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アイテム
中間宿主貝における肝蛭幼虫の発育に関する研究
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3146
https://az.repo.nii.ac.jp/records/314611ae22d3-0e2e-4d7b-8ac4-30281be583b8
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||||
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公開日 | 2013-01-16 | |||||||
タイトル | ||||||||
タイトル | 中間宿主貝における肝蛭幼虫の発育に関する研究 | |||||||
言語 | ||||||||
言語 | jpn | |||||||
資源タイプ | ||||||||
資源タイプ | thesis | |||||||
著者 |
板垣, 匡
× 板垣, 匡
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抄録 | ||||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||||
内容記述 | 牛の肝蛭症はわが国でも最も経済的損失の大きい寄生虫病の1つであり,肝機能の低下による種々の臨床的障害はもとより,食肉検査所で肝蛭症(肝蛭感染によると思われる胆管炎を含む)により廃棄される肝臓の重量は1980年度には約2,500トンにも及んでいる。このようにわが国の酪農・畜産業に多大の影響を及ぼす肝蛭症の研究は古くから行なわれている。しかしその多くが終宿主(牛,緬・山羊,家兎)体内での臨床的あるいは病理学的な報告であり,中間宿主体内での報告は少ない。この原因の1つは中間宿主貝の飼育上の難かしさにあると思われる。 本研究ではヒメモノアラガイを実験室内で飼育する際に最も重要である餌料についてまず検討し,ついで日本産肝蛭と中間宿主貝との寄生虫宿主関係について実験を行なった。第1に肝蛭の地域株の中間宿主貝に対する感受性を明らかにした。第2に肝蛭感染貝からのセルカリアの遊出パターン,遊出セルカリア総数と感染ミラシジウム数との関係について検討するとともに,貝体内での幼虫の増殖,発育を観察し,総合的に考察を加えた。 I. 中間宿主貝飼育用餌料の検討 稚貝に8種類の餌料(A:煮たレタス,B:人工粉末餌料,C:Standenの改良餌料,D:乳児用離乳食1,E:同2,F:藍藻,G:硅藻,H:藍藻と泥)を与えて6ヵ月間飼育し,貝の生存,成長,産卵および稚貝の孵化を指標として餌料の良否を比較した。 その結果,貝の寿命,成長,産卵,稚貝の孵化率はすべて餌料によって影響されることが明らかとなった。すなわち貝の成長はH餌料を与えた貝で最も良く,B,F餌料がこれに次いだ。しかしA,C,D,Eの餌料では貝の成長は悪かった。H,B,F,A餌料を与えた貝では産卵が認められたが,その他の餌料では産卵はみられなかった。また産卵数はH,B餌料で最も多かった。H,B,F,A餌料を給与した貝が産出した卵の孵化率はH,F,Aでは82~92%で,ほとんど差はみられなかったが,Bでは65%と低かった。これはB餌料を与えた貝が産出した卵の胚に奇形のものが多いことによるものと考えられた。以上のことから,藍藻に泥を加えた餌料がヒメモノアラガイの飼育に最もすぐれていることが明らかとなった。 Ⅱ. 肝蛭の株差と中間宿主の種差による肝蛭幼虫の発育の差異 好適中間宿主の異なる日本産肝蛭の2株,すなわちヒメモノアラガイを宿主とする神奈川産肝蛭とコシダカモノアラガイを宿主とする北海道天北産肝蛭を使って,それぞれの貝との間に交差感染を含む4通りの感染実験を行ない,貝体内での幼虫の発育状態について比較検討し,次の結果を得た。 1. 天北産と神奈川産の肝蛭のヒメモノアラガイおよびコシダカモノアラガイに対するミラシジウムの侵入率には差はなく,またスポロシストに対する貝の防御組織反応は,両種の貝とも認められなかった。 2. 異常スポロシストの発生率はいずれの貝においても神奈川産肝蛭の方が天北産肝蛭よりも高かった。これは貝体内でのスポロシストの発育場所に関係すると思われた。 3. 天北産肝蛭ではコシダカモノアラガイとヒメモノアラガイとの間でレジア産生数に差はみられなかった。しかし神奈川産肝蛭ではコシダカモノアラガイでのレジア産生数がヒメモノアラガイにおけるよりもきわめて少なかった。 4. 天北産肝蛭では両種の貝において,感染20日後にセルカリアの形成が認められた。一方神奈川産肝蛭はヒメモノアラガイでは感染25日後にセルカリアの形成が認められたものの,コシダカモノアラガイでは感染40日後になってもセルカリアの形成は認められなかった。 以上のことからヒメモノアラガイは天北産および神奈川産の肝蛭にとって,好適な中間宿主であると考えられる。一方コシダカモノアラガイは天北産肝蛭にだけ好適な中間宿主であり,神奈川産肝蛭には好適ではないことが明らかとなった。不適中間宿主における発育の阻害はレジア以降の発育期においてみられた。 Ⅲ. 感染ミラシジウム数のセルカリア産生に及ぼす影響 肝蛭感染貝から遊出するセルカリアの遊出パターンと遊出セルカリア総数に対する感染ミラシジウム数の影響を明らかにするため,1,5,10匹のミラシジウムによる感染貝をつくり,個々の感染貝から遊出するセルカリア数を貝が死亡するまで毎日,ほぼ同時刻に計数した。また貝体内での幼虫の発育,増殖状態を観察するため,感染貝を一定間隔で固定し連続切片を作製して観察した。 1. 感染貝からセルカリアが遊出し始めるまでに要する日数は,ミラシジウム感染数の増加とともに長くなった。これはミラシジウム感染数が増すとともに母レジア数も増加し,母レジアの成熟が遅れるためと考えられた。 2. 個々の感染貝から遊出するセルカリア数は,感染ミラシジウム数には関係なく,数日おきに著しい増減が認められた。これは貝体内で成熟したセルカリアが,何らかの遊出刺激が加わるまで貝体内に滞留し,刺激に応じて一度に遊出するためと考えられた。 3. 感染貝1匹当たりの毎日の平均セルカリア遊出数の変動は,セルカリアの遊出開始から80日前後までは感染ミラシジウム数による影響はなく一定のパターンを示し,遊出開始後3~40日(約5週)にピークを示す1峰性の推移を示した。この遊出セルカリア数の増減はレジア体内でのセルカリアの増殖と発育にほぼ同調していた。ミラシジウム1匹感染貝には,この1峰性のセルカリア遊出パターンを示した後,長い期間生存するものがみられ,この場合の遊出は遊出開始後5週の第1峰のほかに,11週,20週にさらに2つのピークをもつ3峰性のパターンを示し,しかも各ピークの値は週とともに増大した。 4. 同一感染群全体としてみた場合,いずれの群でも遊出開始後20~50日,すなわちミラシジウム感染後50~80日に著しいセルカリアの遊出があることが明らかとなった。これは野外で肝蛭感染を予防する場合,この遊出ピーク時期の稲ワラ等の汚染に十分配慮する必要があることを示している。 5. 1匹の感染貝が死亡するまでに遊出する総セルカリア数は,遊出開始後約10週までは感染ミラシジウム数による影響はあまり認められなかった。これは感染ラシジウム数が異なっても感染後の日数が経過するとともに,セルカリアを産生するレジアの数に差がなくなる結果と考えられる。しかしミラシジウム1匹感染貝で長期間生存したものでは,総遊出セルカリア数は著しく多かった。 6. 感染貝はセルカリア遊出開始から,遊出の第1のピークに達するまでに著しく成長した。 |
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学位名 | ||||||||
学位名 | 獣医学博士 | |||||||
学位授与機関 | ||||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||||
学位授与年月日 | ||||||||
学位授与年月日 | 1986-03-20 | |||||||
学位授与番号 | ||||||||
学位授与番号 | 甲第 45号 | |||||||
著者版フラグ | ||||||||
出版タイプ | AM | |||||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |