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  1. 著者
  2. K
  3. 何 裕遥
  1. 学位論文
  2. 獣医学専攻
  3. 博士論文(乙)

ヒト免疫とヒト腸内細菌叢を同時に再構築したデュアルヒト化マウスモデル樹立のための基盤整備に関する研究

https://az.repo.nii.ac.jp/records/2000428
https://az.repo.nii.ac.jp/records/2000428
71926d72-5f5b-429c-838a-899703049389
名前 / ファイル ライセンス アクション
diss_de_otsu447_jab&rev.pdf diss_de_otsu447_jab&rev.pdf (183 KB)
Item type 学位論文 / Thesis or Dissertation(1)
公開日 2025-07-21
タイトル
タイトル ヒト免疫とヒト腸内細菌叢を同時に再構築したデュアルヒト化マウスモデル樹立のための基盤整備に関する研究
言語 ja
言語
言語 jpn
資源タイプ
資源タイプ doctoral thesis
アクセス権
アクセス権 open access
アクセス権URI http://purl.org/coar/access_right/c_abf2
著者 何, 裕遥

× 何, 裕遥

ja 何, 裕遥

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抄録
内容記述タイプ Abstract
内容記述 腸内細菌叢はヒト宿主と共生関係にあり、様々な疾患の病態に関与していることが明らかになっている。特に免疫疾患との関係が注目されており、免疫細胞の分化とその機能に対する腸内細菌叢の生理的な役割について研究が進められている。これらの研究には、無菌マウスにヒト腸内細菌を投与したノトバイオートマウス、あるいはヒト糞便移植に代表されるような、ヒト菌叢を投与したヒト微生物叢関連マウスが用いられている。しかしながらマウスを用いた基礎研究は、種を超えてヒト腸内細菌叢とマウス免疫細胞の相互作用を評価するという点で限界がある。これまでのところ、ヒト腸内細菌叢とヒト免疫を同一生体内で再現するモデル動物は報告されていない。本研究は腸内細菌叢と免疫系の2つをヒト化した「デュアルヒト化マウス」を構築するための研究基盤を整備することを目的とし、以下の研究を実施した。

第1章:ヒト免疫とヒト腸内細菌叢を同時に再構築したデュアルヒト化マウスモデルの樹立
ヒト造血幹細胞を移植したNOGマウスは、免疫系ヒト化マウスとして様々な免疫学研究に活用されている。本研究では無菌NOGマウスにヒト造血幹細胞ならびに糞便を移植し、ヒト免疫とヒト腸内細菌叢を同時に再構築したデュアルヒト化マウスモデルを作製した。まず、無菌NOGマウスにヒト造血幹細胞を移植し、無菌免疫系ヒト化マウスを作成した。その結果、従来のSPF免疫系ヒト化NOGマウスと同様に、末梢血や骨髄、脾臓においてヒトCD45+白血球の生着が認められた。得られた無菌免疫系ヒト化マウスにヒト糞便を移植することでデュアルヒト化マウスを作製した。次世代シーケンサーを用いて腸内細菌叢構成を分析したところ、移植したヒト糞便ドナーの特徴を反映した菌叢がマウスの腸管に定着していることが確認された。次に、ヒト糞便移植による免疫細胞の構成の変化を分析した。デュアルヒト化マウスと無菌免疫系ヒト化マウスにおける末梢血の免疫細胞の構成を比較したところ、全白血球中のヒト由来CD45+白血球の割合には有意差を認めなかったが、ヒトCD3+T細胞の割合はデュアルヒト化マウスにおいて有意に増加した。また、脾臓におけるデュアルヒト化マウスのCD3+エフェクターメモリーT細胞の割合は無菌免疫系ヒト化マウスよりも高い傾向が認められた。本研究で確立したデュアルヒト化マウスは、ヒト免疫における腸内細菌叢の生理学的役割の解明に寄与するとともに、腫瘍免疫分野における新規前臨床モデルとして有用であると考えられた。

第2章:ビニールアイソレータを用いない無菌マウス飼育方法の開発
マウスを用いたマイクロバイオーム研究を実施する際には、微生物汚染を回避するためにビニールアイソレーター(VI)を用いることが多い。しかしながらVIを用いた実験は、限られたスペースで厚いゴム手袋越しに作業をする必要があるため、時間や労力を要するとともに、実施できる処置に制約がある。本研究では個別換気ケージとバイオバブルを組み合わせることで、実用性の高いヒト微生物叢関連マウスの飼育・実験システムを構築した。本システムは内部の清浄度を高めるバイオバブル内に、陽圧制御の個別換気ケージを設置した2重のバリア機構で構成される。飼育器材はデータロガーの温度データを元に滅菌条件を設定し、高圧蒸気滅菌したものを用いた。まず、本システムをコンベンショナル動物室に導入し、無菌マウスの飼育を試みた。次に、無菌マウスとノトバイオートマウスを同一ラックで飼育し、交差汚染が発生しないか検証した。最後に、陰圧制御飼育室に本システムとバイオセーフティキャビネットを設置し、無菌マウスの飼育を試みた。その結果、いずれの実験環境においても3ヵ月以上にわたって微生物汚染を起こさずに動物を飼育することが可能であった。以上の結果より、本システムが無菌マウスを扱った実験やバイオセーフティレベル2のマイクロバイオーム動物実験に使用できることが示された。本システムは十分な作業スペースを有し、VIでは実施できなかった大型実験機器の搬入が可能に、なる。さらに厚いゴム手袋越しの作業が不要となり、繊細な作業を容易に実施することが可能である。本研究で構築したシステムは、腸内細菌叢の移植実験をはじめとしたマイクロバイオーム研究の作業効率の向上に寄与すると考えられた。

第3章:患者末梢血を移入可能なヒト化マウスの改良
免疫不全マウスにPBMCを移植することで、患者由来のサンプルを用いた免疫系ヒト化マウスを作製することができる。ヒトPBMCの移植には一般にNOGマウスが用いられるが、移植片対宿主病(GVHD)が高率で発症することがしばしば問題となる。これに対しNOG-MHC I/IIの構成遺伝子であるbeta-2 microglobulin (B2m)遺伝子とI-A beta chain遺伝子をダブルノックアウトしたマウス(dKO-tm)は、重篤なGVHDを発症しないことが報告されている。しかしながらdKO-tmは繁殖能が低く、ヒト細胞のキメリズムが低いことが報告されている。本研究では、CRISPR/Cas9を使用して新しいB2m KOマウスモデルを確立した。従来のdKO-tmマウスはB2mおよびI-Ab KOマウスをNOGマウスに戻し交配することで作製したのに対し、改良dKO-emマウスではCRISPR/Cas9ゲノム編集により作製したNOG B2m KOマウスとNOG I-Ab KOマウスを交配し樹立した。NOG、dKO-tm、改良dKO-emの3系統における繁殖成績、GVHDスコア、ヒトPBMCの生着効率を比較した。改良dKO-emマウスでは従来のdKO-tmマウスと比較し、食殺行動の発生率が低く、離乳子数と離乳率がわずかに向上した。PBMC移植後における改良dKO-em のGVHDのスコアはNOGマウスよりも有意に低く、dKO-tmマウスと同等であった。ヒト細胞の生着効率を比較したところ、末梢血のヒトCD45+白血球の割合および脾臓のヒトCD3+T細胞の割合は、改良dKO-emマウスの方がdKO-tmマウスよりも高かった。以上のことから、本研究で樹立した改良dKO-emマウスはヒト化効率の高い有望なマウスモデルになると結論づけられた。改良dKO-emマウスにヒト糞便を移植することで、各患者の免疫状態と腸内細菌叢を反映した疾患モデルを構築できると考えられる。
本研究では腸内細菌叢と免疫系の2つをヒト化したデュアルヒト化マウスの樹立に向けた研究基盤を構築した。本研究で得られた知見を組み合わせることにより、デュアルヒト化マウスを用いた腸内細菌叢の基礎研究を推進させることができると考えられた。
学位名
学位名 博士(獣医学)
学位授与機関
学位授与機関識別子Scheme kakenhi
学位授与機関識別子 32701
学位授与機関名 麻布大学
学位授与年月日
学位授与年月日 2025-01-27
学位授与番号
学位授与番号 乙第447号
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Ver.1 2025-07-21 05:38:55.918795
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