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ブタは品種や系統により体外成熟卵(成熟卵)の体外受精(IVF)後の胚発生率が低い。その原因の1つに、成熟卵の細胞質成熟が不十分であることが考えられる。これらの卵から産子を得るには、細胞質成熟が不十分な卵から核を取り出し、あらかじめ除核した細胞質成熟が十分な卵へと導入することで卵を再構築し、IVF後に胚を作製する方法がある。この再構築卵を得る手法を核置換と呼ぶ。核置換は除核や核の導入に顕微操作を用いるが、卵核胞期(GV期)に核置換を行うには卵に付着している卵丘細胞を除去する必要がある。しかし、GV期の卵丘細胞の除去がブタ卵の核成熟(成熟)、細胞質成熟の1つの指標である細胞質内グルタチオン(GSH)量、受精および胚発生に及ぼす影響について明らかにされていない。そこで、GV期の卵丘細胞の除去がブタ卵の成熟、GSH量、IVF後の受精および胚発生に及ぼす影響を調べた。\n【材料と方法】屠場由来の卵巣から卵丘細胞-卵複合体(COCs)を採取し、COCsの卵丘細胞を採卵直後に除去した(DO 0 h区)。卵丘細胞除去を行なわない区を対照区(COCs区)とし、既報[Kikuchi et al., 2002]に従って体外成熟(IVM)培養を行なった。COCs区の一部の卵をIVM開始24時間後に卵丘細胞を部分的(H-DO 24 h区)におよび完全に除去(DO 24 h区)した。DO 24 h区の一部は卵丘細胞と共培養した(DO 24 h + CC区)。IVM後に成熟率およびGSH量を測定した。各試験区の成熟卵にIVFを行い受精能および体外培養(IVC)後の胚発生能を調べた。\n【結果】成熟率およびGSH量は、対照区が卵丘細胞除去した全ての区より有意に高い値を示した(P\u003c0.05)。IVF後の雄性前核(MPN)形成率および胚発生率においても対照区が他の試験区と比較して有意に高い値を示した(P\u003c0.05)。また、GSH量とMPN形成率および胚発生率の間に強い正の相関が認められた。\n【考察】ブタ卵の成熟率、GSH量、受精および胚発生にはIVM中に卵の周囲に卵丘細胞が付着していることが重要であること、GSH量はMPN形成、胚発生およびその細胞数に影響を及ぼすことが示唆された[Maedomari et al., 2007]。\n\n第2章:ブタM-II期卵の遠心・融合による核置換法の確立\n 第1章の結果より、ブタ卵はGV期に核置換を行うことが困難であることが示唆された。そこで、減数分裂が静止し、卵の選別が容易で卵丘細胞を除去してもその後の胚発生に影響しない第二減数分裂中期(M-II期)に核置換を行うことで、受精および胚発生が期待できる。しかし、核置換には顕微操作が必要であるが、その技術習得が困難であるなど問題点が多い。それらの問題点を回避するために、遠心・融合を組み合わせたCentri-Fusion法[Fahrudin et al., 2007]によるM-II期核置換卵の簡易的作製法を検討した。また、ブタの核移植卵の細胞質量の増加は、核移植胚の胚発生を改善することが知られている[Fahrudin et al., 2007]。そこで、ブタ成熟卵を用いてCentri-Fusion法により異なる細胞質量を持つ核置換卵を作出し、核置換卵の細胞質量が単為発生刺激後の雌性前核(FPN)形成、IVF後の受精および胚発生に及ぼす影響を調べた。\n【材料と方法】第1章と同様に成熟卵を作製し、パーコールの密度勾配を利用した遠心処理により、M-II期核を含む細胞質小片(K)および含まない細胞質小片(C)を作出した。1つのKと0-4個のCを電気融合し、核置換卵を作出した(K, K+1C, K+2C, 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2003]に従いXenograft卵巣由来の成熟卵を作出した。その成熟卵の核と、屠場卵巣由来の成熟卵のCを2つあるいは3つと融合させることで核置換卵を作出し、単為発生能を評価した。さらに、Xenograft卵巣由来の成熟卵に、屠場卵巣由来の成熟卵のCを3つ融合させて細胞質添加卵を作出し、単為発生能およびIVF後の胚発生能を評価した。屠場卵巣由来の成熟卵を用いて核置換もしくは細胞質添加を行った区を対照区とした。\n【結果】Centri-Fusion法によりXenograft卵巣由来の成熟卵の核と屠場卵巣由来の成熟卵のCを融合させた核置換卵の単為発生能は対照区との間に有意な差は認められなかった。Xenograft卵巣由来の成熟卵を用いた細胞質添加卵の単為発生能に有意な差は認められなかったが、細胞質添加卵の胚発生率は改善される傾向が認められた(P=0.09)。また、IVF後の胚発生能は、各試験区間に有意な差は認められなかった。\n【考察】Xenograft卵巣由来の成熟卵を用いた核置換、細胞質添加ともに胚発生能を有していた。これまで、Xenograft卵巣由来の成熟卵の胚発生率は1%以下と低率であったが、核置換もしくは細胞質添加によりXenograft卵巣由来のブタ成熟卵の胚発生率が改善されたことから、これらの技術は有効であることが示唆された。\n\n 以上の結果から、ブタ卵の核と細胞質の成熟、受精および胚発生にはIVM時に卵丘細胞が卵に付着していることが重要であり、GSH量はIVM時の卵丘細胞により制御されることが示唆された。また、ブタ成熟卵の受精および胚発生にはGSH量が重要であることが示された。また、ブタM-II卵において核置換を行うことで胚発生が確認されたことから、ブタ卵の遠心・融合によるM-II期核置換は有効であることが示された。さらに、ブタの成熟卵を用いた核置換卵および細胞質添加卵は、IVF後の胚発生能を有しており、その胚発生には細胞質量が重要であることが明らかになった。最後に、胚発生能の低いXenograft卵巣由来の成熟卵から胚を作出し、胚発生能を改善する手法として、細胞質添加技術が有効であることを示した。\n", "subitem_description_type": "Abstract"}]}, 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ブタ卵の遠心・融合による核置換法の確立と発生能改善に関する研究
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2013-11-26 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | ブタ卵の遠心・融合による核置換法の確立と発生能改善に関する研究 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
前泊, 直樹
× 前泊, 直樹 |
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抄録 | ||||||
内容記述 | 第1章:核置換のためのブタ卵の成熟、受精および胚発生に関する研究 ブタは品種や系統により体外成熟卵(成熟卵)の体外受精(IVF)後の胚発生率が低い。その原因の1つに、成熟卵の細胞質成熟が不十分であることが考えられる。これらの卵から産子を得るには、細胞質成熟が不十分な卵から核を取り出し、あらかじめ除核した細胞質成熟が十分な卵へと導入することで卵を再構築し、IVF後に胚を作製する方法がある。この再構築卵を得る手法を核置換と呼ぶ。核置換は除核や核の導入に顕微操作を用いるが、卵核胞期(GV期)に核置換を行うには卵に付着している卵丘細胞を除去する必要がある。しかし、GV期の卵丘細胞の除去がブタ卵の核成熟(成熟)、細胞質成熟の1つの指標である細胞質内グルタチオン(GSH)量、受精および胚発生に及ぼす影響について明らかにされていない。そこで、GV期の卵丘細胞の除去がブタ卵の成熟、GSH量、IVF後の受精および胚発生に及ぼす影響を調べた。 【材料と方法】屠場由来の卵巣から卵丘細胞-卵複合体(COCs)を採取し、COCsの卵丘細胞を採卵直後に除去した(DO 0 h区)。卵丘細胞除去を行なわない区を対照区(COCs区)とし、既報[Kikuchi et al., 2002]に従って体外成熟(IVM)培養を行なった。COCs区の一部の卵をIVM開始24時間後に卵丘細胞を部分的(H-DO 24 h区)におよび完全に除去(DO 24 h区)した。DO 24 h区の一部は卵丘細胞と共培養した(DO 24 h + CC区)。