WEKO3
アイテム
{"_buckets": {"deposit": "42967ea1-de61-43fd-b705-ce770350b1d8"}, "_deposit": {"created_by": 4, "id": "3141", "owners": [4], "pid": {"revision_id": 0, "type": "depid", "value": "3141"}, "status": "published"}, "_oai": {"id": "oai:az.repo.nii.ac.jp:00003141", "sets": ["228", "391"]}, "author_link": ["16142"], "item_10006_date_granted_11": {"attribute_name": "学位授与年月日", "attribute_value_mlt": [{"subitem_dategranted": "1997-03-20"}]}, "item_10006_degree_grantor_9": {"attribute_name": "学位授与機関", "attribute_value_mlt": [{"subitem_degreegrantor": [{"subitem_degreegrantor_name": "麻布大学"}]}]}, "item_10006_degree_name_8": {"attribute_name": "学位名", "attribute_value_mlt": [{"subitem_degreename": "博士(獣医学)"}]}, "item_10006_description_7": {"attribute_name": "抄録", "attribute_value_mlt": [{"subitem_description": " Gracile Axonal Dystrophy(GAD)マウスは、薄束路における神経軸索変性を初期病変とするミュータントマウスである。その軸索変性は、腰髄の脊髄神経節に存在する一次知覚神経細胞の中枢端である延髄薄束核より生後4週齢前後から生じる。病理組織学的には、軸索が異常に腫大し、その内部に多数のミトコンドリアやelectron dense body,大小の膜様構造物等を含む好酸性球状構造物(Spheroid)の出現,星状膠細胞の増生(gliosis),脱髄などを主病変とする。このような病変は加齢に伴って薄束核から頚髄,胸髄,腹髄の順に薄束を下行していく。つまりGADマウスの薄束路では、時期ならびに部位特異的に逆行性軸索変性が生じている。\n Alzheimer病や正常の加齢に際し出現する老人斑周囲には、変性軸索が存在していることが知られている。老人斑はAmyloidβ-Protein(AβP)が主成分として構成される。またこのAβPは、アミノ酸700個前後から成るAmyloid Precursor Protein(APP)(アミロイド前駆体蛋白質)と呼ばれる大きな蛋白質の一部であるが、APPからどのようにしてAβPが切断され、老人斑が形成されるのかは明らかにされていない。ユビキチンはAlzheimer病の神経原線維変化にみられるPaired Helical Filaments(PHF)の構成成分として同定された物質で、細胞内異常蛋白蓄積時における蛋白分解系に対する標識となる。PHFの形成は、AβPの沈着に起因する変化であるとされている。現在、老人斑周囲に存在する変性軸索とAPPやAβP、ならびにユビキチンとの関連性は明らかでない。\n 本研究ではGADマウスの薄束路における一次知覚神経細胞の軸索変性と、APP, AβPならびにユビキチンのアミロイド関連蛋白との関連性を、主に生後4, 9, 18ならびに32週齢のZamboni固定組織切片を用いて、免疫組織化学および免疫電顕学的に検討を加えると共に、生後早期の軸索変性を微細構造学的に調べた。\n まず最初に、GADマウスの薄束路における軸索変性とAPP蓄積との関連性を検討した。その結果、抗APP抗体に対する強い免疫反応は、既に生後4週齢の薄束核において認められた。その反応部位は、HE染色や抗GFAP免疫染色の結果から変性軸索と星状膠細胞であった。また変性軸索における反応は、その腫大が大きい程強い傾向を示した。生後4週齢以降、その反応は軸索変性部位の広がり方と一致して、薄束路を逆行性に反応の強さが増していた。一次知覚神経細胞体では生後4週齢より強い反応を認め、この反応は加齢とともに強くなった。変性軸索が脊髄へ退行する生後32週齢の薄束核では、その反応は、むしろ減じていた。\n 次に、GADマウスの薄束路において、APPの蓄積に続いてAβPの蓄積の有無を検討した。抗AβP抗体に対する免疫反応は、生後9週齢より変性軸索とその周辺で増生する星状膠細胞で認められた。従ってGADマウスでみられる薄束路での反応は、その軸索変性の進行と並行して生じており、薄束核で始まって次第に下位の脊髄薄束に及んでいた。また生後32週齢の薄束核における反応は、抗APP反応と同様に減じていた。脊髄神経節の一次知覚神経細胞体では、どの時期においても反応は認められなかった。反応陽性部位は、コンゴ赤染色やチオフラビンS染色において偏光を示さなかった。\n 続いて、APPならびにAβPの蓄積が退行性の軸索変性と関連性があると考えられることより、GADマウスの薄束核における軸索変性の初期的変化を微細構造学的に検討した。最も初期の変化は、軸索終末部の腫大と共に始まるライソソームならびにミトコンドリアの集積であった。腫大が進むと、ライソソームやミトコンドリアの集積と同時に、ニューロフィラメントや微小管よりも太いフィラメント構造物が出現していた。さらに腫大が進むと、これらの変性軸索内の構造物の出現頻度が増し、また電子密度も増加した。また以上の変化は、老化現象でみられる軸索変性でも生じることが知られている、長い軸索の終末部で認められるシナプス複合体で顕著であった。\n さらに、異常蛋白蓄積の指標となり特にフィラメント構造物の蓄積と関連性の深いユビキチンとGADマウスに生じる軸索変性との関連性を検討した。GADマウスの軸索変性部位において、生後9週齢よりユビキチン陽性点状構造物(Dot Like Structures; DS)を認め、DSが軸索にあることが判明した。しかし変性軸索終末部のSpheroidは一般に反応陰性であった。変性軸索内の反応はしばしばフィラメント状を呈していた。またDSの分布は、軸索変性が薄束路,後脊髄小脳路において逆行性に進展するのと同様に、これらの神経路内に広がっていた。また運動系神経路である錐体路でもDSが出現し、その分布は錐体路を逆行性に広がっていた。これらのDSの出現頻度は週齢を重ねるごとに増すと同時に、生後32週齢になるとDSは視床,上丘,大脳皮質感覚野などの知覚系神経路や海馬采など幅広く分布していた。これらよりGADマウスの運動神経系ならびに感覚神経系では、継シナプス的に広がる退行性の軸索変性が生じていることが明らかになった。\n 以上の成績より、(1)軸索変性は、生後10日齢から20日齢の薄束核において、主にシナプス複合体を形成する軸索終末部で生じる。(2)軸索終末部の腫大が進むと二次知覚神経細胞とのシナプス結合が崩壊し、それに伴い一次知覚神経細胞でのAPP産生が亢進し、脊髄神経節内の細胞体でのAPPの蓄積が始まる。(3)軸索終末部においてシナプスを介して二次知覚神経細胞に作用していると考えられるAPPが、その機能を果たせず徐々に軸索終末部に蓄積を始める。(4)シナプス結合の崩壊により生じた空間に、星状膠細胞の細胞突起が進入し、軸索終末部や二次知覚神経細胞を取り囲むと共に、星状膠細胞においてもAPPが蓄積を始める。(5)軸索終末部ならびに星状膠細胞では、APPから正常な代謝によりAβPが産生されるが、APPの蓄積が軽度なためAβPの蓄積には至らない。(6)生後4週齢から9週齢にかけて、変性軸索内ではニューロフィラメントや特殊なフィラメント構造物の集積が顕著になることによりユビキチンが活性化し、主に異常なフィラメント構造物に結合し、蓄積を始める。(7)軸索終末部や星状膠細胞ではAPPの蓄積が進み、その結果ライソソームでのAPPの代謝に異常をきたし、AβPの蓄積が始まる。(8)生後9週齢から18週齢にかけて、APP,AβPならびにユビキチンの蓄積が顕著になると同時に、その蓄積を伴いながら軸索終末部は脊髄薄束を下行する。(9)生後18週齢から32週齢にかけての薄束核では、軸索終末部の殆どが脊髄薄束へ下行した結果、APPならびにAβPは全体的に減少する。\n 現在、ヒトのAlzheimer病では、AβPの沈着と共に変性軸索や反応性星状膠細胞が出現していることが知られているが、その因果関係は明らかでない。またAPPからどのような代謝を経て、AβP産生に至るのかも不明である。これらが明らかにされない理由の1つとして、ヒトにおいては初期病変をとらえることが、困難であることがあげられる。GADマウスでは、軸索変性が生じた結果、アミロイド関連蛋白が蓄積するものと考察されたが、ヒトにおけるAβP沈着の初期病変としても同様な現象が、生じているのかもしれない。", "subitem_description_type": "Abstract"}]}, "item_10006_dissertation_number_12": {"attribute_name": "学位授与番号", "attribute_value_mlt": [{"subitem_dissertationnumber": "甲第 72号"}]}, "item_10006_version_type_18": {"attribute_name": "著者版フラグ", "attribute_value_mlt": [{"subitem_version_resource": "http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa", "subitem_version_type": "AM"}]}, "item_creator": {"attribute_name": "著者", "attribute_type": "creator", "attribute_value_mlt": [{"creatorNames": [{"creatorName": "市原, 伸恒"}], "nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "16142", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}]}]}, "item_files": {"attribute_name": "ファイル情報", "attribute_type": "file", "attribute_value_mlt": [{"accessrole": "open_date", "date": [{"dateType": "Available", "dateValue": "2013-02-05"}], "displaytype": "detail", "download_preview_message": "", "file_order": 0, "filename": "diss_dv_kou0072.pdf", "filesize": [{"value": "39.8 MB"}], "format": "application/pdf", "future_date_message": "", "is_thumbnail": false, "licensetype": "license_free", "mimetype": "application/pdf", "size": 39800000.0, "url": {"label": "diss_dv_kou0072", "url": "https://az.repo.nii.ac.jp/record/3141/files/diss_dv_kou0072.pdf"}, "version_id": "a25d798a-2106-48e1-9ad1-df18bdc9fae7"}, {"accessrole": "open_date", "date": [{"dateType": "Available", "dateValue": "2014-08-18"}], "displaytype": "detail", "download_preview_message": "", "file_order": 1, "filename": "diss_dv_kou0072_jab\u0026rev.pdf", "filesize": [{"value": "282.8 kB"}], "format": "application/pdf", "future_date_message": "", "is_thumbnail": false, "licensetype": "license_free", "mimetype": "application/pdf", "size": 282800.0, "url": {"label": "diss_dv_kou0072_jab\u0026rev", "url": "https://az.repo.nii.ac.jp/record/3141/files/diss_dv_kou0072_jab\u0026rev.pdf"}, "version_id": "790292dc-7cbb-4d4d-9455-24b480d1ff18"}, {"accessrole": "open_date", "date": [{"dateType": "Available", "dateValue": "2013-02-05"}], "displaytype": "detail", "download_preview_message": "", "file_order": 2, "filename": "diss_dv_kou0072_jab.pdf", "filesize": [{"value": "267.9 kB"}], "format": "application/pdf", "future_date_message": "", "is_thumbnail": false, "licensetype": "license_free", "mimetype": "application/pdf", "size": 267900.0, "url": {"label": "diss_dv_kou0072_jab.pdf", "url": "https://az.repo.nii.ac.jp/record/3141/files/diss_dv_kou0072_jab.pdf"}, "version_id": "760d7a5f-d48d-4c57-916e-42e872d9bb60"}]}, "item_language": {"attribute_name": "言語", "attribute_value_mlt": [{"subitem_language": "jpn"}]}, "item_resource_type": {"attribute_name": "資源タイプ", "attribute_value_mlt": [{"resourcetype": "thesis", "resourceuri": "http://purl.org/coar/resource_type/c_46ec"}]}, "item_title": "Gracile axonal dystrophy (GAD) マウスの中枢神経系における軸索変性とアミロイド関連蛋白蓄積との関連性", "item_titles": {"attribute_name": "タイトル", "attribute_value_mlt": [{"subitem_title": "Gracile axonal dystrophy (GAD) マウスの中枢神経系における軸索変性とアミロイド関連蛋白蓄積との関連性"}]}, "item_type_id": "10006", "owner": "4", "path": ["228", "391"], "permalink_uri": "https://az.repo.nii.ac.jp/records/3141", "pubdate": {"attribute_name": "公開日", "attribute_value": "2013-01-16"}, "publish_date": "2013-01-16", "publish_status": "0", "recid": "3141", "relation": {}, "relation_version_is_last": true, "title": ["Gracile axonal dystrophy (GAD) マウスの中枢神経系における軸索変性とアミロイド関連蛋白蓄積との関連性"], "weko_shared_id": 4}
Gracile axonal dystrophy (GAD) マウスの中枢神経系における軸索変性とアミロイド関連蛋白蓄積との関連性
https://az.repo.nii.ac.jp/records/3141
https://az.repo.nii.ac.jp/records/31411ca9fec7-3bad-4b89-bd20-1a1e1e218108
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
---|---|---|
diss_dv_kou0072 (39.8 MB)
|
|
|
diss_dv_kou0072_jab&rev (282.8 kB)
|
|
|
diss_dv_kou0072_jab.pdf (267.9 kB)
|
|
Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
公開日 | 2013-01-16 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | Gracile axonal dystrophy (GAD) マウスの中枢神経系における軸索変性とアミロイド関連蛋白蓄積との関連性 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ | thesis | |||||
著者 |
市原, 伸恒
× 市原, 伸恒 |
|||||
抄録 | ||||||
内容記述 | Gracile Axonal Dystrophy(GAD)マウスは、薄束路における神経軸索変性を初期病変とするミュータントマウスである。その軸索変性は、腰髄の脊髄神経節に存在する一次知覚神経細胞の中枢端である延髄薄束核より生後4週齢前後から生じる。病理組織学的には、軸索が異常に腫大し、その内部に多数のミトコンドリアやelectron dense body,大小の膜様構造物等を含む好酸性球状構造物(Spheroid)の出現,星状膠細胞の増生(gliosis),脱髄などを主病変とする。このような病変は加齢に伴って薄束核から頚髄,胸髄,腹髄の順に薄束を下行していく。つまりGADマウスの薄束路では、時期ならびに部位特異的に逆行性軸索変性が生じている。 Alzheimer病や正常の加齢に際し出現する老人斑周囲には、変性軸索が存在していることが知られている。老人斑はAmyloidβ-Protein(AβP)が主成分として構成される。またこのAβPは、アミノ酸700個前後から成るAmyloid Precursor Protein(APP)(アミロイド前駆体蛋白質)と呼ばれる大きな蛋白質の一部であるが、APPからどのようにしてAβPが切断され、老人斑が形成されるのかは明らかにされていない。ユビキチンはAlzheimer病の神経原線維変化にみられるPaired Helical Filaments(PHF)の構成成分として同定された物質で、細胞内異常蛋白蓄積時における蛋白分解系に対する標識となる。PHFの形成は、AβPの沈着に起因する変化であるとされている。現在、老人斑周囲に存在する変性軸索とAPPやAβP、ならびにユビキチンとの関連性は明らかでない。 本研究ではGADマウスの薄束路における一次知覚神経細胞の軸索変性と、APP, AβPならびにユビキチンのアミロイド関連蛋白との関連性を、主に生後4, 9, 18ならびに32週齢のZamboni固定組織切片を用いて、免疫組織化学および免疫電顕学的に検討を加えると共に、生後早期の軸索変性を微細構造学的に調べた。 まず最初に、GADマウスの薄束路における軸索変性とAPP蓄積との関連性を検討した。その結果、抗APP抗体に対する強い免疫反応は、既に生後4週齢の薄束核において認められた。その反応部位は、HE染色や抗GFAP免疫染色の結果から変性軸索と星状膠細胞であった。また変性軸索における反応は、その腫大が大きい程強い傾向を示した。生後4週齢以降、その反応は軸索変性部位の広がり方と一致して、薄束路を逆行性に反応の強さが増していた。一次知覚神経細胞体では生後4週齢より強い反応を認め、この反応は加齢とともに強くなった。変性軸索が脊髄へ退行する生後32週齢の薄束核では、その反応は、むしろ減じていた。 次に、GADマウスの薄束路において、APPの蓄積に続いてAβPの蓄積の有無を検討した。抗AβP抗体に対する免疫反応は、生後9週齢より変性軸索とその周辺で増生する星状膠細胞で認められた。従ってGADマウスでみられる薄束路での反応は、その軸索変性の進行と並行して生じており、薄束核で始まって次第に下位の脊髄薄束に及んでいた。また生後32週齢の薄束核における反応は、抗APP反応と同様に減じていた。脊髄神経節の一次知覚神経細胞体では、どの時期においても反応は認められなかった。反応陽性部位は、コンゴ赤染色やチオフラビンS染色において偏光を示さなかった。 続いて、APPならびにAβPの蓄積が退行性の軸索変性と関連性があると考えられることより、GADマウスの薄束核における軸索変性の初期的変化を微細構造学的に検討した。最も初期の変化は、軸索終末部の腫大と共に始まるライソソームならびにミトコンドリアの集積であった。腫大が進むと、ライソソームやミトコンドリアの集積と同時に、ニューロフィラメントや微小管よりも太いフィラメント構造物が出現していた。さらに腫大が進むと、これらの変性軸索内の構造物の出現頻度が増し、また電子密度も増加した。また以上の変化は、老化現象でみられる軸索変性でも生じることが知られている、長い軸索の終末部で認められるシナプス複合体で顕著であった。 さらに、異常蛋白蓄積の指標となり特にフィラメント構造物の蓄積と関連性の深いユビキチンとGADマウスに生じる軸索変性との関連性を検討した。GADマウスの軸索変性部位において、生後9週齢よりユビキチン陽性点状構造物(Dot Like Structures; DS)を認め、DSが軸索にあることが判明した。しかし変性軸索終末部のSpheroidは一般に反応陰性であった。変性軸索内の反応はしばしばフィラメント状を呈していた。またDSの分布は、軸索変性が薄束路,後脊髄小脳路において逆行性に進展するのと同様に、これらの神経路内に広がっていた。また運動系神経路である錐体路でもDSが出現し、その分布は錐体路を逆行性に広がっていた。これらのDSの出現頻度は週齢を重ねるごとに増すと同時に、生後32週齢になるとDSは視床,上丘,大脳皮質感覚野などの知覚系神経路や海馬采など幅広く分布していた。これらよりGADマウスの運動神経系ならびに感覚神経系では、継シナプス的に広がる退行性の軸索変性が生じていることが明らかになった。 以上の成績より、(1)軸索変性は、生後10日齢から20日齢の薄束核において、主にシナプス複合体を形成する軸索終末部で生じる。(2)軸索終末部の腫大が進むと二次知覚神経細胞とのシナプス結合が崩壊し、それに伴い一次知覚神経細胞でのAPP産生が亢進し、脊髄神経節内の細胞体でのAPPの蓄積が始まる。(3)軸索終末部においてシナプスを介して二次知覚神経細胞に作用していると考えられるAPPが、その機能を果たせず徐々に軸索終末部に蓄積を始める。(4)シナプス結合の崩壊により生じた空間に、星状膠細胞の細胞突起が進入し、軸索終末部や二次知覚神経細胞を取り囲むと共に、星状膠細胞においてもAPPが蓄積を始める。(5)軸索終末部ならびに星状膠細胞では、APPから正常な代謝によりAβPが産生されるが、APPの蓄積が軽度なためAβPの蓄積には至らない。(6)生後4週齢から9週齢にかけて、変性軸索内ではニューロフィラメントや特殊なフィラメント構造物の集積が顕著になることによりユビキチンが活性化し、主に異常なフィラメント構造物に結合し、蓄積を始める。(7)軸索終末部や星状膠細胞ではAPPの蓄積が進み、その結果ライソソームでのAPPの代謝に異常をきたし、AβPの蓄積が始まる。(8)生後9週齢から18週齢にかけて、APP,AβPならびにユビキチンの蓄積が顕著になると同時に、その蓄積を伴いながら軸索終末部は脊髄薄束を下行する。(9)生後18週齢から32週齢にかけての薄束核では、軸索終末部の殆どが脊髄薄束へ下行した結果、APPならびにAβPは全体的に減少する。 現在、ヒトのAlzheimer病では、AβPの沈着と共に変性軸索や反応性星状膠細胞が出現していることが知られているが、その因果関係は明らかでない。またAPPからどのような代謝を経て、AβP産生に至るのかも不明である。これらが明らかにされない理由の1つとして、ヒトにおいては初期病変をとらえることが、困難であることがあげられる。GADマウスでは、軸索変性が生じた結果、アミロイド関連蛋白が蓄積するものと考察されたが、ヒトにおけるAβP沈着の初期病変としても同様な現象が、生じているのかもしれない。 |
|||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(獣医学) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関名 | 麻布大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 1997-03-20 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第 72号 | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | AM | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_ab4af688f83e57aa |