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アイテム
犬の心負荷時における心房性ナトリウム利尿ペプチドの変化に関する実験的研究
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3149
https://az.repo.nii.ac.jp/records/314902147036-8776-46a5-8637-15fbdb4de693
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-01-16 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 犬の心負荷時における心房性ナトリウム利尿ペプチドの変化に関する実験的研究 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec | |||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
石川, 義広
× 石川, 義広 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 細胞外液量の調節に関与するホルモンとして、主に生体の脱水に対する防御機構として作用するアルドステロン、バソプレシンなどが知られていたが、最近では心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が溢水状態に反応し、積極的に利尿を誘発すると同時に血圧降下作用を示すホルモンとして注目されている。ANPは、主に心房筋組織内において合成、貯蔵ならびに分泌されることから、これまで単に血液の循環ポンプとして考えられていた心臓は、さらに内分泌器官としての役割も担っていることが判明した。 ANPの分泌は、生体内において物理的、生化学的、および神経的に調節されているが、特に心房に対する内圧を介した物理的な刺激が分泌に重要であるとされている。また、ANPは心不全、腎不全あるいは高血圧症に関連してその血中濃度が上昇することが知られており、特に心疾患においては、その重症度に応じて高値を示し、臨床症状の増悪、改善にともない増減する。このようなANP分泌の生理的変動は、心臓を内分泌器官として位置付けるだけではなく、心疾患の診断および治療を考慮するうえに極めて重要な機能である。しかしながら、これまでの報告において、ANPの分泌にはいくつかの異なるメカニズムが存在することが示唆されているものの、詳細な分泌機序に関しては十分に検討されていない。 このことから著者は、ANPの分泌機序について、物理的調節に着目し、特に左心系に対する負荷がANP分泌にどのように影響をおよぼすかを知る目的で、犬の心肺標本を用いて検討を行った。 1.心肺標本作製時におけるANP濃度の変化 心肺標本は、腹大動脈および腹部の後大静脈からカニュレーションを行い胸腔内で作製し、体外循環用の人工心肺装置および末梢血管抵抗に代るスタ一リングのレジスターを用い、心臓に対する前負荷ならびに後負荷を調節して循環動態を維持した。この心肺標本を用いてANPの分泌機序を解明する場合、非生理的な閉鎖循環が、ANP分泌に対してどのような影響をおよぼすか否かを知る必要がある。そこで心肺標本を作製したのち、可能な限り正常に近い心機能が維持される様に循環をコントロールし、負荷操作を行わず経時的に血漿中ANP濃度を測定してその変化を観察するとともに、循環血液の性状および心臓カテーテル法によって測定された各心機能のパラメーターとANP濃度の推移を観察した。ANP濃度はMarumoらの方法によりRadioimmunoassay(RIA)法で測定した。 その結果、心肺標本で約90分間の循環中、ANP濃度は時間経過にともない直線的に増加した。また、心・血管内(右心房、肺動脈、左心室、大動脈)におけるANP濃度に有意差は認められなかった。心肺標本作製後の心内圧は、全体的に一定の値を維持するように調節したが、左心室拡張末期圧(LVEDP)、平均右房圧(RAm)および平均肺動脈圧(PAm)は上昇傾向を示し、左心室最大収縮期圧(LVpks)、左心室内圧の変化率の最大値(LV max.dp/dt)ならびに心拍数(HR)は時間経過とともに減少する傾向が認められた。しかし、これらのパラメータの変化はわずかであり、ほぼ正常範囲内の変動であったことから、無負荷時における心肺循環は、ANP分泌に対して直接的に大きな影響をおよぼさないものと思われた。血液性状については血液温度、血液ガス、電解質(Na, K, Cl, Ca)ならびに浸透圧について測定した。循環血液の温度および血液ガスは、循環に直接影響をおよぼすことから、あらかじめ条件設定を行った。血液温度は生体に近い38℃前後に維持され、血液ガスは、純酸素の付加によって酸素分圧が100mmHg以上の高値を示したが、二酸化炭素分圧およびpHはほぼ正常範囲内で推移した。また、Na濃度および浸透圧は比較的高値を示したが、心肺標本循環中に大きな変化は認められず、その他の電解質もほぼ安定して推移した。 以上の成績から、心肺標本を用いてANP分泌に関する実験を計画する場合には、ANPの経時的な増加を考慮して評価する必要があることが判明した。また、この経時的なANPの増加は実験例ごとに異なるものの、その変化は直線的であり、心肺標本作製後初期のANP濃度の変化から、その増加率を推定することが可能であった。このことから、心負荷時におけるANP分泌動態を評価できることが確認された。 2.心肺標本の心負荷時におけるANP濃度 心肺標本の循環におけるANP濃度の変化に関しては、増加率は実験例ごとに異なるものの、循環中経時的に上昇することが確認された。この成績にもとづき、心肺標本を作製し30分間循環させた後、直接左房に対し容量負荷を加え、心内圧、心拍数ならびに血漿中ANP濃度について観察し、左心系への負荷に対するANP分泌反応について検討を加えた。容量負荷は、左心耳の先端部よりカテーテルを挿入し、ポンプを用い全体の循環血液量を変化させずに、心肺標本を循環する血液を直接左房内に送血できる回路を構成して実施した。心負荷の方法は、心肺標本作製後30分を経過したのち、心臓への血液還流量を一定とし、左房側から急速な血液容量負荷を加えた。負荷の程度は、LVEDPを指標とし20mmHg以上に上昇させ負荷を加えた。その結果、左房負荷にともないLVpksが上昇し、また、同時にPAmおよびRAmの上昇が観察され、著明な心負荷の状態を示した。このような心負荷時におけるANP濃度は、急激に上昇して分泌の亢進が認められ、無負荷時の経時的なANP濃度の増加と比較して約2.6倍の上昇を示した。左右の心耳組織内ANP含有量をKangawaらの方法で測定した結果、正常犬においては、右心耳で34.9±6.7ng/mg・protein、左心耳では65.9±29.2ng/mg・protein(n=5)であった。また、3例について負荷前後における左右の心耳組織内ANP含有量を測定した結果、負荷後における変化は2例で減少したが、1例では増加傾向がみられた。 以上のごとく、左房側からの急激な容量負荷を加えることによって右心系内圧の上昇も同時に観察され、著明な心負荷の状態を示し、ANP分泌は亢進したが、必ずしも左房に対する負荷のみに起因するものではなく、右心系の負荷も関与するものと考えられた。 3.左心系の容量負荷時におけるANP濃度 心肺標本の循環において、左房側から急激な容量負荷を加えることによって心負荷の状態となり、ANP分泌が亢進し血中ANP濃度は急激に上昇することが観察された。 そこでさらにANP分泌に対する左心系負荷の影響を詳細に追求する目的で、左房への負荷が右心系に波及しないように右心室にカニューレを挿入し、負荷を緩衝する回路を構成すると同時に、右心系への血液還流量を減少させ、主として心肺循環を左心系のみに限定した。これに対しLVEDPを指標として左房に血液容量負荷を加え、その時のANP濃度の変化を観察した。 その結果、ANP濃度の変化は無負荷時における経時的な変動と比較して有意な差は認められなかった。したがって、心負荷時にみられた急激なANP濃度の上昇は、左房の容量負荷に起因するものではないことが証明された。また、左房容量負荷の前後における左右の心耳組織内におけるANP含有量は、負荷前においては右心耳より左心耳組織内のANP含有量が高値を示した。しかしながら、負荷後における組織内ANP含有量は、3例で減少、1例で増加、他の1例では左右の心耳で異なる反応を示し、必ずしも血漿中濃度との関連はなかった。 以上のことから、急性の心負荷による血中ANP濃度の上昇に対し、左心系の負荷はほとんど関与していないことが判明した。 |
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学位名 | ||||||
学位名 | 獣医学博士 | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1990-03-20 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第 57号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |