{"created":"2023-06-19T07:18:01.692226+00:00","id":3158,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"00aeada0-e58e-4891-8440-f718d572bb57"},"_deposit":{"created_by":4,"id":"3158","owners":[4],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"3158"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:az.repo.nii.ac.jp:00003158","sets":["370:15:391"]},"author_link":["16161"],"item_10006_date_granted_11":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2011-03-15"}]},"item_10006_degree_grantor_9":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"麻布大学"}]}]},"item_10006_degree_name_8":{"attribute_name":"学位名","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreename":"博士(獣医学)"}]},"item_10006_description_7":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"本邦の動物展示施設では、サル類に人獣共通感染症であるエルシニア症が多発しており、動物飼育管理上および公衆衛生上の重要な問題となっているが、従来、我が国の動物展示施設において、死亡個体の詳細な病理学的および微生物学的検索が不十分なため、サル類のエルシニア症の病態および発生状況の把握が進んでおらず、適切な対策が立てられていないのが現状である。\n 本研究は、動物展示施設におけるサル類のエルシニア症の予防に資する研究の一環として、サル類のエルシニア症について病理学的および疫学的に検索し、その特徴と実態を明らかにするとともに、エルシニア症予防対策を図る目的で、動物実験および野外臨床実験によってワクチンの開発を試み、以下の成績を得た。\n\n1. 我が国の動物園におけるサル類のエルシニア症の発生状況と病理学的特徴\n 我が国の動物展示施設におけるサル類のエルシニア症の発生状況と病理学的特徴を明らかにするために、2000年1月~2008年9月の間に21施設で死亡したサル類390頭を供試検体として、エルシニア症の発生状況調査と病理学的検索を行った。その結果、この期間内に14施設で58頭のサル類がエルシニア症で死亡し、そのうち48頭はリスザル Saimiri spp.であり、これは感染症により死亡したリスザル105頭の45.7%を占め、エルシニア症がリスザルの主たる死因となっていることを明らかにした。特異的な臨床症状はなかったが、1歳未満の若齢個体は感受性が高く、ほとんどが突然死していた。\n 病理解剖学的には、エルシニア症で死亡したサル類に共通して腸間膜リンパ節の腫大がみられ、特にリスザルではさらに脾臓、肝臓において針頭大白色結節の形成がみられること、小腸ではパイエル板に病変が主座することを示した。また、病理組織学的には、これらの臓器において、菌塊を伴う壊死巣の形成が特徴的病変であることを指摘した。\n また、遡及的研究として、分離菌種、血清型およびスーパー抗原YPM (Yersinia pseudotuberculosisderived mitogen)の解析が実施されている症例を対象として、それぞれの因子と病理学的所見との関連を調べたところ、Yersinia pseudotuberculosis 血清型1b、2b、3、4b、6、7および Y. enterocolitica O3 などの菌種と血清型で病変が異なることはなかったが、Y. enterocolitica O8 感染個体では化膿性変化がより強く、特定の菌種と血清型で病変に差があることを明らかにした。また、スーパー抗原YPMをコードするypmA遺伝子を保有する Y. pseudotuberculosis 15株と保有しない2株で病変を比較したが差がなかった。Yersiniaの病原性は様々な病原因子が複雑に関与しており、さらに感受性の差は、サルの種類や年齢、個体の状態によっても左右されるため、その病理像は多様であると考えられた。\n\n2. 病原性Yersiniaの感染防御抗原に関する研究\n 第2章では、エルシニア症に対するワクチン抗原の探索のため、病原性Yersiniaが共通して産生する病原因子 Yersinia Adhesin A (YadA) および Yersinia Outer membrane Proteins (Yops)に着目し、動物実験によってこれらが病原性Yersiniaの感染防御抗原と成りうるかを検討した。\n 供試菌株として Y. pseudotuberculosis 4bを用い、免疫原として、YadAを強発現した死菌 [YadA群]、精製Yops [Yop群]、YadAを発現する37℃培養死菌[37℃群]と、YadAを発現しない25℃培養死菌[25℃群]をマウスに皮下あるいは経口接種し、陰性対照群にはPBS を投与した。その後 Y. pseudotuberculosis 4bの生菌を経口感染させた。その結果、生存率は、YadA群(皮下)100%、YadA群(経口)60%、37℃群(皮下)40%で、YadA死菌に対する血清IgG値は、YadA群(皮下)で最も高く、次いで37℃群(皮下)が高く、Yop群や陰性対照群では検出されなかった。一方、Yopsに対する血清IgGは、Yop群(皮下)でのみ検出された。この実験でYadA死菌の感染防御抗原としての有効性が示唆されたことから、効果的な接種法と量を検討し、作用機序を明らかにするために、マウスを用いて、YadA死菌単回皮下接種群、YadA2回皮下接種群、YadA2回経口接種群、陰性対照群 (PBS投与) を設定し、免疫原を接種後、同じく生菌を経口感染させた。その結果、YadA単回皮下接種群の10匹中1匹を除く、いずれの免疫賦与群においても、死亡する動物はいなかったものの、体重減少、糞便中への排菌および病理組織学的病変がみられ、その程度は、YadA2回皮下接種群において最も軽度であった。\n 以上の結果から、マウスにおいてYadA死菌を皮下接種することで、Y. pseudotuberculosis 4bの経口感染による死亡を阻止できることを明らかにした。この機序として、YadAは接着因子としての機能の他、補体や貧食細胞に対する抵抗性などにも関与する多機能を有する病原因子であることから、YadA死菌の皮下接種による全身免疫が賦与され、肝臓、脾臓、腸間膜リンパ節およびパイエル板などの臓器から、より早期に菌を排除することで、死亡に至る重篤な感染を阻止できたものと考察した。しかしながら、生存個体において、菌接種後に糞便中に排菌し、臨床症状や病変がみられたことから、今回用いた接種方法と量では、腸管感染を完全に阻止する十分な腸管局所免疫を賦与できないことがわかった。\n\n3. 飼育下リスザルに対するYersinia pseudotuberculosisワクチンの臨床実験に関する研究\n 第3章では、前章の動物実験によりYadA死菌の感染防御抗原としての有効性が示唆されたことから、YadA死菌をワクチンとして用いて、リスザルを対象に臨床実験を行った。すなわち、2004年~2009年の間に、エルシニア症の発生経験をもつ7施設(流行群)と発生のない4施設(非流行群)のリスザル、延べ1092頭にワクチンを皮下接種し、エルシニア症の発生状況と血清抗体の推移を観察した。その結果、ワクチン接種後、7流行群のうち4施設と全ての非流行群でエルシニア症の発生がみられず、その他の3流行群でも、発生回数および罹患頭数が激減した。血清調査の結果、Yersinia感染を広く検出するYop抗体は、流行群では陽性率が高く(67.6~100%)、非流行群では低かった(0~36,4%)。さらに、流行群であるE施設と非流行群のP施設において、YadAならびにYop抗体の推移を比較した結果、YadA抗体はいずれの施設でも、ワクチン接種の翌年から陽転した。Yop抗体は、E施設では1歳以上の個体で保有率が高い(85.9%)が、P施設では、成体を含めて多くの個体が陰性であった。\n 以上の野外飼育施設における臨床実験により、リスザルへのYadA死菌を用いたY. pseudotuberculosisワクチンの有効性を示した。一方、エルシニア症流行施設では、成体におけるYop抗体保有率が高いが、非流行施設では低かった。これは、流行施設群では、繰り返しYersiniaの自然感染がおきているためと推測した。実際、1流行施設では、毎年ワクチン接種を実施したにもかかわらず、直腸スワブから高率に病原性プラスミドを有するY. enterocolitica O5が分離されたことからも裏付けられた。本章における臨床実験の結果と、2章の動物実験結果も踏まえ、YadA死菌ワクチンは腸管局所の感染を完全には阻止できないが、肝臓、脾臓およびリンパ節での菌増殖を抑え、ワクチン接種個体においては野外でのYersiniaの自然感染によって、免疫がさらに強化され重篤な感染が防御されているものと推測した。\n\n 以上、本研究では、我が国の動物展示施設におけるサル類のエルシニア症の発生実態を病理学的、疫学的に明らかにし、特に飼育下リスザルでは極めて重要な感染症であることを明らかにした。また、共同研究者による細菌学的な研究結果を基に動物実験と野外臨床実験を実施し、飼育下リスザルのエルシニア症に有効なワクチン開発を試みた。サル類を含め動物展示施設におけるエルシニア症は、動物飼育管理上の重要な問題であるのみならず、公衆衛生上の観点からも看過できない問題であり、本研究で得られた成果は動物だけでなく、ヒトのエルシニア症の感染予防対策を確立する上で貴重な知見を提供しうるものであると考えられる。\n","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_10006_dissertation_number_12":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"甲第 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