@misc{oai:az.repo.nii.ac.jp:00003263, author = {沈, 明浩}, month = {2013-06-29, 2014-08-18}, note = {ジピリディリウム系除草剤のジクワット(化学名:1,1'-ethylene-2,2'-bipyridylium dibromide)は1957年にイギリスのICI社で開発され、優れた除草効果を持つ農薬として日本を始め世界各国で使用されている。  また、ジクワット毒性は、以前からヒトや動物に対して強い毒性を示すことが知られており、動物種によって感受性に差があることも報告されている(Conning et al., 1969; Clark and Hurst., 1970; Kehara et al., 1968 Selypes et al., 1980 Ahmed et al., 1988)。動物へのジクワットの毒性では、胸腺、副腎および脾臓などに影響を与えることも報告されている。(Clark and Hurst., 1970)。ヒトの中毒では、消化器系に影響を与え、高用量では肝細胞に影響を与えるとの報告もある(Conning et al., 1969)。  このように、ジクワットの毒性影響については多くの研究がなされているが、発生・生殖毒性に関しては、少数の報告が見られるのみである(Kehara et al., 1968; Selypes et al., 1980; Ahmed et al., 1988)。また、ジクワットは、胎盤を通過し、胎子へ移行するものの、その胎子に対する毒性は、母体に対する毒性影響と比較すると弱いものであると報告されている(Bus et al., 1975)。  化学物質の胎子毒性の指標の一つに動脈管に対する影響を調べる方法がとられているが、胎子動脈管の特異的な性質として、その拡張維持はプロスタグランディンE_2の作用によって維持されている(Coceani and Olley, 1973; Sharpe and Lasson, 1975; Heyman et al., 1976; Clyman et al., 1978; Monma et al., 1980)。この動脈管の拡張維持作用は、プロスタグランディンの生合成を阻害する非ステロイド性の抗炎症薬であるインドメタシン等を投与することによって、ラットの胎子動脈管が収縮することが確かめられている(Kantrowitz et al., 1975; Hong and Lewis, 1976)。また、インドメタシンを直接胎子へ、あるいは母体へ投与(胎盤を経由)すると、ヒツジ(Kirkpatrick et al., 1977; Levin et al., 1978; Clyman, 1980)およびウサギ(Shrape and Lasson, 1975)でも動脈管の収縮することが報告されている。  昨年、ジクワットは妊娠末期の母体に投与するとその子の動脈管が収縮することが報告され、しかもジクワットの動脈管に対する収縮機序は、インドメタシンとは異なり、プロスタグランディンE_2を介したものではなく、強い血管収縮物質として知られているエンドセリンが関与していることが示唆されている(Takagi et al., 1999)。このジクワットによるエンドセリンへの影響が、ジクワットの直接的なものか、あるいは間接的な作用であるかは明らかとされていない。  そこで、本研究は、ジクワットがどのようにエンドセリンに作用し、動脈管を収縮させるか作用機序の解明を目的として行った。  第1章では、ジクワットの胎子動脈管に対する作用を検討するために、妊娠21日のラットにジクワットを7mg/kgの用量で皮下投与し、その後の胎子動脈管内径の変化を経時的に検討を行った。その結果、投与後3および6時間に有意(P≦0.05)な動脈管の収縮がみられた。しかし、投与後1および24時間においては、対照群との間に有意な差(P=0.05)は認められなかった。  これらの結果から、ジクワットを7mg/kgの用量で投与したとき、妊娠末期のラット胎子動脈管に対し収縮作用を持つことが確認された。  第2章では、ジクワットの動脈管収縮作用に対するエンドセリン(ET)の関与を検討する目的で、妊娠21日の午後1時を剖検時間と定め、剖検3時間前に母体にジクワットを7mg/kgの用量で皮下投与し、その1、2および2.5時間後に、直接胎子にETreceptor拮抗薬(TAK-044)を皮下投与して動脈管に対する作用の検討を行った。その結果、ジクワット投与1および2時間後にTAK-044を投与した胎子では、動脈管の収縮は認められなかった。しかし、ジクワット投与後2.5時間目にTAK-044を投与した胎子では動脈管の収縮が認められた。  この結果は、母体にジクワットを投与し、その後、ET receptor拮抗薬を胎子に投与すると胎子動脈管の収縮を阻止することから、エンドセリンが胎子動脈管の収縮に関与していることを示唆するものであった。また、そのET receptor拮抗薬による収縮阻止効果は、ジクワット投与後、2時間目までであることが示唆された。  第3章では、ジクワットによって影響を受ける副腎、特に副腎皮質ホルモンに注目し、ジクワットによる動脈管収縮と副腎皮質ホルモンとの関係の検討を行った。その結果、母体副腎除去後にジクワットを投与した胎子の動脈管では収縮が認められず、母体副腎非除去の胎子で動脈管は収縮した。また、母体コルチコステロンの血中濃度は、ジクワットを投与しても副腎除去母体では著しく減少しているのに対し、非除去母体では有意(P≦0.05)な増加が認められた。  これらの結果から妊娠末期におけるジクワットによる胎子動脈管の収縮は、この母体側の高い副腎皮質ホルモンと何らかの関係があることが示唆された。  第4章では、母体に副腎皮質ホルモン(コルチコステロン)を投与し、その胎子動脈管の収縮作用をもつかの検討を行った。その結果、母体へのコルチコステロン投与により胎子動脈管の収縮が認められた。また、その収縮の臨界期はジクワットと同様に胎齢20日以降であった。  これらの結果から、母体に投与したコルチコステロンは、動脈管の収縮を引き起こすことが示唆された。  第5章では、第4章でグルココルチコイド(コルチコステロン)が動脈管の収縮に関与していることを示唆したので、動脈管の内皮細胞におけるグルココルチコイドレセプターの存在の有無および局在性をWestern blot法および免疫組織学的方法を用いて検討を行った。その結果、Western blot法において、妊娠21日の胎子動脈管にグルココルチコイドレセプターが確認できた。また、免疫組織学的観察において、胎齢19日の胎子動脈管にグルココルチコイドレセプターが認められなかった。しかし、胎齢20日および21日では、胎子動脈管の内皮細胞にグルココルチコイドレセプターが確認された。  以上のことから本論文には、以下のことを示唆した。 (1)妊娠末期のラットにジクワットを投与すると、その胎子の動脈管の収縮を引き起こすこと。 (2)ジクワットによる動脈管収縮に対して、血管収縮物質であるエンドセリンが関与していること。 (3)ジクワットによる動脈管の収縮は、母体からの副腎皮質ホルモンが関与していること。 (4)コルチコステロンは動脈管収縮作用をもつこと。 (5)その収縮は動脈管内皮細胞中のグルココルチコイドレセプターが関与すること。  また、(1)~(5)により、妊娠母体に投与されたジクワットは、多量の母体副腎皮質ホルモンの分泌を促し、それが胎盤を通過して動脈管の内皮細胞に作用しエンドセリンの分泌を促し、その結果動脈管の収縮を引き起こすことが示唆された。}, title = {ジピリディリウム系除草剤(ジクワット)の胎子動脈管収縮作用機序に関する研究}, year = {} }