@misc{oai:az.repo.nii.ac.jp:00003264, author = {伊藤, 秀一}, month = {2013-02-20, 2014-08-18}, note = {近年、従来のケージ飼育によるコマーシャル鶏の卵だけではなく、付加価値のついた卵の需要が高まっており、日本固有の在来鶏や、在来鶏とコマーシャル鶏の交雑種を用いた地鶏産業が発展しつつある。しかし、産卵鶏の飼育管理技術は、家畜化が進んだコマーシャル鶏についてはマニュアル化が進んできているものの、地鶏などの原種に近いとされる鶏についての管理法は確立していない。そこで本研究は、岐阜地鶏の行動特性をコマーシャル鶏と比較することにより、地鶏の適切な管理法確立の一助とすることを目的とした。  第1章では、岐阜地鶏とコマーシャル鶏各10羽を供試し、948cm^2の一般的な産卵鶏用のケージに1羽ずつ収容した。給餌と給水は8:30から9:00の間に行い、自由摂食、飲水とした。タイムラプスビデオによる録画により、各供試鶏の行動を1分間隔の瞬間サンプリング法で記録した。各行動が1日に占める割合については、摂食行動は岐阜地鶏が23.1%、コマーシャル鶏が38.1%と有意(P<0.01)な差が見られた。岐阜地鶏が摂食行動に費やす時間が短いことは、コマーシャル鶏との体格差に原因の一つがあると考えられた。一方、岐阜地鶏は歩行行動に6.1%を費やし、コマーシャル鶏の1.7%と比較して有意(P<0.01)な差があった。羽繕い行動も岐阜地鶏が26.2%と高い割合であり、コマーシャル鶏の14.0%との間に有意(P<0.01)な差がみられた。羽繕い行動は個体維持行動の一つであるが、常同的な羽繕い行動である可能性も考えられ、狭いケージ内を往復する常同的な歩行行動の割合が高いことを考慮すると、岐阜地鶏がケージ飼育に適していないことが考えられた。また、真空行動である砂浴びはコマーシャル鶏では0.2%見られたが、岐阜地鶏では全く発現せず、両者の間に有意(P<0.05)な差が認められた。伏臥はコマーシャル鶏が9.6%、岐阜地鶏は3.7%となり、その差は有意(P<0.05)であった。岐阜地鶏の摂食行動は給餌直後の9時に高い値を示し、摂食行動の経時的変化には両鶏間で有意(P<0.05)な差が見られた。また飲水行動、歩行行動、羽繕い行動、佇立行動、伏臥、闘争行動の経時的変化にも両者の間に有意(それぞれ、P<0.01、 P<0.05、 P<0.01、P<0.01、 P<0.01、 P<0.01)な差が見られた。岐阜地鶏は給餌刺激に反応して、給餌後に摂食行動の割合が高くなった。コマーシャル鶏では、これまでの研究でもこのような現象は認めておらず、給餌刺激に反応することは岐阜地鶏の特徴であると考えられた。本研究によって、ケージ環境における岐阜地鶏の行動は、一般的なコマーシャル鶏の行動特性と異なることが示された。  第2章では、ケージ飼育(2羽/ケージ)されていた各10羽のコマーシャル鶏と岐阜地鶏を、それぞれ9.4×4.7mの野外放飼場に移動し、行動観察を行った。観察は導入直後から1、2、3、8、15、22、29、36日目に行い、6:00から16:00まで1分間隔の走査サンプリング法を用いて行動の記録を行った。同時に、1時間ごとに総個体間距離を記録した。また、放飼直後3時間の闘争行動については行動サンプリングを行った。コマーシャル鶏は、設置した給餌器からの摂食行動は、1日目から10%を越えたが、岐阜地鶏は最初の3日間はほとんど飼料を摂取せず、15日目にようやく明確に観察されるようになった。一方、岐阜地鶏は地面つつき行動に、移動後1日目から25%の時間を費やし、徐々に減少した。岐阜地鶏が移動後3日間、ほとんど配合飼料の摂食を行わなかったことは、飼育環境および給餌器に対する警戒反応であったと考えられた。岐阜地鶏の羽繕い行動は、経日的に増加したが、コマーシャル鶏においては8日目以降、ほぼ一定の割合であった。岐阜地鶏の1、2、3日目は佇立行動に費やす時間が最も長くなり、それ以降は徐々に減少した。岐阜地鶏の羽繕い行動が経日的に増加したこと、佇立行動が減少したことは、新奇環境が安全であることを学習した結果であると考えられた。また、岐阜地鶏は移動直後に闘争行動が集中し、それ以後はほとんど見られなかったが、コマーシャル鶏は移動の3時間後が最大になり、また3日目においても闘争行動が見られた。闘争行動のピークが両鶏間で異なったことは、岐阜地鶏にとって順位付けを行うことの重要性を示している。総個体間距離は岐阜地鶏がコマーシャル鶏より短くなった。岐阜地鶏がコマーシャル鶏に比べて総個体距離が短くなり、経日的にその距離が長くなったことは、岐阜地鶏が移動後数日間は外敵からの攻撃などに対する防御行動をとり、その後、徐々に飼育環境が安全なものであると認識したためと考えられた。岐阜地鶏はコマーシャル鶏よりも新奇な環境に対する警戒心が強いことが示された結果から、飼育環境を変化させる場合は慣れた給餌器を配置するなど、新奇性を軽減する必要があると考えられた。  第3章では、第2章で用いた鶏群に対し野外放飼場へ移動1年後に観察を行い、両鶏の平飼い環境における行動を比較した。6:00から16:00まで、1分間隔の走査サンプリング法を用いて行動観察を行った。配合飼料に対する摂食行動と飲水行動は、それぞれ岐阜地鶏が平均17.0%、0.9%となり、コマーシャル鶏の36.0%、2.6%に対して有意(P<0.05、P<0.05)な差が見られた。また、嘴で地面をつつく行動は、岐阜地鶏が27.2%であったが、餌箱からの摂食行動とは逆に、コマーシャル鶏の17.4%に対して有意(P<0.05)に高くなった。羽繕い行動はコマーシャル鶏は16.5%であったのに対し、岐阜地鶏が20.6%と有意(P<0.05)に高くなった。岐阜地鶏は砂浴びに1.2%を費やしたが、コマーシャル鶏は2.2%であり有意(P<0.05)な差が認められた。伏臥姿勢は岐阜地鶏の1.3%に対して、コマーシャル鶏は6.7%と高い値を示し、その差は有意(P<0.05)であった。他個体に対する羽毛つつき行動は、岐阜地鶏0.05%とコマーシャル鶏0.16%であり、有意(P<0.05)な差が見られた。岐阜地鶏はコマーシャル鶏に比べて地面つつきに費やす時間が長く、また伏臥時間が短く警戒に長時間を費やしていたことから、岐阜地鶏は原種である赤色野鶏に近い特性を持っていることが示され、コマーシャル鶏は家畜化に伴い、野鶏の特性が減少していることが考えられた。  第4章で、岐阜地鶏とコマーシャル鶏を4羽ずつ供試し、パッチ状の餌場における採食戦略の比較を行った。パッチとして飼槽を周囲に8個とりつけたケージに供試鶏を入れ、1日あたり30分間、パッチ滞在時間、パッチ移動回数と総摂食量を測定した。コマーシャル鶏(C1、C2、C3、C4)には、各飼槽に20gの成鶏用飼料と小石300g(Rich Patch)、または500g(Poor Patch)を、岐阜地鶏(G1、G2、G3、G4)には、10gの飼料と小石300g(Rich Patch)、または500g(Poor Patch)を入れて、それぞれの条件で7日ずつ実験を行った。パッチ間の移動に際してエネルギー負荷をかけるために、各パッチごとに止まり木を設置し、鶏は隣のパッチに移動するためには、一度止まり木を降りて、再び登らなければならないようにした。パッチ移動回数について、岐阜地鶏は全ての個体について両環境間で有意な差は見られなかった。一方、コマーシャル鶏ではC1、C3、C4でRich環境の方がPoor環境より移動回数が少なくなり、C1、C3は有意(P<0.05)に減少した。パッチ滞在時間についても、岐阜地鶏は両環境間で明確な差は見られなかったが、コマーシャル鶏は、C1、C3、C4についてRich環境においてPoor環境での滞在時間より長くなり、C1、C3では、両環境間で有意(P<0.05)な差が認められた。各環境における総採食量は、岐阜地鶏がG4がPoor環境では有意(P<0.05)に減少し、コマーシャル鶏はC2、C3、C4の3個体がPoor環境で有意(P<0.05)に減少した。また、パッチ移動回数を、総摂食量で割った値である餌獲得コストは、岐阜地鶏は環境の違いによる大きな変化は見られなかったが、コマーシャル鶏はRich環境よりPoor環境において高い値を示し、餌環境が悪化すると採食効率が落ちることが示された。  本研究の結果から、岐阜地鶏は、ケージ環境、野外放飼環境のいずれにおいてもコマーシャル鶏と行動性が異なることが示され、新奇な環境への適応過程も異なることが明かとなった。また、コマーシャル鶏に比べてより最適な戦略を保持していることが示唆された。したがって、岐阜地鶏の管理は飼育密度が低く、刺激の多い放飼環境で行うことが適しており、また、新奇な環境へ移動する場合は既知な給餌器を同時に移動するなどの配慮が必要ではないかと考えられた。}, title = {岐阜地鶏の行動特性に関する研究 : コマーシャル産卵鶏との比較行動学的検討}, year = {} }