IVM後に成熟率およびGSH量を測定した。各試験区の成熟卵にIVFを行い受精能および体外培養(IVC)後の胚発生能を調べた。 【結果】成熟率およびGSH量は、対照区が卵丘細胞除去した全ての区より有意に高い値を示した(P<0.05)。IVF後の雄性前核(MPN)形成率および胚発生率においても対照区が他の試験区と比較して有意に高い値を示した(P<0.05)。また、GSH量とMPN形成率および胚発生率の間に強い正の相関が認められた。 【考察】ブタ卵の成熟率、GSH量、受精および胚発生にはIVM中に卵の周囲に卵丘細胞が付着していることが重要であること、GSH量はMPN形成、胚発生およびその細胞数に影響を及ぼすことが示唆された[Maedomari et al., 2007]。 第2章:ブタM-II期卵の遠心・融合による核置換法の確立 第1章の結果より、ブタ卵はGV期に核置換を行うことが困難であることが示唆された。そこで、減数分裂が静止し、卵の選別が容易で卵丘細胞を除去してもその後の胚発生に影響しない第二減数分裂中期(M-II期)に核置換を行うことで、受精および胚発生が期待できる。しかし、核置換には顕微操作が必要であるが、その技術習得が困難であるなど問題点が多い。それらの問題点を回避するために、遠心・融合を組み合わせたCentri-Fusion法[Fahrudin et al., 2007]によるM-II期核置換卵の簡易的作製法を検討した。また、ブタの核移植卵の細胞質量の増加は、核移植胚の胚発生を改善することが知られている[Fahrudin et al., 2007]。そこで、ブタ成熟卵を用いてCentri-Fusion法により異なる細胞質量を持つ核置換卵を作出し、核置換卵の細胞質量が単為発生刺激後の雌性前核(FPN)形成、IVF後の受精および胚発生に及ぼす影響を調べた。 【材料と方法】第1章と同様に成熟卵を作製し、パーコールの密度勾配を利用した遠心処理により、M-II期核を含む細胞質小片(K)および含まない細胞質小片(C)を作出した。1つのKと0-4個のCを電気融合し、核置換卵を作出した(K, K+1C, K+2C, K+3CおよびK+4C区)。透明帯を除去した卵を対照区とした。核置換卵の融合率および細胞質直径を測定後に、電気刺激による単為発生処理を行いFPN形成能、IVF/IVC後に受精および胚発生能を評価した。 【結果】融合率は、融合させる細胞質を増やすと有意に低下し、K+4C区が最も低い値となった(P<0.05)。細胞質直径は、各試験区間に有意な差が認められ、K+4C区で最大となった(P<0.05)。K+2C区と対照区は同じ直径であった。各試験区のFPN形成率には有意な差は認められなかった。また、受精能を調べた結果、単精子受精率においてK区が他の試験区より有意に高い値を示した(P<0.05)。胚発生能を調べた結果、融合させる細胞質量を増やすことで、胚発生能の改善が認められた(P<0.05)。 【考察】Centri-Fusion法により作出したブタ核置換卵はFPN形成能、MPN形成能および胚発生能を有していた。また、ブタ核置換卵の胚発生には細胞質量が重要であることが示唆された。ブタ成熟卵を用いた核置換卵由来の胚作出の報告は本研究が初めての成功例である。 第3章:ブタM-II期への細胞質小片添加による胚発生能改善に関する研究 Centri-Fusion法によるブタ核置換卵の作出は、M-II期核を含むKと含まないCに選別する際に、染色体を蛍光染色するために紫外線(UV)を照射する必要がある。ウシではM-II期核へのUV照射が、FPN形成時に染色体の凝集などの異常を引き起こすことが知られている[Bradshaw et al., 1995]。M-II期核へのUV照射を回避することで、胚発生能の改善が期待できる。また、第2章においてブタ核置換卵の胚発生には細胞質量が重要であることが示唆された。そこで、UV照射を回避し、細胞質量を増加させるために、ブタ成熟卵にCを融合させ、細胞質添加卵を作出した。細胞質添加卵の単為発生能、IVF後の受精能および胚発生能を評価した。 【材料と方法】ブタ成熟卵から第2章の方法に従い、M-II期核を含まないCを作出した。その後、透明帯を除去した成熟卵(O)へ0-3個のCを融合させ、細胞質添加卵を作出した(O、O+1C、O+2CおよびO+3C区)。