{"created":"2024-07-22T00:38:10.256807+00:00","id":2000125,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"22827642-31e1-416b-adba-c9e392293f99"},"_deposit":{"created_by":17,"id":"2000125","owners":[17],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"2000125"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:az.repo.nii.ac.jp:02000125","sets":["17:251:1721607720247","370:193:375"]},"author_link":[],"control_number":"2000125","item_10006_date_granted_11":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2024-03-15"}]},"item_10006_degree_grantor_9":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"麻布大学"}],"subitem_degreegrantor_identifier":[{"subitem_degreegrantor_identifier_name":"32701","subitem_degreegrantor_identifier_scheme":"kakenhi"}]}]},"item_10006_degree_name_8":{"attribute_name":"学位名","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreename":"博士(学術)"}]},"item_10006_description_7":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"バクテリオファージ(以下、ファージ)とは、細菌特異的に感染するウイルスの総称である。ファージの感染は、宿主となる細菌表面にファージが吸着し、ファージゲノムが細菌体内に注入される。次に、菌体内ではファージゲノムの複製や構造タンパク質の合成が生じ、細菌体内で子ファージが形成される。同時期に、ファージゲノムにコードされる非構造タンパク質であるエンドライシンが発現する。エンドライシンは、細菌の細胞壁を構築するペプチドグリカンへ作用する。その結果、ペプチドグリカンが内側から分解することで溶菌し、菌体内に形成された子ファージは菌体外に放出される。エンドライシンは、細菌に対して直接添加した場合に、細菌属および種に特異的な溶菌作用することが知られており、微生物制御の分野において新規抗菌剤として使用できる可能性が期待されている。本研究では、特定の雑菌の増殖を抑制するために、エンドライシンを選択的抗菌剤として利用できる可能性に着目した。\nしかしながら、エンドライシンの使用に関しては、治療薬に特化しており、それ以外の応用に関する検討は殆ど行われていない。他の分野においてエンドライシンを使用するためには、エンドライシンを使用した概念実証(Proof of Concept)が必要である。\nそこで、本研究では組み換えエンドライシンの実現化の可能性を裏付けるために、組み換えエンドライシンを使用した臨床検査および食品衛生への応用を目指した研究を行った。\n\n第一章:B群連鎖球菌検査で問題となる偽陰性を改善する\n新規選択的抗菌剤の開発\nB群連鎖球菌(Group B Streptococcus;以下GBS)は、妊婦から新生児に産道感染した場合、新生児に重篤なGBS感染症を引き起こす。現状のGBS検査では、採取した膣スワブを直接GBS増菌培地に接種し、培養を行う。GBS増菌培地は種々の選択的抗菌剤を添加し、GBSの選択性を持たしている。しかしながら、膣スワブ中の抗菌性状が似ているEnterococcus faecalis(以下、E. faecalis)の過剰増殖によって、本来であればGBS陽性になる検体の検査結果が偽陰性と判定され、GBSの保菌状況が正確に検査できないという問題がある。この偽陰性になる問題に対して、エンドライシンをGBS増菌培地へ応用できる可能性があると着想した。本章では、E. faecalisに特異的な組み換えエンドライシンのGBS選択培地への応用を目指して研究を行った。\nまず、組み換えエンドライシンEG-LYSの作製を行った。下水流入水からE. faecalisに特異的な溶菌活性のあるファージΦM1EF2を分離した。ファージΦM1EF2のゲノムからエンドライシン遺伝子を同定し、大腸菌タンパク質発現システムに組み込み、エンドライシンEG-LYSを作製した。\n次に、細菌種ごとのペプチドグリカンおよび細菌細胞に対するEG-LYSの活性効果を検討した。EG-LYSはE. faecalisの多くの菌株を溶菌し、GBS株や他のEnterococcus spp.の菌株は溶菌しなかった。次に、Granada液体培地にEG-LYS添加群・PBS添加群を作製し、そこにGBS株とE. faecalis株を同時に植菌し、生菌数を測定した。EG-LYS添加群では、GBS株は増殖し、E. faecalis 株は増殖が抑制された。一方、対照群として使用したPBS添加群では、E. faecalis 株は増殖し、GBS株は増殖が抑制された。次に、GBS株(10² CFU/mL)およびE. faecalis株(10⁴ CFU/mL)を同時に植菌した偽陰性モデルにおける、EG-LYSの活性効果を検討した。E. faecalis 30株とGBS 7株を1株ずつ植菌し、210通りの偽陰性モデルを作製した。作製した偽陰性モデルに0.1 mg/mLおよび0.01 mg/mLのEG-LYSを添加し、生菌数を測定を行った。GBSは99.0%(208検体/210検体)および59.0%(124検体/210検体)で検出された。\nさらに臨床応用可能であるかを、548検体のヒト膣スワブを使用し調査した。EG-LYSなしのGBS検出率は15.7%(86検体/548検体)であった。一方、EG-LYS処理によるGBS検出率は17.9%(98検体/548検体)に増加した。また統計的解析の結果、EG-LYS処理をすることでGBS検査の偽陰性を有意に改善したことが明らかとなった。\n以上から、GBS増菌培地にEG-LYSを添加すると、偽陰性モデルならびに臨床検体のGBS検査の精度が向上することが示された。\n\n第二章:食肉製品の腐敗性乳酸菌に対する\nファージエンドライシンの抗菌効果\n食肉製品の製造過程において、衛生管理などの要因による腐敗性細菌の混入が問題となっている。乳酸菌E. faecalisは耐熱性が高い特徴を有し、食肉製品加工製造中に混入した場合、加熱や燻煙作業でも生残することで汚染された製品は腐敗変敗を引き起こす。この問題に対して、エンドライシンを選択的防腐剤として食品衛生分野へ応用できる可能性があると着想した。本章では、第一章で報告したエンドライシンEG-LYSでE. faecalisの増殖を抑制し、食肉製品の品質を維持する可能性を探ることを目的に研究を行った。\nまず、食肉製品中の細菌群集を調査した。食肉製品における属レベルでの分類学的分析を行い、Enterococcus属が0.1~1.0 %含まれており、食肉製品中に存在していた。従って、Enterococcus属は食肉製品の腐敗変敗の原因になる可能性が認められた。\n次に、細菌種ごとのペプチドグリカンおよび細菌細胞に対するEG-LYSの活性効果を検討した。EG-LYSで処理した場合、E. faecalis株のみ増殖を抑制し、対照群の腐敗した食肉由来のEnterococcus malodoratus株や他の細菌種には活性を示さなかった。次に、E. faecalis株およびEG-LYSをMRS培地に同時に添加し、生菌数を測定した。EG-LYSを添加した培地ではE. faecalis 株の増殖は抑制され、対照群のPBSを添加した培地ではE. faecalis株 は増殖した。\n最後に、食肉加工では燻煙や加熱殺菌等の高温での工程があるため、EG-LYSの耐熱性試験を行った。加熱処理されたEG-LYSのタンパク質濃度は、50 ℃以上の加熱処理によって低下した。また、加熱処理されたEG-LYSを使用し、E. faecalisに対する活性効果を調べた。EG-LYSの活性効果は、55 ℃ 以上の加熱処理によって低下した。以上から、EG-LYSは高温工程前の使用は難しく、高温工程後の二次殺菌として使用できる可能性があると考えられた。\n\n第三章:実験計画法を使用したエンドライシンの大量調製法の検討\n第一章、第二章を実現可能にするには、エンドライシンの大量調製が必要不可欠である。しかしながら、大量調製に関する報告はない。これ対して、実験計画法(Design of Experiment, DOE)の一つである決定的スクリーニング計画(Definitive Screening Design, DSD)に着目した。この手法は、少ない実験(シミュレーション)回数から多数の因子および各因子の変数を同時に調査し、性能に大きな影響を与える因子および各因子の変数(パラメーター)を絞り込み、培養条件をモデル化することができると考えた。第三章ではDSDを活用し、組み換えエンドライシン大量調製のための大腸菌培養条件およびタンパク質発現の最適化を行った。\nまず、大腸菌培養における因子およびパラメーターを検討した。大腸菌培養条件の因子およびパラメーターの決定では、異なる培地組成、pH、培養時間、培養温度、酸素供給量などの因子がエンドライシンの発現量に影響を及ぼすと考えた。先行研究に基づいて、エンドライシンの発現量を最大化するために前培養濁度、発現誘導温度、発現誘導時間、IPTG濃度の4因子を最適な培養条件の因子として選択した。\n各因子の変化がエンドライシンの発現量にどのように影響するかを解析した。その結果、各因子におけるパラメーターいわゆる連続変数の間隔が広くなるにつれて因子で有意差が示された。その因子の中でも、前培養濁度、発現誘導温度、IPTG濃度の3因子はエンドライシンの発現量に大きく関与していた。\n上記で得られたデータを基に、大腸菌によるエンドライシンの最適培養モデルを構築した。その結果、最適培養条件は前培養濁度=0.2、発現誘導温度=15℃、発現誘導時間=24時間、IPTG濃度=1 mMと示された。このモデルを活用することで、エンドライシンの大量調製が実現可能な培養条件であることを明確にした。\n以上から、エンドライシンの大量調製を実現するための基盤が構築され、生産性を向上させるための重要な条件が特定された。\n\n【総括】\n本研究では、E. faecalisに対するエンドライシンEG-LYSを選択的抗菌剤として使用し、細菌検査や食品衛生を改善できると期待された。特に、第一章での研究は細菌検査で組み換えエンドライシンを使用して、検査の精度が向上するという概念実証を示した世界で初めての報告である。一般的に、エンドライシンは、グラム陽性菌に対して有効な抗菌剤として取り扱われてきた。しかしながら、近年、エンドライシンは、グラム陽性菌のみならず、グラム陰性菌に対しても有効であるように開発されており、応用できる可能性が非常に高い。将来、医学や獣医学におけるエンドライシンの研究が活性化し、エンドライシンの応用を拡大すると期待される。\n\n【参考論文】\n1. Masaya Ogata, Jumpei Uchiyama, Abdulatef M Ahhmed, Seiichi Sakuraoka, Satoshi Taharaguchi, Ryoichi Sakata, Wataru Mizunoya, Shiro Takeda*. Effects of Inherent Lactic Acid Bacteria on Inhibition of Angiotensin I-Converting Enzyme and Antioxidant Activities in Dry-Cured Meat Products. Foods, 11(14), 2123, 2022.\n2. Hidehito Matsui#, Jumpei Uchiyama*#, Masaya Ogata#, Tadahiro Nasukawa, Iyo Takemura-Uchiyama, Shin-ichiro Kato, Hironobu Murakami, Masato Higashide, Hideaki Hanaki. Use of Recombinant Endolysin to Improve Accuracy of Group B Streptococcus Tests. Microbiol Spectrum, 9(1), e00077-21, 2021. # Hidehito Matsui, Jumpei Uchiyama, and Masaya Ogata contributed equally to this article. 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