{"created":"2023-06-19T07:18:08.664303+00:00","id":3265,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"eb10375e-c0d8-409a-a107-d8dc92adb1f9"},"_deposit":{"created_by":4,"id":"3265","owners":[4],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"3265"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:az.repo.nii.ac.jp:00003265","sets":["370:193:375"]},"author_link":["16359"],"item_10006_date_granted_11":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2002-03-15"}]},"item_10006_degree_grantor_9":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"麻布大学"}]}]},"item_10006_degree_name_8":{"attribute_name":"学位名","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreename":"博士(学術)"}]},"item_10006_description_7":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"内分泌かく乱化学物質(endocrine disrupting chemicals; EDCs)は、生殖系をかく乱するホルモン様物質として働くだけでなく、催奇形性や発育不良などの様々な毒性を示す物質である。わが国では、67種の化学物質をEDCsとしているが、世界中でその疫学調査、汚染状況および毒性評価を行っている。EDCsの中で、近年、特に注目される化学物質の一つにポリ塩化ビフェニル(polychlorinated biphenyls;PCBs)がある。PCBsの最大曝露経路はこれらに汚染された食品に由来する経口曝露であるので、PCBs汚染された食品を迅速に検出し流通から排除することはヒトの被曝を防ぐと考えられる。また、PCBsの生体内安定性・解毒メカニズムを理解することは、生体からのPCBsの排泄および代謝促進に有益な情報をもたらすであろう。\n 本研究では、PCBs投与したラットをPCBs曝露畜産動物のモデルとして、その際の生体への影響を検討する手段として肝臓ヘム錯体を指標にした電子常磁性共鳴吸収(EPR)法による解析を行った。PCBsには最も毒性の高い3,3',4,4',5-penta chlorobiphenyl(PeCB)(PCB126)を用いた。投与量は厚生省生活衛生局の研究報告データ(1999年)に基づき、ヒトが80年間で被曝されるであろうEDCsの総量を算出し、等価毒性量のPCB126(3μg/kg bw)を定めた。すなわち、PCB126を0.3、3.0、30、および100μg/kg body weight(kg bw)量で単回、もしくは4回経口投与したSprague Dawleyラット(SDラット)を、PCBs曝露モデル動物として供試した。\n まず、短期間にその量で被曝した際の血清値変化およびチトクロームP450s(P450s)の一種であるCYPIA1およびCYPIA2の誘導について検討した。PCB126を投与終了24時間後に安楽死させ血液および脳、脾臓、腎臓、肝臓を採取し、血清値および肝臓中のミクロソーム画分のCYPIA1およびCYPIA2を検出した。PCB126投与により血清値は若干変化したが投与量に依存した変化はみられず、一般的な肝障害でみられるような血清値の挙動は認められなかった。PCB126を3μg/kg bw/単回もしくは0.3μg/kg bw/4回投与量以上でCYPIA1の誘導が、30μg/kg bw/単回および3μg/kg bw/4回投与量以上においてCYPIA2の誘導が、各々ウエスタンブロッティング法により確認され、誘導量は検出したバンドの濃さからPCB126投与量に依存して増加する傾向にあった。\n PCB126を投与したSDラットの脳、脾臓、腎臓、肝臓および肝ミクロソームにおけるヘムタンパク質の解析をEPR法によって行った。脳のEPRスペクトルは、PCB126曝露によりカタラーゼと思われるEPRシグナルの減少が確認された。このことから、PCBs曝露によって脳内に生じた活性酸素が消去されず酸化ストレスによって神経毒障害が引き起こされる可能性が示唆された。脾臓では低磁場領域でのEPRスペクトルにおいて、PCB126曝露により脾臓中のヘモグロビンが酸化ストレスを受け酸化型ヘモグロビンに変化し、結果的に高磁場領域でニトロシルヘモグロビンが減少していた。腎臓のEPRスペクトルにおいて、PCB126投与によってP450sに由来すると思われる特異的な3つのシグナル波形と類似したシグナル波形を確認したが、PCB126投与量に依存したシグナル強度の変化は認められなかった。脳、脾臓および腎臓から検出されたいずれのEPRスペクトルも、PCB126投与量とのシグナル強度依存性を示すものは認められなかった。\n 肝臓のEPRスペクトルにおいて、正常ラットおよびPCB126投与ラットのいずれでも検出されるシグナル(g=2.40、2.24、1.93)とPCB126投与によってみられるシグナル(g=2.49、2.26、1.87)の検出を認めた。両者のシグナルはP450sにみられる特異的なシグナル波形を示すので、それぞれの由来から、以下、2.40種-P450および2.49種-P450と表記する。2.49種-P450はPCB126の投与量に対してシグナル強度依存性を示した。これは、PCB曝露量の生体内指標として、肝臓EPRスペクトルが有用であることを示唆するものであった。また、2.49種-P450のEPRシグナルは妊娠期間中にPCB126曝露を受けた胎児および子SDラットの肝臓からも検出された。\n PCB126の曝露により、SDラットの肝臓で検出された2.49種-P450の特異性について検討することを目的として、3-メチルコラントレン、四塩化炭素、3,3',4,4',5,5'-hexa chlorobiphenyl(PCB169)あるいは2,3,7,8-tetra chlorodibenzo-ρ-dioxin(2,3,7,8-TCDD)を投与したSDラット肝臓についてEPR解析を行った。その結果、3-メチルコラントレン、四塩化炭素およびPCB169投与群のSDラット肝臓では2.49種-P450は検出されず、2,3,7,8-TCDD投与群においてのみg値2.49にシグナルを検出した。このことから2.49種-P450がいくつか特定のEDCsによって誘導されることを示唆した。一方、g値2.49およびg値2.40シグナル強度の数値化を試み、肝臓中のMnシグナルを指標とした相対強度S_2.49およびS_2.40で表した。この結果、PCB126曝露量に依存したS_2.49の増加を認めると共に、GC/MSによる定量の結果と傾向が一致し、被曝量の検討におけるEPR法の有効性が示された。すなわち、EPR法はヒトへの曝露経路として最も多いと考えられる家畜(哺乳動物)に関して、PCB126などEDCs曝露の有無あるいは被曝量の簡易的推定における簡便な検出法となり得ることを示唆するものであった。\n 2.49種-P450の構造について検討することを目的とし、PCB126を投与しリポポリサッカライド(LPS)処理したラット肝臓のEPRスペクトルの変化、PCB126を投与して得られた肝臓を還元性試薬で処理した際のEPRスペクトルの変化、また、ヘム鉄の異方性に由来して検出される3つのEPRシグナルのg値に基づく結晶場解析を行った。生体をLPS処理すると、マクロファージが刺激されNOが誘導されるのに伴って、肝臓中にあるP450の6配位座がヘム鉄との親和性に依存してH_2OからNOに置換される。すなわち、正常なP450の場合、g値2.0付近にNO-P450特有の超微細構造をもつEPRシグナルが検出されるが、2.49種-P450ではこのNO-P450シグナルが検出されなかった。この結果より、2.49種-P450のヘム配位座にNOより親和性の高い物質が配位していることが示された。また、肝臓を適量の還元性試薬(アスコルビン酸ナトリウム,アジ化ナトリウム,亜二チオン酸ナトリウム,1-メチルイミダゾール)で処理した際、P450のヘム配位座が還元を受けシグナル波形が変化することが考えられるが、2.49種-P450はいずれの還元性試薬処理においてもg値2.49のシグナル波形において変化せず、この結果はLPS処理の結果を支持するものであった。\n 次に、2.49種-P450由来の3つのシグナル(g=2.49、2.26、1.87)を用い、Bohan(1977)によって確立された結晶場解析法に基づき2つの軸配位子同定パラメーターであるrhombicityとtetragonalityを求め、BlumbergとPeisach(1971)によって確立された結晶場ダイアグラムで分析した。正常ラットでみられる2.40種-P450はrhombicityが0.446、tetragonalityが6.670でPO群(第5配位座にシステイン残基のチオレート硫黄を有し、第6配位座に酸素を配位原子として有するヘム鉄)に帰属した。P450sは休止状態において第6配座にH_2 Oを有しているが、正常ラットで検出される2.40種-P450は結晶場解析の結果より、休止状態のP450であることを示した。一方、PCB126投与に由来する2.49種-P450はrhombicityが0.504、tetragonalityが5.351であるのでPN群(第5配位座にシステイン残基のチオレート硫黄を有し、第6配位座に窒素を配位原子として有するヘム鉄)に帰属した。第5配位座にシステイン残基のチオレート硫黄を有したP450sにおいて窒素原子の由来として考えられるのはイミダゾールに限られ、2.49種-P450は第6配位子として遠位ヒスチジン残基のイミダゾール基の窒素を有するP450であることを同定した。以上の結果は、誘導されたP450もしくは既存のP450が、PCB126の被曝によって構造的な変化を受けヘム鉄の配位子がH_2Oから親和性の高い窒素に置換し、この構造ではP450の酵素活性が失活していることを示唆するものであった。これは、PCB126によるP450の構造変性に伴った解毒酵素の不活化によるEDCs代謝の低下という新たな機序を提案するものである。\n\n 以上、本研究はPCB126を投与したラット肝臓を対象にEPR法を用いて2.49種-P450の存在を明らかにし、このP450がPCB126被曝の検出における生体指標となることを示した。また、結晶場解析により、2.49種-P450はPCB126の被曝に起因して構造変性を受けたことを明らかにしたものであり、この構造に起因したP450酵素活性の低下が示唆された。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_10006_dissertation_number_12":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"甲第15号"}]},"item_10006_version_type_18":{"attribute_name":"著者版フラグ","attribute_value_mlt":[{"subitem_version_resource":"http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa","subitem_version_type":"AM"}]},"item_creator":{"attribute_name":"著者","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"吉川, 宏"}],"nameIdentifiers":[{"nameIdentifier":"16359","nameIdentifierScheme":"WEKO"}]}]},"item_files":{"attribute_name":"ファイル情報","attribute_type":"file","attribute_value_mlt":[{"accessrole":"open_date","date":[{"dateType":"Available","dateValue":"2013-02-20"}],"displaytype":"detail","filename":"diss_da_kou0015.pdf","filesize":[{"value":"34.3 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