||||||
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公開日 | 2013-02-21 | |||||||||
タイトル | ||||||||||
タイトル | 炎症における微小脈管障害の病態生理学的研究 : モルモット多型核白血球由来の血管透過亢進因子の分離とその特性 | |||||||||
タイトル | ||||||||||
タイトル | Pathophysiological studies on microcirculatory disturbance in inflammation : isolation and characterization of vascular permeability factors derived from guinea pig PMN-leukocytes | |||||||||
言語 | en | |||||||||
言語 | ||||||||||
言語 | eng | |||||||||
資源タイプ | ||||||||||
資源タイプ | thesis | |||||||||
著者 |
竹内, 祐幸
× 竹内, 祐幸
× Takeuchi, Yuko
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抄録 | ||||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||||
内容記述 | 血管透過の問題は,脈管系の機能の本質にかかわる問題であり,古くから生理的に血管内外の静力学的圧と膠質浸透圧の問題として取扱かわれてきた。実際生理条件下での水,電解質のような小分子の物質の透過は,透過する分子の大きさに限度があり,その限度はインシュリン(分子量:約5500)程と考えられ,アルブミンなどの血清蛋白質の透過はほとんど陰性である。ところが病的条件下での管血透過は(浮腫として)蛋白質のような高分子物質の透過が特徴的に認められる。しかし,その透過機構の本態については,現在なお不明な点が少くない。 著者の協同研究者は,すでに独自の立場から,その炎症刺激として抗原抗体反応をえらび,その結果生じた炎症反応,すなわち,アレルギー性炎症(アルチュス現象)局所における局所の微小循環の障害が炎症局所で活性化され,遊離された別々のChemical mediatorに支配されることを示してきた。この一連の研究において,著者は,抗原抗体反応によって活性化された血清或は多核白血球から遊離される血管透過性因子の分離精製を行ってきた。 本研究においては,血管透過亢進の強さは静注されたradioactive(^<125>I)Evans blueのモルモット皮膚における局所透過を指標とし血管透過性の亢進をRadio chemicalに定量する方法を案出したあと,先ずモルモットの多核白血球由来の血管透過性亢進因子が抗原抗体反応の喰食過程に活性化され,細胞外に遊離することを定量的に示した。ついで,遊離された血管透過亢進因子を分離精製することによって少なくとも2種の異った蛋白性の因子よりなることを示した。最後にそれらの因子がアレルギー性炎症(アルチュス現象)局所でみられた即時型血管透過機序並びに遅延型血管透過機構にそれぞれ関与することを考察,ひろく病的条件下における微小循環系の障害機序解明への新しい立場を提供しようとするものである。 実験材料と方法 動物は成熟雄白家兎(1.8~2.2㎏)並びにモルモット(499-600g)のを使用した。 1. 免疫沈降物の調製 動物の感作は牛血清アルブミン10㎎のカリミョウバン懸濁液を用いて,ウサギの両側大腿腎部並びに肩甲骨下筋肉内に10ヶ所にわけて注射して行った。20日後に沈降素価を測定,血清1ml中に0.8-1.2mgの抗体量を含む動物のみを使用した。 免疫沈降物は,抗原と抗血清を等量域において沈澱した抗原抗体沈降物を集め,生理的食塩水で洗滌後,抗体窒素量を測定,2㎎NAb/mlに調整した。 2. モルモット腹腔内より多核白血球の分離 モルモットの腹腔内にグリコーゲン(0.1%)-ゼラチン(0.35%)の混液を注入,16時間後に採取した腹水から多核白血球を分離した。採取された腹水内の浮游細胞の85%以上は中性多核白血球で,わずかにリンパ球など単核球を含む。Hank's溶液で採取細胞を洗ったあと,細胞数を1mlあたり4×10^8個に調整した。実験に際しては,常にエオジン溶液を用いて,細胞のviabilityを検索,障害細胞が殆んど含まれてない細胞浮游液のみを用いた。 3. 血管透過亢進因子の分離,精製 Sephadex G-50を用いた分子ゲル沪過法とDEAE-Sephadex A-50によるイオン交換クロマトグラフィーの組合せによって粗製物を分離したあと分離,分析用のアクリルアミドゲル電気泳動法によって精製した。精製過程における蛋白量は分光光度計による280mμの吸光度から算出した。 4. 多核白血球による免疫沈降物の喰食実験 細胞浮游液(1mlあたり2×10^8或は4×10^8個)4容に対し,種々の濃度の免疫沈降物1容を加え,37℃の湯煎中で振盪加温する。加温後,経時的に細胞,免疫沈降物混液を採取,氷冷により反応をストップさせたあと,遠心により上清を分離,"Cell-free Supernatant"として,実験に用いた。対照には同一実験条件下で免疫沈降物を含まない細胞浮游液だけ,或は細胞を全く含まない免症沈降物だけのincubation fluidを用いた。 5. 血管透過亢進の強さの定量的判定法 あらかじめ^<125>I同位元素で標識したエバンスブルーを静注したモルモットの背部皮内に試験物質0.1mlを注射し,注射部位に集積した局所透過色素量を指標とする,皮膚切除後,同部の色素量を放射性同位元素追跡法により(また実際局所の透過色素を抽出することにより)定量的にあらわした。エバンスブルー,トリパンブルーのような色素は2%以上の濃度で動物体内に注入された時,生体内では血清蛋白と結合した色素と遊離の色素が流血中に存在するが,結合色素は生理条件下では血管外に透過しないことが知られているので,本実験で測定された局所透過色素量は病的条件下の血管透過を定量的に表示するものである。 6. その他の検定法 分離された血管透過性亢進因子の特性を知るために,生物学的にはモルモット腸管を用いた平滑筋収縮試験,生化学的にはプロテアーゼ並びにエステラーゼ活性の測定が行なわれた。 実験成績 I. 喰食多核白血球(PMNs)より血管透過亢進因子(PFs)の細胞外への遊離 一定のPMNs浮游液(2×10^8又は4×10^8 Cell/1ml)に対して,種々な濃度の免疫沈降物を加え,37℃で15分incubateされた時,PMNsは免疫沈降物を喰食することは,既に著者の協同研究者たちによって電顕並びにRadio chemicalに確認された。同時に,本実験成績にみられる様に活性化されたPFsが細胞外液中に検出された。この様なPFsの細胞外への遊離は,incubationの時間をながくしても(5分~60分)わずかに増加するだけである。従って,本実験で対象になったPFsは喰食後直ちに細胞内で活性化され細胞内に遊出されたものと思われる。 しかし,細胞浮游液の細胞数と添加された免疫沈降物の濃度の間には,一定の量的相関があり,2×10^8個のPMNsに対しては,0.25㎎Nの抗体量をもった免疫沈降物が加えられた時,PFsの遊離は最高値を示した。 II. 多核白血球由来の血管透過因子の分離・精製 (図 1) 図1に示した様にPMNsに免疫沈降物を加え,37℃で15分incubateしたあとの細胞外液を集め,PFs分離精製のためStarting mterialとした。採集された細胞外液からは,Sephadex G50→DEAE-Sephadex A-50→分離用ポリアクリルアミドゲル電気泳動→分析用ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により,少なくとも2つのTypeのPFs,すなわち,塩基性蛋白性のCationic PFと酸性蛋白性のAnionic PFが分離された。 III. Cationic PFとAnionic PFの特性 Cationic PFは抗ヒスタミン剤によって抑制されるshort actingの透過性因子で,耐熱性で,モルモット腸管を収縮しない。パパイン,α-キモトリプシンによって失活しないがトリプシンによって一部失活する。アミコンの超限外沪過法により分子量は10,000以下のペプチドと想定される。 一方,Anionic PFは,抗ヒスタミン剤によって抑制されないlong actingの透過因子で,易熱性,非透折性の酸性蛋白性物質で,Cationic PFと性状を異にする。モルモット腸管は収縮しない。α-キモトリプシン,トリプシンによっても失活しないが,パパインにより失活する。また,Anionic PFそのものにプロテアーゼ或はエステラーゼ活性をもたず,またよくしられているnatural protease inhibitorsにも全く影響されない。即ち,よく知られているMilesのグロブリン因子やカリクレインの様な血清由来の蛋白性透過性亢進因子とは明らかにちがうことを示している。 考察 よく知られているように,一般に炎症反応と呼ばれる現象は,動物組織に何か有害な刺激細胞の正常な代謝過程を障害するような因子-がはたらいた時その刺激に対して動物組織が示す局所反応で,組織細胞の変性,血管拡張,毛細血管の透過性の亢進(浮腫),リンパ管閉塞,游離細胞の游出,浸潤,増殖(肉芽)という一連の変化がきまって現われる。これらの変化は刺激の強さ,その作用時間,起炎因子のちがい,局所の組織臓器のちがいによって若干ちがってくる。しかし上述の変化は一つの基本様式として,すべての炎症反応に共通しておこる変化である。 著者の協同研究者は,すでに独自の立場から,その炎症刺激として抗原抗体反応をえらび,その結果生じた炎症反応,すなわち,アレルギー性炎症(アルチュス現象)局所における血管透過の亢進が,炎症刺激直後からあらわれる弱い一過性の抗ヒスタミンに可成り抑制される即時反応と,遅れて現われるが,はるかに強く長時間持続する抗ヒスタミンに全く抑制されない遅延反応との二相性に認められること,更に,それぞれが炎症局所で活性化され,遊離された別々のchemical mediatorsに支配されることを示してきた。 同時にまたこの様な炎症局所の形態学的検策,殊に電顕的解折で,免疫沈降物の血中,或は組織内への出現と多核白血球による免疫沈降物の喰食像が上述の血管透過進亢進の時期に平行して観察された。このことから,抗原抗体反応にって活性化された多核白血球の炎症における役割の一つとして,細胞から遊離されるChemical mediatorsが本実験では対象となった。 実際,本実験の成績から理解されるように,中性多核白血球由来の血管透過亢進因子が,抗原抗体反応物の喰食過程に細胞内で活性化され,細胞外に遊離することが示された。透過因子には少くとも2種あり,その一つは抗ヒスタミン剤によって抑制されるshort actingの物質であり,いま一つは,抗ヒスタミン剤で抑制されないlong actingの物質である。従って上述炎症巣における即時反応並びに長時間の遅延反応を説明するのに好都合の作用物質である。 既報のよく知られた血管透過性亢進因子との比較は表1にまとめられたが,著者の分離・精製した透過因子は,抗原抗体反応によってstimulateされた細胞から遊離するもので,多くの透過因子が血清由来であることと対比して,病的条件下における徴小循環系の障害機序解明に極めて有力な方向をあたえるものと考えられる。 最後に血管透過性亢進の強さを静注されたradioactiue Evans blueを指標として,radio chemicalに定量する方法が,色素の抽出法による成績と平行していることは,簡便で正確な一つの皮膚色素透過を指標とした抗炎症反応routine assayとして利用できることを示唆する。 (表 1) 結語 1. モルモットの腹水より分離した多核白血球と抗原抗体反応沈降物をin vitroでincubate(37℃)すると,直ちに細胞内で活性化された血管透過亢進因子が細胞外へ遊離する。この様な透過因子の遊離は,incubateされた細胞数と添加される抗原抗体反応物の間の量的相関に左右される。 2. 多核白血球由来の透過因子の分離精製は,Sephadexによる分子沪過法,イオン交換ゲルによるクロマトグラフ,アクリルアミドにする電気泳動法の組合せによって行われた。 その結果,少くとも2つの作用物質が分離された。一つは抗ヒスタミン剤に抑制されるshort actingの塩基性ペプチド性の物質(cationic PF)であり,いま一つは,抗ヒスタミン剤に抑制されない易熱性のlong acting の酸性蛋白性の物質(anionic PF)で,既報の血清由来の因子とは特質を異にする。 3. 上述因子は,アレルギー性炎症(Arthus 現象)局所の徴小循環傷害として観察された即時型ならびに遅延型の血管透過反応をそれぞれmediateする因子と考えられる。 |
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学位名 | ||||||||||
学位名 | 獣医学博士 | |||||||||
学位授与機関 | ||||||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||||||
学位授与年月日 | ||||||||||
学位授与年月日 | 1974-06-17 | |||||||||
学位授与番号 | ||||||||||
学位授与番号 | 乙第70号 | |||||||||
著者版フラグ | ||||||||||
出版タイプ | AM | |||||||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |