WEKO3
アイテム
科学的根拠に基づいた抗菌剤選択の実現に向けた牛乳房炎の検査法と実践的な治療法の検討
https://az.repo.nii.ac.jp/records/2000429
https://az.repo.nii.ac.jp/records/200042988cbdb70-8bb2-407f-9e3e-47969549b9b8
| 名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
|---|---|---|
|
|
|
| Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 公開日 | 2025-07-21 | |||||||
| タイトル | ||||||||
| タイトル | 科学的根拠に基づいた抗菌剤選択の実現に向けた牛乳房炎の検査法と実践的な治療法の検討 | |||||||
| 言語 | ja | |||||||
| 言語 | ||||||||
| 言語 | jpn | |||||||
| 資源タイプ | ||||||||
| 資源タイプ | doctoral thesis | |||||||
| アクセス権 | ||||||||
| アクセス権 | open access | |||||||
| アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||||
| 著者 |
楜澤, 共生
× 楜澤, 共生
|
|||||||
| 抄録 | ||||||||
| 内容記述タイプ | Abstract | |||||||
| 内容記述 | 薬剤耐性菌の拡大は国際的な喫緊の課題である。薬剤耐性菌の急速な拡大を受けて、2015年には世界保健機関(WHO)の総会で薬剤耐性菌対策の枠組みを示したグローバル・アクションプランが採択され、各国において対策が進められている。薬剤耐性菌問題の解決には、ヒト医療領域、獣医領域、そして環境を含めた包括的な取り組み、すなわちワンヘルス・アプローチが重要であり、獣医領域の中でも抗菌剤使用量の多い畜産領域は、ワンヘルス・アプローチの重要な要素と位置付けられている。日本において策定された薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023‐2027)では、畜産における畜種別耐性率、抗菌剤使用量について、具体的な数値目標が設定されている。 牛乳房炎は微生物感染に起因する乳腺組織の炎症であり、その治療は主として抗菌剤投与により行われているため、牛乳房炎治療における抗菌剤使用は酪農における抗菌剤使用の主要な要因となっている。そこで本研究では、酪農における抗菌剤使用の大部分を占める牛乳房炎において、科学的根拠に基づいた抗菌剤選択を実現する上で課題となっているいくつかの問題点に着目した。 薬剤耐性を低減するためには、エビデンスに基づいた抗菌薬の選択が必要である。エビデンスに基づいた抗菌剤の選択には、臨床分離株の薬剤感受性を判断することが不可欠である。日本における牛乳房炎の診断には国際的なガイドラインとは異なる薬剤感受性試験法として簡易的な方法(簡易ディスク拡散法)が広く採用されているが、本法の妥当性はこれまで確認されてこなかった。本研究において、国際的ガイドラインに準拠した方法と簡易ディスク拡散法の高い相関が確認され、薬剤感受性試験としての簡易ディスク拡散法の有用性が明らかとなった。また、試験方法により結果が異なることも改めて確認され、試験法ごとに判定基準を策定することの重要性が示された。これまで簡易ディスク拡散法に適応した判定基準は策定されておらず、試験法の異なる国際的ガイドラインに適応した基準におけるヒトやその他動物の基準値が代用されてきた。国際的ガイドラインに適応した基準に関しても、牛乳房炎に対する基準が設定されている薬剤はわずか5薬剤のみで、そのいずれの薬剤も日本で使用されている薬剤とは異なることから、実質的に基準値が存在しない状態であった。そこで、日本における牛乳房炎分離株の薬剤感受性分布を広域に調査し、得られた薬剤感受性分布の結果から疫学的ブレイクポイントを算出し、簡易ディスク拡散法に適応した新たなディスク法判定基準を策定した。本基準は疫学的ブレイクポイントであるため直接臨床的効果を予測するものではない点に一定の限界があるが、これまで代替的に使用してきた国際的ガイドラインにおけるヒトやその他動物の基準値と異なり、牛乳房炎に関する科学的根拠に基づいており、一定の価値を有するものと考える。本研究で策定した疫学的ブレイクポイントは、今後臨床的なアプローチを加えたブレイクポイントを策定していく上で重要な基礎データとなる。また、新たに策定した基準では多くの薬剤で従来代替的に使用していた基準と比較して基準が緩和された。選択可能な抗菌剤の種類が増えることは、より狭いスペクトルの抗菌剤の選択機会を増やし、医療上重要な抗菌剤の使用量の低減につながる可能性が示唆された。加えて、日本における牛乳房炎分離株の薬剤感受性分布を広域に調査した結果、牛乳房炎分離株は治療に使用されている主要な抗菌剤に対し概ね感受性であるが、一部の抗菌剤では耐性傾向を示唆する結果となったため、今後も継続的にモニタリングを行う必要があると考える。 これまで牛乳房炎は全症例一律に初診時より抗菌剤治療が行われてきた。それに対して近年、細菌学的検査に基づいて抗菌剤治療の適応症例を選択する、選択的抗菌剤治療の考えが確立されてきている。しかし、選択的抗菌剤治療において細菌学的検査の結果が得られるまでの数日間は無処置のまま経過観察とされており、抗菌剤に代わる初診時の治療方法は確立されていない。そこで、本研究では抗炎症剤であるグリチルリチンに着目し、初診時投与の効果について検証を行った。その結果、初診時のグリチルリチン製剤投与は乳房局所徴候の早期回復効果を示し、抗菌剤に代わる新たな初診時の治療方法としての可能性が示された。選択的抗菌剤治療にグリチルリチン製剤の単剤投与を組み合わせることで、臨床徴候の緩和効果や早期に治療を開始したい農家の意向を満たし、根拠に基づいた抗菌剤使用の普及に貢献するものと考える。加えて、牛乳房炎におけるグリチルリチンの作用機序に関するin vitroおよびin vivoの実験では、グリチルリチンが炎症性サイトカインの相対的遺伝子発現量を低下させる可能性が示唆され、グリチルリチンの抗炎症作用のメカニズムが部分的に明らかになった。また、Staphylococcus aureusの細胞内侵入に対するグリチルリチンの阻害効果が示唆され、抗炎症効果以外の臨床応用の可能性が新たに発見された。 本研究では牛乳房炎における薬剤感受性試験の試験方法の妥当性が証明され、これまで不在であった判定基準の策定を行った。また、細菌学的検査に基づいて抗菌剤選択を実施する上で課題となっていた抗菌剤に代わる新たな初診時の治療方法についてグリチルリチンの有効性を示した。これらの知見は、科学的根拠に基づいた抗菌剤選択を行う上での課題を部分的に解消するものであり、その普及に貢献するものであると考える。牛乳房炎においてエビデンスに基づいた抗菌剤選択を実現するためには、他にもいくつかの課題がある。迅速に細菌学的検査結果を得られる体制作りや、臨床的ブレイクポイントの策定、臨床獣医師や酪農家への正しい診断、治療に関する知識の普及など、クリアすべき課題は多い。また、抗菌剤使用量を根本的に低減させる方法として、そもそも乳房炎の発生を減らすことが前提として最も重要である。薬剤耐性の低減に向け、乳房炎防除法と抗菌剤選択方法の両方のアプローチから、さらなる研究と対策が望まれる。 |
|||||||
| 学位名 | ||||||||
| 学位名 | 博士(獣医学) | |||||||
| 学位授与機関 | ||||||||
| 学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||||
| 学位授与機関識別子 | 32701 | |||||||
| 学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||||
| 学位授与年月日 | ||||||||
| 学位授与年月日 | 2025-03-07 | |||||||
| 学位授与番号 | ||||||||
| 学位授与番号 | 乙第449号 | |||||||