{"created":"2023-06-19T07:18:02.015214+00:00","id":3163,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"0dc4d536-ba33-48ac-a0e1-1385eb05dc66"},"_deposit":{"created_by":4,"id":"3163","owners":[4],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"3163"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:az.repo.nii.ac.jp:00003163","sets":["370:15:391"]},"author_link":["16170"],"item_10006_date_granted_11":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2009-03-15"}]},"item_10006_degree_grantor_9":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"麻布大学"}]}]},"item_10006_degree_name_8":{"attribute_name":"学位名","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreename":"博士(獣医学)"}]},"item_10006_description_7":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"腫瘍細胞は新生血管により酸素や栄養が供給されるため、血管新生は腫瘍の発達と転移に非常に重要である。血管新生には多くの因子が関与しており、これらの血管新生関連因子は腫瘍の予後因子として研究が行われている。その中でも血管内皮増殖因子vascular endothelial growth factor (VEGF)は、そのレセプターであるflt-1やflk-1と結合することにより血管新生の中心的な役割を担う。ヒトの多くの固形がんにおいては、腫瘍組織内のVEGF発現は予後と関連していることが報告され、抗がん治療における重要なターゲットとされており、近年では抗VEGF薬を用いた併用療法が転移性乳癌に対する第一選択の治療法としてアメリカのFDAに迅速承認されている。\n 獣医学領域においては、いくつかのイヌの腫瘍で血管新生因子や微小血管密度、腫瘍のグレードの関連について研究が行われているものの、腫瘍におけるVEGFやそのレセプターを含む血管新生因子の発現や血管新生因子間の関連はまだよくわかっていない。ヒトの乳癌では血管新生に関して多くの研究が行われているが、イヌにおいても人と同様、乳腺腫瘍は頻繁に発生する腫瘍であり、良性と悪性の腫瘍が存在する。また、多くの症例で外科摘出時に非腫瘍部の乳頭部も共に摘出するため、同一の症例で腫瘍部と非腫瘍部の乳腺組織を比較することも可能であることから、VEGFや血管新生因子の腫瘍における動態を解析し、抗VEGF療法を適用出来るようになる可能性がある。このような背景から、本研究はイヌの乳腺腫瘍に対して抗血管新生療法を適用するための基礎的研究として、VEGFを中心とした血管新生因子発現の悪性度の指標としての評価と血管新生因子間および血管新生との関連を明らかにすることを目的とし、免疫組織化学的及び分子生物学的検索を行った。\n\n第1章:正常イヌ組織におけるVEGFおよびレセプターflt-1、flk-1の発現と分布の検索\n\n 近年ではがんに対する治療として抗VEGF薬も用いられ始めているが、副作用も大きな問題となっている。これはVEGFが腫瘍の血管新生以外にも役割を持っていることによると考えられ、正常な組織におけるVEGFの作用が注目されてきている。近年ではイヌの腫瘍においてもVEGFと悪性度や予後との関連が報告されてきているが、正常組織におけるVEGFの発現細胞はわかっていない。そこで本章では正常イヌの組織(6例:肺、腎臓、心臓、副腎、肝臓、皮膚、甲状腺、腸管、膀胱、リンパ節、膵臓、脾臓、4例:乳腺)におけるVEGFおよびレセプターflt-1、flk-1の発現と分布を明らかにすることを目的とした。