また、透明帯を除去した成熟卵を対照区とした。各試験区の卵の単為発生能、IVF/IVC後の受精および胚発生能を評価した。 【結果】細胞質添加卵の直径を測定した結果は、融合させるCを増加させることで有意に増加し、O+3C区で最大となった(P<0.05)。単為発生能は、各試験区間に有意な差は認められなかった。しかし、IVF/IVC後の胚発生能において、細胞質添加区は対照区と比較して胚発生率は有意に増加した(P<0.05)。 【考察】屠場卵巣由来の成熟卵にCを添加した細胞質添加卵は、単為発生能およびIVF/IVC後の胚発生能を有していた。また、第2章と同様に細胞質量の増加はブタ卵の胚発生を改善する要因であることが示唆された。 第4章:異種移植ブタ卵巣由来の成熟卵への応用と胚発生能改善に関する研究 第2章および第3章の結果より、核置換卵および細胞質添加卵の胚発生には細胞質量が重要であることが示唆されたことから、これらの手法を異種移植(Xenograft)卵巣より採取した卵に応用した。ブタ新生子より卵巣片を回収しヌードマウスへXenograftし、マウス生体内にて卵胞を発育させ発育卵胞よりGV卵を得ることが可能である。この未成熟卵はIVMにより成熟卵の作出が可能であるが、IVF/IVC後の胚発生は低率である[Kaneko et al., 2006]。そこで、この成熟卵から核置換卵および細胞質添加卵を作出し、単為発生能、IVF後の受精能および胚発生能の改善を図った。 【材料と方法】既報[Kaneko et al., 2003]に従いXenograft卵巣由来の成熟卵を作出した。その成熟卵の核と、屠場卵巣由来の成熟卵のCを2つあるいは3つと融合させることで核置換卵を作出し、単為発生能を評価した。さらに、Xenograft卵巣由来の成熟卵に、屠場卵巣由来の成熟卵のCを3つ融合させて細胞質添加卵を作出し、単為発生能およびIVF後の胚発生能を評価した。屠場卵巣由来の成熟卵を用いて核置換もしくは細胞質添加を行った区を対照区とした。 【結果】Centri-Fusion法によりXenograft卵巣由来の成熟卵の核と屠場卵巣由来の成熟卵のCを融合させた核置換卵の単為発生能は対照区との間に有意な差は認められなかった。Xenograft卵巣由来の成熟卵を用いた細胞質添加卵の単為発生能に有意な差は認められなかったが、細胞質添加卵の胚発生率は改善される傾向が認められた(P=0.09)。また、IVF後の胚発生能は、各試験区間に有意な差は認められなかった。 【考察】Xenograft卵巣由来の成熟卵を用いた核置換、細胞質添加ともに胚発生能を有していた。これまで、Xenograft卵巣由来の成熟卵の胚発生率は1%以下と低率であったが、核置換もしくは細胞質添加によりXenograft卵巣由来のブタ成熟卵の胚発生率が改善されたことから、これらの技術は有効であることが示唆された。 以上の結果から、ブタ卵の核と細胞質の成熟、受精および胚発生にはIVM時に卵丘細胞が卵に付着していることが重要であり、GSH量はIVM時の卵丘細胞により制御されることが示唆された。また、ブタ成熟卵の受精および胚発生にはGSH量が重要であることが示された。また、ブタM-II卵において核置換を行うことで胚発生が確認されたことから、ブタ卵の遠心・融合によるM-II期核置換は有効であることが示された。さらに、ブタの成熟卵を用いた核置換卵および細胞質添加卵は、IVF後の胚発生能を有しており、その胚発生には細胞質量が重要であることが明らかになった。最後に、胚発生能の低いXenograft卵巣由来の成熟卵から胚を作出し、胚発生能を改善する手法として、細胞質添加技術が有効であることを示した。 |
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学位名 | ||||||
学位名 | 博士(学術) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2008-03-15 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第40号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |