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DNAメチル化による遺伝子発現制御機構に関する分子生物学的研究 : コイUcp1遺伝子とマウスHepcidin遺伝子に注目して
https://az.repo.nii.ac.jp/records/5418
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名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2021-04-05 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | DNAメチル化による遺伝子発現制御機構に関する分子生物学的研究 : コイUcp1遺伝子とマウスHepcidin遺伝子に注目して | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
林, 滉平
× 林, 滉平 |
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抄録 | ||||||
内容記述 | プロモーターやエンハンサー領域におけるDNAメチル化(CpG配列部分でシトシンにメチル基が付加する化学反応)は、一般にその遺伝子の転写を抑制し、ゲノムインプリンティングやX染色体不活性化、組織特異的な遺伝子発現パターンなどに関与し、正常な分化発生に重要な役割を持つ。 本研究では特に組織特異的な遺伝子発現パターンの制御に注目し、組織特異的発現を特徴とする遺伝子について、その遺伝子発現制御におけるDNAメチル化の関与を明らかにすることを目的とした。そこで、所属研究室でこれまで扱ってきた遺伝子のうち、特徴的な組織特異的発現を示した、コイUcp (uncoupling protein)1及びマウスHepcidinの遺伝子に注目してDNAメチル化との関連を調べた。 \n第1章 プロモーター領域のDNAメチル化によるコイUcp1遺伝子発現への影響 UCP1は恒温動物であるマウスなどの哺乳類においては褐色脂肪細胞のミトコンドリア内膜に限局するイオン輸送体タンパク質として知られ、体温の維持やエネルギー代謝調節などに関与する。一方、変温動物であるコイでは肝臓で特異的に高い発現がみられる。マウスにおいてはUcp1プロモーターならびにエンハンサー領域における特にCRE(cAMP応答配列)のメチル化がUcp1遺伝子発現を直接抑制することが報告されている。しかし、魚類におけるUcp1遺伝子上流のDNAメチル化状態ならびにその遺伝子発現制御への関与についてはまだ明らかにされていない。そこで、コイUcp1発現におけるプロモーターとその上流領域のDNAメチル化の影響を調べた。 まず、コイの肝臓、脳、腎臓、骨格筋、鱗の5つの組織についてUcp1 mRNA発現レベルをreal-time qPCRにより調べたところ、既報と同様に肝臓でもっとも高い発現であった。次に、バイサルファイト法を実施して、同組織のコイUcp1遺伝子上流領域のDNAメチル化状態を調べた。バイサルファイト法では、マウスにおいてDNAメチル化によるUcp1発現制御への関与が報告されているCRE配列と比較的相同性の高い配列を含む2つの領域に注目して実施した。2つの領域はUcp1転写開始点(+1)より上流のnt -2562~ nt -2102領域(CpGを7ヶ所含み、遠位領域とする)とnt -215~ nt -12領域(CpGを5ヶ所含み、近位領域とする)である。その結果、遠位領域のnt -2178、nt -2173、nt -2103の3ヶ所のシトシンにおいて肝臓と腎臓では他の組織に比べてメチル化の程度が有意に低かった。近位では5ヶ所のCpGすべてにおいてメチル化の程度が肝臓で有意に低いことがわかった。これらの結果から、肝臓でのUcp1遺伝子上流領域の低DNAメチル化状態がUcp1遺伝子の高発現に関与している可能性があると考えられた。そこで次に、この上流領域のDNAメチル化によるコイUcp1転写活性への直接的な影響を検討するために、転写開始点より上流の推定プロモーター領域 (nt -2634~ nt +49:遠位と近位を含む)ならびに近位領域(nt -236~ nt +49)のみをそれぞれ組み込んだプラスミドコンストラクトを作製して、ゼブラフィッシュの肝臓由来細胞株ZF-Lを用いてレポーターアッセイを実施した。その結果、いずれの領域をメチル化した場合でも、Ucp1プロモーターの転写活性は抑制しないことが分かった。このことは、コイUcp1転写活性の抑制は、調べたプロモーター領域のDNAメチル化によって引き起こされるのではないのかもしれない。クロマチンリモデリングを介して転写調節に関与している可能性もあり、今後の検討課題である。一方で、プロモーター領域の各CpGサイトに変異導入したレポーターアッセイ法を実施したところ、DNAメチル化による影響とは直接関与しないものの、nt -108の塩基置換がUcp1プロモーター活性を有意に減少させた。この領域にはいくつかの転写関連因子が結合することが推定されたことから、コイUcp1の転写制御に関与する新たな転写制御サイトの候補をみつけることができた。 \n第2章 プロモーター領域のDNAメチル化によるマウスHepcidin遺伝子発現への影響 ヘプシジンは正常なマウスの肝臓で高く発現して血中鉄量調節に関与するペプチドホルモンであり、主に炎症によるIL-6シグナルや、貯蔵鉄増加によるBMPシグナルを介してHepcidin遺伝子発現が増加する。一方で、マウス肝癌由来細胞株であるhepa1-6細胞ではほとんどその発現が認められず、BMPシグナル刺激によっても検出可能レベルに至らない。また、ヒト肝癌由来細胞株であるHuh7やHepG2でもHepcidinの低発現が報告されている。Huh7ではHepcidinの近位上流領域(開始コドンを+1とするnt -154までの領域)におけるDNAメチル化と遺伝子発現との間で負の相関が示唆されている一方で、HepG2では同領域においては負の相関がないとされている。本研究ではまだ明らかにされていない、マウスの各組織及びhepa1-6細胞でのHepcidin遺伝子発現におけるHepcidinプロモーター領域のDNAメチル化による影響を検討した。 マウスの肝臓、白色脂肪組織、骨格筋の3つの組織とhepa1-6細胞のHepcidin mRNA発現レベルをreal-time qPCRにより調べたところ、既報の通り肝臓で最も高いHepcidinの遺伝子発現と、その他組織ならびにhepa1-6細胞ではほとんど発現していないことが確認できた。次にHepcidin遺伝子の開始コドン(+1)より上流の既知のプロモーター領域(約2.3kbp)に含まれる29ヶ所のCpGのメチル化状態をバイサルファイト法により調べたところ、肝臓では特にメチル化の程度が低い2つの領域があることが分かった。それらの領域を遠位領域(nt -1708~ nt -1454であり8ヵ所のCpGを含む)ならびに近位領域(nt -678~ nt -102であり9ヵ所のCpGを含む)とした。特に遠位領域のうち7ヵ所のCpGと近位領域のうち6ヵ所のCpGについては、肝臓では他組織ならびにhepa1-6細胞と比較してメチル化の程度が有意に低かった。次に、プロモーター領域のDNAメチル化によるHepcidin転写発現への直接的な影響を調べるために、レポーターアッセイを実施した。その結果、プロモーター領域全長(nt -2018~ nt -35)、近位領域のみを含む領域(nt -565~ nt -35)、遠位領域のみを含む領域(nt -2018~ nt -1448)をそれぞれ組み込んだコンストラクトにおいて、全てのCpGメチル化処理はいずれの転写活性も有意に減少させた。また、Hepcidinプロモーターには、Hepcidin遺伝子発現を促進する転写因子として知られるリン酸化Smad1/5/8の結合領域と推測されるBMP-RE1(nt -155~ nt -150)またはBMP-RE2(nt -1678~ nt -1673)が含まれる。BMP-RE1、BMP-RE2にはそれぞれCpG配列が一つずつ含まれている。そこで、これらのBMP-REのCpGのみをメチル化処理し同様にレポーターアッセイを行ったところ、転写活性が有意に減少した。BMPはキナーゼ型受容体であるALK3やALK2の活性化を介して、Smad1/5/8をリン酸化する。リン酸化したSmad1/5/8はSmad4と複合体を形成し、核内に移行して、BMP-REを介してHepcidin転写を促進する。そこで、本研究ではさらに恒常活性型BMP受容体であるALK3(QD)を一過性過剰発現させたHepG2細胞を用いて、レポーターアッセイを行い、受容体過剰発現に対する転写活性化効果におけるメチル化の影響を比較した。その結果、BMP-RE1またはBMP-RE 2のCpGがメチル化されたレポーターコンストラクトにおいて、ALK3(QD)による転写活性化効果は強く減弱した。これらのことから、マウスおける組織特異的なHepcidin遺伝子発現はHepcidinプロモーター領域の特徴的なメチル化状態がその制御に関与しており、特にBMP-REのメチル化がリン酸化Smad1/5/8のBMP-REへの結合を直接阻害してHepcidin転写発現を抑制していることを示した。 \n 本研究では、第1章において、コイのUcp1遺伝子発現制御におけるDNAメチル化の影響について、既報のマウスと同様に高発現組織における低メチル化パターンの傾向が維持されている一方で、遺伝子発現制御への関与はマウスとは異なることを示唆することができた。さらに、コイUcp1遺伝子発現制御における新たな転写制御因子結合サイトの候補を見つけることができた。また、第2章においてマウスHepcidin遺伝子プロモーターのDNAメチル化が、Hepcidin遺伝子発現を直接抑制することを証明した。さらに、メチル化によるHepcidin遺伝子発現抑制において、BMP応答配列におけるメチル化が特に重要な要因であることを見出した。以上の結果を通して本研究では、まだDNAメチル化との関与が明らかにされていなかった組織特異的発現を示す複数の遺伝子についてそのDNAメチル化による遺伝子発現制御への影響を示唆することができた。 本研究内容の一部はK. Hayashi, M. Funaba, and M. Murakami. Tissue-dependent DNA methylation of carp uncoupling protein 1 promoter. Physiol Genomics 51: 623–629, 2019.として掲載済みである。 |
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学位名 | ||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2021-03-15 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 32701甲第165号 |