\n VEGF及びflt-1の免疫組織化学的発現は各臓器の様々な部位に陽性細胞がみられた。どの臓器にも存在する血管では、中膜平滑筋がVEGF、flt-1ともに一部で陽性を示したが、内皮細胞に陽性像はみられなかった。また、動・静脈、血管サイズなど血管の種類による違いはみられなかった。RT-PCRにより検索を行ったすべての正常組織でVEGF、flt-1、flk-1の遺伝子発現が確認され、これらが正常な組織でも恒常的に発現していることが示された。VEGFについては、複数のアイソフォームが確認され、その中でも最も生物学的活性が高いといわれるVEGF164の発現量が最も多かった。また、定量的RT-PCRでは各組織におけるVEGF164とflt-1、flk-1遺伝子発現がほぼ同じ傾向を示した。以上の結果から、VEGFとflt-1、flk-1は正常なイヌの組織においても発現していることが確認された。また、VEGF164およびflt-1は、免疫組織化学的にタンパク質が発現している細胞の多かった肺や心臓でmRNAの発現も高く、発現細胞の少なかった脾臓などではmRNAの発現も少なかったことから、VEGFとflt-1は転写レベルで調節が行われていることが示唆された。\n\n第2章:イヌの良性乳腺腫瘍における内皮マーカーの評価\n\n 第1章の結果から腫瘍組織においてもVEGFの遺伝子発現量が血管新生を反映することが考えられる。この血管新生を評価する方法として、現在では微小血管密度や血管内皮マーカーの発現量が用いられており、多くの腫瘍で血管新生の評価と予後が関連していることが報告されている一方で、それらが関連しないという報告もある。この様な研究結果の不一致は、従来評価に用いられているvon Willebrand factor (vWF)やCD31などが汎血管内皮マーカーであり、新生血管のみならず既存の血管にも発現していることに起因することが考えられる。本研究で対象としている乳腺組織は正常でも血管が豊富に存在する組織であり、汎血管内皮マーカーを用いた評価では巻き込まれただけの既存の血管も評価に含まれ、血管新生の正確な評価が出来ない可能性がある。このような背景から、より正確に腫瘍組織における血管新生を評価し、その生物学的挙動との関連を探ることが必要である。近年では活性化された内皮細胞に強く発現するendoglinが注目されてきているが、イヌにおけるendoglinの有用性は示されていない。そこで本章では、正常イヌの乳腺、良性乳腺腫瘍及び腫瘍罹患イヌの非腫瘍部の乳腺を用いてendoglin mRNAの発現を検索し、endoglinのイヌの乳腺腫瘍における新生血管マーカーとしての可能性を検討した。\n RT-PCRにより、endoglin mRNAの発現率は良性乳腺腫瘍では正常乳腺、非腫瘍部乳腺と比較して、有意に高いことが示された。免疫組織化学では、proliferating cell nuclear antigen (PCNA)が陽性となった血管内皮細胞の割合およびVEGFが陽性となった血管の割合が、endoglin mRNAが発現していた組織で有意に高いことが示された。また、VEGF mRNAの発現量はvWF mRNA発現量よりもendoglin mRNA発現量と強い相関を示した。PCNAやVEGFに陽性を示す内皮は新生血管の内皮であると考えられることから、endoglin mRNAの発現量がイヌの乳腺腫瘍において血管新生のマーカーとして有用で、新生血管の程度を反映することが示された。\n\n第3章:イヌの乳腺腫瘍におけるVEGFおよびその関連因子の発現\n\n VEGFの発現調節には様々な因子が関与しているが、その中でも腫瘍組織内の低酸素が中心的な役割を担っていると考えられている。イヌの乳腺腫瘍にはしばしば壊死巣がみられ、この壊死巣は低酸素状態になっていると考えられることから、イヌの乳腺腫瘍においても低酸素がVEGFの発現に関与している可能性がある。低酸素誘導因子hypoxia-inducible factor (HIF)-1αは低酸素により細胞内の発現が増加する代表的な因子であり、低酸素条件下ではVEGFの転写を亢進させることが知られている。また、cyclooxygenase-2 (COX-2)の過剰発現は多くの腫瘍でみられるが、COX-2により誘導されるprostaglandinE_2 (PGE_2)がHIF-1αを介して血管新生を誘導するとの報告もある。本章では、正常イヌの乳腺と非腫瘍部乳腺、良性乳腺腫瘍、悪性乳腺腫瘍を用いてVEGFおよびそのレセプターの発現と第2章で血管マーカーとしての有用性が示唆されたendoglinとの関連および誘導因子としてのHIF-1αおよびCOX-2との関連を明らかにし、これら血管新生関連因子の悪性度の指標としての評価をすることを目的として検索を行った。\n 免疫組織化学的検索では、乳腺上皮細胞におけるVEGFの陽性細胞率は非腫瘍部乳腺、良性腫瘍、悪性腫瘍の順に有意に増加していたが、flt-1についてはこれらの間に有意差がみられなかった。COX-2発現は腫瘍性上皮細胞や血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、マクロファージで確認され、非腫瘍部乳腺と比較して腫瘍組織で陽性細胞数が有意に多かったが、良性腫瘍と悪性腫瘍の間に有意な差は認められなかった。遺伝子発現量においてもVEGF164とflk-1、COX-2のmRNA発現量は非腫瘍部乳腺と比較して良性及び悪性腫瘍で有意な増加が認められたが、flt-1 mRNAについてはこれらの間に有意な差が認められなかった。また、HIF-1α mRNAについては良性腫瘍および悪性腫瘍での発現量は非腫瘍部乳腺よりも高い傾向がみられた。微小血管密度とendoglin mRNAの発現量は、非腫瘍部乳腺と比較して腫瘍組織で有意に増加していたが、良性腫瘍と悪性腫瘍の間に有意差はみられなかった。Laser microdissection(LMD)法を用いて腫瘍組織では腫瘍細胞と間質を、非腫瘍部では上皮組織と間質を分離し、非腫瘍部乳腺組織と腫瘍組織のVEGF164 mRNA発現量を比較した結果、腫瘍性上皮細胞については非腫瘍部乳腺上皮細胞よりも有意に高い発現を示したが、間質についてはこれらの間に差が認められなかった。また、得られたすべての結果において、正常イヌの乳腺と腫瘍罹患イヌの非腫瘍部乳腺の間に差はみられなかった。\n 以上の結果から、VEGF164とflk-1、COX-2のmRNAは腫瘍部において増加していることが明らかとなったが、悪性度との関連はみられなかった。また、flt-1は腫瘍組織でも有意な増加が認められず、VEGFのレセプターとしては主にflk-1が腫瘍組織内での血管新生に関与していることが示唆された。さらに、腫瘍組織におけるVEGF164 mRNA発現の増加は間質細胞ではなく、主に腫瘍性上皮細胞に由来することが示唆された。今回の結果から、HIF-1α mRNA発現は腫瘍組織において増加傾向がみられ、COX-2およびVEGF164との相関も認められたため、イヌの乳腺腫瘍においてもCOX-2/HIF-1α/VEGF経路が存在している可能性が考えられた。\n\n 以上、本研究によりVEGFとそのレセプターflt-1、flk-1のmRNAおよびVEGFとflt-1のタンパク質がイヌの正常組織で恒常的に発現していることが示され、VEGFとflt-1が転写レベルで調節されていることが示唆された。また、イヌの乳腺腫瘍における血管新生マーカーとしてendoglin遺伝子発現が有用である可能性を示した。イヌの乳腺腫瘍におけるVEGFの増加は主に腫瘍細胞に由来しており、flk-1を介して血管新生を促進させることを示唆した。VEGFとCOX-2のタンパク質発現は血管新生の程度を反映するendoglin遺伝子発現量と共にイヌの乳腺腫瘍で増加し、VEGFタンパク質は腫瘍化の指標となる可能性を示した。また、イヌの腫瘍の血管新生においてもCOX-2/HIF-1α/VEGF経路が存在する可能性が示唆された。これらにより、血管新生関連因子の分布および因子間の関連はヒトの乳癌に類似していることが示され、ヒトの乳癌と同様にイヌの乳腺腫瘍でも抗血管新生薬が有用である可能性が示唆された。","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_10006_dissertation_number_12":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"甲第 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