{"created":"2023-06-19T07:18:00.887337+00:00","id":3142,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"886b41d8-bf6a-4cca-abd8-662af369fbc2"},"_deposit":{"created_by":4,"id":"3142","owners":[4],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"3142"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:az.repo.nii.ac.jp:00003142","sets":["17:40:277","370:15:391"]},"author_link":["16162"],"item_10006_date_granted_11":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"1976-03-15"}]},"item_10006_degree_grantor_9":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"麻布大学"}]}]},"item_10006_degree_name_8":{"attribute_name":"学位名","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreename":"獣医学博士"}]},"item_10006_description_7":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"多くの心疾患の根本治療たとえば,欠損孔の閉鎖,弁あるいは血管の置換,あるいは犬糸状虫の完全摘出のためには,開心術によって直視下に種々の心内操作をおこなわなければならない。この開心術は心臓への血行遮断が必要であり,そのための手段として体外循環法がある。\n 体外循環法 Extracorporeal circulation とは,人工心肺装置によって生体の心臓または肺の機能の一部または全部を代行すること,すなわち肺ならびに体毛細管におけるガス交換を人工的に維持することと定義されている。\n 体外循環の概念は19世紀初頭にその萌芽がみられるとされるが,本格的な研究は1937年 Gibbon による猫の肺動脈完全遮断実験から始められた。その後多くの研究者により,人工心肺装置の改良,術式の検討あるいは病態生理の追求がなされ,今日医学領域では広く心臓血管外科に応用されている。\n 翻って獣医学領域をみると,犬の体外循環に関する報告は少なく,その研究は立ち遅れている。しかしながら,犬の心疾患について臨床診断と治療の技術あるいは研究内容が高度化するにつれ,犬の体外循環法の重要性が認識されつつある。\n 実際に体外循環を実施するにあたっては,灌流量すなわち pump から送り出す血液量をいかにすべきかが最も大きな問題となる。\n 犬の体外循環における灌流量については,1.0~100ml/kg/minと研究者により大きな差異があり,適正灌流量に関する報告は少ない。また,人医界における犬の実験が主として10㎏以上の比較的大型の犬を用いておこなわれたこともあり,犬の臨床上多いと思われる体重10kg以下の比較的小型の犬に対する体外循環法の研究はほとんどみられない。\n そこで,体重6~10kgの比較的小型の犬を対象として回転円板型人工肺と double roller pump を用いて灌流量別に30分間の完全体外循環を実施し,体外循環中ならびに終了後360分の間における血行動態ならびに血液ガス動態について観察し,とくに体外循環における灌流量について検討を加えた結果,若干の知見を得た。\n 第1実験として,6~10kgの雑種成犬15頭を用い体外循環の基本である常温灌流を誇こなった。灌流量は135,95,80ml/kg/minを目標とした。実際の灌流量はそれぞれ136.3±8.7,95.7±5.7,82.1±5.0ml/kg/minであった。さらに第2実験では,実験犬の均一化を図るため実験用Beagle犬(体重8~10㎏,2才)7頭を用い,安全性向上のため人医界では多用されている軽度低体温灌流をおこなった。灌流量は180,95ならびに30ml/kg/minを目標としたが,実際にはそれぞれ平均181.5,94.8,30.Oml/kg/minであった。\n 人工心肺装置の充塡液としては同種heparin血,乳酸加Ringer液,5%ブドウ糖液,10%低分子dextran液,20%mannitol液,7%重曹水を用い,計算上Htが25%(第1実験),30%(第2実験)となるよう稀釈した。稀釈率は平均21.4%,20.9%であった。送血は左鎖骨下動脈,脱血は前後大静脈にCannulationし,生体と人工心肺を接続しておこなった。pHの補正には7%重曹水を用い,体外循環終了後には輸血をおこなった。\n 以上のような条件でおこなった体外循環中ならびに終了後の血行動態ならびに血液ガス動態は次のとおりである。\nI. 常温体外循環\n 体外循環中の平均動脈圧は常温灌流ではいずれの群においても術前値より大巾に減少したが,各群とも55mmHgを維持した。体外循環終了後はさらに低下して135ならびに80ml/kg/min灌流群では40~60mmHgとなり,95ml/kg/min灌流群では40mmHgまで低下したのち60mmHg以上に回復した。中心静脈圧は135,80ml/kg/min灌流群ではほとんど変化なく,95ml/kg/min灌流群では3mmHgまで上昇した。体外循環終了後は各群ともに低下し,95ml/kg/min灌流群以外はいずれも0㎜Hg以下となった。\n 体外循環による生体変化を血液ガス動態からみると,代謝性acidosisがその主体をなすといわれている。犬における血液pHならびに血液ガス諸量については諸家により若干の差があるが,ここでは動脈血pH7.35~7.50,動脈血炭酸ガス分圧20~40mmHg,base excess(BE)-1~-8mEq/lを正常範囲としてその判定に用いた。135ml/kg/min灌流群では体外循環中代謝性alkalosisを示し,体外循環終了後では概ね正常であったが,330分後からは呼吸性acidosisが認められた。95,80ml/kg/min灌流群では体外循環開始直後に呼吸性alkalosisと代謝性acidosisを示し,その後は代謝性acidosisとなったが,95ml/kg/min灌流群では30分後には正常に回復した。体外循環終了後は95ml/kg/minでは30分後に代謝性acidosisを示したのちほぼ正常となったが270分後には呼吸性acidosisが発現した。80ml/kg/min灌流群では代謝性acidosisを示したのち,早くも150分後から呼吸性acidosisが発現した。\n 動脈血酸素分圧についてみると,95,80ml/kg/min灌流群では体外環循中100mmHg以下を示す例もみられたが平均では概ね200mmHg以上であった。135ml/kg/min灌流群では体外循環開始後30分に全例とも50~60㎜Hgとなり,酸素加が不良であった。体外循環終了後は各群とも概ね200㎜Hg以上であった。\n 動脈血酸素飽和度は概ね90%以上でほとんど問題はなかった。\n 体外循環中の静脈血酸素飽和度は各群とも60%を維持し,体外循環終了後は135,80ml/kg/min灌流群ではそれぞれ50,60%以上であったが,300分後以降は40%以下まで低下した。95ml/kg/min灌流群では210~240分を除けば概ね60%以上であった。\n 以上のような血行動態ならびに血液ガス動態の変化から,常温灌流における135,95,80ml/kg/min灌流の3群を比較してみると術後の血圧もほぼ維持され,体外循環とともに発現する代謝性acidosisが術後早期に改善されること,各群にみられた呼吸性acidosisの発現が遅いこと,術後の組織のanoxiaがみられなかったことなどから,95ml/kg/min灌流が最も適当であると考えられた。\nII. 軽度低体温灌流\n 体外循環中の平均動脈圧は180,95ml/kg/min灌流群ではそれぞれ90,55mmHgであったが,30ml/kg/min灌流群では30mmHgとなった。体外循環終了後は180ml/kg/min灌流群では40mmHgまで低下したのち60mmHgとなったが,再びやや低下した。95ml/kg/min灌流群ではばらつきが大であったが,平均では40mmHgまで低下したのち60mmHgまで回復した。30ml/kg/min灌流群では体外循環中の低値が終了後も持続し,その後やや回復したが,再び低下して30mmHgとなった。中心静脈圧は各群とも体外循環中上昇し,体外循環終了後は低下して0mmHg以下となった。\n 血液ガス諸量の変化をみると,体外循環中は各群とも代謝性acidosisを示し,95,30ml/kg/min濯流群では体外循環開始直後に呼吸性alkalosisも認めた。体外循環終了後は180ml/kg/min灌流群では代謝性alkalosisと呼吸性acidosisを示し,1例は正常に復帰したが,改善しなかった1例は328分後に死亡した。95ml/kg/min灌流群では60分以降正常となったが,30ml/kg/min灌流群は軽度の呼吸性acidosisと代謝性alkalosisが認められた。\n 動脈血酸素分圧は体外循環中各群とも体外循環開始直後を除き平均100㎜Hg以上あったが,180,95ml/kg/min灌流群では100mmHg以下となる例があった。体外循環終了後は徐々に吸入気酸素濃度を100~40%に減じたため動脈血酸素分圧も漸次減少したが,100㎜Hg以上であった。動脈血酸素飽和度は概ね90%以上であった。静脈血酸素飽和度は180,95ml/kg/min灌流群では70%を維持したが,30ml/kg/min灌流群では50%以下となる例があった。\n 人の体外循環においては,生体の酸素消費量あるいは基礎代謝量などの方面から,体重あるいは体表面積別の適正灌流量について多くの報告がなされている。犬の灌流量についてはCohenら,榊原らは犬の生存に必要な最低灌流量の研究から10~20ml/kg/minの低流量灌流を提唱し,一方Stokesら,Kirklinらは100ml/kg/minの高流量灌流を主唱し,犬の適正灌流量についての報告はほとんどみられない。このように犬の体外循環における灌流量について大きな差異がある理由は,一つには基礎実験を目的とするか,臨床応用を目的とするかにあり,また用いる人工心肺装置,灌流温,灌流時間,あるいは充塡液の組成と量などによると思われるが,さらには実験動物としての犬の体重,年令などにあまり関心が払われていないことにも原因があると思われる。\n 今回,著者は回転円板型人工肺と roller pump を用いて,灌流量別に30分間の完全体外循環を実施した。\n その結果,6~10kgの比較的小型の犬に完全体外循環をおこなうにあたっては,常温灌流においてもまた軽度低体温灌流においても生体の安静時心拍出量に近い,95ml/kg/minいわゆる高流量灌流が必要であると考えられた。\n 本研究は今後,犬の適正灌流量とくに体重10㎏以下の比較的小型犬のそれを決定する上で,重要な指標の一つと考えられる。\n しかしながら,本実験においては,最も良好であった95ml/kg/min灌流においても体外循環中の代謝性acidosis,術後のhypovolemiaと低血圧などが認められ,実際の臨床に体外循環法を応用するためには,さらにこれらの予防処置など詳細な追求が必要であると思考する。\n"}]},"item_10006_dissertation_number_12":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"甲第 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