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アイテム
ネコカリキウイルスの増殖に関する基礎的研究 : 感染細胞の超微形態学的所見との関連性を中心にして
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3183
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3183e8a5fca7-bbe4-4349-9e07-ce4fefe3889c
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-29 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | ネコカリキウイルスの増殖に関する基礎的研究 : 感染細胞の超微形態学的所見との関連性を中心にして | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | Fundamental study on the proliferation of feline calicivirus : relationship between it's replication and ultramicrostructure in the host cells | |||||
言語 | en | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
原, 元宣
× 原, 元宣× Hara, Motonobu |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | ネコカリキウイルスは1957年Fastierによってネコの上部呼吸器病の病原体として分離されて以来、ネコヘルペスウイルスと共に重要なウイルスとして臨床家に認識されるようになった。本ウイルスの分布、感染様式等についてはすでに詳細に報告され、我国においても広く浸潤し、多くの健康ネコがウイルスを保有し、感染源となっている。 中和試験による抗原分析の結果は非常に多くの抗原型を呈し、本ウイルスの血清学的分類はいささか混乱していたが、広域的な共通抗原を所有するウイルス株が発見され、多様な抗原性状は同一ウイルスのVariantとみなされ、この方面の研究は一応の区切りがつけられ、有効なワクチンも市販されるにいたった。 ネコ以外のカリキウイルスについては米国で豚のVEV(Vesicular Exanthema of Swine Virus)が知られていたが、1956年に消滅している。その後、1973年にはアシカから分離されてSMSV(San miguel sea lion virus)と呼ばれている。近年、幼児の下痢症からも検出され、注目されるにいたり、今後、獣医学及び人医学上の感染症の分野においてさらに重視される可能性を秘めている。 カリキウイルスは数年前までピコルナウイルスに分類されており、ネコや豚以外の宿主では本ウイルスによる独立したウイルス性疾患としての概念がなかった訳であるが、当時すでにカリキウイルス粒子は形態学的にHollow capsomereを有し、サイズがやや大きい等の理由から分類上さらに詳細な検討が必要とされていた。一面、ピコルナウイルスについては口蹄疫ウイルスの発見からポリオウイルスの総合的研究まで古い歴史があり、本ウイルスの増殖様式は分子レベルの詳細な検討が加えられて来た。その反面、ウイルス粒子が非常に小型であるために電子顕微鏡による形態学的側面からの総括的検索は以外と少なく、多くは断片的な知見であった。特にウイルス成分の合成から粒子の構成へ移行する過程での前駆構造の証明が形態学的に不十分な状況のままに残されている。このような疑問点に関してはむしろ電子顕微鏡技術の限界を示すものではないかとも思われ、どの程度までが電顕によって観察しうる限界となるのか定かでない。一方、カリキウイルスの形態学的観察においても、この領域の問題はいまだ未解決のままで検討されていない。本研究においては特に前駆構造を形態学的に把握することを目的に、カリキウイルスの増殖機構をピコルナウイルスと比較検討しながら解明しようと試みた。本研究成績の概要は以下のとおりである。 1, ウイルス産生と抗原の出現 使用ウイルスは秋元氏から分与を受けたFIV-1株をネコ腎初代培養に継代したものである。 感染性ウイルスの宿主細胞内及び細胞外への出現は感染2時間後から認められ、感染8時間後プラトーに達する一段増殖曲線で示された。螢光抗体法によって検出されるウイルス抗原は感染後4時間目から出現した。抗原の出現する時期は感染性ウイルスがすでに形成されており、ウイルス蛋白が十分に合成・構築された時期にあたると考えられる。螢光は核内には認められず、細胞質内に限局していた。空胞の周囲に現われる傾向をみせたが、その内側には存在しなかった。この螢光は時間経過と共に強くなり、5時間後には顆粒状・線維状を呈し、ウイルス粒子の配列像と関連するように観察された。 ウイルス蛋白の合成時期についてさらに検討するため、蛋白合成阻害剤であるピューロマイシンの添加・除去による阻害実験を行った。顕著にウイルス産生が阻害される期間は感染早期の2時間から3時間の間であった。この期間が旺盛な蛋白合成時期に相当しており、暗黒期終了時からウイルス抗原の出現するまでの中間に位置していることが判明した。 この他、カリキウイルスの形成はDNA依存RNAポリメラーゼ阻害剤であるアクチノマイシンDの影響を受けず、細胞側のDNAからRNAが合成される段階、もしくは、ウイルス自体の複製過程においてもDNAが関連していないこと、さらに、エンテロウイルスのRNA合成に阻害効果を示すHBB(2-α(hydroxybenzyl)-benzimazole)はカリキウイルスに作用しない事実から、そのRNA複製、転写レベルはエンテロウイルスと相違していることが、Coxsackie-4Bを対照に使用して追認された。 2.感染細胞核の超微形態学的変化 核膜外膜の形態は感染後3時間から不規則な変化を生じ、内膜との遊離は5時間後に明らかに認められた。このような変化は、ウイルス増殖に積極的な役割を持つ構造的なものではなく、細胞質内の膜の増量にともなって誘発される現象であり、その後、核クロマチンの外側辺縁部への集積と凹凸化、さらに激しい核の分葉化が起こる。クロマチン集積像を呈する細胞の割合は3時間後に4.4±2.7%(平均値±標準偏差)であるが、5時間後には36.4±8.5%に達し、その後減少した。クロマチン集積細胞数は感染の経過にともない増加する傾向にあるが、クロマチンの集積がなくてもウイルス粒子の形成があることから、これはむしろウイルス増殖によって受けた退行性変化であろうと思われる。核の外側の形態は凹凸が激しくなり、内側に巨大な核仁の変性像がしばしば認められた。 3.感染初期の細胞質の構造 細胞質には感染後2時間まで形態学的変化を生じなかったが、3時間後、細胞質内に膜と密接に結合した著しく電子密度の高い顆粒状構造が確認された。本構造は一様ではないが感染細胞に特有であって、この構造を有する細胞は時間後の48.1%から、5時間後に76.5%に達し、ウイルス粒子を認めるまでの形態変化はもっぱら電子密度の高い顆粒構造と膜の発達に終始した。したがって本構造は前駆構造として最も疑いの持たれるものであった。 膜とウイルス形成の関連をさらに検討するために、膜のグリコリージスを抑制するヨード酢酸と、膜に機械的な小孔を開けるアンホテリシンBのウイルス産生への影響を調べた。ヨード酢酸による影響は極めて顕著であり、感染後30分頃から始まり4時間まで持続し、5時間後にその作用を脱することから、膜は脱殻後のウイルス合成の全過程において関与していることを示唆しており、形態学的な結果をさらに裏付けするものであった。これに対しアンホテリシンBは軽い抑制効果を示したに過ぎない。 4.感染後期の細胞質の構造 著しく電子密度の高いリボソーム様粒子が広く拡大する膜に付着するCMB(Complex membranous body)構造については、今までその役割が不明であった。本実験において、感染5時間目の細胞にはその構造を認めなかったが、8時間後にはよく発達し、変性したリボソームが膜表面に集積していくと思われる像が観察された。したがってCMB構造は後期に出現する構造と考えられ、粗面小胞体の変性像と思われる。正常よりも電子密度が高くなる理由はわからないが、いわゆるウイルス合成の場としては意味がないようである。 ウイルス様粒子が感染5時間後から確認された。結晶格子状配列をする粒子は27.1±3.9nmのサイズを持ち、直線状に細線維と結合しているものは28.9±1.5nm、高頻度に出現するPre-crystalline構造を呈する粒子は32.6±3.7nmであり、ネガティブ染色による37.2±3.3 nmに最も近い値をとる。 以上のような形態学的特徴を有する細胞を6型に分類し、経時的に百分率で表現した結果、感染後3時間から5時間にかけて増加した膜結合性の顆粒状構造が著しく発展し、急速にウイルス構成へ移行して行く過程が明瞭に示された。この成績から顆粒状構造と膜の複合物がカリキウイルスの前駆構造であると結論づけられた。 5. ウイルス感染と細胞小器官 ミトコンドリアの変化は軽度であり、NaN_3による呼吸の抑制はウイルス増殖に全く影響を与えなかった。8時間後には変性したポリソーム様の集塊が観察され、巨大変性ポリソームと呼んだ。ウイルスの放出については特別な機構はないようである。この件については単なる細胞崩壊によるものと考える。 6. ウイルス感染細胞の三次元構造 感染後10時間目の感染細胞を崩壊し、ネガティブ染色によって観察した。Capsomere subunitに類似する構造物が紐状、あるいは袋状を呈してウイルス粒子と部分的に結合していた。紐状構造はクサリ状の小単位がからみあい束状に連鎖していた。又、ウイルスのsubunitと思われる構造は膜上を被い、ウイルス粒子も膜上に局在しており、超薄切片の成績とよく一致している。このような成績は、膜上においてウイルスが構成されることをさらに裏付けるものであった。 ウイルス粒子の構造は重ね焼き等の成績から、3回、5回対称性を有し、Coreを2層の蛋白が包んでいる。形態学的には複雑にみえるが、一種類の蛋白から構成されていることが報告されているので、内層も外層も同一成分からできており、同一単体成分のくり返しによって形成されているものと推察される。 三次元構造においてはウイルス接種量を少なくし10時間後に50~70%程度のCPEが現われるように調節した感染材料を用いたため経時的な連続性のある像としてとらえることができなかった。 ポリオウイルス、エコーウイルス等のピコルナウイルスの増殖過程については、分子レベルにおいて膜の関与が明らかにされ、膜結合性前駆構造の指摘がなされているが、カリキウイルスで示された程著明な形態像は証明されていない。ピコルナウイルスについて観察されている前駆構造は膜に囲まれたViroplasma、又はViral bleb と呼称されるものであって、これが一応ウイルス合成の場とされている。両者を比較すると相当に異った構造であり、このことはカリキウイルスとピコルナウイルスの感染前期における増殖様式に違いがあるものと解釈された。したがってカリキウイルスにおいて観察された前駆構造は、このウイルスに特有なものであると考えられる。この見解は、最近カリキウイルスの感染細胞内に二種類の一本鎖RNAが検出され、ピコルナウイルスよりもむしろトガウイルスに似ていることが示された報告によってさらに支持されるものである。 以上のように本論文はネコカリキウイルスの増殖様式を明らかにすることを目的とし、主として形態学的な立場より、特にウイルス形成の行われる前駆構造を明確にした。一方、ピコルナウイルスとカリキウイルスの分類学的側面に対しても意義のある見解を与えた。 |
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学位名 | ||||||
学位名 | 獣医学博士 | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1981-02-05 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 乙第177号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |