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アイテム
イヌの分泌型炭酸脱水酵素(CA-VI)の遺伝子発現に関する研究
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3272
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3272687b1017-9bea-49c7-83ee-aac99d778085
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||||
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公開日 | 2013-02-21 | |||||||
タイトル | ||||||||
タイトル | イヌの分泌型炭酸脱水酵素(CA-VI)の遺伝子発現に関する研究 | |||||||
言語 | ||||||||
言語 | jpn | |||||||
資源タイプ | ||||||||
資源タイプ | thesis | |||||||
著者 |
糟谷, 圭江
× 糟谷, 圭江
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抄録 | ||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||
内容記述 | 炭酸脱水酵素アイソザイムVI(CA-VI)はCAアイソザイムの中で唯一分泌型であり、他のCAアイソザイムに比べその動態は多岐にわたると考えられ、ヒツジやウシで唾液腺に多く含まれていることが知られている。イヌにおいてもCA-VIが存在することは既に知られているものの、詳細についてはほとんどが明らかにされていない。そこで、本研究ではイヌのCA-VIの分泌に関わる動態を知るために、特にその作用の中心と考えられる消化器系組織における遺伝子発現に注目した。これまでに報告のないイヌのCA-VIのcDNA塩基配列を決定した後、CA-VI遺伝子の発現をRT-PCRでCA-VI蛋白質の組織局在を免疫組織化学法、そして組織におけるCA-VI mRNAの発現をin situハイブリダイゼーション法を用いて定量的、定性的に検索し、総合的に検討した。 既知のヒトおよびウシのCA-VI cDNA塩基配列に基づいてdegenerateプライマーを設定し、PCRによりイヌ由来のCA-VI cDNAの一部を得た。続いて、3'-および5'-RACEを行うことにより、イヌのCA-VI cDNAの全長の塩基配列を決定した(DDBJ Accession No.AB080972)。その結果、イヌCA-VI cDNAは全長が1351塩基対(bp)で、320個のアミノ酸をコードする960bpの翻訳領域を含み、3'-非翻訳領域にはポリAシグナルがあった。他の動物のCA-VIアミノ酸配列と比較したところ、イヌCA-VIアミノ酸配列はウシより2アミノ酸残基、ヒツジより4アミノ酸残基短く、またマウスより3アミノ酸残基、ヒトより12アミノ酸残基長いことがわかった。また、コドンから想定されるイヌCA-VIのアミノ酸配列は、ヒト、ウシ、ヒツジ、マウスのアミノ酸配列と各々74%、69%、67%、52%と高い相同性を示した。他の動物と同様にイヌCA-VIアミノ酸配列においても2ヵ所のシステイン残基(アミノ酸配列の25番目と207番目)が保存されていた。また、亜鉛結合部位である3ヵ所のヒスチジン残基(アミノ酸配列の94番目、96番目と121番目)や、一般に糖鎖の結合が推測される領域(N-グリコシル化部位;Asn-X-Thr/Ser)が2ヵ所認められた。本研究で単離されたイヌのCA-VI cDNAがコードしている320個のアミノ酸には、疎水性アミノ酸残基からなるシグナルペプチド(17アミノ酸残基)が含まれており、分泌型蛋白質の特徴を裏付けるものであった。したがって成熟蛋白質は303個のアミノ酸残基よりなると考えられ、イヌCA-VIのサブユニット一つの分子サイズはおよそ30kDaと考えられる。 決定したイヌCA-VI cDNA塩基配列情報を基に新たに設定したプライマーを用いて、各組織におけるイヌのCA-VI遺伝子の発現を定性的に調べた。組織として、6個体のイヌの大唾液腺(耳下腺、舌下腺、下顎腺、頬骨腺)、食道、胃(胃底腺部、胃幽門腺部)、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸、直腸、膵臓、肝臓、骨格筋と、そのうち3個体については小唾液腺を含む口腔粘膜(舌有郭乳頭部、舌糸状乳頭部、頬部、口蓋部、咽頭部)由来のトータルRNAも用いてRT-PCRを行った。その結果、目的とする441bpの大きさの増幅産物が全ての大唾液腺と全ての口腔粘膜および食道に認められたが、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸、直腸、膵臓、肝臓、骨格筋においては検出されなかった。また、定量的PCRを行い、食道における遺伝子発現を基準とすると、頬骨腺を除く大唾液腺では食道の100倍以上、頬骨腺では約10倍の発現量を示したのに対し、舌有郭乳頭部と咽頭部口腔粘膜は食道とほぼ等しい発現量、舌糸状乳頭部、頬部、口蓋部では食道の0.1倍程度と低い発現量を示し、その他の組織では検出限界以下であった。 次に、免疫組織化学法を用いて消化器系の各組織におけるCA-VI蛋白質の組織局在の観察を行い、大唾液腺、食道、口腔粘膜と胃低腺部、胃幽門腺部に抗イヌCA-VI IgGに対する陽性反応を確認した。大唾液腺における陽性反応は、漿液性の腺細胞と導管上皮細胞に確認された。また、食道では食道腺、口腔粘膜では小唾液腺において漿液性の腺細胞からなる漿液性半月と、その導管上皮細胞および粘膜上皮に陽性反応が確認された。胃底腺部においては腺頚部から体部にかけて散在する壁細胞と表面上皮、胃幽門腺部では表面上皮のみに陽性反応が確認された。 RT-PCRと免疫組織化学法の両方において陽性であった大唾液腺、舌糸状乳頭部および食道と、RT-PCRでは陰性で免疫組織化学法のみで陽性反応が見られた胃底腺部、およびいずれの方法でも陰性の結果を示した結腸、膵臓、肝臓、骨格筋において、イヌCA-VI cDNAの一部をプローブとして、in situハイブリダイゼーション法を実施した。その結果、CA-VI遺伝子発現が確認されたのは、大唾液腺(耳下腺、下顎腺、頬骨腺)のみで、その陽性反応は、各々の唾液腺の漿液性の腺細胞のみに確認され、粘液性の腺細胞や、導管上皮細胞には認められなかった。その他の組織では陽性反応は認められなかった。 イヌの消化器系の組織の中で大唾液腺、小唾液腺を含む口腔粘膜および食道腺を含む食道粘膜においてCA-VI mRNAの発現とCA-VI蛋白質の組織局在が認められ、これらの組織におけるCA-VI蛋白質の分泌が示唆された。特に大唾液腺においてCA-VI mRNAの多量の発現が認められ、さらにin situハイブリダイゼーション法における漿液性の腺細胞でのCA-VI mRNAの発現が確認されたことから、唾液中に含まれるCA-VI蛋白質のほとんどの産生を大唾液腺が担っているものと考えられた。また、食道腺と小唾液腺は大唾液腺に類似した分泌能をもち、両者ともその機能は大唾液腺に類似していることが示された。以上より、CA-VIの消化器系器官全体の主要生産部位は大唾液腺と口腔、咽頭口部、食道という一連の上部消化管であることが明らかになった。 口腔内へと分泌されるCA-VIの役割を示唆する報告は未だ見られないが、CO_2 +H_2O⇔H^+ +HCO_3^-の反応を触媒し、口腔内のpH調節を司るものと考えられる。漿液性腺細胞の細胞質性の炭酸脱水酵素はH^+とHCO_3^-を供給することによりNa^+HCO_3^-の腺房腔内への移動に関与していると考えられている。同様に導管上皮の炭酸脱水酵素はH^+とHCO_3^-を供給することにより、原唾液の修飾に関与しているとされる。また、唾液腺導管上皮におけるNa^+とK^+の移動に関して、それぞれ共輸送されているイオンとしてH^+を用いるantiport機構が働いていることも示されている。本研究によって明らかにされたCA-VIの蛋白質および遺伝子発現の局在部位より、CA-VIはこのように他の炭酸脱水酵素アイソザイムの働きを受けて唾液中に分泌され、消化管内の酸を中和し、口腔内、食道、胃のpHを至適な状態に保ち、その上部消化管内環境を維持している必須な酵素であると推察された。また、分泌型酵素であるCA-VIはイヌの上部消化管管腔表面に対して、同じくすでに報告がある唾液腺腺房細胞内に出現する炭酸脱水酵素I型アイソザイム(CA-1)およびII型アイソザイム(CA-II)のような酵素活性の高い細胞質型酵素と相互に補完しながら全体の緩衝系を成立させるという重要な機能を持つ酵素と考えられる。 |
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学位名 | ||||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||||
学位授与機関 | ||||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||||
学位授与年月日 | ||||||||
学位授与年月日 | 2003-03-19 | |||||||
学位授与番号 | ||||||||
学位授与番号 | 甲第96号 | |||||||
著者版フラグ | ||||||||
出版タイプ | AM | |||||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |