WEKO3
アイテム
イヌ抗腎糸球体基底膜腎炎の第2相における腎糸球体陰性荷電の変化
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3221
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3221e6f2d80b-077a-43f4-a84c-58df25ef2202
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
---|---|---|
![]() |
|
|
![]() |
|
Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
公開日 | 2013-02-05 | |||||||||
タイトル | ||||||||||
タイトル | イヌ抗腎糸球体基底膜腎炎の第2相における腎糸球体陰性荷電の変化 | |||||||||
タイトル | ||||||||||
タイトル | Alterations in glomerular anionic sites in autologous phase of canine anti-glomerular basement membrane nephritis | |||||||||
言語 | en | |||||||||
言語 | ||||||||||
言語 | eng | |||||||||
資源タイプ | ||||||||||
資源タイプ | thesis | |||||||||
著者 |
杉本, 次郎
× 杉本, 次郎
× Sugimoto, Jiro
|
|||||||||
抄録 | ||||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||||
内容記述 | 最近の腎糸球体壁の物質の濾過に関する研究では,主に分子の大きさを規制するバリヤー(サイズバリヤー)とともに糸球体基底膜自体が陰性に荷電していることにより生じる静電気的なバリヤー(チャージバリヤー)が注目されている。つまり,糸球体基底膜の外透明層および内透明層はヘパランサルフェイトプロテオグリカンをはじめとする陰性荷電のプロオテグリカンに富み,これらの部位が陰性荷電障壁を形成していること,また蛋白尿を伴う病的な腎臓では,この陰性荷電部位(AS)の減少や消失をきたすことが注目されている。この陰性荷電部位はポリエチレインイミン(PEI)をはじめとする陽イオン化トレーサーによって電顕的に可視化することが可能で,正常ならびに病的糸球体の物質の透過性の研究に利用されている。 一方,異種の抗腎臓血清で誘発した腎炎(いわゆる馬杉腎炎)を用いた研究が,種々の動物種で報告されている。研究当初は全腎臓あるいは胎児懸濁液に対する抗血清を作成し,その血清を静注し,腎炎を誘発していた。これらの実験腎炎ではネフロトキシック血清に糸球体基底膜だけではなく,他の腎臓組織抗原に対する抗体も含まれていたため,腎糸球体そのものに対する影響をみることは困難であった。 今日では腎臓の糸球体基底膜だけを分離し,抗糸球体基底膜抗体を作成しネフロトキシック血清の腎糸球体に対する影響のみを見ることが出来るようになった。しかしながら,イヌを用いた抗賢臓血清で誘発した腎炎の報告は少なく,さらに糸球体だけを分離し,それに対する抗糸球体基底膜抗体を作成し,腎炎を誘発して病理学的に検索した報告は少ない。 最近,ラットに誘発した抗糸球体基底膜腎炎で糸球体基底膜の陰性荷電に注目した研究がなされた。この報告では抗糸球体基底膜抗体を投与してから,数時間で陰性荷電が減少しその後に蛋白尿が認められており,蛋白尿発現における糸球体基底膜の陰性荷電の変化に注目している。しかし,この報告は宿主のIgGが糸球体で検出されない第1相の腎炎での報告であり,それ以降の変化についての報告はなされていない。一方,イヌを用いた抗糸球体基底膜腎炎では宿主のIgGが糸球体で検出される第2相の腎炎は抗糸球体基底膜抗体投与後7日より起きるとの報告がある。そこで本試験ではイヌで抗糸球体基底膜腎炎の第2相を作成し,その初期である投与後1週と蛋白尿が回復する投与後8週までの変化をチャージバリヤーと蛋白尿という観点から組織学的に,免疫組織学的に,あるいは陽イオン化トレーサーによる電顕観察により検索した。 抗腎糸球体基底膜ウサギ血清(AGBM)および正常ウサギ血清(NRS)を雄ビーグル犬にそれぞれ体重1kgあたり2ml,1回静脈注射(静注)した。静注後1,2,4および8週目にそれぞれのイヌの腎臓について光学顕微鏡検査(光顕検査),電子顕微鏡検査(電顕検査)および免疫組織化学法を用いた検査を実施した。腎糸球体基底膜の陰性荷電の電子顕微鏡学変化は,陽イオン化トレーサーとしてポリエチレンイミン(PEI,分子量;1,800)を使用して観察した。腎臓組織は生検あるいは剖検により入手した。尿検査は静注前から静注後8週目まで実施した。重篤あるいは軽微な蛋白尿は静注後1日以内に発現し,そして静注後2週目まで持続した。その後,蛋白尿の程度は徐々に軽減した。静注後4週と8週目ではAGBM静注群の蛋白尿の程度とNRS静注群の蛋白尿の程度に有意な差は認められなかった。静注後1週および2週目ではAGBM静注群の腎糸球体基底膜の外透明層の1,000nmあたりのPEI数は腎糸球体基底膜の末梢部,近位およびパラメサンギウム部の3部位のそれぞれにおいてNRS静注群に較べ減少していた。静注後1週目ではAGBM群の腎糸球体基底膜の末梢部の外透明層の1,000nmあたりのPEI数は10.5±1.8で,NRS静注群の同部位の14.2±2.4に比べ有意に減少していた(p<0.001)。しかしながら,静注後4週目の近位部およびパラメサンギウム部,および静注後8週目の腎糸球体基底膜の末梢部,近位およびパラメサンギウム部の3部位においては両群のPEI数に有意な差は認められなかった。免疫組織学的には静注後1週目で抗腎糸球体基底膜抗体であるウサギのIgGは腎糸球体壁に線状に沈着し,2週,4週,8週と経時的に沈着が減少していった。一方,宿主であるイヌのIgGは静注後1週で腎糸球体壁に沈着しており,その程度は軽度であったが,2週,4週,8週と経時的に増強していった。つまり,本モデルでは静注後1週間で宿主の抗体が検出されたことにより,この時期には抗腎糸球体基底膜腎炎の第2相に移行していることがわかった。また,イヌのC3の沈着は静注後1週および2週目に認められたが,4週,8週目には認められなかった。このように静注後1週,2週目までは蛋白尿の発現とともに腎糸球体基底膜の陰性荷電の減少をはじめとする病理形態学的変化が同時に認められた。しかし,静注後4週目および8週目では,AGBM静注群のイヌの蛋白尿および腎糸球体基底膜の陰性荷電は回復していたが,免疫組織化学的検査,光顕検査および電顕検査では腎糸球体の病変は残存していた。以上のようにAGBM静注群では重篤あるいは軽微な蛋白尿が認められた時期に腎糸球体基底膜のASの減少がみられること。また,蛋白尿が改善した時期に一致して腎糸球体基底膜のASは回復していることを考えあわせると,イヌの抗腎糸球体基底膜腎炎の第2相における蛋白尿発現に腎糸球体基底膜のASの変化が深く関与していることが示唆された。 従来,抗腎糸球体基底膜腎炎の蛋白尿の発現は抗基底膜抗体が基底膜全層の構築に含まれる抗原構造と免疫反応により直接結合することから,基底膜全層の構造の障害,つまり,サイズバリヤーの破綻によるものと考えられていた。しかし,本研究で示したように抗腎糸球体基底膜腎炎の蛋白尿発現にはチャージバリヤーの破綻も深く関与していることが証明された。ヒトおよび動物でみられる自然発生性の,あるいは実験的に誘発した糸球体腎炎で糸球体基底膜の荷電状態を検索することは蛋白尿発生のメカニズムを考えるうえで有意義なことである。また,色々な病理形態学的変化に比べて糸球体基底膜の荷電状態の回復と蛋白尿の回復が良く一致していたことから,臨床的にも糸球体基底膜の荷電状態を検索することは糸球体腎炎の回復性を正確にかつ迅速に把握するうえでも役立つものと思われる。つまり,腎炎の成立,展開の過程を解析するうえで糸球体基底膜の荷電状態の検索は大きなウェイトを占めるものと考えられる。 本研究ではイヌを用いて抗腎糸球体基底膜腎炎を作成した。イヌでは同一個体の生検が比較的容易に反復実施することができ,一つの病変を経時に追跡することができる。さらにイヌは経時的採血による種々の血液学検査,生化学検査をはじめとする臨床検査も反復実施することができ,ラットに比べ病態を経時的にモニタリングしやすい。それ故にこれらの利点を生かしたイヌを用いた腎炎の研究は経時的な病態のモニタリングの必要性が高い腎炎の治療,発生機序の解明等のヒトの腎炎領域における諸問題を解決するのに今後多くのヒントを与えるものと思われる。 |
|||||||||
Abstract | ||||||||||
内容記述タイプ | Other | |||||||||
内容記述 | There have been a few studies on canine nephrotoxic glomerulonephritis produced by antiglomerular basement membrane serum (AGBM). These reports have not focused on an alteration in the charge properties of glomerular basement membrane (GBM) in this disease. In this study, AGBM-treated dogs demonstrated severe or mild proteinuria and a reduction of glomerular anionic sites (AS) in the autologous phase. Rabbit AGBM or normal rabbit serum (NRS) were given intravenously (2 ml/kg, B.W.) to 16 male beagle dogs. Light and electron microscopy and immunofluorescent test were performed on the kidneys at weeks 1, 2, 4, and 8 postinjection. An alteration of AS of GBM in peripheral, proximal, and paramesangial portions was studied quantitatively using polyethyleneimine (PEI, M.W.= 1,800) as a cationic probe by electron microscopy. Urinalysis was performed up to week 8 postinjection. Severe or mild proteinuria developed as early as day 1 and continued until week 2. Thereafter, the degree of proteinuria decreased gradually. On weeks 4 and 8, there was no significant difference in the proteinuria between AGBM-treated group and NRS-treated group. On weeks 1 and 2 after AGBM injection, the number of PEI granules per 1000 nm length of the lamina rara externa (LRE) of GBM in all portions was less than that in NRS-treated dogs (10.5 ± 1.8 versus 14.2 ± 2.4 in peripheral portion, 10.8 ± 1.9 versus 15.0 ± 1.4 in proximal portion, 8.4± 1.8 versus 13.4 ± 2.1 in paramesangial portion, on week 1, P < 0.001). On week 4, however, there was difference in the number of granules in peripheral portion of GBM. On week 8, there was no difference in the number of granules in all portions of GBM between AGBM-treated and NRS-treated dogs. Immunohistological and light and electron microscopical lesions remained in renal glomeruli of proteinuric or nonproteinuric AGBM-treated dogs. The fact that a reduction glomerular AS occured in AGBM-treated dogs with severe or mild proteinuria and the recovery of AS in the GBM coincided with an improvement of proteinuria suggested that alterations in glomerular AS might play an important role in the pathogenesis of proteinuria in the autologous phase of canine anti-GBM nephritis. |
|||||||||
学位名 | ||||||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||||||
学位授与機関 | ||||||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||||||
学位授与年月日 | ||||||||||
学位授与年月日 | 1993-11-04 | |||||||||
学位授与番号 | ||||||||||
学位授与番号 | 乙第323号 | |||||||||
著者版フラグ | ||||||||||
出版タイプ | AM | |||||||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |